異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!   作:ケ・セラ・セラ

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第二十七話 風を呼ぶ 風が呼ぶ

 視界が何とか回復すると、バルコニーにエリザベス姫の姿はなかった。

 

「!」

 

 まだ目を押さえるラリザニを押しのけて飛び出すと、バルコニーから空を飛ぶ男と、それに抱えられた姫の姿。姫に付き添っていた騎士の少年だと見てとり、思わず笑みがこぼれる。

 

「はっ・・・やってくれるじゃないの!」

 

 そこでラリザニ達の視覚がようやく回復してきた。このあたりは妖精と人間の基本性能の差だろう。

 部屋を見渡すが、ジョルジュの反応を見て大体のところは察したらしい。バルコニーから空を見上げて舌打ち。

 

「ちっ・・・三人ともついて来い! 追うぞ! 魔法か《加護》か、そう長く飛べはせん!」

「は、はっ!」

 

 側近たちに檄を飛ばしたラリザニがジョルジュを睨む。

 

「貴様はどうする」

「さあ? 姫さんの面倒を見ろっつうのが大頭のじきじきの命令だしなあ。

 姫さんがいない以上何もすることはねえかなあ」

「ちっ・・・いいか、邪魔はするな!」

「へいへい」

 

 不機嫌そうに吐き捨てて走り去るラリザニ。

 

「さて、俺はどうしましょうかね、っと」

 

 楽しそうな笑顔を浮かべ、この不敵な小人族はひょい、とバルコニーの外に飛び出した。

 

 

 

 バラバラバラ、と左腕のプロペラの音。

 リタは泣きながら俺の拳を強く握りしめて何も言わない。

 もっと強く、両腕で抱きしめてやりたいが、今は無理。

 なので速度を増し、高度を上げて一刻も早くここから脱出だ。

 

「・・・」

 

 チラリと下を見る。

 こんな時に何だが壮観だった。上から見ると島が丸ごと巨大な火口なのがよくわかる。

 さしわたし10キロ近いカルデラに町や段々畑。阿蘇とか箱根が丸ごと島になったような感じだ。一部が海になっていて船が何隻もある。多分何か外に出る抜け道とかあるんだろう。

 

「見えたぞ、リタ。ドリー船長の船だ!」

「!」

 

 ぐすぐすと鼻を啜っていたリタが目を見開くのがわかる。

 カルデラの外輪山の外、海の上。

 今まで何もなかったそこに、いきなり現れたのは紛れもなくドリー船長の「ケリュネイアの牝鹿」号だった。

 

「私の伝言、届いてたんだね」

「ああ。王様が迷惑をかけたおわびってことで、秘蔵の魔道具を貸してくれたんだ」

 

 タジル王国海軍秘蔵のマジックアイテム、「黄昏のとばり」。

 海軍の術師総出で魔力を注げば半日ほどは船ごと姿を隠せる古代遺物(アーティファクト)

 『鋳つぶした王冠』の船を本拠地までこっそり追跡するには短いが、あらかじめ場所がわかっていれば気付かれずに接近するには十分な時間だ。

 

 今頃、「ケリュネイアの牝鹿」号の船倉では魔力を使い切った術師たち数十人がへばっているだろう。

 いずれも風呼び(ウィンドコーラ―)である彼らが全力で風を吹かせて船をかっ飛ばしてくれなければ、このタイミングで救出することも出来なかったはずだ。

 もっとも、国王もその前提でこのタイミングで返事をしたのだが。

 

 そして、この場所を知らせたのはリタ。

 食事の一部を海鳥たちに与え、この場所を俺たちに知らせてくれたのだ。

 首にはハンカチに書いた短い手紙。海鳥は俺たちの船の先頭に立って飛び、ここまで案内してくれた。

 か細い蜘蛛の糸が見事に繋がり、今リタはこうして自由の身になっている。

 

「・・・む」

 

 カルデラの中、「神の要塞(モーリーフ)」の町がにわかに騒がしくなった。

 人が動き、港に向かっているのが見える。

 

「反応早いな!」

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

 不安そうなリタにほほえんでやる。

 

「大丈夫さ。船なんか俺が全部沈めてやる」

「うん!」

 

 俺の虚勢をわかったのかどうか、リタが俺を見上げて微笑んでくれた。

 

 

 

 ドリー船長の船に着陸すると、回りにわっと人が集まる。

 一番に集まったのはもちろんカラフルなマッチョハムリスども。

 小さなリタの回りに2m越えのマッチョが集まってるからリタの姿が見えないし、マッチョのくせにおんおん泣いてるから鬱陶しいことこの上ない。

 それでも船長や水夫さんたちはそれを見て暖かい笑みをこぼしていた。

 そんなささやかな幸せの時間を、上から降ってきた声が中断させる。

 

「船長! 奴ら船団出してきました!」

 

 マジか!? こんなに早く出港できるもんなの?

 

「余程腕のいい風呼び(ウィンドコーラ―)か・・・何か奥の手でもあるんだろうね。それとも運悪く出航予定だったか。ともかく逃げるよお前たち!」

「アイアイ・キャプテン!」

 

 命令一下、船員たちが一斉に動き出す。

 リタはハムリス達と一緒に船室。俺は遠距離攻撃担当で甲板待機。

 

 ちなみに風呼び(ウィンドコーラ―)というのは風を操る術師だ。

 名前の通り風を呼んで、帆船の速度を上げたり、旋回をやりやすくしたりする。

 この船にも二人いるのだが、今は他の風呼びさんたちと一緒に船倉でへばっている。

 

「船倉の風呼びどもに風吹かせるようにいいな! 逃げ切れなかったらあいつらが斬り込んでくる前に真っ赤に灼けた鉄串ケツ穴に突き刺してやるってね!」

「あ、アイアイ!」

 

 ひどい。

 

「生きるか死ぬかだよ? ケツの一つで済むなら安いもんじゃないかさあ」

「・・・」

 

 もうウンコできないねえ・・・って目に会うくらいなら死んだ方がマシな気もちょっとするが、口には出さなかった。

 

 

 

「・・・くそっ。引き離せない」

 

 船長が舌打ちした。

 もう一時間ほど追いかけっこが続いているが、確かに距離が開いているようには見えない。

 それどころか見る見るうちにスピードが落ちて、差が縮まっていく。

 

「へナチン術師どもめ、もう打ち止めってかい」

 

 船長の舌打ち。

 深く息を吸う。正直俺も魔法装置に魔力を注いだり、上空から周囲を警戒したりと随分消耗している。

 だがやるしかない。俺は覚悟を決めて、近づいてくる敵船団を睨んだ。

 

 

 

「行き足が鈍ったぞ! もうひと踏ん張りだ! 島の位置を知られた! 生かして返すな!」

 

 「夜明けの船」号の舳先で、ラリザニは術師と船員たちを鼓舞する。

 ここが踏ん張りどころと、魔力をつぎ込んだ術式が吹かせる更に強い風。

 

「よし! 総員切り込み用意! 大弩弓(バリスタ)も当たらなくていい、撃て!」

「おおっ!」

 

 脳裏に浮かぶ、かわいい盛りの少女の顔。それを振り払い、ラリザニは更に船員を鼓舞する。

 この時点で、彼女は勝利をほぼ確信していた。

 

 

 

「・・・リタ!?」

「何してんだ、船室に入ってろって言っただろ!」

 

 船長の怒声が飛ぶがリタは怯まない。

 

「助けが来るの! こっちだって教えて上げないと!」

「助け? タジル海軍の船がこんな早く来れるはずが・・・」

 

 ハテナマークを浮かべる船長。俺も同じく。

 いやでも、リタが「助け」っていうならそれは多分話が出来る動物で・・・まさか!?

 

「撃てーっ!」

 

 もう向こうの声が聞こえるほどの距離。

 俺は慌てて向き直り、豪子力ビームを放とうとする。

 その瞬間、海が動いた。

 

「!?」

「なっ!」

 

 海面を切り裂いて飛び出してきたのは、巨大な白い何か。

 一拍遅れて、それが白い巨大なクジラだと理解する。

 体長50m以上、高層ビル並の巨体。それが跳躍した。

 

「 」

 

 誰もが停止した。18mのデモゴディにすら体躯で三倍する巨大さ。地球の高層ビルを見慣れている俺でさえ、一瞬思考が止まる。ましてやこの世界の人々をや。

 向こうの船の船員たちが、ただ呆然と口を開けているのが見えた。

 

 バリスタの矢が白鯨の巨体に弾かれ、バラバラと海に落ちる。

 敵味方共に時間の停止した一瞬が過ぎ、巨大な白鯨が着水した。

 「鋳つぶした王冠(サン・ディカリ)」の船二隻を巻き添えにして。

 

「!?」

「ま・・・『神の威厳(マルトン・ケッシュ)』!」

「白鯨が!?」

 

 向こうの船で悲鳴が上がる。

 あのクジラ、何かあいつらにとっては神聖な存在らしい。

 

 ぴぃ、と高い音が聞こえた。

 思わず振り向いた先で尻尾を振ってるのは・・・あの時の白い子クジラ!?

 

「あの子のお母さんなの! だから助けに来てくれたんだよ!」

 

 あー・・・! 思わず目を丸くする。

 その間にも、あの白鯨は尻尾を叩き付け「鋳つぶした王冠(サン・ディカリ)」の船を沈めていた。

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