異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十話 ハヤトの飲むタジルの香草茶は苦い

 あれこれあったが航海は続く。そんなある日。

 

「ふははは、吾輩こそは大海賊桃ひげですぞ! 命が惜しくば有り金全て・・・」

「豪子力ビーム!」

「のわーっ!?」

 

 ラファエルさんに似たドワーフ海賊の船にいきなり目からビーム。

 メインマストが真っ二つに折れて海の中にどぼん。

 武士の情け、あいや騎士の情けじゃ、サブマストは勘弁してやろうぞ。

 

「扱いが悪いですぞーっ!」

 

 ラファエルさんっぽい海賊は悲しみの叫びを上げながら水平線に消えていった。

 ナムアミダブツ!

 

 

 

 更に半月ほど航海して、俺達はそこそこ大きな島にたどり着いた。

 港に沢山の船が係留されており、帆柱が森の木々のようだ。海賊砦よりもかなり多いな。

 

「すごーい!」

 

 リタが目をキラキラさせてはしゃいでいる。

 

「タジル島だ。この辺を通る船が必ず立ち寄る中継地点で、この周辺の島々を支配するタジル王国の首都でもある。補給にはもってこいだよ・・・ま、やばい連中やブツも多いけどね」

「船乗りが作ったパンドラの箱。 質を問わなきゃなんでもある、って感じですか」

「そんな感じさね」

 

 くっく、と笑って船長は入港の用意を命じた。

 

 

 

「うわ、何これ!?」

 

 上陸した途端、俺とリタは思わず叫んでいた。

 山際にある港町・・・かと思っていたのだが、高さ数百メートルくらいの険しい山にぱっくり裂け目が入っていて、その中がマンションか高層ビルみたいに階層に分けられている。ミストヴォルグの力を使うまでもなく、その中で沢山の人達が動いているのが見えた。

 

「あの山は、実は真なる魔法文明時代の遺跡なんだそうでね。昔は立派な城だったそうだけど、天から雷が降ってきて裂け目が入り、ああなったんだと。

 で、時代が下がって周囲もああいう風に木やツタで覆われて岩山みたいになったって。今じゃアレが王宮さ」

 

 ひえええ。

 

「天から雷って・・・当時の大魔術師同士の戦争とかじゃないでしょうね?」

「さあ、そうかもしれないねえ」

 

 こわいなー、とづまりすとこ。

 っつーかまんまアレじゃん。

 

「今でも酸の雨が降ったり、三十万枚の金貨が降ってきたりはしませんよね?」

「なんだいそりゃ? まあ金貨が降ってくるなら大歓迎だね。そんときゃあんたも精一杯拾い集めな」

 

 からからと笑う船長。

 

「ハヤトは発想が卑しいのでチュー」

「騎士などと名乗っていても所詮は平民でチュー」

「金! 金! 金! 騎士として恥ずかしくないのかチュー!」

 

 ああ、恥ずかしくないね! 大体騎士や武士ほど金にうるさい人種はいねーよ!

 軍を出すにも統治するにも金はかかるんだぞ!

 金が汚いものなんて概念は平和な時代の平和ボケした連中じゃないと出てこねえんだよ!

 

 

 

「ちょいと商談してくるからね。表で待ってておくれ」

「わかりました」

「わかりましたー!」

 

 微笑んでリタの頭を撫でると、船長は部下と一緒に商家・・・地球で言うと貿易業とか商社っぽい建物の中に入っていく。

 残された俺達はサーターアンダギーみたいな屋台の揚げ菓子をかじりつつ、雑踏をぼーっと眺めて時間を潰していた。

 何しろ色々な人が行き来しているので、見ているだけでも面白い。

 

 いかにもヨーロッパな貴族の伊達男っぽい人がいるかと思えば、ターバンを巻いたインド人みたいな人、テンプレートの中国人みたいなドジョウ髭で糸目の人、ベトナムのアオザイみたいな服を着た綺麗なお姉さん、腹回りが2メートルくらいありそうな凄いデブのおばさん、アイパッチに船長服、ドレッドヘアにリボンか何かを編み込んだ髭と、どっからどう見ても海賊にしか見えない人もいた。

 

「あ、あれ! エルフじゃない!?」

「ホントだ、エルフだ!」

 

 そしてたまには妖精も歩いていたりする。

 船乗りの格好をしたエルフ以外にも角付き兜に緑の鱗甲鎧(スケイルメイル)、斧を担いだバイキングみたいなドワーフの一団、いかにもこすっからそうな若い小人族(バグシー)霊猿妖精(ヴァナラ)、島と言う事もあってか、魚人妖精(オアンネス)も数人見かけた。

 

「オアンネスの人って結構たくましいんだね。ひょろりとしてるものだって思ってた」

「まあオブライアンさんは学者だからねー・・・っ!?」

 

 危うく揚げ菓子を喉につまらせるところだった。

 通りの向こう側、角を曲がっていったのは、一瞬しか見えなかったが間違いない。

 鍛え上げた逆三角形の肉体、はち切れんばかりの筋肉。ごつい顔付きのスキンヘッド。

 覆面こそつけていなかったが間違いない。あいつ、サソリキング(仮称)だ!

 

 くそ、そりゃそうか。

 あいつも空を飛べたり瞬間移動できたりするのでもなければ、船でパラディサス諸島に行くしかないんだ! そうしたらここで鉢合わせる可能性も充分あった!

 あっちが俺達に気付かなかったのはホント幸運としか言いようがない。もしかしたらハムリスどもの肉肉しい壁に遮られて気付かなかったか。だとしても口に出して感謝はしないが。

 閑話休題(それはさておき)、揚げ菓子の袋をリタに渡して耳元で囁く。

 

「リタ。サソリの覆面の奴がいた」

「!」

 

 リタが体を硬直させる。

 

「俺が後をつけるから、リタは中に入って船長と合流するんだ。絶対に船長と離れるんじゃないぞ」

「危ないよお兄ちゃん!」

「しょうがない。透明になって空を飛んでいけば多分大丈夫だ」

「・・・お父さんと同じくらい強い人でも?」

 

 う"っ。

 あの時黒い覆面剣士(仮)に助けて貰わなかったら確実に死んでいたから、これは反論できない。

 視界内だと、俺が何をやろうとしてもあっちの方が先に距離を詰めて、ばっさり切られておしまいだ。透明になってても心眼だかなんだかで気付かれそうだし、ペトロワ師匠によれば剣の達人は斬撃を「飛ばす」ことが出来るらしいし。

 一応ガイガーさんがそう言う事をしたことはないけど、出来ると言われたら無条件で信じる。

 そしてガイガーさんと互角のあいつが出来るかと言われたら、可能性は絶対否定できない。

 

「ピピピピピ」

 

 ?

 リタが口を尖らせて、鳥の鳴き真似をする・・・あっ、そういうことか!

 何羽かの小鳥がやって来て、リタの前に降りた。

 リタが揚げ菓子を一つ、地面におくと、小鳥たちは一斉にそれをむさぼり始める。

 

「チュチュン!」

「あのね、あっちの方を歩いていった男の人に・・・」

 

 リタが話しかけると、小鳥たちは食べるくちばしを休めず、頷いたように見えた。

 一分ほどで揚げ菓子はなくなり、小鳥たちはサソリキングを追って飛び立っていく。

 

「これでどうにかなる・・・と思う」

 

 ちょっと自信なさげなリタに、俺は満面の笑みで思いっきり頭を撫でてやった。

 

 

 

 その後、中の船長たちと合流して事情を話す。

 念のため布をかぶって顔を隠し、俺達は何とか無事に船に戻った。

 

「で、小鳥の斥候隊はどうだったんだい?」

「あいつが立ち寄った場所を案内して貰いましたけど・・・」

 

 これこれしかじか、と説明するが、船長によれば全部カタギ(一応)の真っ当な店らしい。

 

「単にあれこれ補給しにいっただけだろうね。で、あいつの船は?」

「もう出航したみたいです。話を聞いたら帆にサソリの縫い取りをした赤い船だと」

「派手な奴だねぇ」

 

 そう言いながら、船長の顔は真剣だ。

 俺達の顔も同様に真剣なものだった。

 あちらは俺達を知らない。けど俺達はあちらを知っている。

 宝物庫で地図を奪われて以来、先手をとられてきたが、少なくともこれで一つだけアドバンテージが出来た。

 リタのお母さんのためにも負けないぞサソリキング(仮)・・・!

 

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