異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
――圧倒的だった。
性別不詳の、白い天使めいた「それ」。
最初の一撃で、グラン・ゾントの右腕が飛んだ。
二撃目で左足が。
天使の掲げた右手。
白い光線が無造作に放たれるたびにグラン・ゾントの体が欠損する。
残存魔力では到底防ぎきれないほどの威力。
ヴィラン・コアなんて埒外の魔力ソースを持つ俺でさえ、800mの巨体を動かすのはかなりきつい。
防御魔法の発動など不可能。
更に、今までこの体を支えていたクリエ・オウンド市民からの魔力ももう限界。
彼らのほとんどは術師でも何でもない一般人。
魔力を拠出するにも限界がある。
魔力は感情の力だ。
高ぶれば増幅され、落ち込めば減衰する。
腕と足を吹っ飛ばされ、大地に這いつくばった俺に、それでも流れ込む魔力。
だがその魔力には深い絶望と諦めの色がある。
みるみる細っていく魔力の流れは、もはやグラン・ゾントを維持する事すら難しい。
次の瞬間、衝撃がグラン・ゾントの胴体を貫き、魔働機士は大破した。
クリエ・オウンド全域で悲鳴が上がった。
それまでに魔力を拠出して疲労困憊していた事もあって、へたり込むものも多い。
「・・・!」
無論、それは他の市民同様に魔力を拠出していたハスキー一座の面々も同じだ。
「嘘だろオイ」
呆然と呟くのはアーベル。
ロンドでハヤトと出会って一年、彼が「あれ」を出して負けたのは見た事がない。
それだけに一座の面々のショックは計り知れない。
「ハヤトくん・・・」
「お兄ちゃん」
「ばあさん、あれ何とかなんないのかい? その辺の遺跡とかアーティファクトとかかっぱらって来てさ!」
シルヴィアの無茶ぶりにペトロワも悲鳴を上げる。
「簡単に言うでない! リオランテの時に使ったやつは、既に術式が発動して、異界との経路が形成されてたから出来たんじゃ! 今から用意するには最低数日はかかるわい!
術にしてもこの身一つでは限度がある!」
かつての力を使えたとしてもあれだけの相手、準備なしに対抗する事は出来ない。
どれほどのリソースをつぎ込んだのか、あれならば原初の魔獣とでも戦えるだろう。
「あのジジイ、どこをほっつき歩いておるんじゃ・・・」
せめて相方がいればと思うが、気ままに世界を旅して歩く彼は神出鬼没であり、ペトロワの力をもってしても行方がつかめなかった。
必死で打開策を考える魔女を、一座の面々が張り詰めた表情で見つめる。
「・・・そうか! あれじゃ、あれがあった!」
「ばあさん、それって・・・」
「おい! 何か出たぞ!」
ヴィナの声に、全員が振り向いた。
くそっ、やってくれる! 大丈夫かアルテ!
「なんとか!」
デモゴディの姿となって、大破したグラン・ゾントを飛び出す。
コックピットの後部座席にはアルテの姿。
《ロボットアニメの加護》ならではのご都合主義で同時に脱出したのだ。
何で別々の場所にいたのに一緒に脱出出来たのかとか、そーゆー事は聞かないで欲しい!
「どうする・・・逃げる?」
「それ」と空中で対峙する俺達。
身長は120mほどか。丁度さっきまでのサイズ差が逆転した感じだ。
白き破滅の天使――インド神話になぞらえて「カルキ」とでも呼ぼうか――は俺達を見すえ、アルカイックスマイルを浮かべるのみ。
とは言え逃がしてくれるとは思えないなあ。
だがアルテだけなら、ひょっとして転移の魔法とか使えない?
そうでなくても師匠が・・・
「無理ね」
何とかアルテだけでも逃がそうと考えた俺の思考を、本人がざっくりと切り捨てる。
「転移封じの結界、あったでしょ?
あいつが出て来た瞬間から、それが物凄い強度で展開されてる。
どうあっても私たちを逃すつもりはないみたい」
恨まれたもんだな。俺達そんなひどいことしたっけ?
「したんじゃない?」
肩をすくめる俺に、くすくすと笑うアルテ。
せめてこいつだけは逃がしたかったんだがなー。
「あ、私だけでも逃がそうとか、そういう事考えてる」
ぷにぷにと俺の頬をつつくアルテさん。
どうして俺はこんなサトラレ体質になっちまったのだろうなあ。
少なくとも地球ではここまでひどくはなかったのだが。
「こっちの世界に来て素質が開花したんじゃない?」
嫌な素質だ。何の役に立つんだか。
「使いこなせるようになれば、お芝居とかで凄く便利だと思うけどね」
前にも誰かに言われたなあ、それ。
しかし転移が無理でも地面に潜って、その隙にアルテだけ脱出ポッドで放り出すとかそういうのは・・・
「だからそれはなし」
頬に当てられた指に力がこもる。
「こうなったら生きるも死ぬも一緒だよ。
先に言っておくけど、友情の証だなんておとぼけはなしね。
これは愛情の賜物だから」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そうだな。前にカオルくんにそれやってグーで殴られたっけ。
今なら殴られてもしょうがない事を言ったのはわかる。
「そーよ。反省しなさい、反省」
くすくす笑って、俺の頬をつつくのを再開するアルテ。
じゃあ俺も言うけど、アルテの事を愛してる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ」
いや、愛してるかどうかは分からないけど、アルテの事が好きだ。
これは間違いなく言える。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
沈黙が続く。
口を開いたのはアルテだった。
「そ、それほんと?」
顔が真っ赤だ。多分俺も。
ともかく、冗談で、それもこんな時に言えるか馬鹿。
「じゃ、じゃあ、私たちずっと一緒だよ」
ああ。
どれだけ長くなるかは分からないが、死が二人を分かつまで・・・いや、死んでも一緒だ、アルテ。
「うん・・・うん!」
力一杯頷いてるのが分かる。
勿体ないなあ、今後ろを振り返ればアルテの最高の笑顔が拝めるだろうに。
とは言え今は戦場にいるわけで。
これまでずっと待ってくれていた、存外義理がたい目の前の天使を見上げる。
『もうそろそろいいかしら? ううん、純情ね。尊いわぁ』
天使の口を介しているからか、いつもと違うダー・シの声。
言い返そうとして、後ろからアルテが囁いた。
(何とか時間を稼いで。手を打ってみる)
と、言われてもなあ。
これだけ待っててくれたんだ、そうそう引き延ばしもできまい。
『そう言う事ね。ここからはお仕置き・・・いえ、処刑の時間よ。
神の力に抗ってみせてちょうだい』
白き天使が、そこだけは本物の天使のようににっこりと微笑んだ。
ヴィナが戦場を注視していたのは、彼女が視覚強化の魔術を使えるからです。(彼女の家は強化魔術が得意な家系)