異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第十八話 空に星が輝くとき

 大歓声の中で俺達は手を振る。

 海賊砦の人達だけじゃなくてハイロウの人達もロープの中から飛び出して周囲を取り囲み、俺達を褒め称えてくれていた。

 ラソーリさんやリタ、スターキーさんがこちらに歩いてくる。どうでもいいがハムリスどもも。

 シルバーソウルにまたがったお嬢様が近づいてきた。群衆が分かれてお嬢様を通す。

 

「今回は素直に負けを認めてあげるわ。けど次は負けないわよ。このプリンセス・ハイロウは一流の騎手なのだから!」

「はいはい」

 

 そう言う所が素直じゃないなあと思うのだが、などと思っていると眉間が赤くビコーンビコーンと鳴り始めた。あれ? これは・・・

 

『ええい、あのロリコン変態騎士め』

『あの小娘も小娘だ。なーにがプリンセスハイロウだ、あれだけお膳立てをしてやったのに!』

 

 耳に聞こえてくるのは俺とお姫様の悪口。

 実はこの超巨神、正義の味方のロボではあるのだがかなり心が狭く、自分の悪口はどんな小声でも絶対に聞き逃さない。

 一応慈悲深いと自称するだけあって、悪役トリオ(+1)が改心したふりをすると見逃してやりはする。罪を憎んで人を憎まず!とか言って。

 

 ただしその後に悪役トリオが改心したふりをやめたり超巨神の悪口を言うと、地平線の彼方からでもそれを聞きつけて、即座に必殺技を叩き込んで吹き飛ばすのがお約束の流れ。

 最初の頃はそれでも改心したふりをすると素直に去っていったのだが、後になると去ったふりをしてこっそり隠れていたり、盗聴器をつけて盗み聞きしたりとすれていく。

 というか普通に性格が悪いなこいつ。

 

「・・・ポチっとな」

 

 何となく思いついて手の中のスイッチを入れる。ビコーンビコーンビコーンビコーン。

 俺の聞いた声が周囲にスピーカーで響き始めた。

 

『しかしどうするんだよオヤジ。このままじゃ草原取られちまうぜ!?』

『ええい、不甲斐ない。あっちの牧場の連中を挑発したり、馬に細工したり、どれだけ苦労したと思ってるんだ! あっちの騎手の乗った船も、わざわざ金払って星を捨てさせたんだぞ!』

 

 周囲がざわつき始めた。

 

「これは・・・ドッターとカシュンか?」

 

 戸惑ったようなスターキーさん。

 誰?と目で問うと、ユーイさんが「あそこの牧場を任されてる親子よ」と教えてくれた。

 やっぱりかー。ビコーンビコーンビコーンビコーン。

 

『こうなりゃしょうがねえ。あのクソガキ騎士にイチャモンつけて無効試合にするか』

『それっきゃねえか。まああんな扁平足野郎、どうとでも言いくるめてみせるぜ』

『いよっ、さすがオヤジ! 大悪党!』

『ふふふ、照れるじゃねえかよ・・・』

 

 ビコーン!ビコーン!ビコーン!ビコーン!

 既に額の赤い点滅は最高潮。

 どうやらコースから少し離れた大岩の影でコソコソしていると見抜き、俺はどこからともなく人間の背丈ほどもある黄金の巨大クロスボウを取り出した。

 お嬢様やリタたち、群衆がすすす、と脇によって射線を空けてくれる。

 ぴたりと狙いをつける黄金のアーバレスト。

 自分の悪口を言ったものを決して許さないその必殺技の名は・・・

 

『大・激・弩ぉーっ!』

 

 巨大な爆発と共に岩は吹っ飛び、奴らはお空の星になった。

 

 

 

 

 夕方。一隻の船が海賊砦に入港してきた。

 

「ダアラ!? お前ら生きてたのか!」

「すいません、親方。間に合いませんでした」

「いやそれはいい。とにかく無事で良かった」

 

 話を聞くと買収された船員が「海神(イムダワ)の星」を捨て、帆を駄目にしたり舵に細工をしたり、色々遅延工作をしていた模様。

 黒幕のドッター親子同様、船で強制労働刑だそうな。

 

 ちなみに事の始まりがこう言う事だっただけに、草原は今まで同様共同使用、ただし何かあったときは海賊砦側に優先権。牧場のドッター親子はこちらに引き渡し、詫びのしるしとして牧場の家畜の1/3を海賊砦に譲ると言うことになった。

 まあドッター親子はこっちに引き渡されてむしろ良かったかも知れない。ハイロウの人達もげきおこで、下手したら吊し上げられて文字通り吊されてたかもしれないとのこと。

 私利私欲のために町を巻き込んで汚い真似をしたのもそうだが、「海神の星」を捨てたり船に細工をしたりしたのが船乗りの逆鱗に触れたらしい。

 そして。

 

「宴だーっ!」

 

 勝利の宴になったらいつの間にか復活してたのはシルヴィア座長なドリー船長。

 エールのジョッキを掲げて大騒ぎである。

 レースの間は貴賓席の柱にもたれかかってミイラみたいにしおしおしてたのに。

 

「十日ぶりの酒がうまい! しかも船が戻ってくる! 今日は無礼講だろ!? 宮殿の酒全部飲み干してやるよぉ!」

「そこのお姫さんと小僧のおかげだってのを忘れるなよ? しくじりやがったら今度こそ許さねえぞ」

 

 ラソーリさんの釘刺しにもどこ吹く風。あれはもう止まらないな。

 

酒精(スピリッツ)こそ我が(スピリット)! あたしゃ命の水がないと生きていけないのさぁ! 大丈夫大丈夫、この二人を助けるためにも今日は飲まないとねぇ!」

 

 そう言って今度は一抱えもある酒樽をそのまま一気飲みし始める船長。

 

「おめえいっぺん死んだ方がいいんじゃねえのか」

 

 半目のラソーリさんの言葉に、うんうん、と俺を含めかなりの人が頷いた。

 

 

 

「ハッハー! 会いたかったよぉ、我がオンボロ船!」

 

 翌朝。

 感に堪えないと言った風に船長が叫ぶ。

 昨晩の宴会と違って、純粋に感動した面持ちだ。僅かに涙すら浮かべている。

 この人にもこんな純粋なところがあったんだなあ。

 

「意外だなあ」

「そ、それはちょっとかわいそう・・・じゃないかな・・・?」

 

 リタはやさしいなあ。

 でもリタ、自分が疑問形でしか喋れないことに気付くべきだとお兄ちゃんは思うよ?

 

 

 

 出港準備を命じた後、俺達は船長室に案内された。

 

「そう言うわけでこの船は、しばらくあんた達と一緒に冒険に出る事になる。魔女のばあさんの手紙にあった海図ってのは?」

「これです」

 

 油紙に包んだ地図を懐から取り出して、机の上に広げる。

 

「ふむ・・・パラディサス諸島の奥の方だね。あんまり船も行かないところだ。ここからなら風にもよるけど三ヶ月くらいか?」

 

 一目でわかる辺りはさすがだな。

 

「人は住んでるんですか?」

「聞いた話ではいないみたいだねえ。そもそも行った奴がほとんどいない。この辺は岩礁だらけでね。下手な奴が入り込んだら一発でオダブツさ」

「船長なら?」

 

 そう聞くと、船長がニヤリと笑った。

 とん、と胸を突かれる。

 

「誰にもの言ってんだい。地獄の底でも天の果てでも、水があるなら無事にそこまで送り届けてやるさ。ドリー姐さんをなめんじゃないよ」

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