異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
案内された先は、ターゲイの周囲にいくつかある岩山の一つだった。
周辺には小さな泉と緑、小規模なテント村があり、男はその間をすり抜けて岩山に開いた洞窟に向かっていく。洞窟の手前で松明を取り出して火をつけると、俺達を促してその中に入る。
「お・・・」
「これは」
洞窟の中は、原始的ながらそれなりに人の手が入った神殿のようになっていた。
あの空色のピラミッドみたいなオーパーツじみた奴では無いが、岩窟寺院とかカタコンベとかそんな感じで岩を削った通路と階段が地下に続いている。
「ふむ・・・」
壁にはびっしりと絵や象形文字のような物が刻まれており、師匠が熱心に眺めていた。
やがて階段は終わり、学校の教室くらいの地下室に出た。
むしろのような物を敷いたところに座るように勧められ、黒い飲み物を出される。コーヒーみたいだがちょっと違う、香辛料のような味がした。
しばらく経つと一人二人と人が入って来て、八人くらいの男女が来たところで俺達を案内してきた男がフードを脱ぐ。
「・・・」
座長やカオルくんたちの表情が僅かに厳しくなった。
一言で言うと軍の特殊部隊の隊員。もしくはアウトロー。両方かも知れない。
ぼさぼさのざんばら髪に片目を覆う布。年の頃は三十から四十くらいか。
フードを取る前の雰囲気そのままの、油断ならない顔付き。
「ジャルネイオ、そいつらが?」
「ああ。言い伝えの『生なきもの』だ」
八人の男女の視線がフードと仮面を取らないままのマデリーンさんとヘレンさんに集中する。
二人が揃って身を縮こまらせた。
それをちらりと見やって師匠が口を開く。
「それで? わしらは状況がさっぱりわからん。出来ればそちらから説明して欲しいんじゃがの」
向こう側の人達の視線が片目の男ジャルネイオに向くと、彼は僅かに頷く。
「ではまず名乗っておこう。聞いたと思うが俺はジャルネイオ。"
「わしはペトロワ。太陽とは空の宮殿の主のことかな?」
師匠がそう言うと、ジャルネイオさんは不愉快そうに顔を歪める。
「そうだ。太陽神などと名乗っている、あの吸血鬼のことだ――!」
俺達は思わず顔を見合わせた。
ジャルネイオさんの話によると、やはりあの空色のピラミッドの主は吸血鬼だったらしい。
太陽神レーと名乗り、言い伝えではあのピラミッドと共に世界創世から存在し、この地を支配しているという。
「バカバカしい。あれがいつ作られたか正確にはわからんが、少なくとも五千年は経っておらんわ。そもそも《百神》が天に昇るより以前は吸血鬼など存在しなかったわい」
もっとも、師匠に言わせるとこうなる。吸血鬼は
まあ数千年でも普通にすごいとは思いますが!
「お前達が話していたとおり、選別された子供は奴のエサになる。時には血を吸われたまま、生なき生を与えられるものもいると聞く」
「ヴァンパイア・スポーンか」
再びマデリーンさんたちに集中する視線。
自分もチラリと視線を向けて、ジャルネイオさんは話を続ける。
「他の子供たちの使い道は様々だ。奴の世話をするもの、宮殿の雑用に回されるもの、兵士になるもの。どこへともなく消えていくものもあるらしい。いずれも奴の魅了に支配され、逆らえなくされているようだ」
師匠の表情が堅くなる。
「宮殿には・・・どれくらいの人数がおるんじゃ?」
「聞いた話では千から二千ほどだそうだ。ちゃんと数えたわけじゃないから余り当てにはならんがな」
「なるほどのう」
溜息をつく師匠。
って、それってその人数全員に魅了の視線をかけているってこと・・・?!
「そうじゃ。元より真祖の上にオリジナル冒険者族、並の相手ではないとはわかっていたが、これは魔術の補助があるとしてもかなり桁外れの力を持っていると考えるべきじゃろうな」
洒落にならん・・・!
「しかし、どうやってその情報を手に入れた? 魅了が完璧ならば、宮殿の中の様子などわかるまい」
ニヤリ、とジャルネイオさんが唇を歪めた。
「ご明察だ。あいつの魅了も永遠ではないのか、それとも生まれつき耐性のある人間がいるのか、時折魅了を逃れて逃げ出す子供――あるいは元子供がいる。
俺達の組織は、そうした元子供の一人によって作られたのさ」
なるほど・・・。
「創設者がレーに不満を持つ者を集めてこの組織を作り、逃げてきた連中を保護してはそれを積み重ね・・・そうした事が続く内に、俺達もある程度宮殿の中のことを知る事が出来ている。
だがこの300年間、奴を倒すという最終目的はついに果たせていない」
「武装蜂起とかはしなかったんですか」
と、カオルくん。
ジャルネイオさんが首を横に振る。
「100年ほど前の同志達が入念に計画を練り、三千人の戦士を集めて宮殿に攻め込んだことがある。結果は無惨なものだったよ。宮殿の兵士達は大半殺したんだが、奴に近づいた戦士達は皆死んだそうだ。剣でも呪文でもなく、ただ死んだ。
その時に"
悔しそうに拳を握るジャルネイオさん。
「今の俺達は奴の家畜だ。俺は家畜のままで死にたくはない」
「・・・」
拳を振るわせる彼にかける言葉もなく、沈黙する俺達。ジャルネイオさんの仲間達も同様の表情で俯いている。
「だが」
そこでジャルネイオさんが再びニヤリと笑った。
「どうやら俺達は幸運に恵まれているようだ。優れた術師と戦士、そして『生なきもの』を一度に手にすることが出来たのだからな」
「ふむ・・・そなた、最初から彼女らにこだわっておったようじゃが、ヴァンパイア・スポーンが何か重要なのかえ?」
師匠の質問に、彼は軽く首を振った。
「俺も詳細は知らん。ただ二百年ほど前、組織に加わっていた魔術師がこんな言葉を残している。『レーを倒すには、奴の血を受けた生なき者を味方につけねばならない』とな」
「奴のスポーンを、な・・・」
「おばあちゃん何か心当たりあるの?」
「いや、さっぱりじゃ。普通の吸血鬼ならまだしも、真祖ゆえの何かと言う事か?」
首をひねる師匠。この人にわからないとなると誰にもわからんだろうなあ。
「まあ、まずわしらとしては確かめねばならん事がある。その太陽神とやらが、本当にわしらの追っている吸血鬼ドラキュラか、ということじゃ」
確かに。でもどうやって調べるんだ? 師匠の探知魔法もブロックできるくらいの術師、なん、だし・・・
言いつつ、表情が引きつっていくのが自分でもわかった。
「まあ心配はいるまい。丁度サンプルもあるし、あの宮殿に忍び込めそうな人材の当てもある・・・のう、小僧?」
震える俺とヴァンパイア・スポーン二人。にまあ、と師匠が邪悪な笑みを浮かべた。
今回のタイトルはSDガンダムフォースのOP、「沈まない太陽に焦がれて」から。