異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十五話 ついでに騎手まで振り落とす

「チューチュチュチュチュー!(ほーら、つかまえてごらんなさーい!)」

「ヒヒーン♪(あはは、まてまてー♪)」

 

 牧場を全力で走り回るカラフルなハムリスとアムール。あいつら馬並みに早く走れるのかよ。

 なお鳴き声のセリフ部分は俺の妄想当てレコである。

 

「あれはあれで調教になってるんでしょうかねえ・・・」

「だといいなあ」

 

 そんな会話を交わす俺と飼育員さん。ちょっぴり目が虚ろ。

 

「~♪」

 

 なお俺に肩車されているリタはハムリス達に手を振ったりして終始ご機嫌であった。

 

 

 

 三日目の午後、ラソーリさんが牧場にやってきた。

 走り回るマッチョとアムールたちを見て、もの凄く複雑な顔をしている。

 

「あーそのー、見かけはあれですがあれはあれで役に立っていると思うので・・・」

「ああ、まあ、それについては任せる。問題は別にあってな」

 

 ・・・・・・・・・・・・・。

 

「ダアラさんの乗ってた船が沈んだ!?」

「正確には奴の乗ってた船の『星』が反応しなくなったんだがな。まあ間違いあるまいよ」

 

 『星』。正確には「海神(イムダワ)の星」と呼ばれるマジックアイテムで、船と港にそれぞれ二つ一組の水晶を設置する。水晶は魔法の光を放ち、どちらかが水に沈むと、もう片方の星から光が消える。水平線に沈めば星は見えなくなる、というわけだ。

 

「それってまさか、ハイロウの町の人達の・・・」

「滅多な事はいうんじゃねえ。証拠はねえし・・・それに、ハイロウの王は古い付き合いだ。クソ野郎だが、そう言う真似はしねえ」

「ですか」

 

 少しほっとはしたが、それはそれで問題だ。

 

「でも、じゃあ騎手はどうするんです?」

「残念だがうちの町に、あいつ以外に馬術の達者な奴はいねえ」

「それは・・・困りましたね」

「まあ大丈夫だろう。何とかなるさ」

 

 うん? 当てでもあるのかな? と思ったら、ラソーリさんが肩ポンしてきた。

 

「頼むぜ、ボウズ」

「え」

 

 えええええ。

 

「な、何で俺が・・・」

「そりゃおまえ、騎士様なんだから馬くらい乗れるんだろう?」

「え、えーと・・・どうなんでしょう?」

「おい!?」

 

 割と当てにされてたのか、ラソーリさんが引きつったような顔してるが、しょうがないじゃん! 騎士として訓練受けた記憶なんてないし!

 いやでも、最初に巨人と出会ったとき無意識に剣を抜いていたから、今の俺に記憶がないだけで体がそう言う経験は積んでるのかな・・・? でもまあ状況が状況だ。やるしかあるまい。

 

 

 

「お兄ちゃん頑張れー!」

「ほお。結構様になってるじゃねえか」

「初めて背中に人が乗ったり、鞍を置いたりすると馬が怖がるんですけど、こいつは全然そんなことがありませんね。小柄ですけど、お姫様の見立て通り本当に勇気があるのかも」

 

 それぞれ上からリタ、ラソーリさん、飼育員さんの発言である。

 今俺はアムールの背中にまたがっていた。

 

「・・・」

「ブルル?」

 

 背中の俺を振り向いて、小首をかしげるアムール。

 首を軽く叩いてやると、「?」という顔をしながらも前に向き直った。

 そう、俺何か意外と馬上に馴染んでる感じである。

 剣術は現実の俺もそこそこやってたからちょっと判断が付かなかったが、もしかしたら本当に馬術もいけるのかもしれない。

 

「ハヤトのくせになまいきでチュー」

「でもリタのお母さんのためにはがんばってもらうしかないでチュー」

「ハヤトは死んでもいいからレースは勝つでチュー」

 

 そろそろブッ殺すぞお前ら。

 

 

 

「ハイヨー、シルバー!」

 

 年齢が疑われそうな事を叫んで手綱を引く俺。

 突如脳内に流れ出す存在しないBGM。「ウィリアム・テル序曲 第四部」、またの名を「ローン・レンジャーのテーマ」。

 この曲自体あちこちで使われてるクラシックの名曲だが、それを西部劇ドラマのメインテーマに当てるとか天才かよ。

 

「ヒヒーン!」

 

 ドラマの白馬シルバーよろしく、前足立ちしてからアムールは走り出す。

 うお?! すげえ、早えぇ!

 

「おお・・・やるじゃないかあいつ!」

「お兄ちゃんすごい!」

 

 多分マッグさんに運ばれているときの方が早いんだろうが、あれは巨人の腕の中で風景が流れているのが見えていて、地面からは遠かった。新幹線に乗って景色を見てる感じ。

 対してこっちはバイクだ(乗った事ないけど)。地面が遥かに近くにあり、すぐ傍の柵や芝生が風のように流れていく。まさしく疾風の景色で風景だ。

 でもわかる。こいつまだ本気じゃない。軽い慣らし運転だ。慣らし運転でこれだ。

 

「ハイヤーッ!」

「ヒヒヒーン!」

「わあ!」

「おおおおおおおお!」

 

 信じられないような速度。歓声を上げるギャラリー。

 全力で走るアムールは、最早風をも置きざりにする。

 

「すごいすごいすごい・・・あれ?」

「・・・あん?」

「あらら・・・」

 

 馬場の周回コース内側に建てられた小屋。

 その陰に入って一瞬見えなくなった後、そこから走り出してきたのは栗毛の若駒・・・アムールだけだった。

 小屋の影では泥だまりに頭から突っ込んでピクリとも動かない俺。

 何のことはない、アムールは風どころか騎手の俺まで置き去りにしていったのである。

 

 

 

「いてててて・・・」

「下が泥だまりで助かりましたね。下手したら首の骨を折って死んでましたよ」

 

 あいすまんこってす。

 荷物から引っ張り出したヒーリングポーションを飲みながら俺は引っ張り出してくれた飼育員さんに素直に頭を下げる。傷薬で治る怪我ならともかく、首が折れたらさすがに死ぬだろうなあ・・・

 わたしはゆうしゃハヤト。ジョッキーは出来ませんがきずぐすりが飲めます。よろしければごいっしょさせてください。

 

 いや何にご一緒するんだよ。

 セルフツッコミすると、うーんと伸びをして起き上がる。

 怪我したところの痛みだけじゃなくて体中の疲労も消えてる感じだ。

 

「むー。途中まではかっこよかったのに・・・」

「すんません」

 

 そして我らが小さいお姫様はご立腹のようだ。まあ最初が調子よかっただけに、あれじゃ言われてもしょうがない。

 

「所詮はハヤトでチュー」

「これならばチューたちがアムールちゃんに乗った方がマシでチュー」

「おっと待つでチュ。アムールちゃんの鞍は誰にも譲れないでチュよ」

 

 だからお前らは黙れ。

 そもそも体重60キロチョイの俺ならともかく、お前達が乗ったらアムールが潰れるわ!

 

 ちなみに身長184cmの全盛期シュワルツェネッガーが「絞った」状態で113kg。

 肉付きが良くて2mを越す巨漢のアンドレ・ザ・ジャイアントが236kg。

 このカラフルな筋肉モリモリマッチョマンの変態どもも、マッチョ体型で2m越えているので、多分200キロくらいはいくんじゃないかなあ・・・

 

「そう言うわけだからお前らは却下な」

「チュー・・・」

 

 その辺説明したら素直に引き下がったが、結構ショックだったのか全員下を向いて俯いてしまった。リタに慰められてたが、これはこれで鬱陶しい。

 

「まあ落馬はいただけねえが、途中までは良かったぜ。その調子で本番は頼むぞ」

「はい!」

 

 一方でラソーリさんには意外な激励の言葉を頂いた。

 そうだな、どのみち俺以外にやれる人もいない。頑張らなくては。

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