異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第五話 飛べよ鉄拳

 がたごとがたごと。

 

「サイモック唯一の大陸がこのマルガムですぞ。東にディテク、西にライタイムの二大国。更に北のダルク部族連合と南のゲマイ魔導共和国、極東のアグナム帝国を加えて大陸五大国家とされていますな。我々がいるロンドはディテクとゲマイの間のこのへん、乱立する小国の一つですぞ」

「へー」

「ふーん」

 

 揺れる馬車の中、この世界の地理を教えてくれているのはイケメンドワーフのラファエルさん。

 吟遊詩人だけあって物知りで、リタのついでに俺にも色々教えてくれている。

 時間に余裕のあるときは、雑用か、ラファエルさんの授業か、ペトロワさんの魔法の修行か、さもなくばリタの話し相手。それがここ数日俺の仕事として定着しつつある。

 

「で、これらの国にも色々特色はあるのですが・・・リタくん、覚えていますかな?」

「うん! ディテクは1300年前に真なるドラゴンに滅ぼされかけて、オリジナル冒険者族の勇者の人がそれを倒して新しい王様になったの。700年前には地震があって、首都のメットーが丸ごと作り直されたんだって。

 ライタイムは逆に昔の魔法文明時代からずっと首都がそのまま残ってるの。でも全体的にディテクの方がほ、ほ・・・」

「保守的?」

 

 うんうん唸るリタに助け船を出してやると、パッと顔が明るくなる。かわいい。

 

「そうそう。ディテクが保守的で、ライタイムが新しい物好きなんだって」

 

 生徒の発表に、うんうんと満足げに頷くラファエル先生。

 

「で、北のダルクは草原の国で、みんな馬に乗って走り回ってて街とかほとんどないんだって。

 ゲマイは魔法使いが国を治めていて、魔法が使えれば庶民でも貴族になれるんだって! すごいね!」

「まあ魔法の才能があっても貴族にまでなれる人間は少ないそうですがな。で、アグナムは?」

「うん、アグナムは『サムライ』の国で、『カタナ』の本場。皇帝が国で一番の魔法使いなんだよね!」

 

 うん?

 

「サムライって元々この世界にいたの? オリジナル冒険者族が伝えたんじゃないの?」

「えーと・・・」

 

 言葉につまってしまったリタの後を、ラファエルさんが引き取る。

 

「その"始まりのサムライ"が技を伝えたのがアグナムのサムライの起こりと言われているのですぞ。アグナムの武術流派には始まりのサムライの名を冠するものがいくつもありますしな。

 加えてオリジナル冒険者族が降臨する割合が明らかに多いというのもございます。

 血が濃いせいか、強い《加護》の持ち主も多いという話ですぞ。

 まあ他の国でもサムライといえば『最強の戦士』というイメージが強いですから、騎士や剣士の中にもサムライを名乗る者は少なくありませんが」

 

 なるほどなー。

 リタと一緒にウンウン頷いていると、そのリタが急に真剣な顔付きになった。

 

「どしたの?」

「ちょっと静かにしてて・・・うん、わかった。ありがとう。後で麦をあげるね。

 ラファエルさん、お父さん、この先に山賊がいるって!」

 

 見れば、いつの間にか馬車の後ろの布の合間から、緑色の小鳥が顔を出していた。

 間髪を入れず、布をめくってガイガーさんが顔を出す。

 

「ラファエル、御者」

「わかりましたですぞ! 取りあえず止めておきますぞ!」

 

 無言のまま頷いてガイガーさんが顔を引っ込める。

 わずかに馬車が揺れて彼が飛び降りたのがわかった。

 

「え? どゆこと?」

 

 リタと、意外に素早い動きで御者台に這い出すラファエルさんをキョロキョロと見比べる俺。

 

「リタの《加護》ですぞ。彼女は動物と話が出来るのですぞ」

「!」

 

 目を見開く俺に、リタはちょっと自慢げに胸を張って見せる。

 小鳥はいつの間にか飛び去っていた。

 

 

 

「ぎゃあっ!」

 

 戦いは山賊の悲鳴から始まった。

 弓を持った小汚いおっさんが木の上から落ちてくる。

 背中に刺さっているのは、いつの間にか姿を消していた小人族(バグシー)のアーベルさんがジャグリングで使っていたナイフ。

 こええ。暗殺者かよあの人。

 

「オラぁ! あたしらを襲ってエロい事をする気だったんだろ! 春画(エロ絵)みたいに! 春画(エロ絵)みたいに!」

 

 曲刀をぶんまわしながら暴れる座長。バンダナか船長帽かぶせたら女海賊だな。

 

「バカヤロウ、やるにしたってもっと若い娘を選ぶわ、この年増が!」

「なんだとぉ!?」

 

 あ、頭カチ割られた・・・

 同じくらい活躍してるのが意外にもアルテ。

 丸太みたいなでかい棍棒を振り回して山賊どもを滅多打ちにしてる。

 下手に受けようとすれば武器ごと頭を潰されるし、横殴りに振るえば普通に人がホームラン。

 うんこりゃ勝てねえわ。外見はかわいい女の子だけど、熊というか普通に鬼だ。

 

 そして別次元の強さを誇るのがガイガーさん。

 無造作に山賊の間に斬り込んで、大体一太刀でみんな斬り殺してる。

 シルヴィアさんとアルテが一人倒してる間に三人くらい倒してるんじゃなかろうか?

 そんな俺は馬車の中で、布の隙間から外を窺いつつ震えてる。

 

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。お父さん達がやっつけてくれるから」

 

 むしろリタちゃんのほうが落ち着いてるくらいだ。

 今までに何度もこんな事があったんだろうな・・・と、思っていたら、いきなりリタちゃんが体を硬くしてしがみついてきた。

 

「どうした・・・っ!?」

 

 馬車が揺れる。

 後ろから乗り込んできたのは、曲刀と手斧を持った小汚いおっさん二人組。

 別働隊がいたのか!

 

「へへっ、こいつぁついてるぜ・・・」

 

 ニヤニヤ笑いながら、ことさらにゆっくりと近づいてくる二人。

 ラファエルさんは馬車を止めた後、弓で援護しに行ってしまってここにはいない。

 

「お、お兄ちゃん・・・」

 

 涙声のリタがすがりついてくるが、情けないことに体が動かない。

 山賊たちも俺がびびってるのはわかっているようで、あからさまに見下した表情をしてくる。

 

(ちくしょう・・・動け! 動け! 動け俺の体! 《加護》でもいい!

 今発動しないなら、一体いつ発動するんだよ!)

 

 怯えながらも、ゆっくりと俺の両手が上がる。

 

「お?」

「・・・」

 

 一瞬何かするのかと警戒した二人が、その後何もないので笑い始める。

 

「なんでえ、脅かしやがって!」

「このビビリが!」

 

 武器を振り上げる二人。

 その時、俺は無意識に両拳を握っていた。

 

 武器が振り下ろされる。幸いにも両方俺にだ。

 少なくともリタが殺されることはないだろう。どこかでそう安堵して諦めた瞬間、信じられないことが起こった。

 

 爆発音。

 炎。

 魔法のように目の前から山賊が消え、馬車の後ろの布が吹き飛んだ。

 

 呆然とそれを見る俺とリタ。

 突き出した俺の両手には、肘から先がなかった。

 

「お兄ちゃん、手・・・」

 

 リタがそれに気付いて慌てた瞬間、何かが火を吹いてこちらに飛んでくる。

 避けよう、と意識する暇もなく、それは俺の両肘にドッキングした。

 拳と下腕部。ただし、俺の生身の腕より一回り太い、金属製のそれ。

 

「ロケット、パンチ・・・」

 

 戻ってきた腕を見て、俺は呆然と呟いた。

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