異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十三話 木人形(でく)

 ぼんやりと宙に視線をさまよわせ、僅かな呼吸音以外には何の活動もしていない。

 闇に浮かび上がる人間の抜け殻の群れには、モンスターの群れとは違う不気味さがあった。

 

「・・・」

「小僧ども、ついてこい」

 

 ペトロワ師匠が動き出し、俺達は慌てて師匠をフォローできるように動いた。

 ヴァナラの人達も我に返って、護衛の人と一緒に近づく。

 その途中でカオルくんがいぶかしげな顔になった。

 

「ペトロワ先生、こいつらひょっとして・・・」

「うむ。ヴァンパイア・スポーンじゃ」

 

 えっ、マジ!? よくわかったなあ。ヴァナラの人達もざわついている。

 

「確信はなかったけど、何と言うか雰囲気が・・・」

 

 俺達がそんな会話を交わしている間に、師匠たちは無言で座り込むヴァンパイア・スポーンたちの調査を進めている。薄暗い魔法の光の中だが、表情がこわばっていくのがわかった。

 

「意志の力が・・・」

「脳を外科的にいじって・・・」

 

 なんか怖いことが聞こえてくるんですけど!

 やがてこちらに向き直った師匠たちの表情は、例外なく沈痛なものだった。

 

「その、師匠。さっき聞こえて来たのは・・・脳を手術して一部を切除するとかそういうやつですか?」

「・・・ほんに小僧は学識があるわけでもないのに妙なことを知っておるのう」

 

 へいへい、オタクってのはそういうもんですよ。

 

「ニホンではロボトミーと言いますね。今ではすっかりすたれた技法のはずですが」

「さもあろうな。脳を切除したところで障害が残るだけじゃ。それが結果的に施術者の目的にかなうこともあるかもしれんがの」

 

 人体実験、と言う言葉が脳裏をよぎる。しかし、何のために・・・?

 

「この人たちを都合のいいしもべにするためとか?」

「ヴァンパイア・スポーンは普通創造主には逆らえん。わざわざ意志を完全に奪う必要があるとは思えんの」

 

 アルテの疑問を師匠が否定する。

 疑問は尽きなかったが、ペトロワ師匠もヴァナラの学者さんもわからないのではどうしようもない。俺達は前進を再開した。

 

 

 

「全員止まれ」

 

 前進を再開して十分も経たないうちにペトロワ師匠の声が響いた。

 

「?」

 

 首をかしげる俺達をよそに、杖でコンコンと洞窟の壁を叩く。

 

「~~~」

「あっ!」

 

 やがて軽く呪文を唱えると、今まで岩壁だったところに一枚の石の扉が現れた。大きさは縦横2メートルくらい、表面には取っ手が二つ。ドアノブと言うより、引っ張るための握りみたいだな。

 

「~~~」

 

 一同が驚く中、更に呪文を唱えて調べるが、やがてアルテの方に向き直る師匠。

 

「アルテ、扉を押してくれ」

「え、こーゆーのって魔法の呪文でぱぱっと開くものじゃないの?」

「呪文は解いたがそれはそれとして力業で押さないと開かないようでな」

「魔法の鍵と、物理的な重さと、二重の鍵と言う事でしょうか」

「そんな感じじゃの。強力な吸血鬼であればこれくらいの岩は動かせるじゃろうて。もしくは"筋力強化(ストレンクス)"の呪文でも併用していたか」

 

 師匠とカオルくんの会話に無表情になるアルテ。

 

「・・・ええと、よくわからないけどつまり押せばいいんだね」

「うんまあそうじゃ」

 

 こちらも心なしか無表情になって師匠が答えた。

 

 

 

「んぎぎぎぎぎ・・・!」

 

 ごごごご、と地響きを立てて石の扉が奥に押し込まれていく。

 見慣れてる俺達からしても凄い光景だが、ヴァナラの皆さんは思わず一歩引いていた。

 押し込んでみてわかったが、この「扉」は縦2mx横2mx奥行き4mの直方体をしていた。

 何トンくらいあるんだろう? そりゃ魔法が使えても、普通の人間には動かせんなあ。

 

「石の比重は2.5から3くらいだったかな? 16立方メートルだと・・・40トン以上はあるってことになるね」

 

 ひえっ。

 18mのデモゴディΣだって20トンだぞ? つまりこの娘はデモゴディになった俺を持ち上げられるって事。ほんとゴリラである。

 

「誰がゴリラですって?」

「吸血鬼! 吸血鬼の話だって!」

 

 痛い! 耳がちぎれる!

 

「ほんにこいつらは・・・」

「放っておきましょう、先生」

 

 冷たい目の師匠とカオルくん。

 

「若者がこう言う雰囲気になったら割り込むだけ無駄なのですぞ」

 

 洞窟の中でバイオリン鳴らさないで下さい、ラファエルさん。

 

 

 

 そうして開いた石の扉の奥は、おどろおどろしい研究室・・・ではなく。

 

「・・・何このファンシーな部屋?」

 

 暖かさすら感じるような、居心地の良さそうな居室だった。

 テーブルクロスは華やかな花柄、ベッドの上にはかわいいぬいぐるみが多数。壁紙もピンク色のかわいらしいものだ。

 本棚や書き物机もあるが、基本的にはプライベート空間で仕事場じゃない感じ。

 

「新しいですね。つい最近まで使ってた感じ」

「保存の呪文がかかっておるから実際にそうかどうかはわからんがの」

「お金持ちの商人とかお貴族様の部屋みたいだねー」

 

 見た感じ掃除も行き届いているし、ベッドや椅子も新品同様に見える。

 現代日本人の感覚でも結構上等な家具だし、この世界ではそう言う事になるんだろうな。

 

「これはやっぱりあの吸血鬼が?」

「じゃないかなあ」

 

 部屋をざっと調べてみたが、本当に日用品ばかりで何もない。

 本も読み物や地理誌などが中心で、専門書や魔導書のたぐいはなかった。

 

「あ、お菓子だ!」

「ほう、"メナディ"のドライフルーツビスケットか。ディテクの老舗じゃぞ」

「聞いたことある! 楽しみー!」

 

 当然の如く懐に入れていらっしゃいますがいいんですかねこれ。

 

「どうせあの根暗吸血鬼のでしょ! 血を吸われた分のお返しよ!」

 

 さいですか。

 

 

 

「っっっっ!」

「・・・・・・・・・」

 

 中に入った途端、全員が絶句した。

 ファンシーな居室の奥の扉、そこを開いた先にあったのはまさしく死の研究室。

 脳の瓶詰めその他の人体のサンプル、使い方もわからないおぞましげな実験器具、赤い液体や薬剤やその材料らしき植物や動物の体の一部がずらりと並んだ棚。

 そして並んだ手術台に拘束された人間・・・あるいは人間だったもの。

 

「ママ・・・ママ・・・ママ・・・」

 

 全身が腫れ物で覆われ、もはや顔どころか元の性別もわからなくなったような人間の残骸がひたすら同じ言葉を呟いていた。




女の子です。
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