異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

90 / 415
第三章「夜明けの船」
第十九話 ムーの白鯨


「あのゆるぎない塔、あれはエイハブだ。あの火山、あれもエイハブだ。あの雄々しい、不撓不屈の、勝どきの声をあげる雄鶏、あれもエイハブだ」

 

     ――「白鯨」――

 

 

 

 

「天気晴朗なれども波高し、か」

 

 見渡す限りの青い空と青い海。

 風は強く、帆は一杯にふくらんでいる。

 白い海鳥にトビウオの群れ。

 

「うおっ!?」

 

 方向を間違えたのか、まぬけなトビウオが一匹俺の肩にぶつかってきた。

 甲板でピチピチ跳ね回っている。

 肩車していたリタが笑った。

 

「お兄ちゃん、戻して上げて」

「はいはい」

 

 苦笑しながら両手ですくうように持ち上げて、海に戻してやる。

 こら、跳ねるな暴れるな。助けてやろうってんだぞ。

 苦労しながら海に放り込むと、ポチャンと水音を立てて見えなくなった。

 

「何であいつら魚なのに空飛べるんだろうなあ」

「船乗りに伝わるこんな話があるよ」

 

 いつのまにか、船長が後ろに来ていた。

 

「トビウオは昔カモメと恋をしたんだ。カモメはいつしか飛び去ったが、トビウオはそれを追って飛び始めたのさ。でも魚だから水から出たら息が続かない。

 それでも去った恋人が忘れられず、ああして海から跳ねてるのさ」

「・・・」

 

 リタと二人、海に目をやる。

 今の話を聞いた後だと、海から飛び跳ねるトビウオの群れがまた違う何かに見えた。

 

 

 

 数日後。上から声が降ってきた。

 

「船長、右前方に海鳥が集まってますぜ」

 

 マストの見張りからの言葉に、俺達もそちらを見る。

 確かに海の上にギャアギャアと鳥がやかましく飛び回っている。

 船長もそちらをちらりと見て肩をすくめた。

 

「まあクジラの死骸でもあんだろ。気にするほどのこっちゃない」

「アイアイサー」

 

 興味なさげに仕事に戻る船長。

 俺はミストヴォルグの超感覚センサーを発動して、そちらの方を見てみる。

 リタは樽の上から目を凝らしているが、さすがに見えない模様。

 

「どう、お兄ちゃん?」

「んー・・・確かに何かいるな。死体には見えないけど白い・・・あ、動いた」

 

 多分7、8mくらいの白い何かがピクリ、と動いたが、そのまま潜る元気も泳ぐ元気もなく、また動かなくなる。

 良く見れば体中にいくつも傷があった。サメかシャチに襲われでもしたんだろうか?

 上空の海鳥たちはあいつが弱ってることをわかってて、死ぬのを待っているんだろう。

 気の毒ではあるがこれも自然の摂理という奴か。

 

「あ・・・」

 

 そうやって首を振ったところで、リタが目を見張った。

 

「どうした?」

「あの子・・・助けを求めてる。おかあさん、おかあさん、って」

 

 思わずリタの顔を見る。

 

「・・・」

 

 口には出さないが、切なげな目で見上げられた。

 これは・・・しょうがないよな。

 ちらりと船長の方を見ると苦笑しながら肩をすくめる。

 まあそういうことなら好きにやらせて貰おう。

 今の俺はお姫様の忠実な騎士だ。お姫様の望みは叶えないとな。

 

「リタはやさしいでチュー」

「そんなことを言いつつハヤトは見捨てようとしていたのでチュー」

「人の心がないでチュー」

 

 人じゃないおまえたちに言われたくはねえよ!

 

 

 

 ミストヴォルグの力で変身し、ヘリコプター飛行して子供クジラの元へ向かう。小脇にはリタを抱えて。念のためにボートも出して貰った。

 余談だがいつの間にか、俺が《加護》を使うと、デモゴディみたいな完全変身でなくても半透明の幻影みたいなものが現れるようになっている。

 ス●ンドみたいなものだろうか・・・?

 閑話休題(それはさておき)、俺達は子供クジラの上に着陸。リタが話しかける。

 

「今助けて上げるからね。ちょっと待っててね」

 

 キュー、と今度は俺にもかすかに鳴き声が聞こえた。多分了承してくれたんだろう。

 

「それでどうするの? 傷薬のポーションはまだあるよね?」

「いやー、多分このサイズだとエリクサー使わないと無理じゃないかなあ・・・」

 

 近くで見るとやっぱり大きな傷口だ。まだ血が止まってない。このままじゃ早晩失血死だろう。

 なのでこうする。

 

「新しき泉、炎の底から湧き出でる! ドーラ・マキサ・ムーン、出でよ、汝スーパーウォータービート!」

「うおおおお!?」

 

 ボートで着いてきてくれてた船長たちが驚きの声を上げる。

 水面に光る魔法陣が現れ、その中から巨大な顔。俺はそれと合体してなんか水っぽいSD体型のロボの半実体をまとう。

 原作だと「波のない水面」にしか描けない魔法陣だが、そこは全力で見逃して欲しい!

 というか屋内プールでもないのにさざ波もない静かな水面なんてよくあったなあの世界!

 閑話休題(それはさておき)

 

「スーパーウォータービート! メディカルサスペンダー!」

 

 組み合わせた両拳から癒しの力を持つ水の魔力が生み出される。

 当然と言えば当然だが、ロボットアニメはロボットが主人公。ファンタジー系でも魔法でロボの傷を治すシーンはまれにあるが、人間の傷を癒すシーンはほとんどない。

 なので人間の治癒は俺は基本できないのだが・・・相手がここまで大きければ別だ。

 7,8メートルと言えばリアル系のロボットアニメでは普通にあるサイズ。有名なのはお巡りさん巨大ロボもの「こちら警視庁湾岸前特車出張所」とかだな。

 そして数あるロボットアニメの中にはクジラ型のロボもあれば生体ロボもある。なのでクジラも生体ロボの一種と強弁すればやってできないことはない――!

 

 

 

「や、やりとげたぜ・・・ぐふっ」

「おにいちゃーん!?」

 

 俺は力を使い果たし、波間にプカプカ浮かんでいた。

 実のところ《加護》は「やれると思えば出来る」性質が強い力らしいのだが、それでも無理を通せば反動が来る。クジラを生体ロボと誤魔化すのはさすがに無理が過ぎたらしい。

 

 そして《加護》も魔法も重要なのはイメージ。

 俺の《加護》もイメージしやすい行為ほど、再現しやすいと言える。

 で、このメディカルサスペンダーという技、実は本編ではいっぺんも使ったことのない「設定上存在する」という技だ。

 そう言う技を無理矢理イメージして強引に使うとどうなるか。

 

 無理をダブルで重ねた結果が、ぷかぷか浮いてる今の俺である。

 なおクジラの子供は元気を取り戻し、尾びれを振って礼を言いつつ泳ぎ去っていった。

 

「ほんとしまらないねえ、あんた・・・」

 

 盛大に苦笑しつつ、船長たちが俺を海から引き上げてくれた。

 まあ目的は果たしたからよしとしよう・・・




夜明けの船は水中ガンパレードマーチこと絢爛舞踏祭・ザ・マーズ・デイブレイクの主役が属する海賊船。

白鯨は昔読んだことがあるけど、めっちゃ長くて退屈な小説という印象しかなかったなあ。
エイハブ船長のキャラクターは強烈なんだけどw

スーパーウォータービートは大体グランゾートのスーパーアクアビート。メディカルサスペンダーに相当する技も大体そんな感じ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。