異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十三話 鋳つぶした王冠

「『鋳つぶした王冠(サン・ディカリ)』ですか。どういう組織なんです?」

「『王制を廃止し、王のいない国を作る』という気の狂ったお題目を掲げておる。

 バカバカしい、どのみち誰かが上に立つのじゃ。新しい王が誕生するのとどう違う」

「・・・」

 

 下手にボロを出さないよう、俺は黙っていた。

 というのもこの世界、オリジナル冒険者は一部の王族や貴族から危険視されることがある。

 昔大反乱を起こして王や貴族を殺しまくったオリジナル冒険者族がいたからだ。

 

 師匠も余り良くは理解していないようだったが、日本人である俺には何となくわかった。

 そのオリジナル冒険者族は、多分フランス革命みたいな事がやりたかったのだ。身分制度を破壊し、民主主義をこの世界に根付かせたかったのだ。多分だけど俺みたいに王様や貴族に余程ひどい目にあわされた、あるいはあわされた人を見たんじゃないかと思う。

 

 幸いにもそんな過激な奴は一人だけだったが、今でもその衣鉢を継ぐ集団はいて、邪教集団扱いされてるとか。王侯貴族からしてみれば、「王や貴族のいらない世界」という概念はそりゃ恐ろしいものだろう。

 間違っても民主主義とかそのたぐいの言葉は口にするなと、厳しく注意された。

 もっともここはお話の中の世界、実際のサイモックとその辺が同じとは限らないが、注意するに越したことはない。 

 

(・・・実際早すぎる思想だよな)

 

 教育の行き渡った地球の先進国でさえ衆愚政治から完全に抜け出せていないのに、せいぜい江戸時代レベルの民衆がまともに民主国家を運営できるとは思えない。

 でも、そう言った実感を持っていない人達にしてみれば、民主制というのは輝ける星なんだろう。王や貴族の横暴に悩むことのない理想郷に見えてしまうんだろう。

 俺は首を振って益体もない考えを頭から追い出す。今は何よりもまずリタだ。

 

「それで、リタ王女の奪還についてですが」

「わかっておる。わしらも可能な限り手を貸そう。我が国の領内で他国の王女がさらわれたとあっては面目が立たぬ」

「ありがとうございます」

 

 素直に頭を下げておく。

 色々思惑もあるんだろうけど、協力してくれるのはありがたい。

 

 その後色々話をして、色々と教えて貰った。

 「鋳つぶした王冠」については、国も余り把握していることはないようだった。

 十隻以上の船団を有しており、王国の正規軍とぶつかって勝ったこともある。

 このへんがアジトじゃないかと噂されている島はあるが、確認は取れていない。

 各地の島にスパイを送り込み、情報網を作っている。

 ボスは60くらいの老人で「夜明けの船」と呼ばれる船に乗っており、常に居場所を変えて探知の術からも逃れている。

 そのくらいだった。

 

「別人だってばらすのはやっぱマズいかねえ?」

「一般人の女の子なら、秘密を知られた部外者だ。生かしては返すまい。

 エリザベス姫ではないにしても身分あるものと知れれば、やはり人質になるだろう。

 今のところは誤解させておくのがベターだ」

「そうかい」

 

 船長が溜息をついた。

 彼女の疑問に答えた、やせた眼帯の男はニック。国王の懐刀らしい。

 「内々の仕事を任せている」って紹介からするとスパイとか秘密警察の長官とか、そんな人なんだろう。

 

「とりあえず次の脅迫文が来るまで待ちと言うことですか?」

「正直それ以外に手が無いというのが正直なところだな。恥をさらすようだが、我々にはそれだけの力がない。正面からぶつかれば無論勝てるが、向こうには凄腕の間諜がいてな。

 リタ姫をさらったのも恐らくそいつの仕業だろう」

「どんな奴なんです?」

「はっきりとしたことはわからないが、小人族(バグシー)の男らしいな」

 

 

 

「・・・あれ?」

 

 リタは目を覚ました。

 記憶が混乱している。

 たった今までドリー船長の船の甲板で、ハムリス達と一緒に月と海を眺めていたはず。

 揺れている。ここは船の中だ。

 いつの間にか眠ってハヤトが運んでくれたかと思ったが、僅かな明かりの中でも、ここがドリー船長の船の自分の部屋ではないことはわかった。

 ベッドから身を起こそうとして。

 

「お目覚めかい、お姫様」

「きゃああああああああああああああああああああ!?」

 

 いきなり真横からかけられた声に、リタはありったけの声で絶叫した。

 

 

 

「いやすまんすまん、脅かすつもりじゃなかったんだ。いかんね、人間の世界に来て長いつもりだが、あんたらが俺達ほど夜目が利かないってことをついつい忘れちまう」

 

 言葉と共に明かりが付いた。

 腰から取り出した火縄でランプに火をつけたのは、リタと大差ない体格の男。

 

「・・・アーベルさん?」

「あん? いや、俺はジョルジュだよ。まあ汚いところで申し訳ないが、しばらくここにいてくれ、エリザベス姫」

 

 そう言って、アーベルそっくりの小人族は親しみのある笑顔で笑った。

 

 

 

 さらわれて目覚めてから三日。

 リタは周囲の会話からある程度自分の状況を掴んでいた。

 この船は反王国組織「鋳つぶした王冠」のものであること。

 自分はタジル国王の孫娘、エリザベス姫と間違われてさらわれた事。

 何らかの交渉を行う予定なので、当分安全に過ごせそうだと言うこと。

 こちらを睨んでくる船員もいるが、ジョルジュが何くれとなく気を利かせてくれるし守ってくれる。彼の見張りのもとでという制限付きではあるが、甲板に出る事もできた。

 

(・・・やっぱりエリザベス姫のままでいるのがいいみたい)

 

 不幸中の幸いか、そう理解出来る程度にはリタは賢かった。

 受け答えは最小限に。

 怯えたお姫様であれば会話が弾まなくても不自然ではないし、ジョルジュも気を遣ってくれているのか、余り話しかけてくるようなことはなかった。

 ただ、どうしても気になる事があった。

 

「ジョルジュさんたちはどうしておじいさまたちが嫌いなの? おじいさまたちがひどいことをしたの?」

 

 そう言うとアーベルが苦笑した。

 

「んーまあ、そう言う奴らもいる。姫様のじいさんはまあまあいい王様だと思うが、威張り散らす奴や平民をいじめる奴はどうしてもいる。

 そう言う連中にひどい目にあわされた奴が組織に入ってくるわけだ」

「じゃあおじいさまたちが謝って、悪い人は捕まえればいいの?」

 

 また苦笑。

 

「俺としてはそれでもいいんだが・・・誰かが考えたのさ。そもそも王様や貴族がいなければいい、ってな。

 生まれつきの王様や貴族じゃなくて、みんなで入れ札(投票)をして、一番沢山選ばれた奴が王様になる。みんなをいじめる王様は嫌われるから、次の入れ札で王様じゃなくなる。

 だからいい王様が続くだろう、ってことだ」

「うーん・・・うまくいくの?」

 

 首をかしげる少女に、今度は肩をすくめる。

 

「わからんさ。やってみなきゃな。ただ、そのほうがいいんじゃないかと思うから俺はここにいるのさ」

「・・・」

 

 ジョルジュの顔をじっと見つめる。

 嘘はついていないが本当の事を全て言ってもいない。

 何故だかそんな気がした。

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