異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第三十九話 いくさ支度

 野営地に戻るとアルコンさんが起き上がって迎えてくれた。

 本調子ってわけじゃなさそうだが回復早いな!? さすが魔導貴族ってことか。

 公演終了後、彼の許可も貰って、書類をみんなで回し読み。

 まあ大半経理関係の書類なので、わかるのは師匠とオレとカオルくんくらいのものだが。

 

「こっちの経費を水増しして・・・」

「ここで架空請求して・・・」

「すまん、わからんので要点だけ頼めるか・・・」

 

 一応書類に目は通したが、理解出来ずにげんなりした顔のアルコンさん&その他。

 俺らだって大して詳しいわけじゃないけど、どこどこでどういう不正処理が行われてるっぽい、ってのは会計書類に書きこんであるのでそれほど難しくもない。

 ただ、数字がずらっと並んでること自体、この世界の人には辛いようではある。まあ日本でだって会計は専門業務なのに、ましてやこの世界だとね?

 と言うかこれ大福帳方式じゃなくて複式簿記だよな? これも俺達の先輩の仕業か。

 

「良くは知らんが、まあ多分そうじゃろうの」

「よく知ってたね、複式簿記なんて。資格取ってたの?」

 

 いえ、異世界転生に役に立つかと思ってネットで調べたことがあるだけです。

 

「あ、そう・・・まあつまりですね、あちこちから少しずつ・・・例えばここの工事費が金貨1000枚のところを1200枚と水増しすることで、金貨200枚が浮きます。

 あちこちで同じ事をして、浮いた分を何かに回してたのでは?ってことですね」

 

 カオルくんの説明がみんなに浸透していく。大和方式ってやつだ。

 昔宇宙のついてない方の戦艦大和を作る時に、予算から戦艦の戦力を推し量られるのを避けるため、そうやって経費を誤魔化した逸話から命名された粉飾決算の手法である。

 さて、ダー・シが作ろうとしている大和は一体何なのか。

 

「この資源調査ってのがお金の流れ込んでるところらしいけど・・・アルコンさん何かご存じではありませんか?」

「記憶抽出の術をかけられる前に言っておくが、昔少し聞いたことがある。

 各地の鉱山などの資源を調べるための専門の部署があって、かなり予算が豊富だと。

 私も武門の家で、本当に耳に挟んだ程度だからそれ以上はわからないぞ。本当だからな?」

 

 妙に真剣な顔で言いつのるアルコン氏。

 さすがの魔導貴族も二度と経験したくはないモノのようである。

 恐るべし頭クチュクチュ。

 閑話休題(それはさておき)

 

「それ探るとなると、今度はクレモント家に突撃しないといけませんよね」

「さすがにあそこに乗り込んで生きて帰ってこれるとは思えんのう。

 小僧の鉄巨人ですら怪しい」

 

 うーん。となると、他の魔導君主にこれチクって介入して貰うのは?

 

「いいセン行ってるアイデアだが、さすがに証拠が足りねえな。そのへんどうよ?」

 

 アーベルさんがちらりと目を向けるのはアルコンさんたちハイソな方々。

 特にお兄さんが魔導君主のとこに婿入りするヴィナさん、どうでしょう?

 

「いや、私はそこまで政治には詳しくないが・・・まあ無理だろうと言わざるを得ないな。

 何か確定的なものがあれば、クレモント家を叩く材料に使うだろうが・・・」

「政治的なあれこれで終わる可能性も高いと思うぞ」

「利益を提供されるなら、クレモント家側に付くことも有り得るだろうからな・・・」

 

 結局はやってみないと分からないか。

 ゲマイ情勢は複雑怪奇なり。

 

「まあ取りあえずは明日からだ。何とかして実際に動いてる資源調査の連中を探ってみるしかないだろうね」

 

 頷いて、この話はお開きとなった。

 

 

 

「おい、大変だ!」

 

 翌朝。

 俺達が食事の支度をしているところに、アーベルさんが血相を変えて駆け込んできた。

 

「ぜい肉袋のとこの軍隊が動いてる! クリエ・オウンドの北に向かって行進してるぞ!」

 

 えええええええええ!?

 朝食の仕上げを早めに済まし、アーベルさんの話を聞く。

 早起きして偵察に行ってくれてたのだが、とんでもない厄ネタをおみやげに持ってきた。

 

「別にオレが悪いわけじゃねえだろう!? まあともかくだな、今朝の夜明けと同時に魔導門が開いて、クレモント家の軍勢が進軍していったらしいんだ。

 マジの完全武装、戦支度でな」

 

 ・・・どういう事だ?

 書類を手に入れたことに気付かれたのか?

 それとも最初からの予定?

 いやでも軍隊動かすのに昨日の今日でいきなりってことはないよな。

 米帝様じゃあるまいし、それなりの準備期間が必要なはずだ。

 

「そのへんはわからん。しかしクレモント家の得意とする術系統は遠視と伝達と言われておる。

 ヴィットゥ殿の屋敷なり、そこにいる魔導兵なりに何らかの術をかけて、常時監視しておった可能性は消せんのう。

 一応対監視の術は発動させておったが、魔導君主相手ではさすがに確言はできん」

 

 うむう。

 

「俺達の所に追っ手が来てないって事は、誰がやったかまでは気付かれてないってことか、ばあさん?」

「そこは何ともじゃな」

 

 泳がされてるだけかも知れないし、俺達を今更捕まえても意味がないのかも知れませんしね。

 でもだとすると・・・そうか「プランBだ!」って奴か?

 

「どういう事だい? まあ何となくわかるけどさ」

 

 そんなもんねえよ! ・・・ではなく、証拠っぽい何かが見つかった時点で今進めてる計画・・・多分こっそり何かやろうとしてたのを別の作戦に切り替えたのではと。

 まあ本人に聞かないとわかりませんけど。

 

「その辺は今話しててもしょうがないだろうねえ。ばあさん、術であいつらの行き先監視出来るかい?」

「無論じゃが、相手にばれる可能性、防がれる可能性が半々くらいじゃの。その危険を踏まえた上でなら反対はせんが」

 

 じゃあ俺がこっそり後をつけるのは?

 

「アンタはいざというときここの面子を運ぶ役があるからねえ・・・」

「じゃあ俺が後をつけよう。最後の最後に一番頼りになるのは魔法や《加護》じゃなくてやっぱりこの足さ」

 

 ぱん、と太ももを叩くアーベルさん。

 うーん、たのもしい。

 

「ちょっと待って。私の友達に頼めると思うの」

 

 リタ?

 でもそこまで遠くの友達とは話せないんだろう? ひょっとしたら何百キロも遠くまで行くかもしれんのやで?

 アーベルさんの場合は師匠の念話でどうにかなりそうだけど・・・

 

「この前ハイブラウで仲良くなったヒヨドリの子と話せたの。

 だから、よほど遠くなければ大丈夫だと思う」

「マジで?!」

 

 大声を上げるのはオブライアンさん。声は上げないが師匠も驚いてる。

 ハイブラウって、ゲマイに入った時の町で、アーナの暗殺教団があったとこだよな。

 多分ここまで純粋な移動時間だけでも一ヶ月以上、数百キロは離れてますよね?

 そう言うとオブライアンさんが呆然と頷いた。

 師匠の視線にシルヴィアさんが頷く。

 

「わかった、リタの友達に頼むよ。でもこれは危険なんだ。ちょっとでもヤバいと思ったらすぐに逃がしな。いいね」

 

 鳥はどこにでもいる。そしてそれ自体は魔力も発していない。

 魔導の国ゲマイでも、むしろ魔導の国だからこそ魔力を発しない監視手段については甘くなるはずだ。

 それでも気付かれてやられる可能性はある。

 リタが真剣な顔で頷いた。

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