異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
新しく提案された「試し」は三本勝負。
力の試し。知恵の試し。魔術の試しの三つだ。
ジラさんが丁寧に説明してくれた。
「"封じの矢"の効力はもう解けていますから、《加護》や魔法も使えるはずですよ」
「力はアルテじゃな。知恵はわし。魔術は・・・小僧、なんかやれ」
なんかって、そんな適当な。
「大体魔術なら師匠の出番でしょう?」
「知恵の試しを代わってくれるならやってもいいがの。ラファエル、どうじゃ?」
水を向けられたラファエルが盛大に苦笑する。
「語りならともかく、知恵比べでペトロワ殿の代わりができる気はしないのですぞ。
わたくしが知恵比べに出るよりは、ハヤトが魔術比べに出た方がまだしもでしょうぞ」
あーまあそうなるか・・・カオルくんに魔術比べに出て貰うのは?
「僕自身は大した術は使えないよ? ちょっとした治療とか、光を出すくらいならそれはできるけど」
「サンダースウォードにしろ幻夢剣にしろ、剣の力じゃからの。
こやつの力は剣を呼ぶ事であって、こやつ本人がそうした力を持っておるわけではない。
あと五年みっちり修行を積めばわからぬが」
ちくしょう天才め。俺なんて四ヶ月訓練して呪文の一つも使えないんだぞ。
溜息と共に俺はこの世の理不尽を受け入れた。
最初の試練は力の試練。
地面に描いた円の中でぶつかり合って、背中をつけるか円の外に押し出されたら決着だ。ほぼ相撲だな。
向こうは2mを大きく越える巨漢の
160センチほどのアルテと比べるとまさしく大人と子供だ。
脳内に相撲の呼び出しの、あの独特の節回しが再生される。
ひがぁしぃ~。猿の海~。さるのぉうぅみぃ~。
にぃしぃ~。駄肉山~。だにぃくぅやぁまぁ~。
「ハヤト。今何かもの凄く私を馬鹿にしなかった?」
滅相もございません。
というか口に出してないのに何でわかるんだろう。
「君本当に顔に出やすいんだよ・・・」
溜息をついて憐れむ表情のカオルくん。解せぬ。
「始め!」
「どすこーいっ!」
「グワーッ!?」
はじめの声がかかるとほぼ同時に気合い一閃、巨漢のヴァナラが一本背負いでぶん投げられる。
地面に叩き付けられた対戦相手はそのまま大文字にのびてしまった。南無南無。
「よっしゃー!」
「うおー!ですぞ!」
「!??!?」
ガッツポーズのアルテ。歓声を上げる俺達。
ヴァナラの皆さんは流石にここまで圧倒的とは思わなかったか、呆然としていた。
第二の試しは知恵の試練。
どうやって知恵比べするんだろう。謎かけでもするのかな・・・
「あなたたちの言葉に直すと『言葉の喰らい合い』と呼ばれるゲームですね」
「喰らい合い、って物騒ですね」
顔をしかめるカオルくんに苦笑するジラさん。
「うーん。言葉による戦いと言いますか。概念の出し合いと言いますか。妖精族が生み出される前からある知的遊戯で、元は真なる魔術師の方々が頭の体操として行っていた遊びだそうです。
例えばペトロワ師が『私はハエ』と言いますね? すると相手のオノリアス師が『私はカエル』と言います。カエルは蠅を食べるのでオノリアス師の勝ちです。
もちろんこれで終わりではなく、ペトロワ師が『私は蛇』と返します。蛇はカエルを食べるのでこれも勝ちです。あるいは『私は日照り』と言っても勝ちになりますね。日照りになるとカエルは乾いて死んでしまいますから。
そうして次々に言葉を並べて、相手の言葉により強い言葉、概念で返し続けます。3つ数える間に返せなかったら負けです」
「ふーむ」
よくわからんが、俺には到底できない種目なのはわかった。そりゃラファエルさんでも辞退するだろう。
興味と不安が混じったような気持ちで見ていると、ペトロワ師匠と、相手のヴァナラ、オノリアスさんが場に出てきた。
杖をつき腰が曲がった、全身の毛が真っ白なヴァナラで、多分かなりのご高齢なのだろう。
「始めいっ!」
族長の声と共に二人が杖を構える。殴り合ったり魔力を使ったりするわけではないが、何か精神的なものがあるらしい。先手はオノリアスさんだ。
「我は大猿。筋骨たくましき霊猿の勇者」
「我は毒蛇。密かに忍びより血の管に毒を送り込む」
「我はフクロウ。毒蛇に爪を立て、くちばしで食いちぎる」
「我は昼。我が下では夜の鳥は飛ぶことあたわじ」
「我は雷雲。昼も夜も等しく闇に閉ざす」
「我は大風。空の雲も吹き払う天津風なり」
双方ポンポンと言葉が出てくる。
すげえな、高度な連想ゲームって感じ。
これを双方3秒以内にやってるんだから俺じゃ絶対真似できない。
俺達もヴァナラの人達も手に汗を握って戦いの行方を注視する。
三十分ほども掛け合いが続いた後、師匠の攻めにオノリアスさんが言葉をつまらせてしまい、ようやく勝負は決した。
互いに拳を胸の前で合わせ、礼をする。妖精族の敬意のしるしだ。
熱戦を繰り広げた両者に、周囲から惜しみない拍手が上がっていた。
「先に二本取ったんだし俺は不戦勝って事でよくないですかね」
「いいわけあるか!」
「勝ち負けも重要ですが、試しを通して相手を理解するというのが一番の目的ですので・・・」
苦笑するジラさん。師匠、杖で殴るのはひどいと思います。
「しかしどうしようかなあ・・・」
「いつもやっとる手品があるじゃろうが。あれならそうひどいことにはなるまい」
「へーい」
直前の師匠対オノリアスさん戦の興奮も冷めやらぬまま、俺は場に歩み出た。
出てきた向こうの代表と互いに礼。
先攻はやはりホームである向こう側だ。
「さて皆さん、イッツショータイム!」
「!?」
相手の人がパチンと指を鳴らすと、ぼむっと煙が立ってシルクハットにタキシードっぽい姿になる。うっそぉ!?
「さあ、異世界ニホンから伝えられた数々の秘術をごらんあれ!」
ヴァナラ達は大湧きしているが、師匠達は揃って目を丸くしている。俺は多分かくーん、と顎を落としていただろう。
それからしばらく、魔術を駆使したマジックの数々が続いた。
うーむ、やばいな、内容結構かぶってる。その上でこの人エンターテイナーとしては付け焼き刃の俺より上だ。他人の楽しませ方がわかってる・・・!
「ご観覧に感謝いたします!」
一礼すると、パチパチパチと盛大な拍手。
確かに面白かったけど、今からやるはずだったことを先にやられた俺は全身が汗を吹き出す機械になったかのようだ。
そうだ、師匠! 師匠ならこんな時でも何か適切なアドバイスを・・・!
そう思って師匠の方をちらっと見たら全力で目をそらされた。
ちくしょう、信じた俺が馬鹿だった!
「それでは人間側代表、始め!」
期待の目が一斉に俺に注がれる。冷や汗が雨から滝になる。やめて、熱中症で死んじゃう!
ええい、もうやけだ! 俺は天啓のように閃いたアイデアを思考停止で実行に移した。
「やぁ、ゴンボイだ。
テレビを見る時は、部屋を明るくして離れて見るんだぞ。
さぁ! アニマルウォーズの始まりだ!!」
「「「!?」」」
場が固まった。
それが神の啓示なら、下した神はゴリラの姿をしていたに違いない。
空中の巨大な四方モニターに映し出されたのは知的で快活ながらどこか変態チックな声で喋るゴリラ。主題歌とともにゴリラが鋼鉄のロボに変形し、同じく動物から変形する仲間のロボと共に悪者の変形動物ロボ達をやっつけていく。
これで戦争はストップ! 平和の試練にふさわしい内容だなうん!
それまで乗り物からロボに変形するのが主だった人気ロボットアニメシリーズ、メタモルフォーマー。それが何故か動物に変形するようになったのがアニマルウォーズである。まあ舞台が原始世界なのでスキャニングする機械がなかったと理由づけはされてるんだが。
「サイバロイド星にはバナナがないんだっ!」
「イボンゴペッチャンコ・イェイ!イボンゴペッチャンコ・イェイ!」
「トラジロォ~~~~ッ!」
そしてこのシリーズ、原語版では滅茶苦茶暗くてシリアス。
それが子供に受け入れられないだろうと判断した日本語スタッフはセリフを大幅改変、半ば原作無視の声優アドリブ大会と化してしまった。
主役のゴンボイの声優が「俺だけ混ざれなくて悔しかった」と愚痴ったくらいである。
「何てったってカナダで作ってんのよこれ! ラブレターフロム~~~ってなもんでさ!」
「俺達がやらなきゃいけないのは体を張って笑いを取ることだ! そして皆さんの疲れた体を癒す! あぁ、明日も頑張ろうって思ってもらうんだ、笑いは心のビタミンだ!」
訳のわからんアドリブはさておき、善玉のゴリラが悪者の恐竜たちをやっつけるという物語は非常にわかりやすく、またヴァナラの人達には受け入れやすいものだったらしい。
時々困惑はするものの、基本的にはみんな手を叩いて喜んでくれていた。
なお裁定は俺の勝利。
向こうの代表も笑顔で拳を合わせて礼をしてくれたので、俺もぎこちないながら礼を返す。
うーん、清々しい。力ではなく文化で勝利する、これこそ平和的勝利!
「何か違う気がする・・・」
今は黙っててくれカオルくん。