異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
予定通り聖帝ペケ字陵・・・もとい五連ピラミッド「空の王宮」の正門近くの"
「そろそろ交代の時間だ、準備してくれ」
「わかりました。では行ってきます」
衛兵の交代に合わせて、透明になった俺が潜り込む。これでまずは第一段階クリアだ。
(・・・しっかし凄いな)
この空の王宮、光沢のある石のように見えるが、外から見ても石の継ぎ目がわからない。
中に入ってみれば同様の、全く継ぎ目のない壁や天井が続き、古代遺跡と言うよりはSFの未来基地とかに近い雰囲気。
明かりも天井が直接光ってるし、自動ドアみたいなものもある。
中空の管が上下に伸びていて、そこを人が乗った円盤が昇降している。
明らかに地球より遥かに進んだ文明の産物だった。
その一方で不気味だったのは、そこを歩いている人間がみんな無表情なこと。
無表情なだけじゃない、全く無駄な動きをしない。
たとえ訓練された兵士でも、ちょっと視線が動いたり首を動かしたり、足踏みしたりするだろう? そう言うのが全然ない。
機械みたいな正確な動きで廊下を歩いているか、彫像のように視線一つ動かさずに直立不動で立っているか、そのどちらかだ。
あれだ、アンドロイドを作る時に話題になってた「不気味の谷」ってやつ。
中途半端に人間らしいから、尚更違和感がある。
これが魅了された人間ってことなんだろうか・・・。実際、師匠にかけてもらった《オーラ感知》の呪文にも、ぼんやりと青紫のオーラが反応している。
大雑把に言って青系統は精神、色が紫に寄ると魂にも影響を及ぼす魔力らしい。
知識があれば色合いや混ざり方でもっと具体的に判別できるそうだが、俺ではこれが限界。
もっとも、状況証拠からして魅了の魔力がかかっているのは確実だろう。
(生きながら死んでるようなもんだな・・・アンデッドとは別の意味で死者の軍団か)
背筋にうそ寒いものを感じつつ、俺は上へのエレベーター目指してひた走った。
(えーと、このエレベーターを一番上まで行って、左に曲がってもう一度左のエレベーターホールで上に行って・・・)
上昇するエレベーターの中で、頭の中の地図と付き合わせてルートを確認する。
さすがに最上層まではエレベーターを二回乗り換える必要がある。
直通エレベーターもあるのだが、それは太陽神専用とのこと。
(あ、ちょっと待て! 途中で止まるな! 下に戻るな! 最後まで行けよ!)
そんな一幕もあったが、取りあえず最上層エリア、太陽神の居住区に俺は到達した。
ここまでかかった時間が約二十分。エレベーター待ちがなければ半分くらいだったろうが・・・それはまあしょうがない。
現在の俺は練れる魔力量も増えたし《加護》の使い方も効率よくなってはいるが、それでも光学迷彩を維持できるのは恐らく二時間ほど。
最上層エリアとは言うが、ここだけでもその辺の豪邸――例えばオブライアンさんの妹が監禁されてたローリンズ邸が三つ四つ入るくらいに広い。
(時間はかけられない)
改めて気を引き締め直し、俺は走り始めた。
『見張りがいるのは出入りのボトルネックになるところか、本当に重要な場所だ』
ローリンズ邸に忍び込むときにアーベルさんが教えてくれた事を思い出す。
あの時も、タウハウシンさんの牢屋には見張りが二人立っていた。
最上層エリアを走り回り、見張りが立っている場所を探す。
見つけたのは二箇所。
てっぺんの展望エリアっぽい部屋への扉と、豪華なロイヤルスイートっぽい寝室。
何でわかったかって? 驚いた事にこのピラミッド、各所に各フロアごとの地図を描いたプレートが貼り付けられているのだ。
やっぱここ元ホテルとか公共施設だったんじゃ・・・?
どちらの部屋の前に近づいてもミサンガの振り子は動かなかった。
壁が魔力を遮断してたりするんだろうか?
ので、俺は展望エリアっぽい部屋の前で張る事にする。根拠はない、勘だ。
(どのみち誰かがここを通ってくれなければ俺もここを通れないしなー)
時間切れになるようなら無理せず帰ってこいと師匠からは言われている。
残り時間は一時間半、余裕を見て一時間くらいだろう。
自分の中の魔力と体力に気を付けながら、俺は待ちの姿勢に入った。
「!」
待ち始めて恐らく四十分ほど。
エレベーターホールの方で扉が開く圧搾音をミストヴォルグの超聴覚が捉えた。
こちらに向かってくる足音に、思わず手を握ってグッとガッツポーズ。
が、その足音の主たちを見た瞬間、喜びの感情は吹き飛んだ。
肌も露わな薄物を着た、多分12才くらいの少女。
それが召使いらしい男と兵士らしい男に付き添われて廊下を歩いてくる。
(これは・・・どう考えてもアレだよなあ)
どうしよう。そう言う展開になった場合、俺はどうするべきなんだろう?
悩んでいる間にも彼らは歩を進め、扉が開く。
(!)
扉が開き始めたとたん、ミサンガの振り子が激しく動き始める。
だが次の瞬間、振り子のことは俺の頭から綺麗さっぱり消えていた。
「来たか。だが一人だけでは足りそうにないな。もう二人ほど連れてこい」
「はっ」
中は超高級ホテルの最上階のスペシャルスイートルームと言った風情。
最高の眺望が楽しめますとか言うあれだ。
その豪華な部屋の中に、倒れた少年少女たちが数人。
いずれも首筋に牙の痕があり、体は血の気を失って真っ白。
呼吸も脈拍もなく、完全に死んでいる。
部屋の中央に立っているのはあの火口の城で見た幻影の男――マデリーンさんたちやアルテの血を吸った自称ドラキュラ伯爵。
その右手には、たった今血を吸い尽くしたとおぼしき10才くらいの少女の骸。
新しく来た少女を、眼を細めて見つめると、右手の少女をぽい、とゴミのように投げ捨てる。
俺が理性を保てたのはそこまでだった。
「ウィングカッター!」
「なっ!?」
ミストヴォルグからデモゴディへの瞬時のスイッチ。
いきなり廊下に俺の姿が現れ、翼状の刃が生えたロケットパンチが不意を突かれた「ドラキュラ」の体を貫く。
「ミサイルドリル!」
「ぎゃあっ!」
それを確認する事もなく、ロケットパンチを撃った後の腕の断面から超小型の貫通弾をガトリング砲のように発射。
扉脇の衛兵を倒した後、女の子を連れていた兵士と召使いを撃ち倒し、戻ってきたロケットパンチを両腕に再装着。女の子の手を取って逃げようとした瞬間、後ろで巨大な、それも禍々しい魔力が膨れあがるのを感じた。
「やばっ!」
咄嗟にロケットパンチで女の子の襟首を掴み、遠くに飛ばす。
片腕で振り向いた瞬間、紫色のかかった黒い魔力――死の魔力が視界を覆い尽くした。
召喚! ヴァンパイアソーサラー!(違)