異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第六話 脱出

 俺達は脇目もふらずに大広間を飛び出した。

 震動が足元から伝わってくる。

 血だまりに横たわったアードップが俺達を無言で見送っていた。

 

 地面の震動が止まらない。

 ペトロワ師匠をアルテが、リタをガイガーさんが抱き上げて走る。

 

 豪華な装飾の施された広い廊下、赤絨毯の上を全力疾走すると正門が見えてくる。

 入るときに開けっぱなしにしていた門扉がガタガタと震えていた。

 

「あー、やっぱり何か仕掛けがあったか」

 

 え、アーベルさん何かしてたの?

 

「扉が勝手に閉まったりすることは良くあるから、ま、念のためにな」

 

 ウィンクするアーベルさんから門扉の方に視線を移すと、下の方に扉止めが噛ませてある。

 いつの間に。

 

「まあプロの仕事ってのは・・・」

「止まれ!」

「えっ?」

 

 そのまま走り抜けようとしたところでペトロワ師匠から待ったがかかる。

 得意げな顔のまま走っていたアーベルさんが、開いた扉を通り抜けようとしたところで弾き返されて、後ろに転がった。

 

「何だ? 魔法か!?」

「結界じゃ! 恐らく地脈を刺激すると同時にこの城から人を逃がさないようになっとるんじゃ!」

 

 性格悪いな!?

 

「カオル!」

「はいっ!」

 

 打てば響く、というようにカオルくんが右手の魔剣の切っ先を門に向ける。

 

「サンダースウォード!」

 

 気合いと共に雷電がほとばしり、見えない結界を浮かび上がらせる。

 次の瞬間、それは元からなかったかのように消滅し、稲妻が空間を突き抜けた。

 

「行くぞ!」

 

 師匠の号令一下、俺達はまた走り出した。

 

 

 

 ジャングルの中、三日月の乏しい月明かりの下で俺達は走る。

 震動はいよいよ強くなり、もう地震と言っていいレベルだ。震度四か五はあるぞこれ!

 そうして遮二無二走っていると、いきなり地面が裂けた。

 

「うわっ!?」

「"浮遊(レビテイト)"!」

 

 裂け目に落ちそうになったオブライアンさんが、ペトロワ師匠の呪文でふわりと宙に浮かぶ。

 裂け目のこちら側に取り残されたカオルくんとラファエルさん、ガイガーさんは軽々とそれを飛び越し、俺も咄嗟にミストヴォルグのプロペラを出して飛び越えた。

 というかラファエルさんもドワーフなのに運動能力凄いな!

 

 気を取り直して走り続ける。

 そこかしこで吹き出す水蒸気。そして間欠泉のような熱湯。

 硫黄の匂いが周囲に立ちこめ始めている。

 

 というかこの腐った卵の匂いというか、洗濯してないおっさんの靴下みたいなのが硫黄の匂いなのね! 生まれて初めて知ったよ! こんな形で知りとうなかった!

 

 噴出する水蒸気のせいで湿度は更に上がり、温度も更に上がる。

 最早全員汗みずくで、シャツやズボンが汗で体に張り付いている。

 それでもひたすら俺達は脚を動かして前に進む。

 外輪山のふち、入って来た洞窟の入り口にたどり着いた時、俺はもう息も絶え絶えだった。

 

「あそこだ! もう少し頑張れ!」

 

 アーベルさんの声。ああ、刻が見える・・・

 

「ハヤトくん? ちょっと、ハヤトくん大丈夫!?」

「ハヤト大丈夫? 肩貸そうか?」

「いや、アルテはペトロワさんを背負ってるんだから僕が」

 

 さ、流石に女の子に背負われるのは男として・・・。なけなしの男のプライドを奮い起こそうとした瞬間、一際大きい揺れが来た。

 震度六・・・下手すれば七以上。

 立ってられない程の揺れに、オブライアンさんが転んで倒れる。

 俺とアルテも危なかったが、ガイガーさんとカオルくんに支えて貰って何とか耐えた。

 というか、ガイガーさんやアーベルさんならともかく、何でこの揺れの中で平然と立ってられるの。やだこの子怖い。

 なんてアホな事を考えていた俺は次の瞬間、絶句した。

 

「あああああーっっ!?」

 

 アルテの絶叫が響く。

 外輪山のふちが大きく崩れ、俺達の目の前で崩落する。

 巨大な土の津波はあっという間に岩面の洞窟を覆い隠し、ただの盛り土に変えてしまった。

 

「・・・」

 

 ぺたり、とアルテがへたりこんだ。

 カオルくんや座長、アーベルさん、ガイガーさんですら血の気をなくしている。

 当然だ。周囲の外輪山はほぼ垂直の岩の壁が200mほどもそびえ、崩れたところでも100mくらいはある。おまけに崩れたばかりのところだから、上ろうにもまたすぐ崩れてしまうだろう。

 

「・・・」

 

 全員の視線がペトロワ師匠に集まった。

 さすがの師匠も一瞬考え込んだが、すぐに顔を上げる。

 

「そうさな・・・」

「師匠! 全員を飛ばすことは出来ないにしろ浮かせることは出来ませんか? 軽くするだけでもいい!」

「!」

 

 師匠に集まっていた視線が、割り込んだ俺に集中する。

 

「考えがあるんじゃな?」

「成功するかどうかはわかりませんけど・・・」

「どっちみちわしの術だけでは分が悪い。やってみい」

 

 ちらりとシルヴィア座長を見るが、あっさり頷かれてしまった。

 

「ばあさんが承知したならそれでいいよ。いいからさっさとやりな!」

「は、はい!」

 

 他のみんなも大体そんな顔で、不満を浮かべている人はいない。

 オブライアンさんだけは好奇心に目を輝かせていたが、ほんとこの人平常運転だな!

 

「~~~」

 

 地響きの中、ペトロワ師匠の呪文の詠唱が響く。

 同時に俺も精神集中する。イメージする。必要なのは飛行能力と巨大なペイロード。

 ロボットアニメで輸送用のロボットというのはほとんどない。輸送機などが出てくることは当然あるが大体は補助用のメカで、そうしたものを再現するのは主役のロボやメインの登場人物の能力をコピーするのに比べて難しい。だが別の用途から転用できるロボならある・・・!

 

「小僧! 術はかけ終わったぞ!」

「了解! みんな集まって!」

 

 俺の周囲にみんなが集まると同時に、俺の体がふわりと浮く。

 両手を広げ、足を揃えてまっすぐ伸ばす。

 十字架のような形になった俺は腹を下にしてみんなの頭の上で腹ばいになる。そして――!

 

「ハヤトのおなかが開いたーっ!?」

 

 アンドロイドか何かのようにぱかっと観音開きに開く俺の腹。しかも着てる服ごとだ。

 

「うわーっ!?」

「吸い込まれるーっ!」

 

 そのまま俺の腹に吸い込まれる一座のみんな。

 九人と十匹を吸い込むと、俺の腹がバタンと閉じる。本来ならここで重量がかかるはずだが、師匠が術をかけただけあってほぼ重さを感じない。いける!

 

「ブロイザー、ゴーッ!」

 

 気合いと共に、弾けるように俺の体が前に飛び出す。手を広げたポーズのまま上昇した俺は外輪山の崩れた縁を越え、火口内部から飛び出した。

 「宙爆ロボ・Xブロイザー」。

 外宇宙の侵略者・ゲイラー魔王の操る爆撃ロボに対抗すべく作られた宙爆ロボ・Xブロイザーが地球を守るため、爆弾を撃ちあったり時々ロボットに変形して殴り合うアニメである。

 

 訳がわからんって? 安心しろ、俺もそう思う。

 まあともかく重要なのは、こいつが爆撃機形態とロボット形態に変形できること。

 そして爆撃機だけあって腹の中に膨大な量の爆弾を積み込めることである。

 今回俺はそのペイロードに一座のみんなを詰め込むことを思いついたのだ。

 

 70年代のアニメだけあって、どう考えても本体の体積より多いだろ!という量の爆弾を腹の中にため込めるXブロイザー。だったら人間サイズの俺が人間十人くらいを腹に詰め込んでも問題ない! 大きさという概念を捨てるんだ!

 

『うわあ、すごいすごい!』

 

 腹の中でも外が見えるのか、リタのはしゃぐ声がする。そう言えばこの作品のヒロインの名前も・・・

 そこまで考えたところで後ろで凄い音がした。

 

「!」

 

 騒いでいた俺の腹の中も静まりかえる。

 暗い夜の闇の中、浮かび上がる魔王山のシルエット。

 不吉にそびえ立つ黒い山が、今二千年ぶりに火を吐いていた。




今回の元ネタはグロくドギツい展開の桜多マジンガーで一部に有名な桜多吾作原作の「グロイザーX」(および永井豪の「Xボンバー」)ですが、そのヒロインの名前が「リタ」です。
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