異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
第二話 母よ大地にかえらせない
「仰せの通りに」
――ウェスリー、「プリンセス・ブライド」――
「マルガリータ」
名前を呼ばれても、リタは呆然としている。
「おかあさん」
もう一度呟いた。
「!」
肩に手を置いてやると、びくりと震えて俺を見上げた。
「・・・」
うなずいてやる。
「・・・」
無言のままリタも頷き返す。
そして意を決したように女王の――母親の枕元に歩み寄った。
俺はその場に控え、様子を見守る。
「おかあさん」
「マルガリータ、私のことを案じてくれているのは嬉しく思います。ですが危険な事はしてはいけません。あなたはこの国の姫であり、私の後を継いで女王になるべき身。
何をすべきか、わかりますね」
話をするのも辛いだろうに、身を起こしてこんこんと語り聞かせる女王様。
うつむいてそれを聞いている娘。
「・・・」
しばらく沈黙が続き、やがてリタがきっと顔を上げる。
「いや!」
「マルガリータ・・・?」
驚いた顔の女王。回りにはべっていた女官たちも同じような顔。
リタはいい子だ。
多分、普段は何か言われたら大人しく従っていたのだろう。
正直俺も驚いたけど、それはそれでリタらしいと思った。
「私、もうおかあさんを死なせたりしない! 絶対助ける! 金のりんご、持って来るから!」
「マルガリータ!」
「姫様!」
そのまま身を翻して、駆け出すリタ。
俺も慌てて女王様に頭を下げ、その後を追う。
「姫様!」
「女王様、後を・・・」
「おやめなさい」
再起動して追いかけようとした衛士達を、女王が静かに押しとどめる。
ベッドに身を横たえて、息をつく。
「血は争えないものね・・・ねえ、あなた・・・」
微笑むと、女王はそのまま静かに寝息を立て始めた。
王宮の廊下を大股で歩くリタ。あたふたと俺はそれについていく。
「姫様・・・じゃなかった、リタ!」
「なあに、ハヤト・・・じゃなかった、おにいちゃん」
そこでハッと気付いて互いに足が止まる。
脳裏に浮かぶのはエドと名乗る人なつこい老人。
「これはいったい・・・?」
自分の体を見下ろしてから、あらためてリタを見る。
俺はロンドの王宮で見た騎士みたいな姿、リタは豪華なドレス姿だ。
ドレスとは言っても可愛い系なので、リタにはとても似合っている・・・じゃなくて!
「おにいちゃん、リタたちお話の中に入っちゃったの?」
「・・・かもしれない」
これがコンピューター内に生み出されたバーチャル空間というならわかるが、まさかそう言う事も無いだろうし。でも魔法の世界なんだから何があってもおかしくはないよなあ・・・
そんなことを考えていると、どこからともなくあの老人の語りが聞こえてくる。
『お城を飛び出したお姫様とお付きのちょっと抜けた騎士。
ですがそんな彼女らの前に最初の障害が立ちふさがります。
5メートルもある巨人が、町を出ようとしたお姫様の前に現れたのです・・・』
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!」
巨人の叫びが空気をビリビリと震わせる。
背は見上げるほど高く、体を隠すのは腰布一枚。右手には木をそのまま引っこ抜いたような、3メートルほどの棍棒。
この時、俺たちは老人の語る物語の中に完全に「入り込んで」しまっていた。
王都の目抜き通り。
あちこちの扉や窓板がバタンバタンと閉められる。
商人は店をほったらかしにして逃げ出し、逃げ遅れた子供を母親が抱き上げて家の中に駆け込んでいった。
「・・・」
そんな周囲の騒ぎに取り合わず、巨人は俺達をじろりと見下ろす。
心なしかフランケンシュタインっぽい。
「おい、何の用だ!」
「・・・」
問いかけるが巨人は無言。言葉がわからないのか、それとも言葉を使うほどの知能がないのか。
「リタ、下がって」
荷物を下ろして両腕を構え・・・るはずが、無意識のうちに腰の剣を抜いていた。
なんだろう、俺の役どころが「騎士」だからか?
「正確には『ちょっと抜けた騎士』ですな」
ええいうるさい。
だがそれはそれでやりようはある。
「デモゴディ・ブレード!」
叫ぶと、装飾を施された高そうな剣が飾りのない単純な剣に変化する。
よかった、この世界でも俺の《ロボットアニメの加護》は使えるらしい。
デモゴディブレード。
「デモゴディΣ」の後番組である「オメガデモゴディ」の主人公機であり、Σの後継機である同名のロボ、オメガデモゴディが使う剣。
電撃を放出するライトニング・スマッシャーと並んでオメガを象徴する武器の一つで、作中ではこれを縦横無尽に使いこなしてロードス帝国の魔神英雄暗黒獣と戦い抜いた。
俺の剣技なんてへっぴり腰もいいところだが、これならある程度は《加護》の補正がかかる。まあ原作だと剣で切ったり突いたりするのと同じくらい、投げて突き刺してたけど・・・。
なお剣がグレードダウンしてるような気がするがそこは気にしないように。
飾りっ気がないのは、そうじゃないとアニメの作画が大変だからだ。身も蓋も無いがそう言うものだからしょうがない。
「色々難しいのだな」
まあそういう事。
・・・ん?
ちょっと待て、さっきから後ろで合いの手入れてる奴誰だ!?
慌てて振り向いた俺の目の前に、悪夢のような光景が広がっていた。
「何だかんだと問われたら」
むきっ。
「答えて上げるが世の情け」
むきむきっ。
「話の破綻を防ぐため」
「リタの願いを守るため」
むきむきむきっ。
「愛と真実の芸道を貫く!」
「ラブリーチャーミーな十匹のしもべ!」
「アカフク!」
「ペパーミント!」
「キナコ!」
「シロアン!」
「クロアン!」
「ズンダ!」
「サクラ!」
「ゲッペイ!」
「ダイダイ!」
「ムラサキイモ!」
「幻夢を駆ける我らには!」
「カラフルな明日が待ってるぜ!」
「「「「「「「「「「チュチュチュチュチュー!」」」」」」」」」」
長い長い長い。
リタを守るように囲む十人のパンイチマッチョ。
それぞれ赤、青、黄、白、黒、緑、ピンク、茶色、橙色、紫に染まったナイスバルクな筋肉モリモリマッチョマンの変態が、思い思いのマッスル強調ポーズを取る。
その頭部は何故か、全てハムリスのものだった。
後尻からハムリスの尻尾が生えてた。
どうしよう、死にたい。
と言うか何でお前らがロケ●ト団の口上知ってるんだよ。
「ちなみにこの口上はハヤト殿から教えていただいたものですぞ」
「ですぞチュー!」
そう言えばリタにそんなことを言った記憶があるな! 俺のせいかよ!
「やーなかーんじー!」
俺はヤケクソでそう叫んだ。叫ぶしかなかった。