異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「たすけてー! こんな姿のままじゃなくてせめて美しく死にたいー!」
じたばたじたばた。
「でも死ぬのはやっぱりいやー!」
じたばたじたばた。
「もういっそ、褒めたいくらいの見苦しさだな・・・」
「そーだね・・・」
アーベルさんと呼ばれて来たリタが呆れたように溜息をついた。
「あのー、お二方」
「ホッチョさん!」
「ホッチョ・ペッパーさん!」
俺に気づいた途端、二人は顔を輝かせ(見えないけど)、芋虫のようにズリズリと高速で這って近づいて来た。正直キモイ。
「おねがい、この人たちに言って上げて!」
「私たちあなたにひどい事するつもりなんかなかったって!」
「えー、でも御飯食べさせて貰えなかったし」
ちょっと意地悪な顔でそう言うと、二人が慌て始める。
「そ、それは・・・」
「だってあなたがヘレンをニンジンにするから・・・」
「ニンジン?」
それがかくかくしかじか、と説明すると一斉に呆れた顔をされた。
「まー、それに関してはお前が悪いわなあ・・・」
「ニンジンに変えられたら誰だって怒るのですぞ」
そこは反省しております、はい。
取りあえず二人を落ち着かせてから、話を始める。
「実はこれこれしかじかで」
「・・・なんとまあ、それでか」
「そう言えばばあさん、呪文が弾かれたから向こうには手練れの術師がいるとか言ってなかった?」
「少なくともこの館にはそうした術がかかっておる。何と言うか、術式の手応えもあの城や女神像に感じたものと似ておったから、恐らくはあの吸血鬼かと思っておったんじゃがのう」
と、肩をすくめるペトロワ師匠。
まあ本人はとっくにいなくなってて、館に残ってるのは元カノだけとか思わんわな、ここ最近の流れで。
「ちょっとあなた、今不穏なこと考えなかった?」
「そうよ、私たちが捨てられたボロ雑巾とか哀れな老婆とか!」
そこまで言ってねえよ! いやそもそも口には出してねえ!
「ハヤトって意外と演劇向いてるかも知れないね。頭の中で考えた事をここまで表情で表現できるのも一種の才能だよ」
心底呆れた顔で言うシルヴィアさん。うんうんと頷く奴が何人か。
そんな才能欲しくありません!
「でもどうするんですこの人たち? 一応人間の血は吸ってないみたいですけど・・・」
「馬を飼ってるのよ! 馬車用って事で! 流石に馬なら月に二回や三回血を吸ってもどうってことはないし!」
「・・・馬でいいんですか、吸血鬼?」
「生き血なら何でもいいらしくはあるのう。取りあえず案内せい。わしとリタで調べちゃる」
と、二人とリタ、ガイガーさんを連れて出て行ったペトロワ師匠だが、すぐに戻ってきた。彼女らの言った通り、馬は定期的に血を吸われていたらしい。
後吸血鬼に血を吸われるときは魔力で痛みを消すので痛くないのだとか。蚊かよ。
「となるとぉ・・・後はウチの若いもんをさらってくれた落とし前だねえ」
「「ひーっ!」」
凄みのあるシルヴィアさんの笑顔。怯える二人。
こーゆーとき、この人は飲んだくれのだらしない三十女でも仮面の歌姫でもなく、ヤクザの女組長みたいな感じになる。緋牡丹博徒とか極道の妻とか。
「人をヤクザみたいに言うんじゃないよ、ハヤト」
せやから言うてへん!
「まあそれはともかく、どうする気だい? そっちの誠意によっちゃあ、あたしらもちょーっと対応を考えないといけなくなるからねえ」
「「ひいいいい!」」
座長! セーブ! 顔セーブ!
「それじゃあまあ、やっこさんを探すのを手伝って貰おうかの。取りあえずサンプルを貰おうか」
「やっこさんって、くだんの吸血鬼をですか?」
なんでもアルテやカオルくんたちに倒されたスポーンたち、洞窟の実験体や器具、そうしたものから魔術的なサンプルを取っていたらしい。
例の「ドラキュラ伯爵」は自分の居場所を魔法で探知されないよう、用意周到に術を張り巡らせているが、そうしたサンプルが多いほど見つけられる可能性が高まるそうだ。
共感呪術とかなんとか、説明を聞いても良くわからなかったが、カオルくんによると丑の刻参りで人形に相手の髪の毛を入れるようなものとのこと。相手との繋がりが多く強いほど術は威力を増すのだそうだ。
「なるほど」
「後はまあここの家捜しじゃの。大した物は残ってないじゃろうが、何か手掛かりが残っておるかもしれん」
「いい酒もね!」
あんたはちったぁ控えろ、酔っ払い。
顔色を気取られないように座長の後ろで心の声。
「姑息なのですぞ」
「けだし技というのは姑息な小細工そのものさ。俺に言わせりゃ引っかかる方が悪い」
ええいうるさい。
「わっせ、わっせ」
「先生、ここでいいですか」
「うむ、後どれくらいじゃ」
「おばあちゃんが指示したのは後一箱だよ。私が持って来ちゃうからカオルたちは休んでて」
すいません、お手伝いできませんで。
「ハヤトは閉じ込められてたんだからしょうがないよ。力持ちのアルテお姉さんに任せなさいって」
ありがたやありがたや。
パンパンと柏手を打ってアルテを拝むと、俺はまた皿に向き直った。
「お代わりお願いします」
「は、はい、かしこまりました」
スープを一口に飲み干して召使いの人に言うと、慌てて台所の方に早足で消えていった。
何せ昨日の夜から半日以上何も食べてないもので腹が減って腹が減って困る。
ので、食事を持ってきて貰ったのだ。
同じテーブルにはリタがついているが、テーブルに突っ伏してすやすや寝息を立てていた。
「一晩中鳥や野良猫に話しかけて、あんたの事を探すように頼み込んでたんだよ。起きたら礼を言っておきな」
「はい」
かわいい寝顔をそっと撫でて視線を座長に移す。
「で、なんでワインをグビグビやってるんですか」
「地下で見つけた。上物だよぉ。あんたもやる?」
このよっぱらいめ。
「いいじゃん、あたしだって心配したんだからそのツケを払ってもらわにゃ」
「心配しただけにしては随分と高価な代価であると思うのですが!」
ワインの目利きなんか出来ないが、ラベルの年代から見て結構なヴィンテージだ。
50年超えたらさすがに値段跳ね上がるよな? 冷蔵庫のない世界なら尚更。
「あ、ワインセラーには彼のかけた保温の魔法がまだ生きてるから・・・」
魔法で作った冷蔵庫って事か、なるほど。
「それで師匠、何か役に立ちそうなものはありました?」
「意外に貴重な魔道具が残ってはおったの。ただ、手掛かりになるかというと・・・」
アルテやカオルくんたちが運んできたものを調べながら師匠。
「・・・アルテのリミットももう半月を切ってますよね?」
「ああ。急がねば・・・」
師匠の言葉が途中で途切れる。
ぱちん、とテレビのスイッチを切ったような感覚。
視界が暗転する。
そしてその瞬間俺が思ったのは。
「もう一杯スープ飲みたかった・・・」
我ながらどうなんだろうこれ。