異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第四十話 まだあわてるような時間じゃない

 リタの友達を偵察に出して、俺達は表向きいつもの通りに公演を始める。

 それでもどこか気もそぞろに芸を披露し、お昼時。

 慌てた顔でヴィナさんが駆け込んできた。

 

「大変だ! ファーレン家が出兵した!」

 

 ファーッ!?

 おおお落ち着け、まままままだあわわあわてるような時間じゃない。

 

「まずハヤトくんが落ち着きなよ・・・一体どういう事です?」

「それが・・・」

 

 確認すると、ファーレン家は八つの魔導君主家の一つで、魔導君主筆頭と言われるほど勢力の強い家である。

 誰に聞いても一にファーレン、二にリムジーと言われるほどで、二番手のリムジーがいなかったらゲマイの絶対君主になってた可能性もあるとかないとか。

 ヴィナさんのお兄さんがそのうち婿入りするところだ。

 

 昨日の時点でクリエ・オウンドにあるファーレン家のお屋敷(現代なら大使館、江戸時代なら大名の上屋敷と言う奴だ)に駆け込んで、お兄さんにかくかくしかじかしていたらしい。

 午前中にちょっと顔を出したらお兄さんからの魔導通信があって、ファーレン家の出兵が決まったとのこと。

 こっちへ到着するのに一月くらいかかりそうだと思ったら、術師を総動員して高速移動するから、遅くても一週間くらいでつくんじゃない?と。

 何それチート。ナポレオンが聞いたら涙流して悔しがるだろうなあ。

 閑話休題(それはさておき)

 

「一体何のために?」

「詳しくは話してくれなかったが、よほどのものがクリエ・オウンドの北方にあるらしい。

 手に入れれば"魔導上王(キング・オブ・キングス)"の座も夢ではないとか」

 

 何ですその厨二病なネーミング。

 

「魔導上王はゲマイで稀におかれる独裁的な権力を持つ絶対者じゃ。八人の魔導君主すらこれには従わねばならん。国難か、絶対的な魔力を持つ者以外にはつけない地位じゃの」

 

 老中に対する大老とか、ローマの独裁官みたいなもんか。

 それにつけるレベルの何かって言うと、ヤバい古代の遺跡か遺物ですかねえ・・・。

 というか出兵なんて話聞いて一日二日で出来るもんじゃないでしょ。

 どこぞの米帝様じゃあるまいし。(天丼)

 

「・・・それは確かにそうだな」

「あらかじめ準備していたと見るべきかの」

 

 あーだこーだと言ってる間にテントの垂れ幕をめくって入って来たのはロウブさんだった。

 

「大ごとだぞ。出兵が・・・なんだ、もう知っておったのか?」

「ああ、たった今ヴィナちゃんがね」

「そうか」

 

 さすがのロウブさんが大きく溜息をつく。

 

「まさかリムジー家が大規模に出兵するとはな」

 

 ステイ。ちょっと待ってステイ。

 

 

 

 おおお落ち着け、まままままだあわわあわてるような時間じゃない。

 

「ハヤト殿、ギャグの繰り返しは三回までですぞ」

 

 ギャグじゃねーよ!

 いやしかし、どういう事なんだ?

 リムジーが狙ってるのもデブやファーレンが狙っているものと同じなのか?

 

「そこまでは分からぬな。これを教えてくれた奴、リムジーのいい家の息子だが、創世の八人の秘宝ではないのかなどと言っておったが・・・」

 

 創世の八人。六百年前ゲマイを建国した大魔術師達で、今の魔導君主家の開祖でもある。

 もし本当にそうだとしたら、創世の八人の当人であるダー・シが今になって動くのは変っちゃ変だが。

 

「だな。まあ何らかの理由でファーレンとリムジーだけに伝えられていたとか、何らかの封印がかかっていたとか、色々考えられはするが・・・」

 

 情報が足りないか。

 リタ、友達からは何か?

 

「ううん、他の軍隊・・・沢山の人が出たり、戦ったりしてる様子はないって」

 

 進むペースとか、道を曲がったりとかは?

 

「それもないみたい」

 

 今のところ目的地に向かって一直線って感じかな・・・ともかく、たとえ魔法があるとは言え、この世界には電車も飛行機もない。

 一日1000キロなんて速度は望むべくもなく、当然事態の推移は(比較的)ゆっくりしている。

 ブロイザーで高速移動出来る俺達としては、情報を集めつつ注視するのが・・・

 

「大変だ!」

 

 トラコさんが駆け込んでくる。

 お姉さん、繰り返しのギャグは三回までやで(能面のような顔)。

 

「ええい、ギャグではない! ハイブラウのラーセン家と、トッカウのヴェストリ家が出兵した! 恐らく目的地はクリエ・オウンド北方! クレモント家と同じ場所だ!」

 

 もちろんどちらも魔導君主である。どうなってるんだよおい!?

 

 

 

 魔導君主相争う。

 夕方にはクリエ・オウンド中がこの話で持ちきりだった。

 どこまで本当かは分からないが、既に全ての魔導君主家が出兵して例の地点に向かっているという。

 

「どけどけどけーっ!」

 

 恐らくはどこかの魔導君主家のお偉いさんなのだろう。

 豪華な馬車が大通りを全速力で走ってゆくのがテントの入口からも見えた。

 情報はえーなー、と思ったが、考えてみればここは魔法の世界で魔導の国である。

 地球で言えば、電信が実用化された時代くらいの情報速度はある。

 使えるのは貴族と金持ちだけだが、電信と鉄道くらいの文明程度は維持してるのだ。

 すげーなエベ□ンかよ。マジカルスチームパンクだな!

 

 と、思ったけど古代は普通に大陸全土を覆う魔導通信網と交通網があったんだよな。

 それを思えばむしろアフターアポカリプス世界なのかもしれん。つまりメタルMックスだ。

 はー、古代文明の戦車見つけて、ハンターとして世界を渡り歩きてぇなあ、俺もなー。

 などと現実逃避してみても事態が好転するわけではなく。

 

 そして数日後。

 クリエ・オウンドの北100kmほど、平原にぽっこりともりあがる、高さ数百メートルの丘。ミュケーナイの丘と呼ばれるそこは頂上に謎の古代遺跡が存在するものの、正体不明で放置されている。

 そこを囲んで、八つの魔導君主家の軍勢が陣を張った。

 各軍の総勢は約十二万。どこの軍も迂闊には手を出せない。

 下手に先手をとれば袋叩きになり、かと言って出遅れては意味がない。

 そもそも魔導君主同士がガチで戦争したら、ゲマイという国自体が崩壊しかねない。

 恐らくは今あちこちで見えない外交交渉が行われているのだろうとは師匠の言。

 

 のんきに噂していたクリエ・オウンドの人達も、今や魔導君主同士の内戦でゲマイが崩壊してしまうのではないかと不安げに囁きあっている。

 俺達の公演に来る客もめっきり減った。

 うちはめっきり減ったくらいで済むが、零細な一座はもう生きていけるかどうかの瀬戸際になってる。

 あちこちの店も客が減っており、道ばたの物乞いも生活が苦しくなっていた。

 

「俺がデモゴディで暴れて、あの人達解散させるのはだめですかね」

 

 ぽつりと呟いた言葉に師匠が首を振る。

 

「危ういと言うたじゃろうが。

 あれだけの軍勢、恐らくはどこも精鋭を抽出しておる。

 クレモントだけでも危ういのに、八君主家の総攻撃を食らったら、お主とて生還はおぼつかぬじゃろうよ。

 最初から皆殺しのつもりで行くならともかくな」

 

 くそっ!

 布を敷いた地面に拳を打ち付ける。

 事態が急転したのは次の日だった。

 




>落ち着けまだ慌てるような時間じゃない
SLAM DUNKの仙道。

>エベロン
D&Dの背景世界の一つ。魔法電信が整備され魔法鉄道が走り、アンドロイドや埋め込みマジックアイテムがあって、暗黒メガコーポが幅を利かせる、魔法スチームパンク世界。むしろ魔法サイバーパンク世界。

>メタルマックス
文明崩壊後の世界で戦車乗り回してヒャッハーするゲーム。大好き。
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