異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十三話 海賊王に俺はなる?

「あー、魔女ばあさんの紹介かー」

 

 お代わりしたエールをグビグビやりつつ、紹介状を読むシルヴィア座長もといドリー船長。

 ハムリスどもは周囲のテーブルに座ってミルクをちびちび舐めてるが、客の半分くらいが不気味さに耐えかねたのか店を出て行った。店長さんすみません。

 

「よしわかった、このドリー姐さんが力を貸してやろうじゃないか!」

「ほんと!?」

 

 紹介状を読み終えると共に、飲み干したエールのジョッキをどん、と叩き付ける船長。

 やっぱこの人は頼りになるなあ!

 

「と、言いたいところなんだけど今ちょっと問題があってね・・・」

 

 え。

 

「何が問題なの? お金なら・・・」

「ああ、そうじゃないんだよ。話が本当ならロハで手伝ってやってもいいんだけどさあ・・・今そのね、アタシにゃ船がないんだ」

 

 なんですとーっ!?

 話を聞くと、どうやら借金のカタに船を差し押さえられているらしい。

 協力してくれる気はあっても肝心の船がないんじゃなあ・・・

 

「船長が飲み過ぎるのが悪いんですよ。高い蒸留酒ばかり樽ごと飲み干して、挙げ句の果てにラソーリの旦那の積み荷をしくじったとなりゃ、そりゃ船も取り上げられますよ。しかもそれでまだ飲んだくれるし・・・」

「うるっさいね! だからラムやウィスキーじゃなくてやっすいエールで我慢してるんじゃないかい!」

 

 部下の人も苦労してるなあ。

 というかそれだけガブガブ飲んでりゃ変わらないんじゃないか?

 

「違うんだよ! 度数が!」

「その分沢山飲んでりゃ同じですよ!」

 

 あ、同じ事言われてる。

 

「・・・借金はいくらくらいあるの?」

 

 顔を引きつらせて聞くリタ。

 宝石とか金貨とか、路銀としては十分なくらい持たせて貰ってるけど、さすがに船一隻買うには足りないんじゃないかなあ・・・

 

「いくらだっけ、航海士(ナビ)?」

船長(あんた)ねえ・・・まあざっと・・・」

 

 想像通り、今の俺達ではどうやっても払えない金額だった。

 

「・・・どうしよう?」

「そのラソーリさん?のところに行ってみよう。宝の島の話をして興味を引けないかやってみるんだ」

「難しいと思うけど・・・まあやるだけやってみるか」

 

 溜息をつき、ジョッキを飲み干すとドリー船長は立ち上がった。

 

 

 

 町の中央の、九龍城みたいな巨大建築物。

 城と言うより超巨大なお化け屋敷と言ったおもむきのあるそれは、やはり無秩序な増築に増築を重ねているのが近くによるとはっきり見て取れる。

 中腹からにょっきり突き出た足場に見張りの兵士が立っていたり、橋や階段が途中まで建築されて空中で途切れていたりするのは建築物と言うよりむしろ前衛芸術めいたおもむきすらある。

 

(なんかアメリカにこんな変なお屋敷あったなあ。ウィンチェスター・ミステリーハウスだったか? いやむしろ足が生えて歩き出しそうだな。ラソーリの動く城か)

 

 船長が門番に話をしているのを見ながら、俺はそんなことを考えていた。

 

 

 

「宝の地図? くだらん。何か金ヅルでもできたのかと思えば」

「あー、やっぱりかー」

 

 心底興味なさそうに言い捨てる「海賊王」ラソーリ。

 がっくりと頭を垂れる船長。

 

「・・・」

 

 玉座の肘掛けに肘を突き、こちらをねめつけるラソーリ。

 大柄ではないが筋骨隆々とした初老の男で、短く刈り込んだ白髪頭に同じく刈り込んだ髭。額から左目の上、頬にかけて凄い刀傷。

 いかにも肩書き通りの風貌で、オブライアンさんより余程邪悪の王の風格がある。

 海賊じゃなかったら山賊王かヤクザの大親分といった印象の人だ。どっちにしてもアウトローだな。

 

「話はそれだけか? ならさっさと失せろ」

 

 今にも核バズーカを発射しそうな悪い声でこちらを睨むラソーリ。何か無いか、何か・・・!

 

 3択―ひとつだけ選びなさい

 答え①ハンサムのハヤトは突如アイデアがひらめく

 答え②仲間がいいアイデアを出してくれる

 答え③どうにもならない。現実は非情である。

 

 答え③・・・ 答え③・・・ 答え③・・・!

 

 が、俺の貧弱な脳細胞が絶望するより前に事態が動いた。

 傷痕のある目をぎょろりと動かし、海賊王がリタを見た。

 

「お前・・・ひょっとしてグリテンのリタ王女か?」

「え? あ、はい、そうですけど」

 

 あれ、名乗ってないよな?

 きょとんとするリタをよそに言葉を続ける海賊王。

 

「グリテンのリタ王女は動物と会話できると聞いているが、本当か?」

「はい。後ろのハムリス達とも話せます」

「チュー」

「リタは凄いのでチュー」

「・・・」

 

 あ、ラソーリさんが目をそらした。

 

「それはいい。なら俺に協力しろ。結果次第ではその飲んだくれの船を返してやってもいい」

「本当ですか!」

「結果次第だ。ついて来い」

 

 そう言ってこのアウトローの王様は王座を立った。

 

 

 

 連れてこられた先は厩舎だった。

 

「馬・・・ですか?」

「そうだ。この海賊砦は港町だが、それでもこの周辺の土地をそれなりに領有している。

 銅山もあるし、農地もある。それで少し前に隣の町と境界線争いが起きてな・・・」

「それで競馬で決着をつけようと?」

 

 ラソーリが初めて俺を、それも意外そうな目で見た。

 

「ああ。海神(イムダワ)の神殿の仲裁でな。司祭のくじ引きで、あちらが勝負の方法、こっちが時間と場所を指定することになった。

 クソッタレ、船乗りなら船の速さで競えってんだ」

「たまたま向こうが早い馬を持ってたんでしょうねえ。でもラソーリさんも自分が早い馬を持ってたらそうするんじゃ?」

「そりゃな」

 

 ニヤリと悪人笑い。

 こうして見ると愛嬌がなくもない。めっちゃ怖いけど。

 

「というか、海賊なのに司祭様の言うこと聞くの?」

「そりゃそうさ。海賊ったって船乗りだから、海の神様(イムダワ)は命綱だ。

 嫌われたらやっていけないよ」

「ふーん」

「それと姫さん。俺ぁ海賊王なんて呼ばれてるが海賊行為はしたことがないからな。そこははっきりさせておくぜ」

「「嘘ぉ?!」」

 

 心底驚愕した俺とリタの声がハモる。

 ラソーリさんが渋い顔になり、ドリー船長がくっくと笑った。

 

「・・・まあそれはいい。お前さんに協力して貰いたいのはこいつらだ」

 

 足を止めたラソーリさんが指し示したのは、ずらりと並ぶ馬房。

 数十はある馬房はほとんど全部に馬がいる。

 

「勝負形式が決まったところで、賞金を出したんだよ。一番いい馬を売った奴には金貨一万枚をくれてやるってな」

「一万枚!?」

 

 日本円で言えば一億ほど。

 この世界、普通の馬で金貨数十枚ほどだからとんでもない価格だ。

 名馬と言われる馬でも二百枚くらいだろう。

 経済が発達して競争専用の馬が大量生産され、それだけで何億円の商売になる地球のほうがある意味おかしいのである。

 

「で、商人どもが持ち寄ってきたのがこれなんだが・・・俺は船乗りだ。馬を見る目はねえ。実際に走らせてはみたがあんまり違いがあるようにも思えん。部下にその手の事が達者な奴を探させてたんだが、時間ももう余りねえ。

 動物と話せるお前さんなら、ひょっとしたら見分けられるんじゃないか?」

「うーん・・・わかった、やってみる」

 

 決意を込めて、リタが頷いた。

 

 

 

「・・・おい、冗談じゃないだろうな?」

「私のおかあさんの命がかかってるんだよ。ふざけたりしない」

「そりゃまあそうだろうが・・・これはねえ」

「うーん・・・」

 

 しかめ面をするラソーリ、困惑する俺と船長。あくまでまじめな顔のリタ。

 

「?」

 

 俺達の視線の先では、この厩舎の中でも一、二を争うほど小柄な馬がかわいらしく首をかしげていた。

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