異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「エグザ・ドリル・ブレイカー!」
「エグザ・ドリル・ブレイカーッ!」
「エグザ・ドリル・ブレイカーッッッ!」
あの後何十枚もあるシャッターとか、エレベーターの扉とか天井とか全部ドリルでぶち破るハメになった。頑丈すぎるんだよ古代文明時代の素材!
何しろロボ二機分の必殺攻撃だから魔力消費も尋常でなく、とっておきの
「これがホントのかけつけ三杯なのですぞ」
「うまい!」
うまくねえよ!
結局脱出に三十分近くかかった。
何しろ施設全部電源が落ちているもんだから、扉は全部ブチ抜かないと行けないし、各所の安全シャッターが全部降りている。悔しいが奴のほうが一枚上手だった。
「うあ・・・」
「くそっ・・・」
地上に出た俺達の見たものは、惨憺たる死屍累々。
無数の死体が並ぶ中に、虚脱した生き残りの兵士達。
十人に九人が死ぬ、逆カンビュセスの籤(くじ)だった。
巨人たちの足跡が南、つまりクリエ・オウンドの方に続いている。
アーベルさんが巨大な足跡を睨みつける。
「歩きじゃねえ、走った足跡だな。それもかなり高速でだ」
あいつはクリエ・オウンドへ行くと言っていた。
何をしようとしているのかわかるか、アルテ?
「・・・可能性は二つ。クリエ・オウンドに何か強力な魔道具か術式がある可能性。
あるいは・・・」
あるいは?
「生贄よ。ここでやったように百万人の市民の命を捧げる巨大な魔術儀式。
あの巨人は戦闘兵器だけど巨大な容積を持つ魔導機だから、魔術的な回路や魔法陣を形成するのにも使えるの」
奴の目的は天へ昇ること・・・神になることだ。
ワイデストの荒野で起こったような、あるいはもっと大規模なそれをやるつもりなんだろう。
急がないとまずそうだな。ともかく急いで後を・・・
「待った、ハヤトくん。私を降ろしてくれ」
どうしたんです、アルコンさん?
「生き残っているクレモントの兵の中に知り合いがいた。なんとか話を聞き出してみる。
何か聞き出せたら念話で伝えるから、先に行ってくれ」
わかりました。
チェーンジ・ダンファイター!
俺はアルコンさんを外に出し、最高速度マッハ20の全力を出して巨人たちを追う。
マッハ20、つまり秒速七キロ弱である。
100kmの距離も、五分どころか数十秒であっという間だ。
むしろ加速と減速の方が時間がかかった。
巨人たちを見つけたのはクリエ・オウンドから20キロ弱のところ。
数百体の巨人たちが全力疾走しているのが上空から見える。
まっすぐにクリエ・オウンド目指している。
本当に生贄の儀式を行うつもりかどうかはわからないが、ろくなもんじゃあるまい。
少なくとも、ダー・シは無辜の人々を巻き込むことに何ら躊躇がない!
だがさすがにあのサイズ、あの内包魔力量からすると、デモゴディ単騎で戦える相手じゃない。
一体や二体、あるいは十体くらいまでならともかく、百体も相手に出来るような無限の魔力を俺は持っていない。
せめてそれを可能にするような器があれば――!
その時、クリエ・オウンドを見返して見つけた「それ」に、俺は本気で天啓ってやつを感じた。
クリエ・オウンドが不安のざわめきに包まれていた。
20kmの距離でも、100mの巨体は否応なしによく見える。
「魔導君主家のどこかが繰り出してきた魔導兵器か!?」
「おい、あれ来たらここでもやばいんじゃないのか」
「クリエ・オウンドには古代の魔導結界が・・・」
「あっちだって間違いなく古代の魔導兵器だろ!」
百万の人口を持つクリエ・オウンド。
今やそのほぼ全てで混乱が巻き起こっていた。
混乱がパニックになり、パニックが壊乱になり、惨劇になるその直前。
ガラスのチャイムを鳴らすような、涼やかな音が首都全てに響いた。
『市民の皆様。魔導宮グラン・ゾントからお知らせします。
現在クリエ・オウンドは謎の魔導兵器の襲撃を受けております。
魔導君主家がいない今、クリエ・オウンド市長アルス・ポーンの権限により、グラン・ゾントを用いてこれを撃退します』
それを聞いた市民の反応は、一様に戸惑いだった。
「グラン・ゾントを使う?」
「あれ魔導兵器だったのか?」
「でかい顔みたいに見えるの、錯覚じゃなかったんだな」
アナウンスが続く。
『つきましては市民の皆様に力をお貸し頂きたいのです。
グラン・ゾントには市民の皆様の魔力を吸収する力があります。
一言「許可する」と言って下さい。
命が危険なほどには徴収しません。
「許可しない」と言えば徴収は止まります。
ですが、是非ご協力下さい。あの魔導兵器群は大変危険です。
どうか、どうか市民の皆様のご協力をお願いします・・・』
アナウンスを終わらせ、市長さんがマイクを置いて振り向く。
「これでよろしいでしょうか? マスター・・・」
「ここではペトロワで通っておるからの。そう呼んでくれ」
「かしこまりました、マスター・ペトロワ」
「済まなんだの、いきなり押しかけて」
「いえいえ、あの巨人たちにマスター・ペトロワのお言葉、加えて私も知らなかった機能を見せつけられては、信じるほかありませんよ」
そう、俺のアイデアを師匠に話した結果、師匠はこの魔導宮グラン・ゾントに俺達を連れて来て、知り合いであるらしい市長さんに協力を求めたのである。
しかしまさか、魔導宮に「周囲の人々の魔力を集める」なんて機能があるとは。現在アルテさんが別室で操作中である。
「ここは本来巨大な魔道具工房じゃからの。
周囲の人間の魔力を吸収して魔道具を作る魔力を集めるための機能じゃ。
中の者達の避難は終わったか?」
「先ほど、滞りなく」
視線が俺に集まる。
「これでいいのかの?」
ええ、魔力さえ集まれば・・・でも本当に集まりますか?
こう言っちゃ何だけど、正直怪しい公共放送みたいな感じで非常にうさんくさい。
「馬鹿者っ!」
あいたっ!
杖で殴られた頭を押さえる俺。
市長さんは苦笑している。
「まあそれは否定しないけどね。けど私は・・・」
それを遮ったのは、どこからか伝わってくるアルテの声。
『来た! 魔力来たわよ! 推定で市民の20%・・・30・・・いや、もう半分以上こっちに魔力を託してくれてる!』
よっしゃあ!
このグラン・ゾントには魔力収集機能と、周囲に音声を届ける機能がある。
封印されていたそれらを無造作に解除して、使えるようにしたのがアルテさんだ。
本人が言ったように、市長さんが俺達の言葉を信じてくれたのはそれもあった。
「やれるな、小僧?」
師匠の真剣な目が俺を貫く。
俺が言い出した事ですからね。やれなかったらかっこわるいでしょ。
「よし、ではわしらも撤収する。・・・死ぬなよ、二人とも」
わかってますよ。
『それよりアーナの方、お願いね』
「任せておけ」
力強く頷くと、師匠は市長さんと一緒に部屋から消えた。
さあて。いっちょブワァ~ッと行きますか!
「許可する!」
そう叫んだ瞬間から、体内から何かが流れ出す感覚を感じる。
これが魔力という奴か、と術師でない庶民の男は奇妙な感慨を覚えていた。
「だがグラン・ゾントに魔力を集めたからって・・・」
魔導砲でも発射するのか、と魔導宮を見上げた男が絶句する。
周囲の者達もまた。
光に包まれて空中に浮かび上がる魔導宮グラン・ゾント。
500mあるそれが宙に浮くだけでも驚きだが、次の瞬間その表面に亀裂が走った。
複雑な組細工のようにそのシルエットが変形・分解する。
足が生え、側面が分解・折りたたまれて腕に。
表面がずれて甲冑のような装甲板に。
グラン・ゾント本体に似た頭部が頭頂部に出現する。
『光出でよ、汝グラン・ゾント!』
まだ若い、少年とすら言えそうな声で変形した魔導宮・・・魔導戦士グラン・ゾントは咆哮した。
やっちまったぜぇぇぇぇぇ!
前作でノリで出したこの建築物だが、こんな作品書いてるからにはやらざるを得んよなぁぁぁぁ!?
当然ながら元ネタは魔動王(マドーキング)グランゾート。
>カンビュセスの籤(くじ)
藤子不二雄F先生の同名の作品。
古代ペルシアの暴君カンビュセス二世の軍隊が飢えたとき、10人に1人をくじ引きで殺して食べたという話。
元ネタがあるのかどうかは確認出来なかった。
なおカンビュセス二世の次が、ペルシャ戦争でギリシャに攻め込んだダレイオス一世=映画「300」で謎の黒人になってた人である。
>ダンファイター
ダイターン3の飛行形態ダイファイター。
大気圏でマッハ20、宇宙空間なら亜光速という、マクロスのバルキリーあたりに比べても破格の飛行速度を誇る。
ちなみに最新式のVF-31で大気圏中がマッハ5.5。グレートマジンガーが5。グレンダイザーのスペイザーが9。
ロボットアニメ全体でもこれ以上となると、光速普通に出せるトップシリーズくらいではなかろうか。
>さあて。いっちょブワァ~ッと行きますか!
クレージーキャッツ植木等さんの名セリフ。
世代の人にとっては吉岡平の「無責任男タイラー」シリーズでおなじみかもしれない。