異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
砂漠とはいっても、ピラミッド周囲は乾燥しているだけで砂地ではない、いわゆる岩石砂漠だ。荒野とも言う。日射しはキツイし風もそこそこ強いが、足を取られることもなく一時間半ほどで俺達は「町」に到着した。
幸い住人たちも俺達と同じような格好をしている者が多く、どうやら怪しまれてはいないらしい。
「・・・ほんとにバラックですね。貧民街というか、テント村というか」
「というか難民キャンプ?」
「それだ」
カオルくんの表現に思わず手を打つ。
粗末な建物とテントというか、布を張っただけの避難所みたいなものが密集しているその様子は、地球で見たもののなかでは世界各地の難民キャンプが一番近い。
「意味はわからんが大体イメージは伝わるの」
「しかし遺跡の周囲にこれだけの人間が集まる・・・遺跡荒らしで食ってるのかねえ?」
「あー、有名なダンジョンの回りに村や町が出来るとかそういうやつ」
さすがファンタジー世界、そう言うのがあるんだな。ちょっとロマンを感じる。
なお一部では千年以上未だ攻略され続けるダンジョンもあるとか。
「どうじゃろうの。遺跡荒らしの村にしちゃあちと規模が大きすぎる。神の思念が生み出すダンジョンと違い、真なる魔法文明時代の遺跡は広大ではあっても有限じゃからの。
それよりありそうなのは・・・」
「あそこにまだ、主がいると?」
カオルくんの問いに、師匠が無言で頷いた。
言葉のわかる人間で分かれて話を聞いて回る。
ここの人達に限らず、この世界の言語は神代から基本的に統一されている。ただ、数千年から一万年くらいの間に随分と言語も変化してしまっていて、地域性が強く出ているのだそうだ。
「江戸時代までは日本でも青森と鹿児島の人が会ったらほぼ言葉が通じなかった」とはカオルくんの言。鹿児島というか薩摩は幕府の忍び対策として故意に言語を変化させてたそうだが、まあそれがなくても余り変わらなかったんじゃないかな。
それはさておき組み分けである。会話担当はオリジナル冒険者族で翻訳能力をデフォで持ってる俺とカオルくん、こちらの方言もほぼ完璧にこなせるペトロワ師匠(この人どれだけ物知りなんだ)、そして驚くべき事にリタ。
「リタの《加護》って動物との会話じゃなかったの!?」
「私の《加護》は《会話の加護》だよー。話せる相手なら何でも話せるんだって」
「正確には音で意志を通じ合う存在であれば何でも、じゃな。動物はもちろんじゃが、鍛えれば恐らく霊魂や植物の声も聞こえるようになるじゃろう」
おおすげー。
えっへんと胸を張るリタの頭を撫でてやると、むふうと満足そうに息をついた。
ともかく班分けは俺とアルテ、カオルくんとマデリンさん、師匠とヘレンさん、リタと座長。
言葉がわかるけど子供のリタに世故長けた座長をつけて、マデリーンさんとヘレンさんの面倒見れそうなカオルくんと師匠を二人に当てて、俺とアルテが余り物コンビだ。
「やったあ!」
「ちぇー」
「私もお兄ちゃんと一緒が良かったなぁ」
すいません、マデリンさんたちの面倒見られるほど強くなくてすいません。でもそっちの二人は言語理解できるからどのみち俺とは別グループだと思うよ?
三時間ほど手分けして話を聞き込んだ俺達は、決めておいたとおりバラックの中の(まあバラックしかないけどここ)粗末な飯屋に集合していた。
山羊らしい肉のスープと、粒の小さな穀物のゆでた奴というメニュー。
「あ、これ雑穀じゃなくてパスタの一種だね。練って細かくちぎった奴。地球だとクスクスって言ったかな」
相変わらず博識なカオルくんである。どうもアフリカ北部から中東にかけてはかなりメジャーな料理らしい。
「それで・・・」
と、交換した情報は大体一致していた。
・あのピラミッドは「空の王宮」と呼ばれていて、王様が住んでいる
・この町ターゲイはこの周辺最大の都市、というかそもそも近辺に都市と言えるレベルのものはない
・ターゲイの人口は推定五万人ほど。つまりロンドの王都よりでかい
・住人の半分くらいは家族が王宮に仕えており、報酬として食料や物資を得ている
・残りは交易やサービス業で糧を得ており、砂漠の遊牧民や隊商が多く立ち寄る
「この砂漠でこれだけでかい都市ってのはすごいなあ」
「それなんだけど・・・家族が王宮に仕えているって話があったろ?
あれ、10才くらいのときに子供はみんな王宮に連れて行かれて、選ばれた子が戻ってこないで王宮に仕えるんだってさ。子供が帰ってきたことはなくて、家族にはその後何十年か食料や物資が下賜されるんだと」
「・・・!」
シルヴィアさんの言葉に場が固まった。
「それって」
「『働いてる』んじゃなくて、『さらわれてる』んじゃ・・・?」
「・・・現状では何とも言えんのう」
ペトロワ師匠は断定を避けたが、俺達の敵が吸血鬼である事を考えると、最悪の想像を抑えきれない。
「まあ、王宮の兵士になった息子を見たって話もあるんだけど・・・王宮の外に出ても家に帰ってくることはないんだって」
「魅了の魔眼って奴だっけ・・・?」
地球でも吸血鬼が相手を魅了して思い通りに操るという話はある。
この世界の吸血鬼にも、そうした能力がしばしば見られると。
火山の内輪山の城にいたアードップに、自分で自分の首を切らせたのも多分それだ。
あの時あいつは自分のやっていることに恐怖しながらも、吸血鬼の命令に逆らえなかった。
魅了がどれほど長持ちする物かはわからないが、王宮の兵士もそうなのだろう。
「可能性は高いが断定は避けるべきじゃな。まだあの宮殿の主があの吸血鬼、仮称ドラキュラ伯爵と決まったわけでもない」
「まあそれはそうですね・・・で、これからどうしましょう」
俺がそう言った瞬間、ぴりっと緊張が走った。
俺の言葉のせいじゃない。
座長の後ろに立った一人の人物のせいだ。
「失礼する」
どこがどうと言うんじゃない。
その辺をいくらでも歩いていそうな薄汚れたフードつきマントの人物、声からして多分男。
だが、ただそこに立ってるだけで周囲の緊張感を誘う何かがあった。
「どちらさんだい? 悪いけど今大事な話をしていてね」
「こちらも大事な話だ。遠方よりの
「ふむ」
マデリーンさんとヘレンさんがびくりと肩を震わせ、師匠が興味をそそられたように片眉を動かした。
「それで、荒事がお望みかの?」
「そちら次第だ・・・だが、まずは話をしたい」
師匠と座長がちらりと視線を交わす。
座長は頷くと、コップの酒を飲み干して立ち上がった。
「いいだろ、案内しな」