4話
どうしよどうしよ博多のしお
このままでは始業式に間に合わないではないか。初日から遅刻なんてぇ。そんな最悪のスタートを切るのは俺はいやだよぉ。
今日は妹の様子が妙におかしい。いつものお巫山戯にしては手が込んでるし、こんな事されたのはこの約10年で初めてだ。俺の精神状態は朝からギッタギタだよぉ。
「うわぁぁ、もうなんなんだよぉ・・・。今何時なんですかぁ・・こまめちゃ〜ん・・・。」
妹の顔が一気に暗くなる。
「「こまめちゃん」って呼ばないでよ!また思い出しちゃうじゃんか!あ〜〜体が痒くなって来た」
「あ、そうだったなゴメンよ小豆(あずき)」
「お兄ちゃんにまで呼ばれたら私の居場所が無くなっちゃうじゃない!・・・」
「大丈夫。小豆の居場所はここにあるよ。」
「うぇぇ・・・グスっ・・・うぇぇ」
そっと、抱きしめる。
妹は嗚咽を漏らしながら泣いてしまった。
俺は最低だわーとか思ったけど被害者俺なんだよなぁ、複雑な気持ち。
軽々しく「こまめちゃん」は使ったら駄目だと最重要フォルダに保存して置いたはずだが、あまりに酷過ぎる精神状態と待ち受けが「水玉ストライプ」のため処理が上手く出来ず「この状況の有効な打開策」を優先して考えた結果、声に出してしまった・・・・・ごめんよ小豆・・・俺も泣きたい・・・今何時なんですかぁ。
前の学校では何故か男子よりも女子に大人気で佐藤小豆に目をつけた六年生女子達が「こまめちゃんファンクラブ」を設立。たちまち参加人数が男女問わず増え続けた結果、先生達まで便乗し正式な同好会としての活動を認めると言い出したのだ。佐藤小豆ブロマイドや写真集を高値で売り買いし、その売り上げを「こまめちゃんに捧げる」という頭のおかしい活動内容で、毎日ストーカーから逃げて逃げて夜遅くに帰ってくる妹が可哀想で仕方なかった。俺は速攻で家に帰り白樺公園で友達と遊んでた。
ファンクラブには俺も入っていたがこれには深い深い水たまりのような理由がある。活動内容を詳しく知るためにスパイとして入った。というのが妹にファンクラブを入っていたことがバレた時の言い訳になる。実際には設立当初からの古株メンバー五人の中の一人であり、血のつながりがあることを理由とし強制的に入らされたのだ。最初は全く乗り気じゃなかったのだが俺と妹とのエピソードを話してみんなで盛り上がったりした。男は俺だけ。あの頃は本当に楽しかった。しかしある日ある一言でファンクラブが狂い始める。
「こまめちゃんの写真撮ろうよ!」
低身長巨乳ロリメガネっ子曰く「こまめちゃんをずっと見ていたい」らしい。メインは写真部に所属しているため職業病かと思っていたらそんな事は無く、「こまめちゃんを私に頂戴」まで言い出すので
「それは叶わない夢だなぁ、だけどもしこれが出来たら妹を譲ってやろう。妹のパンツを盗撮し七種類の柄を制覇出来たら認めてやるよ!」
と冗談のつもりで言ったのだが本気になってしまった。残りの三人は待ってるよ!と、低身長巨乳ロリメガネっ子に声をかけていた。すかさず「任せなさい!」と右手を胸の前に置き左手を腰に当てふんぞりかえる低身長巨乳ロリメガネっ子。なんなの君たち。しかし妹はいつも普段着にジャージを着ているため絶対に無理なはずだが一週間と少しでこれを制覇され、俺はファンクラブを抜ける。低学年のトイレに忍び込んで盗撮って、あかんやつでしょ「本当にやるバカがどこにいるんだ!」と激怒し言い合いになった。それを境に妹に対する行き過ぎた愛?を認めることができず六年生とも合わなくなり抜けたのだ。
写真はその日のうちに全員から没収し持ち帰った。そしてすべての写真をシュレッダーにかけてからミキサーにかけ白樺公園の砂場の一番深いところに埋めた。完璧に処理した。二つの機械はどちらも大きな音を立ててしまうためミキサーで仕上げをしている最中、妹に「なに作ってるのお兄ちゃん!」と無邪気な笑顔で言われた時は心臓がケツの穴から出るかと思った。小豆のパンツ写真を粉々にしてるんだよ!なんて言えないよ。
怖かった。 まじで。
総写真数29枚。各柄ごとに観賞用、アルバム用、保存用、永久保存用として四人全員が持っていたのだ。
最後の一枚は俺のお花摘み中の写真で驚愕した。写真部恐ろしい。どうやって撮ったのさ・・・。
確かに俺の自慢の妹だから誰よりも可愛いと思っているし、誰よりも大切な存在だ。だけどそんな俺でもあんな事はしない。たまたまあの学校の人達が頭のおかしい人達だったのか、だいぶ昔に父さんから聞いた話だけど「人目を集める」体質があるとか無いとか。可能性はある。俺達の両親はこまめちゃんストーカーのエスカレートした行動に腹を立てたのかわからないけど両親とも家を出て行った。
特に理由を言うわけでも無く出て行ってしまったため、そのあとの生活は残された2人は言い表せないほどに苦労した。
小学生2人を置いていくなんて。
今は寝たきりの婆ちゃんの家に寄生し暮らしていて専属のヘルパーさんが毎日家に来てくれている。正直俺たちの家族と言ってもいいじゃないかというくらい関係が深い。勤務時間外でもうちに来て俺たちの世話をしてくれるのだ。
「自分の家にいても暇なんだもーん」が口癖。未婚。巨乳。あだ名は「ヘルパイちゃん」
収入源は無く、今の生活はファンクラブの売り上げの残りを使っている。ブロマイドパック5枚入りが50万円で20パック用意して完売しました、とかが何度もあってお金には当分困ることはないだろう。妹には両親からの仕送りだと伝えているがそれはここだけの話。失踪してから連絡一つないのだから本当に俺たちは見捨てられたのだろう。出て行った理由すら分かんないから納得のいくものじゃないんだよなぁ。
失踪自体納得出来ないけども。
「お兄ちゃん・・・・」
「・・・・・・」
「お兄ちゃん!熱いから離れてよ」
「はっ!、もう大丈夫か?」
「うん・・・・」
「あの、そのなんていうか」
「いいの、お兄ちゃんが悪いんじゃないもん。私が過去を吹っ切れてないだけのことでしょ・・・? 私も大人にならなきゃね!」
「え?」
妹は子供なんかじゃない。あんな事があってもこう言い切れるのは強がってるとしても小学五年生の思考じゃない。そしてまた大人の階段を登った気がした。
地味にあの騒動に勢いをつけたのが俺だと思うと胸が苦しい。ごめんよ。
「軽々しく言っちゃってごめんな」
「もう、いいんだって気にしないでよ」
「そうか。小豆も大人になったんだな」
「そうだよぉ、大人だよぉ!」
妹は胸を張ってそう言い切った。涙を拭ってやると「えへへぇ」と間抜けな声を発し顔を真っ赤にして俯いてしまった。
ぺったんこも嫌いじゃないけど真っ平らってどうなの。まだ大人には程遠いよ妹よ。
そしてさっきのエロムードはどこへいったんだ妹よ・・・。
「そ、それでさぁ」
「なに?お兄ちゃん・・・」
つづく