異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ! 作:ケ・セラ・セラ
「
「『
「神よ! 怒りを鎮めたまえ、神よ!」
「終わりだ! 『
迷信深い船員たちがひざまずき、わめき、祈りを捧げる。
そうでなくても何をすればいいか判らず、混乱の中で右往左往する船員もいる。
「落ち着け! 帆を保て! 取り舵10度! 取り舵10度だ!」
中には、ラリザニのように何とか冷静さを保って事態を打開しようとするものもいた。
もっとも、船員のほとんどが混乱自失している状態では何も出来ることはない。
「うわあああああああああああああ」
また一隻、巨大な白鯨によって「
十隻いた艦隊の生き残りは旗艦たる「夜明けの船」を含めても既に四隻。
白い尾が甲板を薙ぎ払い、マストや構造物をことごとく吹き飛ばす。これで後三隻。
船首に頭突きを受けた船が半壊する。すぐに沈むことはないが、あれではまともには進めまい。これで後二隻。
「くそ! くそっ! 何故だ! 何故私たちの前に立ちはだかる、『
神と崇められる白鯨を憎々しげに睨みつけるラリザニ。
またしても海面から飛び跳ねた白鯨が自分と目を合わせたような気がして。
次の瞬間「夜明けの船」は木っ端微塵に砕かれて、ラリザニは海に投げ出された。
「ぐ・・・」
水面に浮かび上がろうとしたところで、沈んできた船の破片に頭部を強打されてぐらりと来た。
もうろうとする意識の中で、力強い、しかし小さな手に手首を掴まれて上昇する。
「・・・ぷはっ!」
水面に浮かび上がり、肺一杯に空気を吸い込む。
くらつく頭を振って意識を鮮明にしようとする。
「大丈夫か、ラリザニ? 血が出てるぞ」
「!」
気がつくとすぐ目の前にジョルジュの顔があった。
「この!」
反射的に殴りかかるが、素早く頭を引っ込めてかわされた。
「おいおい、ひでえなあ。助けてやったろうが」
「そもそもお前が邪魔しなければこんな事にはならなかったんだ!」
水に浮きながら、ジョルジュが器用に肩をすくめる。
「それにしても、何がどうなって『
「ふざけるな! 王族などに・・・先祖代々ぬくぬくと生きてきた奴らなどに神の加護があってたまるものか!」
「・・・」
血を吐くようなラリザニの叫び。
その視線は遠ざかっていく「ケリュネイアの牝鹿」号を憎々しげに突き刺している。ジョルジュは無言。
生き残りの船のボートが回収に来るまで、彼らはそうして海に浮かんでいた。
「うはー・・・助かったぁ」
一隻だけを残して、「鋳つぶした王冠」の全ての船が全壊、もしくは半壊にされた。
俺は安堵のため息をついて、船尾にがっくりと膝をつく。
実際のところ船の透明化とその他のあれこれで魔力を大半使い切っていたし、この状態で十隻相手にするのはきつかったと思う。
体内のヴィラン・コアは今でも大回転で魔力を生成してるのだが、それでも回復には半日くらいかかりそうだ。
「・・・」
リタは無言で木っ端になった船団の残骸を見ている。
自分をさらった相手だろうに、親切にしてくれた人でもいたんだろうか・・・まあ聞かない方がいいな。余計な事を言わないのがいい男だってアーベルさんが言ってた気がする。
「鋳つぶした王冠」の最後の船は俺達を追わず、停止して救助作業をしているようだ。
一隻だけ残したのは白鯨の情けなんだろうか。
そんなことを考えていると、ぴいい、と鳴き声がした。
「うおおおおおお!?」
振り向いた俺達は思わずのけぞった。
例の子クジラと一緒に、ドリー船長の船の倍くらいある親白鯨が船と併走している。襲ってこないとわかっていても怖いなこれ。
「うん、うん・・・ありがとうね、おかあさんも!」
そんな中、一人だけ平然と会話を交わすリタ。
返事なのか、白鯨が巨大な潮を吹く。
それを最後にクジラの親子が船から離れていく。
「二人とも元気でねー!」
リタは力一杯、姿が見えなくなるまで手を振っていた。
タジル島に帰り着くとちょっとした騒ぎになった。
というのも貸して貰った術師さんたちの中に遠話の術が使える人がいて、あれこれが既に王宮に、そして一般の人達にも伝わっていたからだ。
(ちなみに「王冠」の要求に対して拒否の返事を伝えたのもこうした遠話の術によるものだそうな。タジル島のどこかにある根城から本拠地に通信してたんだろうとのこと)
あの白鯨はここの人達からも崇められる存在のようで、神の使いが邪悪な海賊集団を倒したような話になっているんだとか。
・・・あのやせぎす眼帯の人がそう言う噂を流したんだろうなー。
少なくともスパイものや陰謀ものの映画ならそーする。俺だってそーする。
それはさておき王様とリサ姫様はリタの救出を我が事のように喜んでくれた。
祝いの宴と感謝の言葉、補給した物資も払いは全部あっち持ちで船長がホクホクしている。
魔法の羅針盤や体力=魔力を回復する薬(貴重品だ)も数本貰った。
一番ありがたいのは貴重な人材である
ただでさえサソリキング(仮)の船に随分と遅れている。
船長の計算によれば、相手の風呼びの腕と数次第だが、これでどうにか目的地あたりで追いつけるのではないかとのこと。
宴の翌日、慌ただしく船は出航した。本当は祝いの宴も遠慮したかったのだが、船員さんたちも強行軍でかなり疲労していて一晩くらいは休養にあてたいと言われたらしょうがない。
「まあ最悪、奴が手に入れたところをかっさらえばいいわけだしな!」
「はっはっは。よくわかってるじゃないか。王様んとこクビになったらうちの船で雇ってやるよ!」
「お兄ちゃんたち悪い顔してる・・・」
そんなこともあったが
出航した船の船尾。
タジル島が見えなくなった頃に、リタがこっちを向いた。
「そう言えばさ、お兄ちゃんにまだ助けてくれたお礼言ってなかったね」
思わず笑みがこぼれる。
「当然だろ。俺はリタの騎士なんだから」
「でもお礼はちゃんと言わないと。・・・ちょっとしゃがんでくれる?」
「仰せのままに」
リタの前に膝をつく。騎士としては絵になるポーズだ。多分。
その俺に。
「はい、お礼」
リタがほっぺたにキスをした。
「!?」
「お礼だよ! お礼だからね!」
少し顔を赤くして笑うリタ。そして暴走する畜生ども。
「ヂュー!?」
「我らが姫になんという乱暴狼藉!」
「ズンダさん、サクラさん、やっておしまいなさいでチュ!」
「余の顔を見忘れたかでチュ! 成敗でチュ!」
「お前らー!?」
「こら! 人の船で暴れるんじゃないよ!」
そんな騒ぎの中、どこからか鍔鳴りの音が聞こえた気がした。
ですから! わたくしは! あなたの娘さんになんらやましい気持ちは持っておりません――!
ちなみに「ケリュネイアの牝鹿」はアルテミスの神獣で、ヘラクレスの難行の一つ。
英語で言うと「ゴールデン・ハインド」ですな(ぉ