異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十六話 ドリル少年スパイラルはやと

 黒こげになった怪シダの塊がびくり、と震えた。

 

「急げ! 脱出するぞ!」

 

 護衛のリーダーの人が叫ぶ。

 全員がものも言わずに回れ右してそれに従った。

 俺達の駆け出したその後。

 黒く焼け焦げた表面がパラパラと床に落ち、緑色の組織が急速に増殖を始めていた。

 

 

 

「小僧! わしらを腹の中に詰めて飛べ! 急いでヴァナラの村に戻らねばならん!」

「え? は、はい! わかりました!」

 

 洞窟から出るなり、ペトロワ師匠が血相を変えて叫んだ。

 戸惑いはするが、この人がここまで顔色変えるって事は何かあるんだろう。

 しかし、やはりというか何と言うか、全身全霊で拒否する人が約一名。

 

「嫌ですぞ! 必要ならハヤトたちだけで先に戻るのですぞ! わがはいは自分の足で帰りますぞ!」

「ここに残しておいたら確実に死ぬわ!」

「空を飛ぶことに比べればそんなこと何でもないのですぞ! ドワーフの誇りと共にわがはいはここで死ぬのですぞ!」

 

 安いなドワーフの誇り!

 頑ななラファエルさんに、師匠がぎらりと目を光らせる。

 

「ほう、そうかいそうかい。こう言う手は使いたくなかったがそれなら魔法で眠っていて貰おうかの」

 

 ふぇふぇふぇ、と邪悪に笑う我らが魔女。

 

「アルテ、このアホウを動けないようにしておくれ」

「う、うん・・・ごめんねラファエル」

「あーっ! あーっ! やめるのですぞアルテ! わがはいは・・・!」

「うるさい黙れ!」

 

 全身のバネを使って振り下ろした杖が、ドワーフの脳天にクリーンヒット。

 ものも言わずラファエルさんは失神した。

 

「「「魔法じゃなかったんかい!」」」

 

 俺、アルテ、カオルくんの息のあったツッコミに、この性悪の魔女のばあさんはいけしゃあしゃあと答える。

 

「ドワーフを魔法だけで拘束するのは難しいんじゃよ。なので杖の打撃も加えただけじゃ。嘘はいっとらん」

 

 嘘だ、ぜってぇ私怨が入ってる・・・!

 そう思ったが口にはせず、俺はXブロイザーとなってみんなを腹の中に吸い込むのだった。

 

 

 

「おお、よくぞ無事で戻ったな・・・!」

 

 ヴァナラの村にたどり着くなり、族長の人が感極まった声で出迎えてくれた。

 どうも千里眼みたいな魔術で異常を感知していたらしい。

 

「うわっ・・・」

 

 水鏡に映った映像を見せられて思わず声が出る。

 あの洞窟から緑色の触手が大量に枝を伸ばし、周辺の森を浸食しつつある。一日もしたらこの森全体が覆い尽くされそうだ。

 

「恐らくあれは精霊力を求めて地脈沿いに増殖する。ついでに金属に根付くようじゃから、進行方向の生命と金物は全滅じゃな」

 

 あいつが地脈を汚染してたのって、水源がカドミウム汚染されてるようなもんだったのか・・・? それはマジでヤバいな。

 

「大破魔光の儀式を始める。術師は陣に入れ。ペトロワ殿と黒騎士姫の剣の使い手にも協力を願いたい。よいかな?」

「うむ、それが最善じゃろうな。カオルはこっちに来い」

「は、はい」

 

 あの、族長さん、師匠? ポンポン話が進んでますけど、どういう事?

 首をかしげていたらジラさんが説明してくれた。

 

「破魔光というのは封じの矢とも言いますが、あなたたちがこの森に来た時に攻撃した光です。魔力や呪い、《加護》の力などを退ける効果があります。大破魔光というのはそれを強化した儀式魔法ですね」

 

 そうか、あれか! 確かにあれ喰らった後はしばらく《加護》が働かなかった!

 

「ただ、問題はあれが植物ということじゃな。とどめを刺すには根まで枯らさぬといかんが、族長殿?」

 

 ペトロワ師匠の言葉に、族長さんが暗い顔で頷く。

 

「光ゆえに地の底までは届かぬ。地上部分のあれは滅せるであろうが・・・」

「ふむ」

 

 頷くと師匠がこっちを向いた。何を言われるかは想像が付くので、先回りして言ってやる。

 

「何とかしますよ。丁度それ向けのロボの力をさっき使ったことですしね」

「よし」

 

 師匠がいい顔でニヤリと笑った。

 

 

 

 儀式に参加する師匠とカオルくんを村に残し、俺とアルテは二人のヴァナラと一緒に迫り来る緑に向かって走っていた。

 ヴァナラの人の術で高速移動すると、ものの二十分ほどで小高い丘の上につく。

 森の向こう側から、木々の根元をかなりの速度で這ってくる緑の触手。時速十キロくらいはあるか? 普通の人間が全速力で走ってどうにか、と言う速度だ。

 緑の這った範囲では、下生えが枯れ始めているのがわかる。目の鋭いヴァナラの人によると、動物も死んでいるみたいだ。

 

「これからあなたに《見えない紐》を結びます。アルテさんにそれを持って貰って、合図があればあなたを引っ張り出します」

 

 と、ヴァナラの術師の人。俺とアルテには既に師匠の《心話》と《言語理解》の呪文がかかっているから、心で念じれば届くし、ヴァナラの人達との意志疎通も問題ない。

 

 作戦はこうだ。

 これから俺が地面に潜って、あの洞窟の奥にあるだろう、怪物シダの根を目指す。

 《大破魔光》の儀式が成功すれば地上のツタは全滅するだろうから、その後弱った根に俺のドリルでとどめを刺す。

 アルテは俺から合図があったら見えない紐を引っ張って、俺を地上に引っ張り出す。

 

「でもそれだと俺が地面に潜ってる間アルテ達は?」

「木の上に登っていますよ。見る限り、地面を這いはしてますけど木の上にまでは来ないようですから」

 

 言われてみれば確かに、緑の範囲でも大きな木は枯れてない。

 

「さあ、お早く。緑がもうすぐ来ます」

 

 ちっ、しょうがねえな!

 

「ハヤト、気を付けてね!」

「まあ何とかやってみるよ。チェインジ、ジェッターII(ツー)! スイッチ・オンッ!」

 

 再び俺の右手はドリルとなり、全身が白と赤の色彩を帯びる。

 

「ドリルアーム!」

 

 俺は飛び込みのように、両手を伸ばして地面にぶつかる。

 ドリルが地面を穿ち、俺の姿はあっという間に地中に消えた。

 

(こちらハヤト。アルテ、そっち大丈夫か?)

(うん、大丈夫。木の上にいればやっぱり安全みたい)

(儀式の方はどうなんです師匠?)

(まだもう一時間くらいかかる。そっちは地中でちゃんと目的地にたどり着けるか? 今は一直線に洞窟の方を目指しているようじゃが)

(あー、多分大丈夫です)

 

 地中型のロボの力を得ているせいか、何となく地面の中でも方向がわかる。

 少なくとも例のツタのいる場所は、頭の中で暗く輝く点として認識できていた。

 

(よし、それではこちらは儀式に集中する。着弾したら合図をするから頼むぞ)

(はい!)

 

 その後しばらく俺は無言で地中を掘り進んだ。

 俺の地中速度は多分時速20kmくらい。地中を進んでいる事を考えると驚異的なスピードだが、それでも空を飛んだり魔法で走ったりするのに比べれば随分と遅い。

 恐らくは儀式が発動するのと、洞窟地下に到達するのが同時くらいだろう。

 

(間に合え・・・!)

 

 右手のドリルの回転が心なしか速くなった。




この回のタイトル、「ドリルでルンルン クルルンルン」とどちらが良いか悩みました(ぉ
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