異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
ワタシの名前はダー・シ・シャディー・クレモント。
ゲマイ魔導共和国を建国した「創世の八人」の一人にして、クレモント家魔導君主。800年を生きる不老不死の大魔道師。
それがワタシ。ダー・シ・シャディー・クレモントとしてのワタシ。
でもそれは必要だから作った立場。必要だから作った
本当のワタシは別にある。作られた人格の奥にある、今ではもう誰も知らない
真なる魔術師クリス。
《創造の八神》の一柱、《祭壇》様の百一人の弟子の一人にして、神に昇った《百神》の兄弟。
それがワタシ。もう誰も覚えていないワタシ。
・・・イエ、それは正確ではないワネ。
この世にたった一人だけ、それを知っている人間がいる。
本当のワタシの事を覚えてくれている人間がいる。
真なる魔術師の長姉、《祭壇》の一番弟子、セレスソレパル。
今はどこにいるか分からないし、ワタシがこんなところにいるなんて知りもないだろうけど。
会いたい。
あの人に会いたい。
でもそれと同じくらい、友に会いたい。
世界の壁を隔てた、今はもうこの地上にいない友たちに。
ワタシは一度この世界から追放された。
それ自体は召喚実験の失敗――自業自得だから誰を恨む気もないし、筋合いでもない。
ただ問題は、ワタシがいなかった間にみんながいなくなってしまった事。
〈師〉も、兄弟たちも、〈師〉の兄弟たちも、みんなみんないなくなってしまった。
兄弟の子供達、ワタシから見ればかわいい甥や姪たちも。その更に子供達ですら。
もちろん、色々試してはみた。
会えないにしろ、話は出来ないかと。
例外のたった一人を除けば、神も真なる魔術師も消えたこの世界で、ワタシは最も優れた術師だ。そして次元の壁を越える事にかけては兄弟の中でも一、二を争えるだけの力があった。
念話の術式。遠見の魔術。招霊の儀式。
幽体離脱や空間転移、未完成の次元門の術すら試してみた。
長い事様々な試行錯誤を繰り返し、わかったのは世界の壁が果てしなく分厚いと言う事だった。
いくら努力と研鑽を重ねても、私個人では足りない。
ならどうするか?
『他から持って来る』だ。
まず思いついたのは「あの人」が作り上げた、古代の真なる魔法文明。
その文明が遺した様々な遺物を駆使してみたが、さすがに世界の壁を破るようなものはそう簡単には見つからなかった。
トリッチのレミンジャー公爵家――兄弟たちの子孫だ――が持っているらしい天界との交信に使える杖を狙ってはみたものの、現地の下部組織が暴走した上に、彼らの子孫でなければ使えないしばりがあるらしく、これは没になった。
まあこの世界の外の事なんて、生きていく分には不要な知識だし、力を入れなかったのはしょうがない。それに世界の外には危険なものが沢山いる。
お師匠様や兄弟たちはそのためにこそ、この世界から去っていったのでしょうしね。
次に考えたのはパワーソース、つまり膨大な魔力の供給源を探す事だった。
手っ取り早いのは生贄。大出力を求めるなら地脈。
古代魔法文明時代にはダンジョン・コアも利用されていたが、これは出力が一定以上にならないので諦めた。
ニマグ・イリルの千年ダンジョンもしばらく調査したが、これはワタシでも攻略に時間がかかりすぎた。可能性はあったかもしれないが、取りあえず保留にするしかない。
とはいえ目的と手段がハッキリしているだけに、この研究はうまくいった。
だがこれも限界があった。
大出力を活かせるだけの術式、もっと言えば術式を運用するデバイスが不足していたのだ。
ワイデストのカンサ族――古代文明の知識と魔術を受け継いでいた魔術師の一族――の遺跡は奇跡的にこれらを両立させる素晴らしい遺跡だったが、タイミングの問題で失敗した。まあ割と自業自得なんだけど。
まさかあの鉄人形・・・「ろぼっと」の子があそこまでの力を見せるとはね。
恐らくは一緒に乗っていたカオルちゃん・・・もしくはアルテちゃんか。
結構長い事観察したけど、ハヤトくんとあの魔女、そしてこの娘だけは底が見えなかった。
単なる魔力操作の《加護》かと思ったら、高度な知識や術式を披露してくれるしねえ?
それにしてもあの娘、見てると何か懐かしいものを覚えるのだけど・・・気のせいかしら?
ともかくそれなりの組織を作ってはいたけど、千年ダンジョンの攻略を断念した後、それだけでは足りないと痛感した。とにかくマンパワーが足りない。
そこで目をつけたのがゲマイだった。
現存する最古の文明であり、古代魔法文明の遺産を最も強く受け継ぐ国。当時は無数の小国に分裂し、群雄割拠状態だった。
いわゆる五大国のうち東のディテクと西のライタイムは当時でも強大で安定した国家を形成していたし、極東のアグナムは魔法的にはゲマイに勝るとも劣らない環境があったが、閉鎖的かつ皇帝と氏族の支配が強かった。
北のダルクは論外。馬の民は戦には強いが研究や調査にはとことん向かない。
ともかくゲマイだ。
私ひとりでゲマイ全てを支配すれば使えるリソースも膨大だが、研究のための時間が割かれてしまうし、五大国の一つが不老不死の王を頂いている、などとなったら余計な疑いを内外から持たれかねない。
研究と探索のためのマンパワーをひねりだすならゲマイの十分の一程度でいい。
使えそうな術師を七人集め、ゲマイを統一する。
リーダー格はあくまでロマリ・ファーレンとエデー・リムジー。
ワタシは統一の偉業を成し遂げたその他の一人程度。
国を安定させ、ワタシは手に入れた1/10を使って各地の遺跡や術式の探索を始めた。
オリジナル冒険者族というアイデアが閃いたのは、それから少し経ってからだった。
人の力が強いこの世界で、考えてみれば彼らほど強力な個人はいない。
時にはいにしえの真なる魔術師も凌駕するだろう。
1kmの大魔獣を真っ二つにするなんて、
古代魔法文明の時代の遺物でも、それだけの事を可能にするものはほとんどない。
あくまで個人技能だから応用は利かないが、早いところ見つけてうまく育ててやればもしくは。
とは言え言うは易く行うは難し。
連中が現れるのがそもそも数十年に一度程度の話だし、その上でワタシが望むような《加護》を持っているかどうかはギャンブルになる。
「だったら彼らを呼び込む頻度を上げればいい」と思いついたのが百年ほど経ってから。
既に完成した術式に外から手を加える事は難しく、結構時間を要した。
ついでに予算も。
魔導君主家の資産でもきつくなってきていたのだから大概である。
そこで戦力を欲する各地の王に正体を隠して接近し、オリジナル冒険者族召喚実験への資金援助を持ちかけた。
これがもう笑っちゃうほどに入れ食いで、人間の欲は限りないのだと実感する。
まあ望み通りの結果を得られた王様は一人もいなかったけどね?
そしてそんな積み重ねの中、大陸南東部の小国の一つで、ワタシは初めての複数同時召喚に成功し、大事に丁寧に育てた彼らは望み通りに素質を開花させた。
こちらの敵に回ってしまったのは残念だけど、それでも言うことを聞かせる手段はいくらでもある。
覚悟しなさい、ハヤトちゃん。
ワタシのものにしてアゲル。