異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
薄暗い宝物庫の中。
煌々と魔法の明かりをともした廊下に通じる大扉。
入り口に立つ巨漢のシルエットが、廊下の煌々とした魔法の明かりに照らされて、逆光でくっきりと浮かび上がる。
(逆光は勝利! ・・・なんて言ってる場合じゃないな)
「・・・お兄ちゃん、何か馬鹿な事考えてない?」
すいません脊髄反射なんです。オタクのジェッターロボ業なんです。許してつかーさい。
「もう一度言うぞ。それを渡してもらおう」
「・・・」
見事な逆三角形のシルエット。全身が筋肉の塊。
たすき掛けの革のベルトに革の腰巻き、腰には見るからに業物とわかる剣。
巨漢なのもあるが、全身の筋肉がパンパンに張り詰めて、極限まで鍛え上げた体なのがわかる。
まるでプロレスラーだ。リングネームはサソリマスクとかサソリキングとかか。
多分ボボットを呼び出しても力では太刀打ち出来ない。
そしてそれ以上に圧が凄い。
サソリを模した仮面の隙間から見える目の迫力。
魔剣込みのカオルくんでも正面から一対一じゃ負ける気がする。
俺の知ってる中でこいつに勝てるとしたらガイガーさんくらいだろう。
陳腐だが動いたらその瞬間にやられる気がして動けない。
しかも、これでもこいつにとっては本気の殺気じゃあない。
「・・・」
リタはさっきから無言。ピー、ヒューとかすれた呼吸音が響いてくる。やばいな、かなり緊張している。
どうすべきか。正直デモゴディにならないと太刀打ち出来ない気がする。
そうでなくてもリタを守りながら戦うとなるとこちらが圧倒的に不利。
いや、不利ってのはもうちょっと有利な条件のことをいうんじゃないかなってくらい不利だ。
なら渡すか?
けどこの海図がなきゃリタのお母さんが・・・。
「渡せ。これが最後だ」
そして俺は決断した。
「いいだろう」
右手の筒を相手に投げる。
サソリキングはそれを左手でキャッチし、腰のベルトに差し込む。
そしてすらりと剣を抜いた。
「結構。ではついでにここで死んで貰おう」
やっぱりかー!
ええい、それだって予想はしてたさ!
リタを脇に抱き、足の裏からのジェットで・・・
「」
リタを抱き抱えようとした瞬間、そいつが目の前にいた。
マジでこいつガイガーさん並の達人だ。
どうしようまたきれいにくびをきりはなしてもらえればなまくびスタイルで
「!?」
目の前で火花が散った。
サソリ王が驚いた顔で跳び下がる。
そこで脳内時間が通常に戻った。
割り込んで俺を救ったのは、黒衣黒マント黒覆面の謎の男。
「おとう・・・さん?」
「早く逃げろ」
黒衣の男はそれだけを言ってサソリ王に斬りかかる。
始まる剣戟は俺じゃ理解も出来ないほどに速い。
「行くぞ、リタ!」
「う、うん・・・!」
黒衣の男がサソリ王を押し込んでくれたおかげで扉の前が空いている。
剣戟の音を背に受け、俺は戸惑うリタの手を引いて全力で宝物庫から逃げ出した。
「はーはははは! 僕の城で随分と好き勝手やってくれたようだね! 盗賊は拷問の上で縛り首だー!」
似合わない悪役笑いを高らかに演じているのは邪悪の王()のオブライアンさん。
宝物庫から通じる通路を出て、天窓のある十字路から脱出しようとしたら、あれよあれよという間に兵士が現れて、逃げる間もなく囲まれてしまった。
後ろの通路は宝物庫まで一本道で、しかもサソリキングやガイガーさん・・・げふんげふん、黒衣の剣士さんが現在進行形でチャンバラ中だ。だって打ち合う音ここからでも聞こえるもん!
「・・・」
ちらりと上を見るが、天窓には全部射手がスタンバってる上に、空飛んでるエルフやヴァナラっぽい人達も何人かいる。アカン、逃げ道がない・・・!
「ふはははは、透明になって忍び込むのはまあ悪くないアイデアだが、一回だけにしておくべきだったな! 種が割れた手品ほど無惨なものはないぞ!」
術師っぽい人もゾロゾロいるし、そもそも妖精は人口の大半が普通に術を使えると聞いたことがある(ちなみに人類は1パーセントか2パーセントくらいらしい)。
光学迷彩見破るような術とか用意されたらどうしようもない。
強行突破できるほど戦闘力には自信がないしな・・・!
「・・・ねえお兄ちゃん、あれオブライアンさんだよね?」
「どこからどう見ても仮装したオブライアンさんだけど、一応歪んだ妖精の王様らしい」
が、リタにとってはむしろここにオブライアンさんがいるほうが気になるらしい。
まあ気持ちはわかる。俺達の知り合いからキャスティングするにしてももっとマシなのがいるよね!
「一応とは何だ! 僕はツイステッド・キングだぞ! 凄く悪い王様なんだぞ!」
それを自分で言うからダメなんですよオブライアンさん。
「うん、じゃあ悪い王様」
「ふふふ、それでいい! で、なんだい?」
「似合ってないからやめたら?」
「」
空気が凍った。
こうかはばつぐんだ!
「・・・」
「・・・」
なお部下の人達は無表情。
王様が妄想にふけるのを見てみぬふりをする情けが歪妖精たちにもあった・・・!
「・・・ええい、盗賊め! 今度という今度は許さないぞ! 想像する限りのひどい拷問をして、えーと、それから・・・うん?」
顔を真っ赤にして怒るオブライアンさんが戸惑ったように周りを見回す。
回りの歪妖精たちもキョロキョロと周囲を見渡す。
すぐに俺の耳にも何か震動するような音が聞こえてきた。
「何だこれ・・・?」
「すぐわかるよ」
そう言ってリタが笑顔で俺の腰に抱きついてくる。
その間にも震動は大きくなり、どどどどど・・・という地響きのような・・・
「ネズミだぁ!?」
「うわーっ!?」
四方から現れたのはネズミの大群。数百数千じゃない、数万匹の単位だ。兵士も王様もネズミにたかられて俺達どころじゃない。
「ぎゃっ!」
悲鳴を上げて天窓の射手が落ちてきた。
全身傷だらけ。
「・・・!」
上を見上げると、天窓からこれも無数の鳥たちがなだれ込んできていた。
そうか、リタの仕業か!
「今だよ、お兄ちゃん!」
「おう!」
無数の鳥の壁。俺達の進む先だけにぽっかりと穴が空く。
追おうとしてきた空中兵士もいたが、すぐに全身鳥に群がられて見えなくなった。
天窓にいた射手は、全員落ちたのかもう姿が見えない。
俺達は一目散に城を、そしてファントマの都を脱出した。