異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十一話 とらわれのお姫様(女装)

「私は籠の鳥・・・」

 

 空が青い。いつの間にか夜が明けて、気持ちのいい昼下がりである。腹がひもじい。

 俺は鉄格子の隙間から空をぼーっと眺めてた。

 あの後激怒したマデリーンさんを何とかなだめ、何回もの試行錯誤の末に呪文を逆に唱えてニンジン化を解除したのだが、マデリーンさんの怒りは収まらず、こうして屋敷の塔に閉じ込められてしまったのだ。

 

 この石造りの牢獄がやたら頑丈で豪子力ビームでも壁に焼け焦げを作っただけ。

 鉄格子も65万馬力のデモゴディに匹敵する怪力のスーパーボロロボット・ボボットの力をもってしてもびくともしない。

 

 これは多分魔法かなにかで強化されてるのもあるが、ニンジンにしてしまった申し訳なさと、彼女たちの境遇にうっかり同情してしまったのが原因なのだろう。

 俺が最大の出力を出すには強い感情が必要だが、今は言ってみればデバフがかかっている状態だ。誘拐犯ではあるのだが、どうにも彼女たちは憎みきれない。

 

 それでもジェッター2のドリルならわからないけど、やったらすごい音がして一発でばれるだろうし、そうしたら彼女たちがすぐさま飛んでくるだろう。

 本物ほどじゃないが、ヴァンパイア・スポーンの感覚は人間よりかなり鋭いらしいし。

 

「おーい、空の雲よー。お前はどこへ行くんかー」

 

 そう言うわけで空の雲を眺めながら馬鹿なことを言っていると、小鳥が飛んできた。

 

「チチチ、チュン?」

 

 窓枠に止まり、首をかしげる小鳥。

 

「リタの《加護》が俺にあればなあ」

 

 溜息をつく。

 《加護》は一人一つ。これは絶対のルールだ。

 まあ何種類もの魔剣を呼べるカオルくんとか、それこそ俺みたいに無数のロボットアニメからチョイスできるような汎用性の高い奴もある。

 ただ、ペトロワ師匠によればこれも鍛え方次第で、例えばもっと一般的な《剣の加護》にしても、鍛え方次第で威力重視の剛剣になったり、剣速を早めたり、あるいはひたすら剣を頑丈にするような効果、剣そのものを伸縮自在にするようなのもあったらしい。

 極めれば「最初のサムライ」のように斬撃を飛ばすことも出来るとか。

 そうなると俺もある程度そういう事を考えながら鍛えた方がいいのかな。

 

「チュチュチュン」

「あ」

 

 そんな風に俺が現実逃避していると、小鳥は一声鳴いて飛び去ってしまった。

 ・・・あれから御飯も何も出して貰えないし、捕まえておくべきだったかもしれん。

 溜息をつき、俺は布団もない木のベッドに寝転がった。

 

 

 

 

「ピチチチ、チュンチュンチュン」

「見つけたよ! お兄ちゃん、町の西北の方のお屋敷にいるって! 少し古めで、赤い屋根。高い塔があるって!」

「おお!」

「でかしたよリタ!」

 

 シルヴィアに手荒く頭を撫でられ、リタが嬉しそうに笑う。

 昨夜ハヤトが消えて以来、彼女は手当たり次第に小動物に声をかけ、彼の行方を捜していた。

 それがようやく実を結んだというわけだ。

 

「さ、召し上がれ!」

「ピピッ♪」

 

 自分の体重くらいの雑穀の山に狂喜乱舞する小鳥をよそに、人間たちは視線を交わした。

 

「それじゃ行くよ。リタ、眠くて疲れてるだろうけど案内頼むよ」

「うん、わかってる!」

「ピッ?」

 

 抱き上げられて困惑の声を漏らす小鳥。

 

「もうちょっとお願いね。そこまで案内してちょうだい」

「チュチュン!」

 

 鳥かごに入れられた鳥が元気よく返事する。

 雑穀も一緒であったから、籠に入れられたことは全く気にしていない。

 

「それじゃ行くよ!」

「みんな、くれぐれも油断せぬようにな。きゃつらはわしの探知の呪文を弾くほどの手練れじゃ。その根城となれば何が飛び出してきてもおかしくはない」

 

 シルヴィアの檄とペトロワの警告に無言で頷く一座の面々。

 鳥かごを持った娘をガイガーが片手で抱き上げ、一行はオブライアンを留守番に残して足早に動き出した。

 

 

 

「・・・ん?」

 

 うとうとしていた俺は、騒ぎの音で目がさめた。

 太陽は余り動いていないから一時間ほど眠っていただろうか。

 

「きゃああああ!」

 

 マデリーンさんだかヘレンさんだかの悲鳴で寝ぼけ頭が覚醒する。

 

「チュチューッ!」

 

 何が起きてるんだ!? そう思って跳ね起きた瞬間、窓辺に聞き慣れたハムリスの鳴き声と姿。普通のハムリスではあり得ない真っ赤なそれは。

 

「アカフク!?」

「チュー!」

 

 慌てて窓から外を覗いてみると、屋敷の門の前に見慣れた小さな姿。

 

「リタ!?」

 

 ぴょんぴょん跳びはねて、嬉しそうに手を振ってくる彼女に手を振り返す。

 

「つまり・・・みんなが来てくれたのか!」

 

 その瞬間思ったのは「助かった!」よりも「ヤバい!」だった。

 あの人達、確かに力は強かったけど多分実戦経験はない。

 うちの連中とガチでぶつかったら跡形も残らん!

 

「ハヤト! 無事!?」

「アルテ!?」

「良かった、扉の前からどいてて! ぶち破るわ!」

「ちょ、ま・・・」

 

 返事をする暇もなく、分厚い鉄の扉がひしゃげて吹っ飛んだ。

 重い音を立てて壁にぶつかり、跳ね返る扉。あぶねえ! ちょっとかすったぞ!

 

「ああ、良かった!」

 

 飛び込んできたアルテが俺を抱きしめる。

 やっぱ本物の女の子の身体は柔らかいなあ・・・じゃなくて!

 

「アルテ! あの人達はどうなった!? まさかやっちゃった?!」

「え?」

 

 きょとんとして顔を上げるアルテ。

 そこにガイガーさんが入ってくる。

 

「ついて来い」

 

 あ、ちょっと待って下さいよ!

 そのまま無言で階段を下りるガイガーさんに、俺はあわてて、アルテは戸惑った顔でついていったのだった。

 

 

 

「いやー! 死にたくないー!」

「私たち悪い事は・・・ホッチョ・ペッパーさんをさらったのは悪い事だけど、それ以外悪いことしてないー! 血だって人間の血を吸った事なんてないんだからー!」

 

 下に降りると、居間がやかましかった。

 縛られたマデリーンさんとヘレンさんが大声でわめき散らして、おんおん泣いている。

 この手のアンデッドには特効であるサンダースウォードを持ったカオルくんとペトロワ師匠、頑丈なラファエルさんが拘束された二人を見張っていたが、いずれもうんざりした顔をしていた。

 マデリーンさんたちの召使いらしき年かさの男女も数人いたが、彼らまで一様に同じ顔である。

 

「あ、ハヤトくん! 無事だったんだね!」

 

 俺に気づいたカオルくんの顔がパッと明るくなる。

 あー、普段はきりっとした顔が嬉しそうに笑うのってかわいいんじゃー。

 ギャップ萌えって奴だな!

 

「いたいいたいいたい」

 

 そんなことを考えていたらアルテにほっぺたをつねられた。今の俺が悪いの!?

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