異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第五十七話 白き破滅の天使

 ――圧倒的だった。

 性別不詳の、白い天使めいた「それ」。

 

 最初の一撃で、グラン・ゾントの右腕が飛んだ。

 二撃目で左足が。

 天使の掲げた右手。

 白い光線が無造作に放たれるたびにグラン・ゾントの体が欠損する。

 残存魔力では到底防ぎきれないほどの威力。

 ヴィラン・コアなんて埒外の魔力ソースを持つ俺でさえ、800mの巨体を動かすのはかなりきつい。

 防御魔法の発動など不可能。

 更に、今までこの体を支えていたクリエ・オウンド市民からの魔力ももう限界。

 彼らのほとんどは術師でも何でもない一般人。

 魔力を拠出するにも限界がある。

 

 魔力は感情の力だ。

 高ぶれば増幅され、落ち込めば減衰する。

 腕と足を吹っ飛ばされ、大地に這いつくばった俺に、それでも流れ込む魔力。

 だがその魔力には深い絶望と諦めの色がある。

 みるみる細っていく魔力の流れは、もはやグラン・ゾントを維持する事すら難しい。

 次の瞬間、衝撃がグラン・ゾントの胴体を貫き、魔働機士は大破した。

 

 

 

 クリエ・オウンド全域で悲鳴が上がった。

 それまでに魔力を拠出して疲労困憊していた事もあって、へたり込むものも多い。

 

「・・・!」

 

 無論、それは他の市民同様に魔力を拠出していたハスキー一座の面々も同じだ。

 

「嘘だろオイ」

 

 呆然と呟くのはアーベル。

 ロンドでハヤトと出会って一年、彼が「あれ」を出して負けたのは見た事がない。

 それだけに一座の面々のショックは計り知れない。

 

「ハヤトくん・・・」

「お兄ちゃん」

「ばあさん、あれ何とかなんないのかい? その辺の遺跡とかアーティファクトとかかっぱらって来てさ!」

 

 シルヴィアの無茶ぶりにペトロワも悲鳴を上げる。

 

「簡単に言うでない! リオランテの時に使ったやつは、既に術式が発動して、異界との経路が形成されてたから出来たんじゃ! 今から用意するには最低数日はかかるわい!

 術にしてもこの身一つでは限度がある!」

 

 かつての力を使えたとしてもあれだけの相手、準備なしに対抗する事は出来ない。

 どれほどのリソースをつぎ込んだのか、あれならば原初の魔獣とでも戦えるだろう。

 

「あのジジイ、どこをほっつき歩いておるんじゃ・・・」

 

 せめて相方がいればと思うが、気ままに世界を旅して歩く彼は神出鬼没であり、ペトロワの力をもってしても行方がつかめなかった。

 必死で打開策を考える魔女を、一座の面々が張り詰めた表情で見つめる。

 

「・・・そうか! あれじゃ、あれがあった!」

「ばあさん、それって・・・」

「おい! 何か出たぞ!」

 

 

 ヴィナの声に、全員が振り向いた。

 

 

 

 くそっ、やってくれる! 大丈夫かアルテ!

 

「なんとか!」

 

 デモゴディの姿となって、大破したグラン・ゾントを飛び出す。

 コックピットの後部座席にはアルテの姿。

 《ロボットアニメの加護》ならではのご都合主義で同時に脱出したのだ。

 何で別々の場所にいたのに一緒に脱出出来たのかとか、そーゆー事は聞かないで欲しい!

 

「どうする・・・逃げる?」

 

 「それ」と空中で対峙する俺達。

 身長は120mほどか。丁度さっきまでのサイズ差が逆転した感じだ。

 白き破滅の天使――インド神話になぞらえて「カルキ」とでも呼ぼうか――は俺達を見すえ、アルカイックスマイルを浮かべるのみ。

 とは言え逃がしてくれるとは思えないなあ。

 だがアルテだけなら、ひょっとして転移の魔法とか使えない?

 そうでなくても師匠が・・・

 

「無理ね」

 

 何とかアルテだけでも逃がそうと考えた俺の思考を、本人がざっくりと切り捨てる。

 

「転移封じの結界、あったでしょ?

 あいつが出て来た瞬間から、それが物凄い強度で展開されてる。

 どうあっても私たちを逃すつもりはないみたい」

 

 恨まれたもんだな。俺達そんなひどいことしたっけ?

 

「したんじゃない?」

 

 肩をすくめる俺に、くすくすと笑うアルテ。

 せめてこいつだけは逃がしたかったんだがなー。

 

「あ、私だけでも逃がそうとか、そういう事考えてる」

 

 ぷにぷにと俺の頬をつつくアルテさん。

 どうして俺はこんなサトラレ体質になっちまったのだろうなあ。

 少なくとも地球ではここまでひどくはなかったのだが。

 

「こっちの世界に来て素質が開花したんじゃない?」

 

 嫌な素質だ。何の役に立つんだか。

 

「使いこなせるようになれば、お芝居とかで凄く便利だと思うけどね」

 

 前にも誰かに言われたなあ、それ。

 しかし転移が無理でも地面に潜って、その隙にアルテだけ脱出ポッドで放り出すとかそういうのは・・・

 

「だからそれはなし」

 

 頬に当てられた指に力がこもる。

 

「こうなったら生きるも死ぬも一緒だよ。

 先に言っておくけど、友情の証だなんておとぼけはなしね。

 これは愛情の賜物だから」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 そうだな。前にカオルくんにそれやってグーで殴られたっけ。

 今なら殴られてもしょうがない事を言ったのはわかる。

 

「そーよ。反省しなさい、反省」

 

 くすくす笑って、俺の頬をつつくのを再開するアルテ。

 じゃあ俺も言うけど、アルテの事を愛してる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ」

 

 いや、愛してるかどうかは分からないけど、アルテの事が好きだ。

 これは間違いなく言える。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 沈黙が続く。

 口を開いたのはアルテだった。

 

「そ、それほんと?」

 

 顔が真っ赤だ。多分俺も。

 ともかく、冗談で、それもこんな時に言えるか馬鹿。

 

「じゃ、じゃあ、私たちずっと一緒だよ」

 

 ああ。

 どれだけ長くなるかは分からないが、死が二人を分かつまで・・・いや、死んでも一緒だ、アルテ。

 

「うん・・・うん!」

 

 力一杯頷いてるのが分かる。

 勿体ないなあ、今後ろを振り返ればアルテの最高の笑顔が拝めるだろうに。

 とは言え今は戦場にいるわけで。

 これまでずっと待ってくれていた、存外義理がたい目の前の天使を見上げる。

 

『もうそろそろいいかしら? ううん、純情ね。尊いわぁ』

 

 天使の口を介しているからか、いつもと違うダー・シの声。

 言い返そうとして、後ろからアルテが囁いた。

 

(何とか時間を稼いで。手を打ってみる)

 

 と、言われてもなあ。

 これだけ待っててくれたんだ、そうそう引き延ばしもできまい。

 

『そう言う事ね。ここからはお仕置き・・・いえ、処刑の時間よ。

 神の力に抗ってみせてちょうだい』

 

 白き天使が、そこだけは本物の天使のようににっこりと微笑んだ。

 




ヴィナが戦場を注視していたのは、彼女が視覚強化の魔術を使えるからです。(彼女の家は強化魔術が得意な家系)
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