異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「は?」
「・・・」
「え? え?」
きょとんとした顔のアローラ。
真剣な顔の俺。
その二人に挟まれてきょろきょろするリタ。
「こんな小さな子が水晶の目の魔女ってハヤトは頭がおかしいでチュー」
「元からおつむは弱かったけど、ついにいかれたチュー?」
だからお前らは黙ってろ。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
しばらく沈黙が続いて、やがてアローラがぷっと吹き出した。
「なぁに、ハヤト? 私が水晶の目の魔女だって? こんなかわいい子を捕まえて何を言うのよ・・・あはははは! もう、ほんとおっかしい!」
耐えきれずに笑い始める少女。
だが俺の表情は変わらない。
「『見えているけど見えてない。彼女はいつもお前を見てる。いつもお前の横にいる』だったね。
見えているけど見えてない――君の姿を見ていても、それが魔女だと気付かない。
いつもお前を見てる――町を一日中歩き回って、ずっと君は俺達を見ていた。
いつもお前の横にいる――まさにだ」
「あはっ、バカバカしい。それじゃリタだって、そこのハムリスたちだって魔女かも知れないじゃない」
アローラの表情も変わらない。くすくす笑い。
というか君、あれをハムリスって認識してんのね。
「じゃあ君はどこの子だい? おうちは?」
「町外れの小さな白い家よ」
「お父さんとお母さんは?」
「どっちもいないわ。世話してくれるお婆ちゃんと二人きりよ」
「いつからこの町に住んでるの?」
「生まれた時からだけどそれが?」
「なら・・・」
それから十分ほど、矢継ぎ早の質問にもアローラはすらすらと答える。
うぬぬぬ。だがまだ残弾はあるのだ。
「さっきの話・・・魔女が旅に疲れてこの町に住み着いたって、誰から聞いたんだ?」
少なくとも歩き回って聞いた話の中にはなかったぞ。
「さあ・・・誰かよ」
「覚えてないなら、町中の君の知り合いを回って捜そう。それでいなければ君のうちに行こう」
そこで言葉を切る。
「この町に君を知っている人間がどれだけいるか確かめたい。子供の頃の君を覚えているか、ご両親はどうやってここに来たのか、ここに来たときに既にいなかったなら、そのお婆さんなり君を育てた人間のことを誰か覚えていないか、ほかに・・・」
「あーもう、うっとうしい! わかったわかった、この辺で勘弁して上げるわよ、時間が無いって言うのも本当みたいだしね!」
アローラがわめき散らす。
よし、勝った! 薄氷の勝負だったがな!
「うーわー、その顔むかつくわ。ちなみに一つ聞きたいんだけど、どうして私だとわかったの?
私が水晶の目の魔女だってことに相当自信があったみたいだけど」
「それは・・・」
「答えなきゃ、あなたたちの知りたいことは教えないわよ」
うむむ。
「・・・まさか当てずっぽうだったの? いえ、それにしてはやたらに自信ありげだったわね。あなたみたいなすぐ顔に出る人がハッタリなんて出来るわけないし」
うるせーな。
好きでサトラレやってんじゃねーんだよ!
「いやそのだなあ・・・」
「答えなさい」
ずいっ、と詰めてくるアローラ。小学校低学年とも思えぬ迫力が凄い。
「お兄ちゃん・・・」
下から見上げてくるリタの視線に気付き、俺はついに観念する。
「その、だね」
「何よ」
「聞いても怒らない?」
「怒られるような理由なのね?」
笑みを浮かべるアローラ。あの、ちょっと怖いんですけど。
「言え」
「はい」
ドスの利いた幼女の声に、溜息をついて俺は理由を口にする。
「この手の話だと、大体それがパターンだから・・・」
「・・・それだけ? それだけの理由であんなに自信満々だったの?」
「ええまあ、はい」
沈黙が落ちる。
「あいたっ!」
きっかり三秒後、アローラは無言で俺のすねを蹴っ飛ばした。
木靴だからめっちゃ痛いんですけど!?
すねの痛みをこらえつつ、俺達はアローラの案内で町外れに向かった。
レイスの町から離れて数百メートルほど、森の入り口に夕日を浴びてぽつんと立っていたのは童話に出てくるような白い家。これが彼女の「おうち」なのだろう。
「ただいまー。どうぞ、お入りになって?」
入り口のところでくるりと回り、優雅にスカートの裾をつまんで一礼。
うーん、魔女とわかってはいるが一々絵になる女の子だ。
「おじゃましまーす」
「お、お邪魔します・・・」
「お邪魔するでチュー」
ゾロゾロとそこに入る俺達。
中も外見に違わず、瀟洒で素朴なリビングルームだった。
白いティーテーブルに椅子、ソファとリビングテーブル。
「さて、それじゃあ・・・」
言いながらくるりと回るアローラ。
「お茶でもどうぞ、じゃ」
「!?」
回り終えた瞬間、その姿は俺達もよく知っている老婆――ハスキー一座の魔女ペトロワのそれになっていた。
「ペトロワ師匠!?」
「おばあちゃん?」
「おっかねークソ魔女でチュー!?」
「この畜生ども、わしのことをそんな風に思っておったんかい!」
「チュチュチュー!」
ハムリスどもがペトロワ師匠、もしくは水晶の目の魔女に杖で殴打される。
俺達はその様子を唖然と眺めていた。
「ふー、はー・・・まあ、まずは座れ。言った通り茶を出してやるわい」
折檻が終わると、息を荒くした魔女がぱちんと指を鳴らす。
ティーテーブルとリビングテーブルの上に現れる、湯気を立てるティーカップとお茶菓子。
「それはいいんですけど師匠、何故ここに・・・?」
「師匠? 知らんな。わしは水晶の目の魔女じゃよ」
「でも師匠・・・」
「水晶の目の魔女じゃと言っておろう」
「アッハイ」
師匠が杖を構えたのを見て俺は大人しくティーテーブルについた。
同じくティーテーブルについたリタが耳打ちしてくる。
(これ、おばあちゃんも私たちみたいにおとぎ話の中に取り込まれたってことかな・・・?)
(かもしれないけど、どっちかというと俺達の記憶の中から「登場人物」を用意したんじゃないかって気がするかなあ。リタのお母さんとか)
(うーん)
まあそれこそペトロワ師匠ならともかく、俺達じゃわからない問題だ。
おとなしく「そういうこと」で流しておくのが一番いいだろう。
「それでおばあちゃん、黄金のリンゴがある島の場所を教えてくれるの?」
香草茶を一杯飲んだリタが水晶の目の魔女をすがるように見る。
が、師匠は首をゆっくりと横に振った。
「残念ながらわしも島の場所は知らん」
「え!?」
あんた島の場所を知ってるって自分でゆーたやん!?
「話は最後まで聞け。わしが知っておるのは、その島までの海図のある場所じゃ。
・・・まあ一筋縄で行く場所ではないがの」
それでもリタのお母さんを救うには、行くしかないんだ。教えてくれ、師匠。
「だから師匠ではないというに・・・いいか、その海図はな、ねじれの森の奥深く、