異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
無機質な顔でもはっきりと分かる、唖然とした表情の
やがてその顔が笑みに変わり、哄笑が響く。
『あははははは! 楽しいわねえ、あなた! そうね、アントンなら大喜びして悪役を演じたかしら?』
だろうな。あの人は骨の髄までエンターテイナーだった。
『でもわたしは悪役ではあってもやられ役を演じる気はないわ。そのこけおどしのツギハギ鉄人形で私を止めるつもりなら・・・』
奴は最後まで言えなかった。
俺の拳が奴の顔面を殴り飛ばしたからだ。
『知るかボケェッ! 取りあえず今まで迷惑かけた人達に、地獄で謝ってこいっ!』
『がっ! ぐあっ! ごぶっ!』
乱打。
『この、ガキがぁっ!』
ようやく立ち直った奴が繰り出す右ストレート。
拳に籠もる膨大な魔力。命中すれば神魔皇帝でもただでは済むまい。
マイの声。
(アタシに任せろよ、オヤジ!)
任せる!
交差する拳と拳。
腕がこすれあって火花を散らす。
『ぐぼば?!』
悲鳴を上げて吹っ飛んだのはカルキ。
完璧に入ったカウンターが奴の顔面を砕き、内部構造を露出させる。
『ゴォ・・・のぉっ!』
吹き飛ばされながらも、両手の平からムチを放つカルキ。
(右斜め下! 左真横!)
声と共に伝わる明確な軌道のイメージ。これは、ジャイガーに乗っていたアーナの息子か!
『かわしたっ!?』
『トルネードスマッシャーパンチ!』
カイザーの両拳が外側に猛回転。両下腕部が拳と逆側に猛回転。
打ち出されたロケットパンチは、エネルギーのムチを引き裂いてカルキに吶喊する。
咄嗟に受け止めようとしたその両手が、粉々に粉砕されて手首から先が消失した。
『デモゴディスライサー!』
両肩から射出された剣を、戻ってきた両手が握る。
飛びながら腕が再ドッキング。
剣を振りかざして俺はカルキに襲いかかる。
『くっ!』
手を失った手首から細剣を出し、剣を受け止めようとする。
(ここは!)
(任せて、とうさん!)
シルヴィアさんとレヴィータさんの娘たちの声。
((異界一刀流・・・ダブルデモゴディブレード!))
二人の裂帛の気合。
振り下ろされた双剣が、細剣と腕をまとめて切り飛ばした。
剣術はカオルくん譲りなんだと思うけど、一刀流なのに二刀流だな?
(そこは突っ込まないで欲しいかな)
シュウサクの苦笑が伝わって来た。
『なら、こうよ!』
カルキの声と共に周辺が暗くなった。
魔力センサーが無数の小型飛行物体を感知する。
明らかに通常の生物ではない虫のようなフォルム。
尖った顎、金属質の体表からして、真っ当な生物ではあるまい。
『異界の魔蠱よ。指向性の攻撃では落としきれない数。熱にも衝撃にもほとんど無敵。
真龍の鱗すら貫く牙を存分に味わうといいわ』
ああ、全方位の魔蠱を一気に落とす攻撃がないとでも思ってるのかな?
出番だ、ガッタイザー担当!
(はい! ネフェルです!)
恐らくマナさんの子であろう少年と声を合わせて叫ぶ。
『『アストロサンダー!』』
側頭部の角から放たれた雷が、全方位を焼き尽くす。
熱には無敵のはずの異界の虫たちは、宇宙の雷撃によりあえなく消滅した。
自信があったのだろう、愕然としたカルキの顔。
『な、何故!? 一年間観察したけど、そんな技は持ってないはず! それともこの土壇場で「すろっと」とやらを増やしたの!?』
普段のデモゴディならそうだろうな。
だがこいつはデモゴディカイザー。神魔の皇帝にして、全ての魔神を統べるもの。
即ち、全ての力を持つ可能性の魔神!
そして家族みんなの力を借りた究極の魔神!
いくら神になったところで、友もなく、仲間もなく、一人でしか戦えないお前なんかに負けるわけがないんだっ!
『こっ、この・・・!?』
絶句するダー・シ。結構痛いところを突いたらしい。
だが容赦はしない!
『豪子力ビーム!』
『がっ!』
白いボディを貫く豪子力の光。
『ヴォルケイノブラスター!』
ダー・シの張ったバリアをブチ抜いてボディを白熱化させる怒りの炎。
『ぐかっ・・・!』
たまらずカルキは逃走を選ぶ。
だが遅い。
『トリプル・ルイン・トルネード!』
『ぐわあああああああああああ!?』
口から放出された三筋の竜巻が、120mの巨体を巻き込んで錐もみさせる。
だがバリアを張っている分、これだけでボディを腐食させきるには足りない。
(ハヤト! あいつ召喚の術式を発動している! とても大きい! もう完成寸前よ!)
何!? さすがに世界最高の魔術師!
あれだけやられて!
宙に舞い上げられた白き天使の周囲にキロメートルサイズの巨大な術式が展開する。
さすがに神になる力とまでうそぶくだけはある。
あれが発動したら、クリエ・オウンドごと消滅させるような化け物が出て来ただろう。
だが相性が最悪だったな、ダー・シ・シャディー・クレモント。
シュウサク!
(はいっ!)
『『ギガ・ライトニングスマッシャー!』』
放たれるのはカオルくん譲りのサンダースウォードの破魔の力。
『ぎゃああああああああああああああああああ!』
神魔皇帝の力で放たれたそれは発動寸前だった術式をかき消し、白き天使のボディを焼き尽くす。
翼が焼き切れ、墜落するカルキ。
とどめだ!
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
咆哮と共に胸から巨大な刀が引き抜かれる。
ムラマサブレードとデモゴディスライサー二振りを融合させた最強の剣。
『ファイナルムラマサブレード!』
一閃。
斬馬刀の如き巨剣は、立ち上がろうとしたカルキをほとんど抵抗を感じさせる事もなく一刀両断し、白き天使は大爆発を起こした。
「待って! 宝珠が反応してる!」
!?
ファイナルムラマサブレードの「はばき」に付いた「タリエシンの宝珠」に意識を集中させる。
アストラル空間を凄い速度で飛び去る「何か」が宝珠の中に見えた。
「アストラルってことは・・・瞬間転移の術よ! 追わないと!」
無論だ!
行くぞ、ゴッドデモゴディ担当!
(はい! ニシカです、父上!)
ヴィナさんの娘と精神を合わせて、次の瞬間神魔皇帝の姿は通常空間から消えた。
「ハァ・・・ハァ・・・ホント、トンでもなかったワネ・・・マッタク、オリジナルッテ奴ハ・・・」
ダー・シがアストラル空間を飛ぶ。
爆発の寸前、可能な限りの魔力を吸収して転移・・・つまりアストラル空間に逃げた。
痕跡は念に念を入れて消してある。さすがの鉄人形も追っては・・・
「!?」
目の前に出現した「それ」に絶句する。
あり得ない事態。
長姉を除けば世界最高の魔術師である自分が陥るはずのない事態。
だが、思い起こせばそもそもあの鉄人形相手に、神の力を振るって敗北する事自体、あり得ない事ではなかったか。
ダー・シは目の前のデモゴディカイザーを見上げる。
「ま・・・まだヨ! 物質界ならトモカク、アストラル空間ならワタシに一日の長があるワ!
神の力だってまだいくらかは残っテル! ここまで追ってきた事を不幸と思いナサイッ!」
吼えるダー・シを俺は見下ろしていた。
ゴッドデモゴディは普通にテレポートができる。範囲は最低でも大陸一個分だし、高次次元への移動も可能だ。俺達はその力を使ってこいつを追いかけてきたのである。
確かにアストラル空間では勝手が違うし、奴のエネルギーがかなり余裕があるのも事実。
だが圧倒的な力で押し潰せば問題はない。こちらのエネルギー全てを一度にぶつけられてお前は耐えきれるかな。
そう言うと、ダー・シは一瞬ぽかんとした後、ボハボハと馬鹿笑いをし始めた。
「ナニ言ってんのヨ、馬っ鹿ネエ! イイコト、人間には魔力放出限界ってモンがあるのよ!
いくら巨大な魔力を内包シテテも、制御しつつ一度に出せる量には限りがあるノ! だからコソ術式や魔道器で魔力の出口を広げてアゲルンジャナイッ!
蓄えたエネルギーを一度に放出出来るナラ、ワタシだってこんな苦労しなかったワヨ!」
馬鹿笑いを続けるダー・シ。
だが出来るんだな。何となくそれが分かる。
少なくとも今保有してる魔力を一撃に全て込められる程度には。
そう言うと、徐々に馬鹿笑いが収まっていった。
その表情に浮かぶのは恐怖。そして信じがたいという驚愕。
「ア・・・あり得ナイッ! たとえ神となった魔術師でサエ、人間のママでソンナ・・・ソンナコト!」
そこに口を挟んだのはアルテだった。
「多分、ハヤトがサトラレだからよ」
「・・・ハイ?」
またしても、ぽかんと口を開けるダー・シ。
「ハヤトがなんでサトラレかって言うとね、感情がすぐ顔に出るからよ。
多分こいつの《加護》ってね、使えば使うほど『感情を出す穴』が大きくなっていくのよ。
『ろぼっとあにめ』にそう言う性質があるのかもね」
確かにロボットアニメで感情が高ぶる=勝ちフラグではあるが・・・。
ちょっと待て、魔力って感情が高ぶれば高ぶるほど増幅されるよな?
「ハヤト正解。『感情の吹き出す穴』が大きくなるってことは、魔力放出限界も大きくなるってことなの。
魔力は生命の力。感情の高まりは命の高まり。
考えてみれば、魔力を放出しきって倒れるなんてこと、早々あるはずないのよ。
オリジナル冒険者族で、ましてやヴィラン・コアまで持ってるハヤトが。
こいつは元からデモゴディを出すくらいの魔力と放出限界を持っていたのよ?
そしてこの一年、ハヤトは《加護》を使い続けた。
多分どんな大魔術師も経験した事がないくらいの規模で魔力を放出し続けた。
後はわかるわね?」
今度こそ呆然自失するダー・シ。
わかったら、今度こそ消滅して貰おう。
もう一度言うぞ。迷惑かけた人達に地獄で詫びてこい。
行くぞ、みんな! もう一度だけ力を貸してくれ!
「く、クソッ!」
敗北を悟ったのか、逃走にかかるダー・シ。
だがもう遅い。全身に豪子力の力がみなぎり輝く。
俺の認識する「上」、逃げるダー・シに突き上げる拳。光の柱が立ちのぼる。
『カイザービッグバン!』
文字通り、宇宙開闢を思わせる光がアストラル空間をまばゆく照らす。
光が消えた後には何もなかった。
アルテ、何か聞こえなかったか?
「何か呟いてたみたいだけど・・・聞き取れなかったわね。ともかく何も感じないわ」
そうだな。考えてもしょうがないか。
何も残っていない事を宝珠で確認して、俺達は物質界に帰還した。
全てが光に飲み込まれる直前。
(ああ・・・思い出したわ。コア・ヒムとコレトゥーラの・・・よく笑う子だったわね・・・)
最後に思い出した事。
アルテに感じた既視感の正体。
(あの子相手じゃしょうがないわね。負けてやらないと・・・それが叔父さんの義務ってものよ)
そんな思念と共に、ダー・シ・シャディー・クレモント・・・古の真なる魔術師クリスの意識は途切れた。