異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「あー、生き返るー・・・でも腹減った・・・」
太陽が砂漠の地平線に沈む頃、何とかオアシスにたどり着き、綺麗な水で喉を潤す。
ちなみにオアシスと言っても町はなく、ほんとに泉といくらかの緑があるだけだ。
それでも魔法の使えない人間には砂漠の生命線なんだろう、泉の回りには人のいた痕跡がそれなりにあった。
「師匠ー。魔法で飯出して下さいよー、飯ー」
最早立ち上がる気力もなく、だらしなく転がる俺。目を覚ましたリタも、無言で師匠を見つめている。師匠はそんな俺たちに溜息をつくと、よっこらしょと立ち上がった。
「しょうがないの・・・」
「え、ほんとに出せるんですか?」
「おまえたち、ちょっと何か集めてこい。葉っぱでも木の枝でも、魚でも虫でも構わん」
「あー・・・あれやんの?」
嫌そうに言ったのはシルヴィアさん。
「嫌なら食うな」
同じくらい嫌そうな顔で師匠が言い返し、溜息をついて座長は立ち上がった。
十数分後、集まったのは師匠の言う通り木の枝、葉っぱ、石の裏に這ってるだんご虫みたいなやつ、後泉の中の魚。最後のだけが普通に食えそうだ。
「・・・釣り竿も網もないのにどうやって捕まえたんだい?」
「カオルくんが一晩でやってくれました。水の中に鞘の先を突っ込んで、泳いでる魚をこう、ぽんぽんとすくい上げて」
剣の鞘で、それなりにすばしこく泳ぐ魚を金魚すくいしたわけだ。
すげーなおい! 超人拳法の達人かよ!
そう言ったらカオルくんが照れた。
「いやあ・・・」
「そう言うわけで、今日からカオルくんのことをクマさんのカオルくんと呼びたいと思います。略してカオクマくん」
「何でクマなの!?」
なんかエアコンの名前みたいだな! 個人的には素晴らしいネーミングセンスなのでこのオアシスをカオクマくんのオアシスと呼びたいと思うが、カオルくん本人は気に入らないようだった。
「おや、クマはお嫌いで?」
「普通に嫌だよ!」
鮭の上ってくる季節になると、ああやってぽんぽん取ってるじゃないか。
まあ俺は空気の読める男だ、カオルくんが嫌と言うならやめておこう。
「言わなくてもわかってよ! ・・・おなかが空いてるから馬鹿な事考えるんじゃないの?」
多分そうだと思います、サーセン。
「それでおばあちゃん、これどうするの?」
「ああ、リタ達は初めてか。まあ見といで」
座長が肩をすくめると、師匠は呪文を唱えながら地面に手を突く。
と、地面がもこもこ盛上がって形をとったかと思うと、数秒してそこには1メートルくらいの大きな土鍋が姿を現していた。
「おおー」
思わず一座から声が漏れる。ちょっと触ってみたがすべすべしたちゃんとした土鍋で、叩くと固い音がする。
「これも魔法ですか、先生」
「《
木から金属を作り出したり、逆に土を肉にしたりするのはちと難易度が高いがの。
さ、集めてきた物を中に入れるんじゃ」
俺達が木の枝やら葉っぱやらを入れると、再び師匠が呪文を唱え始める。
「《
「《
「《
「《
まず最初の呪文で、中に入れた物の形が少しずつ変わり始めた。細かく分解され、ボロボロと崩れて粒になる。そして次の次の呪文で、それは魚肉入りの穀物雑炊になった。
「おお!」
歓声を上げる俺達。
「《
最後に一握りの土くれに術をかけるとそれは白い塩になり、師匠はそれを鍋にぶち込んで、いつの間にか作っていた瀬戸物のお玉でかき混ぜる。一口味を見て師匠が頷いた。
「ま、こんなもんじゃろ。召し上がれ」
「頂きます!」
「あ、待ちな・・・」
こちらもいつの間にか用意されていたお椀に雑炊をすくい、口の中に流し込む俺。
一日以上ろくな物を食べていない上にさんざん歩かされて俺の中のカロリーはからっけつ。
だが俺はこの時考えるべきだったのだ。
最初に座長が嫌な顔をした理由を。
「ブーッ!?」
「わ、汚い!」
口の中に流し込んだ瞬間、俺はそれを吹き出していた。
「こりゃ! 食い物を粗末にするでない!」
「だって師匠!? これ
げっ!?という顔になる一同。そうじゃないのは座長と師匠だけだ。
「体調を崩すほどおいしくないですよこれ! どうにかして下さいよ!」
「これでも消臭の魔法をかけておるから青臭さやえぐみは随分とマシになっておるわい! 栄養もちゃんとある!」
「おばあちゃん・・・魔法でも料理下手なの?」
嫌そうに顔をしかめたのはアルテ。だがそれは師匠の怒りに火を注いだだけだった。
「やかましいわ小娘! 変性するったって道具もない、触媒もない、この短い時間でできるこたぁ限られとんのじゃ! 葡萄の汁が一日でワインになるかい! 魔法を使えばまだしもじゃがな!」
「じゃあ魔法を使って下さいよ・・・味を変える魔法とかないんですか?」
そう言ったら、師匠ではなくシルヴィアさんが俺の肩に手を置いた。
そして沈痛な顔で首を振る。
はっと気付いたのはカオルくんだった。
「ハヤトくん・・・ほら、魔法って使い手のイメージが問題になるって何度も教わったじゃないか?」
「ああうん、それが?」
「つまり味付けをする魔法にも、そのイメージが重要だと思うんだよ・・・」
「・・・ああっ!?」
その瞬間、俺は全てを理解した。
つまり神に見放されたメシマズである師匠が味付けの魔法を使ったら、そのメシマズのイメージがそのまま味付けになるのだ!
「覚えておきな、ハヤト。人間はね、味だけで死ねるんだよ」
「殺してはおらんじゃろうが!」
「ピクピク痙攣して動かなくなったのを術で何とか助けたんだろうが! あのままほっといたら死んでても驚かないよ!」
「ぬぐう・・・!」
沈黙する師匠。
体調を崩すどころか命に関わるほどであったか・・・!
そして一同の視線は自然と鍋の方に集中する。
「・・・で、どうするの、これ」
「まあ食わなきゃ、明日歩けないだろうねえ・・・あ、ハヤトは死んでも食いな。最悪《加護》で運んで貰わないといけないし」
「シルヴィア座長・・・あなたはクソだ」
「ねえ、これ、さっき捕まえてきた虫とか入ってるんだよね・・・」
「言わないでよリタ?!」
「わ、私たちは普通の食べ物はいらないから・・・」
「こいつら逃げる気だ!」
阿鼻叫喚であった。
食の神様、毎日干し肉と雑穀雑炊だけで飽きるとか贅沢言ってすいません。
きちんとした材料で、きちんとした調理で、きちんとした味と言うだけでこんなに贅沢だったんですね・・・
それがわかっただけでもこの材木雑炊は有意義な事件でした・・・
二度と食いたくはないけどな!