異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二章「再会、妹よ」
第九話 海、サイッコー


「あなたとは違うわ! 私はマリア・グレース・フリードよ!」

 

     ――UFOロボグレンダイザー――

 

 

 

「ウォータービート! アクアプレッシャー!」

 

 俺のあわせた両手から勢いよく水が噴き出した。

 魔法労働ロボアニメ「魔働機士アースゾート」の水系統ロボウォータービートが放つ水の必殺技。

 本来なら水流で悪の社畜メカ過働王を破壊する技だが、今発射されている水は庭にまくホースの水くらい。じょぼじょぼと風呂桶に溜まる水。

 

「あー、助かるわー」

 

 半魚人・・・もとい、魚人妖精(オアンネス)のオブライアンさんが気持ちよさそうにそこに浸かった。

 

 

 

 がたごと揺れる馬車の中である。

 王都を出て以来小さな川しかなかったので、身体全体で水につかれなくて参ってたらしい。

 やっぱり海の中に住む種族だから、定期的に水に浸かれないのは辛いんだとか。

 

「できれば海の水が一番いいんだけど、中々できなくてねえ。でもハヤトくんの水は何か川の水より元気が出るような気がするよ」

「それはよかったです」

 

 ウォータービートは癒しの力を持つ魔働機士なので、そのせいかもしれない。

 まあ召喚条件が厳しいので余り活躍しなかったんだけどね・・・閑話休題(それはさておき)

 

「僕も魚人妖精(オアンネス)だから多少の水の術は扱えるんだけどね。こんなに簡単に大量の水は出せないや」

「そう言うものですか」

 

 まだ基礎修行中で、呪文の一つも身につけてない俺は首をかしげるしかない。

 

「コップ一杯くらいならともかくね、水を操るのに比べて水を無から生み出すのは難易度高いから。これが周囲が霧だったり小雨が降ってたりすればその水を集めればいいんだけどさ」

「なるほどなー」

 

 隣で聞いていたアルテとリタが頷く。

 

「実際水出せるだけで凄い便利だよね。旅芸人とか旅商人にも、水出す呪文だけ習得してる人いるし」

「お水ないと死んじゃうもんね」

「水浴びどころか体ふくのすらダメ、ってことあるしねー」

「ねー」

 

 頷きあう女の子たち。

 シャワーも風呂もいつでもOKなニホンの水道システムって凄かったんだな・・・しかし水浴びか・・・そんなことを考えていると、ほっぺたを指でつつかれた。

 

「・・・なんでしょう?」

「えっちな目をしてる」

 

 少し顔を赤くして指をグイグイと押しつけてくるアルテ。

 はい、すいません。ちょっと想像しました。

 

「あはは、お兄ちゃんえっちだー」

「ははは・・・」

 

 リタとオブライアンさんの笑い声が馬車に響いた。

 

 

 

 それからしばらく。

 

「そう言えばオブライアンさんはどうして陸に上がってきたの? やっぱし生きて行くには不便でしょ、オアンネスの人だと」

 

 風呂桶の水でちゃぷちゃぷ遊んでて、ふと疑問に思った事を聞いてみた。

 

「ちょっとハヤト、そう言うことは聞かないものよ!」

「あ・・・まずかった?」

 

 結構強い語気でアルテにたしなめられるが、肝心のオブライアンさんがあははと笑って手を振った。ちなみに指の間にも水かきがあって、本当に半魚人っぽい。

 

「だいじょうぶだいじょうぶ、そんな大した理由じゃないから。

 単に人間の世界が見てみたかっただけなんだよね。僕学者の卵だったし。

 陸に上がった当初はこの国もオアンネスと仲良くやってたし」

「あーそーか」

 

 オアンネスと戦争始めたのはあのクソ王になってからって話だったな。

 しかし気弱な学生っぽいって第一印象はドンピシャだったんだな。

 

「そう言えばあのクソ王が戦争始めたのっていつ?」

「確か二年か三年くらい前じゃなかった? まだ私もこの一座に来たばかりで、その後オブが来たんだよね」

「そうそう。最初のうちはみんな気にしてなかったけど、もう一年くらい前からは表に出られなくなってねえ」

 

 溜息をつくオブライアンさん。おしゃべり好きで知的好奇心が強いこの人にとって、コソコソ隠れなきゃならない生活というのは苦痛だろう。

 

「そう言えばオブライアンさんは一年より前はどういう芸やってたんです?」

「水芸」

「聞いた俺が浅はかでした」

 

 あははは、とまたオブライアンさんが笑う。

 顔を沈めてるのでぶくぶくと泡が立った。

 

「まあオアンネスだからね。後ペトロワさんと組んで『水槽の大賢者』みたいな役もやったな。お客さんの未来とか占うの」

「賢者っすか」

「昔オアンネスの人が、色々人間に教えてくれたんだよね」

 

 そうなの?と聞くとオブライアンさんが頷いた。

 

「古代の魔法文明・・・真なる魔法文明というのがあってね。これはこの世を作った神様たちが世界を去って、その直弟子である九十九人の真なる魔術師(トゥルー・ウィザード)――今の《百神》――が神になった後、ひとり地上に残った真なる魔術師たちの長兄が作り上げた文明なんだ。

 この文明では人間も妖精たちも等しく力を合わせてたそうなんだけど、それが崩壊しちゃってね。人間たちはいっぺん文明を失ったわけさ。その時に、技術と知識を断片的ながら残していた僕達オアンネスがそれを人間のひとたちに教えたんだよ」

「なーるーほどー」

 

 ローマの知識や技術が中東に流れて、それがヨーロッパに再伝来してルネッサンス、みたいな話だな。

 

「ていうか九十九人なのに《百神》なの?」

「"最初の魔術師(ファースト・ウィザード)"・・・つまり地上に残った長兄に敬意を込めて、ってことらしいよ」

「ああ、そういうことか」

「ちなみに人間を作ったのは世界を作った《創造の八神》。長兄である《祭壇》様が真なる魔術師たちのお師匠様で、後に《百神》がそれぞれ人間を元に森林妖精(エルフ)大地妖精(ドワーフ)小人族(バグシー)魚人妖精(オアンネス)を作ったんだって」

「なるほどなるほど」

 

 いつの間にかオブライアン先生の歴史授業、みたいになってるけどこれはこれで楽しいからいいや。

 

「それで妖精には僕達の他に霊猿妖精(ヴァナラ)双翅妖精(ピクシー)なんかがいて・・・」

「ふむふむ」

 

 授業を続けつつ、馬車は街道をゆっくり進んでいった。

 

 

 

「ほれ、忘れてたけどあんたのお給料」

「ファッ!?」

 

 次の町について、シルヴィアさんから渡されたのはずっしり重い革袋だった。

 

「あ、開けてみていいですか・・・?」

「あんたのもんなんだからそりゃ好きにしな」

 

 震える手で口を開くと、中にはぎっしりつまった銀貨。100枚くらいか?

 金貨一枚=銀貨十枚=銅貨百枚。銅貨一枚で日本円百円から千円くらいのイメージらしい。生活費は安いが工業製品は逆に高い。

 つまり生活費にあてるなら100万円くらいの価値になるって事だ。節約すれば半年は遊んで暮らせる。

 

「・・・!」

 

 アルテとリタちゃんも絶句している。

 

「あ、あの、これ・・・」

「いやあ、前の公演で馬鹿みたいに人が入ったからさあ。あんたの正当な報酬だから胸を張って受け取りな。ご祝儀も入ってるけどさ。

 まあ今日はアルテとリタつれて遊びに行っておいで。公演は明日からだからね」

 

 ちらりと横を見るとアルテとリタが目を輝かせている。

 

「ありがとうございます」

 

 色々どぎまぎしつつ、俺は座長に頭を下げた。

 

 

 

(ファーッッッッッ!?!?!?!?)

 

 二人を連れて町に繰り出した五分後、俺の心臓が止まった。どぎまぎしてる場合じゃねえ! 下手すると心臓が物理的に止まる!

 というか大声で叫び出さなかった自分を褒めてやりたい。

 

「ど、どうしたのお兄ちゃん?」

「ハヤト?」

 

 二人とも心配そうにこっちを見てくるが、返事をする余裕なんてない。

 

「・・・」

 

 その俺の視線の先では、軍を引き連れ白馬に乗った白銀の美騎士――勇者カオルくんの姿があった。

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