異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
月日は夢のように流れて十日後、俺が落馬してから七日後。
あれから俺は何とかアムールを乗りこなせるようになり、草原の領有権を賭けたレースに臨んだ。
レース会場は当の草原。
外周に添ってぐるりとロープが張られ、その外側を先に一周した方が勝ち。
中間地点の、こちらから向かって右側(北側)にスタート地点、まずは向こうの町の方に駆けていって、ぐるりと一周して戻ってくる。
スタート/ゴール
←
┌―――――●―――――┐
| |
ハイロウ側 | | 海賊砦側
| |
└―――――――――――┘
→
図にするとこんな感じ。実際にはコーナーは直角ではなくもっと緩やかに曲がっている。
大体わかると思うけどずれてたらごめん・・・ん? 俺今何言ってるんだ?
前日に既に設営は終わっていて、俺達は朝食を取ってからこちらに赴いた。
張られたロープの中には海賊砦ハイロウを問わず、両町の住民がゴザを敷いて見物の構え。
既に酒も入っているようであちこちから賑やかな声も聞こえてくる。実は暇かお前ら。レースは正午からだぞ。
「ありゃそのうち喧嘩が始まるな。おいお前ら、もめ事が起きねえように見回っとけ」
「へい」
ゾロゾロとロープの中に入っていく衛兵さんたち。
というかトップがトップだけに「若い衆」とか言った方がしっくり来る気がする。
スタート付近には一段高い客席がしつらえてあり、これが貴賓席と言う事らしい。
そこでしばらく雑談をしていると、向こうさんもやってきた。
馬車に乗ってきた俺達とは違い、馬に乗ってのご登場。
白い馬にまたがるのは回りに比べて明らかにオーラの違う中年男性。厳しそうだが穏やかな顔。日焼けした肌に柄物のバンダナと鳥の羽。インディアンの勇者か大酋長と言われたら納得する。
一方でたくましい赤みのかった茶色の馬(鹿毛と言うらしい)にまたがった、16,7才くらいの少女。こちらはいかにもお嬢様かお姫様という雰囲気。
もちろんリタの方がかわいいことに欠片の疑問もないが、ハイソオーラは年齢もあってあちらの方が上か。
馬を降りた二人が近づいてくる。中年男性の方は足が不自由なのか、杖をついていた。
「久しいな、ラソーリ。壮健そうで何より」
「お前も調子は悪くないようだな、『踊る勇者』」
「まあこの足とも長い付き合いだからな」
そう言って笑う二人。踊る勇者?
「ああ、こいつの二つ名さ。スターキー、こっちはグリテンのリタ王女。そっちがお付きの騎士ハヤト」
「ど、どうも」
「お初にお目にかかります」
ちょっと動揺するものの、何とか無難に礼をする俺と、綺麗にカーテシーを決めるリタ。あのスカートの脇をチョンとつまむ奴。スターキーさんは悠然と微笑んで礼を返してくれた。
「よろしく。こちらは娘のユーイだ」
スカートではなくズボンなのでカーテシーはしなかったが、こちらも綺麗に礼をしてくれるユーイさん。
「よろしくお願いしますわ! ほほほほほ、私こそはハイロウの姫、プリンセスハイロウ! お近づきのしるしとして、あなたにはこの私を応援する権利をあげるわ!」
「つまりオプ●ナを購入する権利をやろう!と」
あ、やべ。現実離れした高笑いと「権利をあげる」なんて言われたからつい。
「え? オプ・・・? なんなの?」
「いえ、つい口を突いて出た妄言ですので忘れて下さい。後俺は今回の騎手なんで、というかそもそも海賊砦側なんで応援はいたしかねます」
「ならば私に打ちのめされる権利を上げるわっ! 私の勇姿と鍛え上げた《加護》の力、とくと目に焼き付けなさいっ!」
びしぃっ! と擬音が出そうな感じで指を突きつけられた。つよい。
え? 打ちのめされるって・・・
「いかにも! ハイロウ側を代表する騎手は私! そしてこの子がこちらの代表馬、シルバーソウル! その破壊力に恐れおののきなさい!」
乗っていた馬を指す。確かに見るからに強そうだが破壊力? ラストスパートの爆発力とかそう言う事か?
「・・・」
首をかしげつつシルバーソウルの方を見ると、雑な顔と手足の付いた爆弾のような、あるいはこけしのような変な彫刻が馬具にあった。
なんだろう、うっ、思い出さない方が良さそうな記憶が・・・。
「あら、私のシルバーソウルに恐れをなしたの? まあ見る目があると褒めて上げるわ!
そちらのお馬さんは随分とかわいらしいこと! せいぜい頑張ってついてくる事ね!」
おほほほと高笑いするお嬢様の肩に、お父さんが手を置いた。
「油断をするな、娘よ。あの馬は確かに小柄だが、目に勇気がある。侮れば負けるのはお前の方だ」
そう言ってじっとアムールを見る。アムールもその目を正面から見返す。
あ、ユーイさんの顔付きが変わった。
「そうですね、お父様。油断大敵です。ハヤトと言ったわね。正面から正々堂々と叩きつぶして上げるわ!」
うーん、これは普通に強キャラの予感。《加護》ってことは多分《騎手の加護》持ってるんだろうし、油断しててくれた方がありがたかったんだけどなあ。
「お兄ちゃんそれちょっと情けない・・・」
すいません。
その後二時間ほど、貴賓席で仲良く雑談をしながら時間を潰した。
ユーイさんもラソーリさんのことを「おじさま」なんて呼んでるし、上がこれだけ仲いいなら話し合いで解決すればいいのでは・・・?
「それが出来るなら苦労はしねえんだよなあ」
白髪頭をかきつつラソーリさん。スターキーさんも頷く。
「互いの面子というのもあるからな。そちらが海賊砦などと言われてはいるが、なに、うちの町も負けず劣らず荒くればかりだ。なにがしかのケジメはつけないといけないのだよ」
めんどくさいですねー。
「だねー」
「リタさんも王国を継ぐ身なら他人事ではないわよ。そうした部下をうまくなだめるのも、上に立つものの仕事と心得なさい」
「は、はい・・・」
いざ話してみると、ユーイさんは高飛車なお嬢様っぽくはあるが、それはそれとして面倒見の良いお姉さんという感じだった。
一応敵方のリタにも何くれとなく世話を焼いている。
お父さんもそうだけどホントいい人なんだろうなあ。
その後はまったりと、スターキーさんの白馬がシルバーソウルに変顔をしたり、手綱に噛みついたり、水をはね散らしたり前足立ちしたりと色々絡んでいるのを眺めていた。
シルバーソウルは平然としており、絡んでくる変な友達を軽くいなすような貫禄がある。
スターキーさん親子が笑っているところを見ると、どうやらいつものことらしい。
正午。ついにレースが始まった。
「始め!」
よし、うまくやれた!
多分腕に覚えがあるんだろうユーイさんと互角の走り出し。
こっちを向いてちょっと驚いた顔をしてるから、あっちも自信はあったんだろう。
だがこっちも一応騎士! これまでに訓練は積んでたみたいだし、この十日間特訓もした! 負けはしない!
最初の直線はまったくの互角。
北西、第一コーナーにさしかかるが、幸いくじ引きでこちらは内側。
ラインは譲らない。外側を走るシルバーソウルが僅かに遅れる。
そのまま直線。草原の南端に向かって一直線に駆ける。コーナーで離れた距離は僅かずつ更に開いていく。これなら・・・!
「!?」
がくん、と。
僅かではあるがアムールの速度が落ちた。
キンツェムvsジャスタウェイ!
「銀」の刃を振りかざし「魂」の咆哮とともに突き進め。
なおどう見てもバレバレの一流のお嬢様はウマ娘の方のキングヘイロー(ヘイロー=ハイロウ=天使の頭の輪)、
お父さんはその父親である史上最強馬ダンシングブレーヴのイメージ。名前はそれぞれの主戦騎手から。ジャスタウェイも騎手繋がりですね。
騎手繋がりがなければ道ばたの雑草でも寝わらでも食ってしまうハツラツさんにしてたと思うw
後わかると思いますが、シルバーソウルに絡んでたのはみんな大好きなあの変馬です。