異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十六話 私のお兄ちゃん

「・・・」

「・・・」

 

 長椅子に座って向き合う二人。

 女同士の話、と言いつつラリザニは口を開かない。

 先ほどからこのような調子だ。

 沈黙に耐えきれず、リタが口を開いた。

 

「それで・・・何の用なの、ラリザニさん?」

「ん・・・」

 

 ラリザニが苦笑して顎に手をやった。

 

「すまない。話をするなどと言って実際にこうして向き合うと何から話していいかわからなくてな」

「はあ」

 

 気のない相槌を打つと、ラリザニの表情がまじめなものに戻る。

 

「そうだな、お前はお爺様に『王ではない王』にお前の祖父、元の国王が選ばれたらどうするか、という話をした。逆に聞きたいのだが、お前は例えば私のお爺様が王ではない王に選ばれたらどうする? お爺様の言っていた戦争云々を抜きにしてだ」

「うーん」

 

 少し考え込む。

 

「私はそれでもいいと思う。でもアーメッドさんが余りいい王様じゃなかったらどうするの? アーメッドさんはいい人だと思うけど、だからっていい王様になれるかどうかはわからないでしょ?」

「その時は十年後に新しい王が選ばれるだろう」

「新しい王様がまたいい王様じゃなかったら?」

「また新しく選ぶ。何が言いたいのだ、エリザベス姫?」

「うーん・・・」

 

 先ほどより長い黙考。

 ラリザニは口を出さず、ただエリザベスを見つめている。

 

「みんなで選ぶってことは、みんなが選ぶのはみんなが好きな人で、まつり・・・ええと」

「まつりごとか」

「うん。政治(まつりごと)がうまい人じゃないよね。政治(まつりごと)のうまい人を選ばなくちゃならないけど、やりたい人、みんなに人気がある人が政治(まつりごと)がうまいわけじゃなくて・・・」

「それなら、政治(まつりごと)のうまい者を補佐につければいい。選ばれた王がおおまかな方針を示し、補佐する者がそれを補う。

 今の王も大臣に補佐されて政治(まつりごと)を行っているのだろう?」

「うん、そうなんだけど。ええと、そのね。そうやって大臣の人が政治(まつりごと)を行うんだったら・・・大事なのは実際に政治(まつりごと)を行う人であって、それだったら王様は入れ札で決めても決めなくても同じなんじゃないかって・・・っ!」

 

 寒気が走った。

 ラリザニの目。

 これまでと変わらないように見える表情の中で、目だけが底冷えのする光を発している。

 

「賢い子だ。お前は本当に賢い子だ」

 

 ラリザニが立ち上がる。

 長椅子の上を、無意識に後ずさった。

 

「・・・正直お前のことは好もしいと思う。同じ海の一族であれば、妹のようにも思っていただろう」

「え?」

 

 あっけにとられてラリザニの顔を見上げる。

 変わらない表情、変わらない眼光。

 

「私は拾われッ子だ。お爺様に拾われた孤児だ。実の両親は領主の横暴のために飢え死にし、代わりに育ててくれたのが祖父の友人だったお爺様だ。

 だから私は領主が憎い。王が憎い・・・」

 

 そこでラリザニは一度息をついた。

 

「だが好意も恨みも・・・あくまで個人的な話だ。お爺様の、そして私の望みを叶えるためには」

 

 いつの間にか、ラリザニの手が腰の弯刀の柄にかかっている事にリタは気付いた。

 体が恐怖で硬直する。声を出したいのに体も喉も動いてくれない。

 

「恨んでくれていい」

「!」

 

 思わず目をつぶった。同時に金属音。

 

「・・・え・・・」

 

 恐る恐る目を開けてみる。

 一歩間合いを開けて後ろに動いたラリザニ。手には弯刀。

 そして目の前には、魔法のように現れた、短刀を構えた小人族の背中。

 

「何をしてやがるラリザニ! 気でも狂ったか?!」

「国王からの返答が来た。『何をもってしても、交渉に応じることはない』と。奴らはこの娘を見捨てた。あるいは本気ではないと高をくくっているのかもしれない。

 ならば相応の対応をとるしかあるまい」

 

 底光りのする目をしながらも、あくまで冷静なラリザニ。

 顔を歪ませ、いらだちをにじませるジョルジュ。

 

「だとしても傷つけないってのが大頭の命令のはずだ!」

「それはおじいさまが男だからだ。女の私が女を殺しても恥ではない」

「子供だぞ!」

「王の一族だ! 排除すべき敵だ!」

 

 初めてラリザニが感情を露わにする。

 ジョルジュが舌打ちした。

 

「逃げるんだ、姫さん。グメル! 姫さんを・・・」

 

 入り口の方を向いたジョルジュの言葉が立ち消えた。

 喉に短刀を当てられた見張りの男、グメルが扉の外で立ちつくしている。

 背中にいるのはラリザニの側近の女戦士。同じく側近の女戦士がもう二人、部屋の中に入ってくる。

 

「お前ら?!」

「お前がついているのに一人で来るわけがあるまい。ぬかったな、ジョルジュ」

「くそっ・・・」

 

 ジョルジュの顔に初めて焦りが浮かんだ。

 動けない。

 彼の技量をもってしても、ラリザニは片手間で押さえ込める敵ではない。

 

「・・・」

 

 殊更に無表情になって女戦士達が近づく。手にはラリザニと同じ弯刀。

 あるいは彼女らも、リタに憐れみを覚えているのかもしれない。

 だがだとしても、ラリザニの命令を拒否するほどではなかった。

 

 がたり、と音がした。

 リタの立ち上がった音。

 後ずさるリタ、近づく女戦士たち。

 

 バルコニーに出る。

 背中に当たる手すり。

 止まる足。

 

「!」

 

 後ろを振り向く。下までは十メートル以上。落ちれば命はないだろう。

 前に視線を戻す。女戦士達が近づいてくる。

 ジョルジュが動こうとする。

 

「姫さん!」

「させんと言った!」

 

 金属音が鳴る。女戦士達が剣を振りかざす。ジョルジュは来ない。

 

「お兄ちゃん!」

 

 リタが叫ぶと同時に閃光が走った。

 

 

 

「・・・え」

 

 風が吹いていた。

 誰かに抱きかかえられている。

 恐る恐る目を開けると、眼下にモーリーフの町並み。

 その一角、獅子の館の一室のバルコニー。女戦士達が目をこすりながらめくらめっぽうに剣を振り回していた。

 バラバラと、「ろーたー」の回る音。

 

「ごめん、遅くなったな」

 

 頭の上から声がする。今一番聞きたかった声。

 ぼろぼろと涙がこぼれた。

 ぽかぽかと、自分を抱える腕を叩く。

 

「ばか! ばか! 遅いよ! どれだけ怖い思いしたと思ってるの! ばか!」

「あ、暴れないで!? 結構スピード出てるから! ・・・ごめん、リタ」

「ばか・・・大好き」

 

 自分を抱きかかえるハヤトの右手を、リタが両手でぎゅっと包み込んだ。

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