異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
第十二話 海賊砦
「高低差200mの坂! 試練の坂!」
――2013年東京ダービー実況――
「それで、地図は手に入らなかった訳かえ」
レイスの町。
女巨人のマッグさんに連れ帰って貰った俺達は、水晶の目の魔女の家にいた。
大きく溜息をつく師匠もとい魔女。
「やはりハヤトは無能でチュー」
「チューたちもついていくべきだったでチュー」
うるせえだまれ賑やかし枠。
「こうなると難しいのう。もう一度忍び込むのは無理じゃろうし・・・」
「いいえ、地図はここにありますよ」
こめかみを指でつつく俺。
「・・・ほう、なるほど。小僧にしては上出来じゃ。覚悟は出来ておるようじゃな?」
にまあ、と笑う魔女。
正直出来てませんけどこの際しょうがないと思います!
「?」
首をかしげるリタをよそに、紙とペンを用意してそれは始まった。
「あっ、あっ、あっ・・・線はこんな感じで・・・あっ、あっ、あっ、書き込みは・・・」
水晶の目の魔女の脳みそチューチュー術。
虚ろな目でガクガク震えながら俺の手が正確な地図を描き出す。
後遺症が凄く怖いが、今は考えるまい・・・!
「や、やりとげたぜ・・・」
「おにいちゃーんっ!」
一仕事やり終えて、机に突っ伏す俺。
右手でサムズアップ。あいるびーばーっく。
その手の先には、サソリキングに奪われたはずの黄金のリンゴの島を示す海図があった。
あの時ちらりと見た俺の記憶を魔女が引っ張り出し、俺がそれを模写する。
脳みそチュウチュウを維持しながら正確に線を描くのって滅茶苦茶辛かった・・・!
「ふむ・・・この地形からすると南の沸騰海を越えた先、パラディサス諸島の一つじゃの。
ちょっと待っておれ。ここから東に"海賊砦"と呼ばれる港町がある。そこに知り合いの船長がいるから紹介状を書いてやろう。事情を話して地図を見せればつれていってくれるはずじゃ。そう言うのが好きなやつじゃでの・・・おい?」
魔女がさらさらさらと書いてくれた紹介状を俺に差し出すが、俺はピクリとも動かない。
「おにいちゃん? おにいちゃんーっ!?」
揺らさないでくれリタ、頭に響く・・・
「つくづく締まらんやつじゃのぉ」
魔女が溜息。
結局俺達は、もう一晩魔女の家に泊まっていく事になった。
「そう言えばこれこれしかじかでサソリの仮面付けたマッチョと会ったんですが心当たりあります? 黒い覆面の剣士のほうも」
「黒い覆面の方については恐らくだがお主らの方がよく知っているのではないかの」
リタの方をちらっと見つつ魔女さん。
「サソリの仮面の方は・・・千年以上前じゃが、南の密林の国にサソリの仮面をつけた王がいたそうな。じゃがある日王国は神の怒りに触れ、呪いを受けて滅びたと」
うーん・・・まあ奇跡も魔法もある世界だけどさあ。
「それが甦ったと?」
「さてな。もし本当にそうだとしたら、その王は一人で千人以上を斬り殺した屈強の戦士だったそうじゃ。万が一にも正面から太刀打ち出来る相手ではないの」
不吉な助言を頂きつつ、俺達は不思議な町を後にした。
森を抜け、平野を走り、川をひとっ飛びで跳びこえる。流れるように通り過ぎていく風景。
俺達は再びマッグさんの腕の中で、彼女に運んで貰っていた。
ほんとすごいな、下手すると新幹線並みのスピード出てるんじゃないかこれ・・・?
ちなみに令和の営業最高速度が時速300km、1964年の開業時点でも210kmだ。
夜明けに出て、マッグさんが止まったのがお昼の少し前。
遠くに木の柵で囲われた、雑然とした街が見える。
その背後には太陽を反射して輝く海と水平線。そして無数の船の帆柱。
「あれが?」
『ああ。海賊砦だ』
なおこの頃にはもう完全に意思疎通が出来るようになっている。
素晴らしきかな冒険者族の通訳機能。神様か誰かは知らないが、この機能をつけてくれた気配りには是非感謝したい。《ロボットアニメの加護》については今でもちょっと微妙だと思ってるけど。
「ありがとう、マッグさん! 何度も助けて貰って!」
『お前達は私の息子を助けてくれた。これくらいはたやすい事だ』
フランケンシュタインみたいな顔に笑みを浮かべるマッグさん。
最初はめっちゃ怖いと思ってたのに今じゃ優しげに見えるからおかしなものだ。
「ばいばーい!」
「さようならー!」
「さよならでチュー!」
俺達を森の端に下ろし、マッグさんは手を振り返して森の中に消えていった。
「さてと」
振り向いて「海賊砦」のほうを見る。
こちらの世界に良くある石壁ではなく、それこそ砦のような木の柵に囲まれた港町。
中央には巨大ではあるが無秩序に増築された様な、不格好な城?宮殿? そんなものがある。
イメージ的に一番近いのは、多分香港にあった九龍城だろうな。
「行こう、リタ」
「うん!」
気持ちを新たに、俺達は海賊砦に向かって歩き出した。
海賊砦の中は何と言うか、外から見たとおりの印象だった。
漂う潮の香り。雑然として、粗末な木造建築ばかりで、歩いているのもいかにも海の男ですって日焼けした荒くれが多い。
ただ、左右に並ぶ店の人達は割と普通の町人っぽくてそこはちょっとほっとする。
荒くれは多いけど、絡んでくる奴もいなかったし。
「じゃあ・・・取りあえず教えて貰ったこの酒場だね」
「うん」
「一刻も早くリタのおかあさんを救うでチュー!」
意気上がる俺達。
・・・今気付いたけど、絡んでくる奴がいないのはこのハムリス怪人どものせいか?
確かにマッチョでカラフルでハムリスの頭と尻尾付いてる不審人物が十匹もいたら、そりゃ関わり合いにはなりたくなかろう。
「・・・何かハヤトに馬鹿にされた気がするでチュー?」
「そんな事は無いぞ。むしろ感謝してる。お前らがこんなに役に立つとは思ってなかったよ」
「チュー?」
「チュチュー?」
「いいからほら、行くぞ」
「あ、うん」
話を強引に打ち切り、俺はリタの手を引いて歩き出した。
納得いかない顔ながらゾロゾロと付いてくる筋肉もりもりの変態マッチョ軍団。
こちらに視線を向けた途端、顔をさっと背ける露店の店主や通行人。
ああ、やっぱこれ避けられてるよ・・・。
酒場「男装の女王」亭。
教えて貰ったとおりの場所にあるのを見つけ出し、店主に目当ての人物がいないか聞く。
親切な人で、指さして船長さんのテーブルを教えてくれた。
顔を盛大に引きつらせているのは見なかったことにしよう。
礼儀としてミルクを人数分注文し、船長さんの席に向かう俺達。
ハムリスどもにはエールでもよかったんだが、酔っ払われると後が怖そうなのでミルクだ。
なおこの手の作品だとお決まりの「HAHAHAミルク注文するとかボーヤかい」みたいなやりとりはなかった。まああってもうれしくないけど。
「あの、ドリー船長さんですか?」
こちらに背を向けた、いかにもな船長服の人に声をかける。
「・・・」
無言のまま、ジョッキのエールをグビグビと一気に飲み干してその人物がこちらに振り向く。
「ああ、あたしがドリーだよ。なんだい、かわいいお姫様にかわいい騎士さんじゃないか」
「「シルヴィア座長ー?!」」
「チュー!?」
船長服に船長帽、黒いアイパッチ、ボタンの締まらないシャツからまろび出る見事な双丘・・・どこからどう見ても一分の隙もない女海賊にクラスチェンジした我らが座長、シルヴィアさんがそこにいた。
正直似合いすぎやろ。