異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十五話 神の要塞

 更に数日が過ぎ、「夜明けの船」は航海を続け、更に数日が過ぎた。

 

「見えたぞー!」

 

 ジョルジュから暇つぶしに読み書きを教わっていた時、甲板から声がした。

 

「また船を乗り移るの?」

「いいや、目的地についたのさ。ただ、しばらくは甲板に出ないでくれな。見せたくはあるが、見せちゃいけないものもあるんだ」

「ふーん」

「と言うわけで、それまでの間アルファベットの書き取りを続けようか」

「むー」

 

 リタも言われた以上甲板に出るつもりはなかったが、それはそれとして書き取りという単調な作業が嫌いではあった。

 

 

 

 ややあって船が止まり、ドリー船長の船でも何回か聞いた係留作業の音がする。

 それが終わるとノックがあって、水夫が下船を告げに来た。

 

「やったー!」

 

 やっとこの責め苦から解放されるとリタが快哉を叫ぶ。

 

「よし、それじゃ最後の二文字を30回ずつ書き取ったら下船だ」

「おに! あくま! アーベル!」

「だから俺はジョルジュだって」

 

 つたない語彙で自分を非難する少女にニヤリと笑い、このひねくれた小人族は肩をすくめた。

 

 

 

「わっ」

 

 リタが甲板に出た途端、大歓声が彼女を迎えた。

 とは言っても彼女に向けて発せられたものではない。

 ほぼ同時に姿を現した「海の獅子」アーメッドとその孫娘ラリザニに対するものだ。

 杖をつき、孫に支えられではあるが、彼は自分の足で立っていた。

 ジョルジュがリタを連れてくるのを見て、アーメッドが二人を招き寄せる。そしてリタの肩に手を置き、声を張り上げた。

 

「諸君! 見ての通り我々はタジル国王の孫娘、エリザベス姫をお迎えすることに成功した!

 これは我々の勝利への揺るぎない一歩になるだろう!」

 

 大歓声。普通の子供なら怯えてもおかしくない状況だが、幸か不幸かリタは根っこのところで図太かった。ぽかんと口を開ける程度でそれを受け流しているのを見て、アーメッド達はやはりかとリタに対する認識を更に上方修正したりしている。

 頷いた後に、手を掲げて歓声を抑える。

 

「しかし見ての通り姫様はあどけないお年頃だ! くれぐれも怖がらせたりはしないように!」

 

 歓声に混じって笑い声が響く。

 

「ようこそお姫様! 我らが故郷へ!」

「いずれはここが新たなる王宮となる!」

「・・・あれ?」

 

 ここでリタはようやく、周囲の風景の異常さに気付いた。

 港に集まる民衆の群れに目を取られていたが、そこから視線を上に向けると理解出来る。

 何せ海が見えないのだ。

 四方どちらを見渡しても高い岩山ばかり。

 空は見えるが水平線は全く見えない。

 後ろを振り向いたが、港の水も岩の崖で途切れており、どこから入港してきたのかすらわからない。

 

「どうだ、すげえだろ。これが俺達の秘密の隠れ家ってわけさ。ようこそ、お姫様。我らが神の要塞(モーリーフ)へ!」

 

 気取ってジョルジュが一礼した。

 アーメッドとラリザニも笑みを浮かべている。

 

「それでは館へご案内しよう。しばらくあなたに過ごして貰うことになる・・・」

「すごい・・・これひょっとして火山の火口なの?」

「!?」

 

 アーメッド達三人が目を丸くした。逆に周囲の水夫は「何を言ってるんだこの姫様?」という顔。

 顔を見合わせた後、アーメッドが代表して話しかける。

 

「エリザベス姫。どこからそんなことを聞いたのかね?」

「ええと、お話に出てきた吸血鬼の城が火山の火口の中にあって、ぐるっと周囲が岩山に囲まれてたって」

「なるほどなあ」

「・・・」

 

 顎をさすって感心するジョルジュ。僅かに笑みが引きつるリタ。

 まさか実際に吸血鬼を追いかけてそんなところまでいったとは言えない。

 一方でリタからすれば、冒険を共にしたアーベルがそんなことを知らないかのように振る舞っている。妙な気分だったが、疑われてはいないようなのでひとまずはそれでよしとした。

 ラリザニが一瞬底冷えのする光を目に浮かべていたことに誰も気がつかない。

 

 

 

 歓声を上げる人々に応えつつ、火口の奥、「獅子の館」と呼ばれるアーメッド一族の居館に向かう。

 

「ここは数百年前、我が先祖が見つけた場所だ。元はと言えば地元の貴族にいわれのない罪を着せられ、海に逃げた船乗りでな。それ以来貴族や王にひどい目に会った人間が少しずつ流れ着いて、このモーリーフの街を作ったのさ」

 

 そんな説明を聞きながら、リタは館に招き入れられた。

 

「わぁ・・・」

 

 正面玄関に入った瞬間、足が止まる。感嘆の声。

 玄関ホールの奥、三階まで吹き抜けの壁。

 そこに飾られていたのは高さ10メートル近いモザイク画。

 海から跳ね飛ぶ巨大な白いクジラ。

 

「『神の威厳(マルトン・ケッシュ)』。我々が神の使いとして崇める白きクジラだ。もう一千年もの間、このあたりの海に住み着いている」

「・・・このクジラさん、一千年も生きているの?」

「さあ、どうだろうな。代替わりしているのかもしれないが、確かめた奴はいない。

 確かめられるくらい近づいて、戻ってきた奴はいないからな」

 

 敬意を込めた眼差しでモザイク画を見上げるアーメッド。

 その後ろでは同じく胸に手を当てて画を見上げるラリザニ。

 ジョルジュでさえ茶化すような表情はしていない。

 リタが改めてモザイク画を見上げる。

 画の中の白鯨は強く、神々しく、天までも駆け上がっていく様に見えた。

 

 

 

 そして一週間ほどの後。

 バルコニーでカモメのような海鳥に焼き菓子を分けてやっていると、客間の扉をノックする音がした。

 

「はい、どうぞ」

「失礼する」

「ラリザニ?」

 

 長椅子にごろりと寝そべり、自分の部屋でもあるかのように図々しくくつろいでいたジョルジュが首をかしげる。

 

「だらけすぎじゃないか、ジョルジュ。お爺様から直々に命ぜられた仕事だぞ」

「いつも気を張っていたら疲れっちまうよ。必要な時までは気をゆるめておくのが、こう言う仕事には必要なのさぁ」

 

 くっくっく、と笑うジョルジュ。

 もっとも、部屋の扉とリタのいるバルコニー、他に出入りできる場所を一望できるポジションと姿勢を確保している辺りはさすがに隙がない。

 ラリザニもそれがわかっているのか、言葉の割に咎める響きはなかった。

 

「それでどうした? 大頭(じいさん)からの命令か?」

「いや、私個人のことだ。女同士の話をしたくてな。ちょっと外してくれないか。

 その間のことは私が責任を持つ」

「・・・わかった、外にいるよ」

「すまないな」

 

 肩をすくめてジョルジュが外に出た。

 バルコニーのリタが立ち上がって振り向く。

 

「立ち話もなんだ。座らないか、姫」

 

 バルコニーの海鳥たちが一斉に羽ばたいた。




また神の話してる・・・

マルトン・ケッシュはマラケシュの古名。「神の国」という意味だそうです。
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