異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
ドラキュラ伯爵って。ベッタベタやんけ。名乗るにしてももうちょいとひねりの利いた名前があるやろが。ブラド・ツェペシとかアルカードとか。
何故か関西人になった俺は頭の中でツッコミを入れる。入れざるを得ない。
多分そいつがオリジナル冒険者族で、アルテの血を吸って火山を噴火させ、ヴァナラの森の奥に怪しげな実験室を作って人体実験を行い、重金属ツタで地脈と森を汚染しようとした犯人であろうから尚更だ。
「あの、どうされたので?」
「ドラキュラ伯爵が何か?」
「・・・いえその、伝承に出てくる有名な吸血鬼と名前が一緒だったので驚いただけです。確かもう千年以上前に退治されたので、間違いなく名前を騙ってるだけの別人だとは思いますが」
ブラム・ストーカーだっけ? 原作小説が確か百年くらい前、つまりこっちの千年前だったような気がする。まあ正確にはわかるわけがない。カオルくんなら知ってるかも知れないが。
ファンタジー世界でWikiとかネット検索とか出来る異世界スキルって強いよなあ・・・。
なお後日カオルくんに聞いたところ、1897年初版出版だったそうだ。知識量パねえ。
「ああ、そうだったんですね。わたくしどもはてっきり戯曲の『吸血鬼ドラキュラ』から取ったものと」
「あんのかよっ!?」
あれか、オリジナル冒険者族の誰かがコピーしやがったのか!
まあうまい商売ではある・・・のかなあ?
「戯曲の方のドラキュラが、伝承を元にしたのかも知れないわね」
「ああ、そうかもしれませんね・・・」
えらく疲れた気分だが、何とか精神を立て直す。
「それで? 彼はあなたの知っている吸血鬼なのかしら?」
「・・・ええ、たぶん」
有名な魔物ではあるが、吸血鬼自体そんなに数はいないらしい。
その上でオリジナル冒険者族の可能性が高いとなると同一人物としか思えない。
聞いた話では、そのドラキュラの戯曲もそれほど有名ではないらしいし。
「何があったのかしら? 差し支えなければ教えて頂いてもよろしい?」
んー・・・ここは教えちゃってもいいか? 多分だけどこの人たち、世故長けたとかそういう感じの人達じゃない。下手すると俺と大差ないレベルの世間知らずだ。アーベルさんや座長みたいな「油断ならない」雰囲気を感じない。
まあそこまで含めて俺が騙されてるのかもしれないが、それでも色々あっちの事情は教えて貰ったし、喋らないと帰して貰えないかも知れないし、これでもっと情報を引き出せるかも知れないし。
最後の理由が一番なんだからね! 別にこの人達にびびってる訳じゃないんだからね!
「かくかくしかじかで、仲間の女の子が噛まれまして。そいつの起こしたらしい事件に巻き込まれたりとか」
「そう・・・それは大変ね」
「手助けしてあげたいところだけど、聞いての通り私たちも二百年くらいあいつの姿は見ていないから、力にはなれないと思うわ。ごめんなさい」
まあそうでしょうね(溜息)。
「それで話を戻すけど、どうかしら。あなたの変装の力をわたくしたちに貸して頂けないかしら?」
「多分魔法ではなく《加護》なのでしょう?」
うーん、そう言えばそう言う話だったな。
・・・ここは素直に言った方がいいかなあ。
嘘をついても顔に出てばれるという話もある? さてなんのことやら。
「それなんですけど・・・実はこれ、自分にしか使えないんですよ」
そう言ったときの二人の顔は見物だった。
いや、もちろん仮面で顔は見えないのだが(見えたら困る)、全身で衝撃と絶望を表現していて、仮面で塞がっていてもどんな表情をしているかは想像が付く。
後ろに「ガーン!」とか書き文字が浮かんでないのが不思議なくらいだ。
二人が同時に崩れ落ちてorzする。
「そんな・・・見せかけだけでも美しさを維持できないなんて・・・」
「嘘でしょう! 嘘と言って! ・・・いえダメね、その顔は本当だわ・・・嘘をついていたら顔に出ないはずがない」
どれだけサトラレなんだ俺の顔。
「《幻影変装》の魔法は長持ちしないし、半日以上維持できるあなたの《加護》ならひょっとしてと思ったのに・・・」
「全ては無駄だったのよ! 保湿クリームもヘアコンディショナーも顔パックも、オリジナル冒険者族の叡智ですら私たちを救えないんだわ・・・!」
転生者パねえ。このファンタジー世界で全部再現したのかよ・・・
というか完全にミイラ化している外見をどうにかしたいなら、頼るべきは化粧品ではなく、頭蓋骨から生前の顔を復元するアレ(正式名称知らない)とかではないかと思うのですが。
「うう・・・」
「うううううー!」
床に突っ伏して号泣する二人。
誘拐犯ではあるが流石に気の毒になってきた。
あー・・・アレひょっとしたらいけるか?
「何?!」
「何かいい手があるのね!」
がばりと起き上がるミイラ二人。レスポンスいいなおい!
「えーとまあ、うまく行くかどうかはわからないんですが・・・」
「お願い、やって! 失敗しても責めないから!」
まあそういう事なら・・・と言うことで、俺は精神を集中させる。
念じるのは魔法。基本ロボットアニメはSF系だが、なにぶん沢山あるのでファンタジー系統のロボットアニメというのもそれなりにはある。
俺が念じるのはその一つ、前に水流魔法を使ったファンタジーSDロボアニメ「魔働機士アースゾート」のサブキャラ、魔法使いの老婆が使う様々な魔法の内の一つの変身魔法。
作中では主人公の男子を美少女に変身させていたから、多分ミイラを美女にするくらいは出来るはず。俺はこの数ヶ月続けた魔法の訓練を思い出しながら集中を高める――!
「ホレロチュチュパロレ! ・・・あっ、やべっ」
「やべってあなた・・・」
ぼむっと音がして煙が立った。
ぽとん、と落ちてきたのは一本のにんじん。赤々としてとても美味しそうだ。
今までその場に存在したヘレンさんの姿は影も形も無い。
「ヘレンー!? ちょっとあなたヘレンをどうしたの!?」
「ぐえーっ!?」
マデリーンさんが顔色を変えて(顔見えないけど)、俺の襟首をもの凄い力でガクガク揺さぶる。
考えてみるとあの作品で一番多用された魔法は魔法使いの老婆のそれではなく、孫娘(五歳)の「ニンジンを出す魔法」だった。最後の瞬間にそれを思い出して雑念が混ざったのか、「ヘレンさんを」「美女に」「変える」魔法に「ニンジン」が混ざり、「ヘレンさんを」「ニンジンに」「変える」魔法になったのではないか。
「戻しなさいよ! ヘレンを元に戻しなさいよぉ!」
「師匠、あなたは正しかった・・・」
「魔法を発動するときに雑念を挟むな」としつこいくらいに念押ししてきたペトロワ師匠を思い出しつつ、俺はみたび意識を失った。
HELLSINGのアーカードが「DRACURA」を逆さまにした名前だというのは最早常識ですが、それより数十年前、「14へいけ!」で有名なJ・H・ブレナンのゲームブック、「ドラキュラ城の血闘」でも同様の偽名を名乗ってドラキュラ伯爵が登場します。
「アルカード」だからカード職人とかちょっとダジャレ過ぎやしませんかね、ブレナン先生。