異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
くるくると、長い髪をなびかせて俺達の前で踊る少女。
驚くべきことにその髪は雪のように真っ白い。
ブンブンブガブガと鳴り響くカーニバルの音楽。
それにあわせて本当に軽やかに、楽しそうに舞っている。
空気を踏んでステップしているような、地に足の付いていないような飛び跳ねるダンス。
巨人から降りた俺達はしばしそれに見入る。
やがて音楽が終わり、少女がポーズを決めてピタリと止まると、俺達は――ハムリスどもも含めて――いっせいに拍手した。
「ありがとう、旅人のかたかしら? マッグ、あなたのお客様?」
「KllForrr」
「ふうん、金のリンゴを捜しにね・・・こらロシュリマ、やめなさいってば」
じゃれついてくる巨人の子供を笑ってあやしながら、母親と話す少女。
俺達にも理解出来る言葉で話しているにもかかわらず、巨人と話が通じている。
リタみたいな《加護》を持っているのだろうか・・・?
「それであなたたち、ええと・・・」
「リタだよ」
「ハヤトだ。後ろの連中は以下省略で」
「ヂュチュー!?」
アカフク達がチューチュー騒いでいるがどうでもいい。
少女がくすりと笑う。
「私はアローラ。よろしくね。それで、あなたたちは黄金のリンゴを探しているのよね?」
「うん。それがないとおかあさんが死んじゃうの。何か知ってたら教えて!」
真剣な顔のリタに、少女アローラも表情を真剣なものに変える。
「大事な人なんだね・・・わかった。教えて上げる。
黄金のリンゴのある島の場所は、このレイスの町にいる水晶の目の魔女が知っているの。
でも水晶の目の魔女の居場所は誰も知らない。レイスにいることは誰でも知っているけど、どこに住んでいるか、いつどこに現れるかは誰も知らないの」
まずその魔女を探し出さなきゃいけないって事か。
どんな魔女なんだろう?
「小柄なお婆ちゃんらしいわよ。ローブを着て杖をついてるって」
す、凄く普通だ・・・!
「ペトロワお婆ちゃんもそうだよね・・・」
「他の魔女もそうなのかなあ。制服みたいな?」
まあ実際はテンプレートに過ぎないんだろうし、ペトロワ師匠の場合は芸人一座の魔女だから舞台衣裳のような意味もあるんだろうが。
「二つの目とは別に水晶の目を持っていて、それを覗くと自分が死ぬ場面が見えるんだって」
自分が死ぬところか・・・
うーん。見てみたいような見たくないような。
「他に何か手掛かりはないの? 満月の晩だけ現れるとか、鏡の中に見えるとか」
と、リタ。
おとぎばなしみたいだけど、俺達がいるのがおとぎ話の中だし、そもそも奇跡も魔法もあるファンタジー世界だしなあ。
「うーん」
アローラが考え込む。
「そう言えばこんな事を聞いたことがある。『見えているけど見えてない。彼女はいつもお前を見てる。いつもお前の横にいる』って」
「うーん」
「うーむ」
リタと二人して頭をひねる。
後ろのハムリスどもも首をかしげてるが、どうせポーズだけなので気にしない。
「魔法で姿を隠してる?」
「水晶玉みたいなので千里眼の魔法でこっちを見てるとか?」
「姿を隠してつけ回されたら怖いでチュー」
ストーカーかっ!
魔法だと普通に出来ちゃうんだよなあ、怖いよなあ。
「チューたちに言わせれば、魔法使いじゃなくても千里眼の魔法を使えるハヤトの世界の方が怖いでチュー」
何のことだ・・・と思ったがインターネットと監視カメラのことか。
確かにこっちの世界の人から見たら凄い魔法に見えるわな。
「その辺はあっちの世界も余り変わらないよ。一般人が軽々使えるものじゃない。ハッカーとか技術者とか」
そう言えば向こうの世界でも凄腕のハッカーのことを
「マッグさんたちは何か知らない?」
「・・・」
ふるふる、と首を横に振る女巨人。うん、これは俺にもわかる。
「しょうがないな」
溜息をつく。
町の人に聞き込みするしかないか・・・。
「カーニバルだよっ!」
くるっと回って楽しげに踊るアローラ。
彼女の言う通り、レイスの町は色とりどりの旗と魔法の光に照らされてお祭りのような賑やかさに包まれていた。
さまざまな仮装をした人達が笑い歌い、音楽と料理の良い匂いが溢れている。
彼女に案内して貰って(マッグさんたち親子は家に帰った)、俺達は聞き込みを始めた。
「水晶の目の魔女? ああ、子供の時に会ったことがあるよ。水晶の目を覗かせて貰ったけど老人が転んで頭を打つところだったから、俺は長生きするみたいだね」
「新月の夜に鶏料理を供えると現れるって聞くな。出てこなかったけどね!」
「合わせ鏡の中にロウソクを立てると魔女にメッセージを送れるってさ」
「魔女は古い屋敷に住んでいた女の霊なんだよ。死んだ後も屋敷に魂が残って、ついには魔女になったのさ」
「ほっほっほ、実は私が水晶の目の魔女なのじゃよ!」
ちなみに最後のは魔女の仮装をした陽気なお婆ちゃんである。
非常に人なつこい方で、リタやアローラともども飴ちゃんを貰ってしまった。
飴を食べながら街路を歩く俺達。そろそろ夕暮れも近い。
「あ、この飴おいしい・・・」
ほんとにな。果汁を練り込んだやつで、日本の飴と比べても遜色ない。
「おいしいでチュー」
おまえらはだまってろ。
「ハヤトはチューたちに厳しいでチュー」
「ショーを見んとするならまずロバを見よと言うでチュー。リタを狙っているならチューたちに媚びを売っておいた方がいいんじゃないかチュー?」
う、うぜぇ・・・だから俺は誰も狙ってないっての!
ガイガーさんが鍔を鳴らす幻聴が聞こえるからやめて!
後それことわざ間違ってるからな!
「ほんとおいしいよね。あの人、ああやってお祭りのたびに子供に飴を配ってくれるのよ。まあこの町はいつでもいつまでもお祭りだけどね」
「・・・」
ちょっとゾクッとした。まさかエンド●ス・エイト・・・?
いやだー! 全く同じ話を八回連続で見せられるのはいやだー!
「・・・はさておき、まさかとは思うが、この町の終わらないお祭りってまさか魔女のせいか? 町の人達を終わらないお祭りの中に閉じ込めて何か企んでるのか?」
ぶっ、とアローラが飴を吹き出した。
幸い俺の服の懐に飛び込んだので、つまんで口の中に戻してやる。
「あ、ありがとう・・・ともかく、それはないかな」
飴をモゴモゴさせながらアローラ。
「そうなの?」
「元からこの町は終わらないお祭りの町なのよ。あちこち旅をして疲れた魔女は、それが楽しくてこの町に住み着いたんだから! だから、決して魔女はそんなことを企んでないわ」
「ふーん」
横目でこの少女を見る。リタも年の割には利発だが、この子は本当にはきはきと喋る。利発すぎるくらいだ。
「・・・」
「何、お兄ちゃん?」
「悪いけど時間がないんだ。本当に。余りお遊びには付き合ってられない。
・・・水晶の魔女さん。力を貸してくれないか?」