異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「と、通り抜けた・・・ぜ・・・がくり」
「お兄ちゃん? お兄ちゃーん!」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
ここは城壁の中。夜まで待ってネズミ穴を見事通り抜けたはいいが、俺は力を使い果たして生ける屍と化していた。いやマジで指一本動かせねえ。
種はガンボイシリーズに次ぐリアルロボットアニメの雄、超時空戦艦ミクロスシリーズに出てくる「マイクラーンシステム」という技術だ。
このシリーズだと人間の他に身長10mほどのゼン・ガン・ディ(漢字で描くと「禅銃帝」らしい、意味わかんねえ)という巨人種族がいるのだが、その巨人種族が人間サイズになったり、逆に人間が巨人サイズになったり出来る伸縮自在の超技術だ。
ぶっちゃけ巨人と地球人を交流させるためのご都合主義装置である。
デモゴディになるのが辛いように、巨大化するのは難しいだろうが縮小化なら・・・と思って試してみたのである。
実際縮小化は成功したが、誤算は使用する魔力の量が桁違いに高かったこと。
なお後でペトロワ師匠に聞いてみたら、質量の操作なんて滅茶苦茶高度な技術で、むしろ良く縮小化だけでもやれたもんだと呆れられた。そこは感心して欲しかったなあ・・・。
ネズミ穴を半分くらい通り抜けるところでもう限界を感じてたが、リタもいるんだし、途中で解除されたら洒落にならないと気合でなんとか持たせた俺は、穴を出るなり生ける屍と化したのである。
リタ、お兄ちゃん頑張ったよ。空の上から君を見守っているからね・・・。
「お兄ちゃん!? 縁起でもないからやめて!」
「うん、演技じゃなくて本音だから・・・」
「そういう意味じゃない!」
ごめんね、脳の糖分足りなくてごめんね・・・そう心で謝りつつ俺は気を失った。
「チュー」
「チュチュチュー」
ん・・・んん?
何かふわふわした沢山のクッションの上に寝てる・・・グラグラ動いてる・・・
「えっ?」
そこで目が醒めた。
体が動かないのは相変わらずだが、仰向けに寝かされていて、何故か視界が移動している。
夜の闇の中、三日月のか細い光に、ぼんやりと浮き上がる白い家々が美しい・・・!?
「チュー」
「チュチュチュー」
そこで気がついた。今俺が寝かされてるのは、無数の野ネズミの絨毯の上。
レミングスの大群のような野ネズミたちが俺を支え、移動している。
前を小走りで走っていたリタが気がついてぱっと喜色を浮かべた。
「よかった、気がついた! 今ネズミさんたちに安全なところに案内して貰ってるからね。
それまでの辛抱だよ」
リタがネズミたちと交渉してくれたのか・・・ファンタジーだなあ・・・
ぼんやりした頭でそんなことを考えつつ、俺は夜の町を運ばれていった。
十数分後、俺達は倉庫のようなところにいた。
幸い錠前はかかっておらず、リタでも何とか開けられた。
俺を乗せたレミングスの群れがその中に入ると扉を閉じ、何とか一息つく。
「みんな、ありがとう! それじゃこれはお礼ね!」
そう言ってリタは俺の荷物から、持ってきた三日分の食糧を床の上にばらまく。
レミングスの群れが一斉に群がり、食糧はあっという間に消えてなくなった。
「チュー!」
「チュチュチュー!」
「そう、よかった! あのビスケットは私も好きなの!」
これは俺でもわかるネズミたちの喜びの声。
それにリタが笑顔で応対している。
「うん・・・うん、わかった。何かあったらまたお願いするね」
「チュチュチュチュー!」
その鳴き声と共に、ネズミたちが蜘蛛の子を散らすように四散し、あっという間に倉庫の中は俺達二人だけになった。
「ふうっ」
リタが息をつき、ぺたんと座り込む。
「大丈夫か? 疲れただろ」
なんとか首だけを動かしてそちらを見る。
いくら頭が良い、動物と話せる《加護》があるとは言っても七歳の子供だ。
ネズミ相手に交渉して俺を運ばせて、しかも敵地のど真ん中で隠密行したのは凄いプレッシャーだっただろう。
体が動けば頭を撫でてやりたいところだが、今の俺は指一本動かせないとは言わないまでも、腕を持ち上げることさえ至難の業だ。首を動かすのでさえ、全力を投入しないと出来なかった。
「大丈夫だよ・・・あ、今お兄ちゃん頭撫でてやろうかなって思ったでしょ」
何でわかるんだ。
七歳の子供にすら見透かされるって、俺のオデコには電光掲示板でも付いてるんですかね。
高速道路とか駅のホームにある奴。
「お兄ちゃん照れてる。かわいい」
「・・・」
七歳の女の子にそこまで見透かされたのが気恥ずかしくて、再び全身全霊を込めて首を動かし、視線を逸らす。
リタが立ち上がり、近づいてくる気配。
「ばあ」
視界に逆さまのリタ。上から覗き込んでる。
「お兄ちゃんが頭撫でてくれないから、代わりのご褒美貰うね」
その言葉と同時に頭が持ち上げられる。
ちょ、ちょっと待って、この体勢って・・・!?
「はい、どうぞ」
混乱した頭の後ろに、二つの柔らかいふくらみ。
待って、ちょっと待って。
「はい、ひざまくら!」
やっぱりぃぃぃぃ!?
「あばばばばば」
糖分の足りてない脳がバグる。誤作動を起こして俺は今や雑音しか出せないスピーカーだ。
いかんこれはいかん綺麗なお姉さんにそういう事して貰うのは憧れなくもないが何と言っても小学一年生にやってもらってるこの絵ヅラが最悪に非倫理的だリタだってこれはちょっと重いだろう大体正座なんて足が痺れるだけで悪い事しかないあんなもん強要する日本は何か間違ってるいやそんな問題じゃないちょっと待って何で俺ドキドキしてんの小学生の女の子にヤバいヤバいよ俺ロリコンじゃないはずなんだけどでも今のリタならロリコンでもいいよというかそもそもご褒美ってのは俺がリタに上げるはずでこれじゃ話が逆だだからそんな問題じゃない俺が今考えなきゃならないのは・・・
――殺される
――殺される
――きっと間違いなく殺される
――他のだれにでもなく
――他の何にでもなく
――俺は
「うん、そうだね。お父さんが知ったら凄く怒るよね。だから・・・これはリタとお兄ちゃんだけの秘密。アルテちゃんにも、カオルちゃんにも内緒の、私たちだけの秘密・・・いいね?」
笑顔で覗き込んでくる幼女。
俺はこの日、初めてリタを――いや、女を怖いと思った。