異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「あー、察するにあれはお主らの世界のものかの?」
「はい・・・まさか本物じゃないよな?」
「本物は像の部分だけでも50mくらいあったはずだから、たぶん」
取りあえず俺達二人は何とか落ち着き、みんなで像の足元に歩いて行く。
「としてもでかいな・・・」
「上半身でこれだと、全身では森で一番大きな樹と同じくらいでしょうか?」
「本物は台座も含めて100メートルくらいあるんですよ」
学者さんたちが像に取り付き、その間像の足元でわいわい言う俺たち護衛組。ペトロワ師匠ともう一人のヴァナラの人は空中に浮かんで像の顔や右手の松明を調べている。
「とは言え多分これが元凶なのですぞ」
「あー・・・やっぱり?」
ラファエルさんは森で感じた不快感の、より強いものをあの像から感じたらしい。
大地の妖精である彼の感覚は師匠も太鼓判を押していたし、まず間違いないだろう。
「おーい、小僧。ちょっとこっちへ来てくれ」
そんなことを話しているとペトロワ師匠が降りてきて俺を呼んだ。
「なんです?」
「うむ。この像が原因とは思うのじゃが、どこが中心か今一つはっきりせんのでな。
像自体には術はかかっておらんし、中に何かありそうな手応えがあってな・・・それでちょいと穴を開けてみたいんじゃが、小僧、お主何か使えそうな手があるか?」
ああなるほど。
ならあれしかないなあ!
「なんかハヤトがいきいきしてる・・・」
「マニアがああ言う顔してるときは放っておくのが一番だよアルテ」
はいそこうるさい。
「チェインジ、ジェッタ―II(ツー)!」
気合いと共に俺の右手が唸り、手首から先が激しく回転する。白く輝く金属質になった肘から先、手首のあった部分には巨大で細長い螺旋状の円錐形。
つまりドリルだ。
名作「ジェッターロボ」。史上初の合体ロボであると同時に、三体合体の組み合わせで機体特性を三変化する画期的な変形ロボでもあった。
まあその代わりに超合金で合体変形が再現できないという重い十字架も負ったわけだが・・・30年近く経ってからようやく販売された完全変形ジェッタ―ロボが8万円とか凄い値段だったことで察して欲しい。
そしてジェッターIIは地上戦用・高速戦闘用のドリルロボ。ドリルで地中を掘り進むことも出来る。円錐形のドリルで穴は空かないとか、どう考えてもサイズが足りないとか、そう言うツッコミはご無用に願いたい。
ドリルなんだから出来て当然! HBの鉛筆をベキッ!と へし折る事と同じようにッ!
「おおおおお」
思わず声が漏れる周囲をよそに、俺は右手を掲げ回転させ始める。
「俺のドリルは全てを貫くドリルだ!」
作品違う!と突っ込む人はこの世界にはいない。
叩き込んだドリルによって、像にはあっけなく大穴が空いた。
「?!」
大穴からドリルを引き抜いた瞬間、穴から緑色の触手のようなものが飛びだしてきた。
緑色の槍が俺を目指して一直線に進んでくる。
あ、これピンチの時に時間感覚が鋭くなるってあれだ。
俺を突き刺そうとする緑の触手。正確には波打ちながら、それがまっすぐに伸びる勢いで直進しているのがわかる。
わかるんだが、体が時間感覚ほど早く動いてくれない。どう考えてもこれ俺の腹に突き刺さりますわ。
「危ないっ!」
そう考えてたところで、脇から雷光を帯びた斬撃が振り下ろされた。
緑色の触手が切り払われ、同時に左腕が勢いよく引っ張られて、視界が流れる。
体ごと宙に浮く感覚。後ろからアルテが引っ張ってくれたのだと遅れて理解する。
回転する視界の中で剣を振り下ろしたカオルくんがすかさず後ろに跳ぶのが見えて、そこで時間感覚の加速は終わった。
「いてっ!」
一回転して石床に叩き付けられる。
でこぼこじゃなくて磨かれた床面で助かった!
「ご、ごめん、大丈夫?!」
自分も後ろに跳んだアルテがすまなそうな顔で覗き込んでくる。
「大丈夫! ありがとう!」
親指を立てアピールすると、俺も慌てて立ち上がる。
結構痛いけどここで痛いとか言えない。
「!?」
べきっ。ばきばきっ。
自由の女神像の表面にひびが入り、内部から崩壊する。
その割れ目から出てきたのは・・・
「ツタ!」
「いやシダ・・・か?」
恐らく自由の女神像の中にみっしりつまっていたと思われる緑色の植物。
うねうねと動いているそれは、触手のようであるが確かに植物だ。
「みんな! あれ見て! この草、銅像から生えてる!」
「!?」
ジラさんの言葉に全員が植物の根元の部分を注視する。
マジだ! 銅像の破片にシダが根を張っている! 破片はかなり腐食というか浸食されており、俺があっさり穴を開けられたのもそのせいだろう。
「シャラパさん! 近づかないで!」
「わ、わかっているとも。いやしかし、このような植物見た事も聞いたこともない! 是非間近で・・・!」
「いい加減にしろこの植物キチガイ!」
向こうで揉めてる人達からはそっと目をそらす。
「それで師匠?」
「・・・これで間違いなさそうじゃな。死霊術の気配が・・・全員もっと離れろ! 少なくとも20メートル!」
言うなり師匠が身を翻して走り出した。
一瞬戸惑った後、俺もそれを理解した。
「ひうっ!?」
誰かが悲鳴を上げる。
銅像の中にいたシダの塊が、「のび」をして洞窟の天井近くにまでその身を伸ばしたのだ。
屹立した緑の柱の高さは20mを超える。根元には銅像の下半身部分の空洞が見えた。
動ける理屈はわからんが、地下に潜ってる部分が上半身部分を支えてる!
・・・くそっ! 自由の女神なら、下半身まであって不思議じゃないのに!
見えてる部分だけが全部だって思い込んでた!
「」
ヴァナラの人達が見えた。
流石に護衛の二人は素早く反応した。学者のリーダーの人も。
加えて護衛の人が咄嗟に手を引いて退避させているのが一人ずつ。
だがジラさんともう一人の人は明らかに反応が遅れた。
もう緑の柱は傾き始めている。床を強打して彼女らを押し潰すのに数秒。
ヴァナラは人間より優れた身体能力を持つが、鍛えてるわけでもない彼女らでは到底間に合わない。
カオルくんも気付いて雷を放とうとしているが、いかに伝説の魔剣と言えどもあれだけの質量を一瞬で焼き払えるかどうか。
「アルテ! 俺を思いっきり背中から引っ張ってくれ!」
「!? わかった!」
振り向いた俺の背中に、何も聞かずに組み付いてくるアルテ。
その豊かな胸の感触も今は無視して俺は叫ぶ。
「チェーンジ、ジェッターIII(スリー)ィッ! スイッチ・オンッ!」
かけ声と共に再び変化する俺の両腕。
ドリルが蛇腹状のマジックアームとなり、巨大な手の平が現れる。
「ジェッターアーム!」
「伸びたぁぁぁぁぁっ!?」
複数の人間が叫ぶ。
蛇腹状の腕が高速で伸びる。
手首からはジェット噴射。
向かう先はジラさんともう一人の学者さん。
倒れ込む緑の柱。
「サンダースウォード!」
カオルくんの剣からまばゆい雷光がほとばしるのと、俺の両手が二人を掴むのが同時だった。
緑の柱は黒こげになって床でぴくりともしない。
「・・・ハヤト、大丈夫?」
「ハヤトくん、大丈夫かい?」
地響きが響いた後、俺はまたしても地面に転がっていた。
注文通り思いっきりアルテに引っ張られた結果、投げっぱなしバックドロップみたいな感じで後ろに放り出されたのだ。俺の両腕にはジラさんともう一人のヴァナラのおっさん学者。
「大丈夫」
俺は(俺としてはたぶん)最高の笑顔でサムズアップした。