妹とお兄ちゃん   作:あーえんず

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第7話

7話

 

 

 

「8時10分だよ!」

 

「やっべ!」

 

どーん、という効果音が似合う 勢いで跳ばされてその勢いでごろごろしてたらベッドと壁の間に挟まった。右手と右足はまだ生きている。

 

チラッとベッド越しにお兄ちゃんの様子を見ると無言で時計とにらめっこをしていた。さぁこれからが「決戦」のはじまりだ。

 

ぐぬぬ・・・抜けられ・・・・・・・・・た。

 

「いてて、あぁそれお兄ちゃんの誕生日に合わせておいたよ!」

 

「小癪な真似を!」

 

え?

 

私をそっちのけで慌てて下の階へ走って行った。気付いたのかな、ちょっとでもいいから反応が欲しかったけど下の時計も調整済みだ。後で泣いて喜ぶだろうな!「ありがとう、こんなサプライズがあるなんて。明日からは小豆の誕生日にしよう。」なんて言われちゃったらどうしよう!

 

「ふぅ、とりあえず順調だな」

 

私は少し安心して独り言を呟いた。

このまま上手くいけばいいけど。

 

何故かお兄ちゃんの学習机がいつもの雰囲気じゃない気がした。しかしその原因をすぐ発見する。

 

「なんだこれ・・・怖いなぁ。昨日は無かった気がするけど」

「まぁいいや、早く行かないと」

 

 

机の上、開きっぱなしのノートに「GNソードぉぉぉ」と「おのぉぉれぇぇぇ」。二つの壮絶な走り書きがあった。どしたのお兄ちゃん。

 

そしてお兄ちゃんのハサミコレクションが増えてる気がする。ハサミ専用鉛筆立てに三つ入っていた。前は二つだったような・・・。

 

こればっかりは理解出来ない。お兄ちゃん曰く「ハサミってカッコいいよな!シュッとしたフォルムと安定の切れ味。そしてあの可動範囲!関係ないけど俺最近貯金してるんだ、チョキンチョキン。なんつって!」らしい。

 

ドン引きした私の顔を見て「俺との縁、こいつで断ち切る?」と言って「GNソード(持ち手が青いハサミ)」をにっこりしながら渡してきた時はどうやって黙らせようか悩んだものだ。

 

結局私も流れに乗って

 

「いくぜ!!」

 

「さすが俺の妹だ!しかしお兄ちゃんを越えるには半年早いわぁ」

 

「くらえ、ハサミギロチン!」

 

「お兄ちゃんには ぜんぜん きいていない」

 

「Lv.が足りないか」

「じゃあこれだ、スクリュー目潰し蟹味噌刳りぃ!」

 

「一気に怖くなったな、しかし俺は蟹ではなーい」

 

「くそぉ、忘れてた!」

 

「今度はこっちの番だ、一刀両断、クーゲルシュライバぁぁ!」

 

「その意味ボールペンだよぉ!」

 

「気にするなぁくらえぇぇ!」

 

「うわぁぁ!」

 

ズサァ

 

とっさに布団に潜り込む。

その間にお兄ちゃんから今年の誕生日プレゼントとして渡された「猫耳」を装着する。

 

「な、なに、どこへ行った!」

 

そして布団を迷彩にしつつ

もぞもぞと床を這い回り敵の背後を取る。座ったまま布団から頭だけ出し、奇襲をかけた。

 

「じゃーん」

 

「そ、それはぁ!」

 

「猫耳なのだ!にゃん、にゃ〜ん」

 

「本当に付けてくれるなんて・・・」

 

「お命頂戴!にゃ〜ん」

 

「ぐわぁぁぉぉぉ」

 

「あれ、もう攻撃してこないの? にゃ〜ん」

 

「そ、それ以上は・・駄目・・」

 

鼻血を流しながら床に膝をつき倒れ込む。

 

「おれ・・の負けだ・・・」

 

「ふっふっふ。昔からお兄ちゃんは妹に勝てないって決まってるのだ!」

 

布団をマントのようになびかせ、埃を撒き散らす。

 

「ふ、不覚・・・」

 

「これで終わりね、「妹最強困っちゃう!!」」

 

私は立ち上がりお兄ちゃんの背中を踏みまくりながら決め台詞を最後まで言った。勝ったと確信したその時、

 

「油断したなぁ、まだ決着はついてないぞぉ!」

 

「なにっ」

 

一瞬で仰向けになり私の足を掴んで動けなくした。

 

「これを待っていたのだ・・・」

 

「だ、大丈夫?」

 

鼻血が止まってない。

っていうかずっと出てる。勢いは限界まで回した蛇口と同等。ちょっと心配しなきゃいけないレベルだと思った。

 

「大丈夫じゃない!早く外して!続きはそれからだ!」ドババババ

 

「う、うん」

 

「は、早く!」ドババババ

 

「わかったってば」

 

「おで、死んじゃゔ」ドババババ

 

「死なないでぇ!」

 

せっかく装着した猫耳をそっとお兄ちゃんの学習机の上に置く。

このままじゃお兄ちゃんが本当に死にかねない。それはまずい。

 

 

 

「猫耳」って出血作用でもあるの?

 

と思った。

 

 

 

 

「よし、じゃあ続きからだな。ライフはお互いゼロからだ」ドババ

 

「巻戻ってんじゃん!絶対お兄ちゃん死にかけだったでしょ」

 

「うるさい!油断大敵ぃぃ!」ポタポタ

 

「なんのぉぉ!」

 

「うおぉぉぉ!」ポタッ

 

「おりゃぁぁ!」

 

 

カキンカキンッ

 

 

そしてその日がお兄ちゃんと初めて戦った日になる。二人でハサミ振り回していて血だらけのお兄ちゃんと無傷の私。

「さっきからうるさいなぁ」とヘルパイちゃんが部屋に勢い良く入ってくる。仰向けのお兄ちゃんの上に馬乗りになってハサミで鍔迫り合いをしていたところだった。

 

「嘘、嘘よ、やめて!小豆ぃぃ!」

 

と号泣しうずくまってその場から動かなくなってしまう。壮大な勘違いをしている様だったから詳しく状況を話すと

 

「なぁんだ、二人で遊んでたのか。てっきり日頃の変態行為に腹を立てた小豆が浩市を殺そうとしてんのかと思ったよ!あっはっは」

 

お兄ちゃんが「冗談キツイんだけど・・・ヘルパイ・・・」と泣いていた。意味がわからん。

 

 

 

状況を話した後、お兄ちゃんがヘルパイちゃんに「心配させてごめん。これで縁を断ち切っちゃって・・・」と言いつつGNソードを渡そうとしたときに「油断したなぁ!これで終わりだぁぁ」とトドメをさそうとしたところでヘルパイちゃんにトドメをさされた。

 

 

 

 

 

ヘルパイ「地母の晩餐!」

 

 

 

 

お兄ちゃんのおでこと私のおでこで「ごっちん☆」された。

 

「反省しろ、もう二度とあんな危ない事するなよ、お婆ちゃん見てくるから仲直りでもしてろ!」

 

バタンッ

 

扉を閉めて出て行ったヘルパイちゃん。

 

「仲直りって・・まだ理解してないだろヘルパイ・・・」

 

「うえぇん痛いよぉ」

 

「泣くなよ」

 

「だってぇ、痛いよぉ」

 

「もう・・・死んでいいや・・」ドババ

 

 

お兄ちゃんはその時、泣きながら鼻血を流しつつかなりニヤついていた。今だに理解出来ない。私はめちゃくちゃ痛かったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ懐かし。去年の話だけど。

 

あの時約束した「第二次兄妹(あにいも)大戦」はまだやってないからそろそろやりたいなぁ。なんだかんだで楽しかったし、第一次は結局引き分けだったし今度は確実に倒す。

 

 

いやいや、思い出してる場合じゃないっしょ私。でも多分慌ててるだろうしゆっくり行こう。

深く考えるとなんか恥ずかしくなってきた。

 

でももう後戻りは出来ない。やるしかないんだ!

 

少し軽いテンポで茶の間を目指し階段を降りていく。

 

 

 

 

とんとんとんとん

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

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