異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
爽やかな俺の朝は一杯のモーニング香草茶と絶叫から始まる。
「あら、お目覚め?」
「ぎゃあああああああああああああ! 出たぁぁぁぁぁ!?」
気がついたら目の前に変な仮面かぶった二人組がいた。
真っ暗なところでオペラ座の怪人みたいなのが二人もいたらそりゃびびるよ!
カサカサカサ、とゴキブリみたいな動きで手足を動かし、後ろ向きの四つん這いという器用な格好で後退する。
「あいたっ!」
ベッドから落っこちて動きを止めると、そのせいじゃないだろうが何とか頭が働くようになった。
わかったことひとつ、ここはどこかのお屋敷の一室だということ。少し古びてはいるが、掃除も手入れも行き届いている。明かりは小さなランプ一つ。
ふたつ、俺は誘拐されたけど拘束されてない。一応ベッドに寝かされていた。
みっつ、どうやら仮面の二人組は女性だ。マントを着けてるから体型はわからないし、仮面でくぐもってはいるが間違いなく女性の声。くすくすと二人で笑っている。
(辺りを見回すときは、首を動かすな。キョロキョロしてると目立つからな。
そう言う時は逆に考えるんだ。視線だけを動かして周囲を観察すればいいさと考えるんだ・・・)
アーベル卿!
聞こえて来た心の声に従って目だけで周囲を見回すと、俺は用心深く立ち上がった。
体のホコリをはたいて落としていると、くぐもった猫なで声。
「ごめんなさいね、ホッチョ・ペッパーさん・・・でよろしかったかしら? でもあなたの力をどうしてもお借りしたいの」
会釈してくる仮面の二人。戸惑いつつも、一応平和的に話しあいたい雰囲気は感じるので聞くだけ聞いてみることにする。ちなみに俺はまだ女装の芸人「ヤマブキ」の姿のままだ。
「と、いうと?」
「あなた、実は男の人でしょう?」
えっ!?
「ああいえ、誤解しないで欲しいんだけどそれをばらそうとか、それをネタにして脅そうとかそういうんじゃないの。お金はそれなりに持っているし」
「はあ」
気の抜けた返事をする俺。とは言え驚愕と警戒は解けない。
今まで誰にも、それこそカオルくんやお付きの魔術師にも見抜かれなかった変身なのに。
いやペトロワ師匠やガイガーさんクラスなら有り得るかも知れないけど・・・。
「でも、それなら何が目的なんです?」
「・・・」
二人がしばらく沈黙した。
んー? なんかモジモジしてる感じ? 正直仮面にマントの怪人がそう言うムーブするのは不気味なんですが。
やがて、二人が意を決したように頷きあって俺を見る。
「その・・・あなたのそれは幻影か変身の能力でしょう? お願い! その力を私たちにも使って欲しいの!」
はい?
あれか、この二人結構お年なのか?
歳を取ってシワとか増えたから、俺の変装というか変身能力を利用したいと・・・でもそもそもできるのかなあそれ?
「どういうことです?」
「それはその・・・」
「マデリーン、やっぱり見て貰った方がいいわ」
「そうね・・・それじゃ仮面を取るけど・・・驚かないでね」
「はい」
そう言って仮面を取った二人の素顔、下からランプの光に照らし出されたのは・・・肉がバサバサに干からび、干物みたいになったミイラの顔だった。
まぶたのない眼窩で、むき出しの目玉がぎょろりと動く。
「ぎゃああああああああああああああああ!?」
絶叫して俺は再び意識を失った。
爽やかな俺の朝は(ry
再度気がつくと、もう一度ベッドの上に寝かされていた。
俺に気を使っているのか、二人は再び仮面をかぶって部屋の隅。
視線を向けると、何やら小声で話しあった後にまたしゃべり始めた。
「ごめんなさいね。さすがに刺激が強かったかしら」
「せめて先に言っておいて欲しかったと思います!」
驚かないでねって言われても、顔に傷があるとかとてもお年寄りとか、そう言う方面じゃないかと思うじゃないですか!
「そうね、何しろ随分長い間この顔を見せたことはなかったもので、ごめんなさい。そうそう、私はマデリーン」
「ヘレンよ」
「・・・ホッチョ・ペッパーです」
流石に本名を名乗るのはまずいし、芸人の詐称ではなくガチのオリジナル冒険者族とバレるのもまずいのでこう名乗っておく。
女芸人と言う事で客集めてるのに男だってばれるわけにもいかないし・・・いや、この二人はもう知ってるからそれはいいのか。
「というかそもそもここはどこで、あなた方は何者なんです?」
少し考えた後、ヘレンさんが頷いた。
「いいわね、マデリーン?」
「しょうがないでしょうね・・・ホッチョ・ペッパーさん。あなた、ヴァンパイアって信じるかしら」
「え?」
俺は思わず真顔になっていた。
ヴァンパイアについての話は大体ペトロワ師匠から聞いたものと同じだった。
「つまりあなた方はヴァンパイア・スポーン?」
「ええ・・・どうも体の手入れが悪かったようで・・・」
「本物のヴァンパイアならともかく、スポーンというのは生ける屍とそう変わりないらしいの。肉体が傷ついても再生しないし、一定の湿度を与えないと肌が乾燥してミイラのようになるし、表面に油を塗っておかなければ肌が変色しておかしくなるわ」
「カビが生えたときには泣きたくなったものよ。私たちは永遠の美しさを手に入れられると思ってあいつの申し出を受け入れたのに!」
あいつ? まさかとは思うけど・・・ひょっとしてアルテの血を吸った奴じゃないだろうな?
そんな思惑は心の底に仕舞って、さりげなく聞いてみる。
「あいつって・・・あなたたちを吸血鬼にした奴ですか? どんなやつだったんです?」
「そうね、外見はがっしりとした貴族風のダンディだったわ。あなたの知ってる奴と同じかしら?」
バレテーラ。
「随分と顔に出やすいたちね。老婆心だけど直した方がいいと忠告しておくわよ」
ありがとうございます。ミイラのおばあちゃんに言われるとダメージもひとしおですが!
「今干からびた死体に言われたくないとか思ったでしょう」
すいません! でも正直な感想です!
謝るとお二人は肩をすくめた。
「まあいいわ、事実だし。ともかく二百五十年ほど前、私たちは当時三十代後半で、美貌も衰え始める年代だった。それで奴の甘言にまんまと乗ってしまったのね」
「・・・代償はなんだったんです? それともしもべとしてこき使われたんですか?」
ヘレンさんが首を振る。
「いいえ。彼は言ったわ。『友達になってくれないか』って」
「へ?」
友達? 吸血鬼が友達!? いや、吸血鬼が長生きしすぎて、一緒に時間を過ごしてくれる友人や恋人を欲しがるって創作はままあるからないことじゃないのか?
「本当にそれだけなんですか?」
「本当にそれだけだったわ。・・・もっとも、五十年くらい過ぎた辺りで彼は姿を消して、それ以来会ってないけど」
「捨てられたみじめな女二人組ってわけよ」
自嘲気味に笑うヘレンさん。
うーむ・・・
「そう言えばそいつの名前は?」
「『ドラキュラ伯爵』と名乗っていたわ」
「ちょっと待てやこらぁぁぁぁぁ!?」
この日三回目の絶叫が地下室に響き渡った。
タイトルはグッドモーニング・ベトナムのもじり。
ガンダムに意味はありませんし、目が醒める以上の意味もありません(ぉ