妹とお兄ちゃん   作:あーえんず

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第8話

8話 とんとんとんとん

 

 

 

「えへへ、うちの時計全部6時22分だね☆」

 

「ありがとう☆誕生日覚えててくれたんだね!2度とやらないで!」

 

「小豆、嬉しいよ。今日はケーキでも買おうか、好きなやつ何個でも選んでいいぞ。俺は一つでいいかな。小豆をちょっとづつ食べちゃお」とでも言って喜んでくれると思ったのに怒ってるじゃん。

 

「そうだよ、お兄ちゃんの事は何でも知ってるもん。あ、そうだ、今の時間知りたーい?」

 

「知りたーい」

 

「教えなーい」

 

ここで必殺技の一部の腕時計を見せつけるかのように腕を組む。

 

この腕時計はお兄ちゃんに選んでもらった大事な時計なのだ。私が小学校に入る時にランドセルや勉強道具とかを一通り揃え終わったあと、残すは時計だけになりお母さんが一言。

 

「時計はお兄ちゃんに選んでもらったら?」

 

「そうするね、お母さん」

「お兄ちゃんこれどうかな、あ、こっちも可愛いね、あれもいいなぁ、お兄ちゃんはどれがいいと思う?」

 

「それ」

 

「ちゃんと見てよ」

 

「それ一番似合うと思うよ」

 

「本当!?じゃあこれにするね!」

 

「お母さん、それに決まった」

 

「あら、こんな可愛いのでいいの?」

 

「俺が付けるんじゃないよ」

 

「そうだったわね」

 

「お母さんお母さん、これ似合ってる?似合ってるよね!」

 

「う、うん。でも漫画の付録みたいなおまけ程度の安物ですぐ壊れちゃいそうな時計ね」

 

「そうかなぁ、でもお兄ちゃんが似合ってるって言ってたからこれにするっ」

 

「わかったわ、ちゃんと大事にしなさいね」

 

「は〜い、一生大事にする!」

 

今なら分かる。どれほどの安物だったのか、お兄ちゃんがどれほど適当だったのかを。

 

「今日からこの時計と一緒だよ!」

 

ぶちっ

 

気合い入れて左手首に巻こうとしたら時計本体とバンドとの接合部がぶちっ。そのあとはセロハンテープでぐるぐる巻きにして処置を施し今日まで生き残っている。正直な話、何重にも巻かさっているセロハンテープのせいで時間が見づらいのだ。目を凝らせば分かるからいいけどそんな腕時計って不便でしょ、とか思いつつ使い続けている。

 

あの頃の面影は僅かだが残っている。私がセロテープ修理テクニックを持ち合わせていたからだ。ぶちっとなったことも知られていない。

 

買ってもらって、家帰ってすぐ壊したなんて言えません。

 

 

 

そんな訳でとても大切な時計なのだ。

 

 

 

 

「時間教えーてくださーい」

 

「いいよ」

 

「いいのかよ!早く教えて」

 

「その代わりにある条件を呑んで」

 

お兄ちゃんはすでに時間感覚は狂い始めているはず。さらに焦らせる為に賭けに出なければ!

 

佐藤小豆の心の声

「きゃーっ、どうしよ、脱いじゃう?どうしよ、脱いじゃう?きゃーっ」

 

天使「だ、だめだよ!いくら教えて欲しくたってそんなやり方・・・」

 

悪魔「脱いじゃえ脱いじゃえ、男なんてイチコロよ」

 

天使「こら、またそうやってそそのかすんだから」

 

悪魔「あんただって薄々気付いてるんだろ?脱いじゃえば早い事なんだ」

 

天使「・・・・」

 

悪魔「・・・・」

 

天使「そうね!」

 

悪魔「だろ!」

 

天使・悪魔「脱いじゃえ!」

 

 

「後押しありがとう」

 

 

 

 

「もお、どうにでもなれ!」

 

 

するするする

 

 

一瞬でお兄ちゃんの視線がこちらに向いたのが分かった。変態。いや、変態は私だ。

 

 

「お、おま何やってんだよん!」

 

「さっき条件呑むって言ったよね」

 

「いやいや言ったかな言いました」

 

「今日ってここに来て初めての登校になるでしょ?そして始業式だし学校に行きたくないの。」

 

 

恥ずかし過ぎて意識が飛んで行ってしまいそう。自分の意識をスペースシャトルとして例えるなら、従来の三倍の速度で飛びそれによるGで人体がぐちゃぐちゃになり速度を落とせず月にめり込む勢いだ。

 

と、ふざけて考えられるので意識はまだ大気圏すら越えないだろう。

 

ここは、ここだけは必死の演技をしなければならない。

 

 

「どうしてさ?そして早くパンツ脱げって!あ、なんでもない!」

「ズボン履けって!」

 

「そんなに焦らなくても・・・」

「今日は好きにしていいよ・・いつも我慢してるんでしょ?

ベッドの下のエッチな本見ちゃったんだ」

「出てた人、私にそっくりだったし、ほんとは私と・・・・・」

 

 

今でも忘れられない

タイトル

「ドッキングin妹の中」

〜○ませて!お兄ちゃん〜

 

そして私そっくりの二次元キャラクター。小学生でちびで、顔が似てた。タイトルの意味が分からないから深くは理解出来ないけど危ないのは察した。最初はドン引きしたが悲しい事にこのDVDに影響された私であった。「決戦」もこのDVDの内容をしてもらいたい為でもある。

 

 

 

「!!!」

「嘘だ、あの金庫は32桁の暗唱番号と

鍵が16本無ければ開かないはず!

持ち主の俺ですらメモ無しでは開けられないんだ!

鍵は無くすから挿しっぱなしだけどどうやって開けたんだ!言え!」

 

 

 

 

 

「開いてたよ」

 

 

 

 

「Please kill me ・・・」

「いや、そんなことは今はいいさ!

それよりどうして学校に行きたく無いなんて言い出すんだ」

 

「またいじめられるから・・・」

 

「そ、そんな事無いって、だって前の学校は・・」

 

 

「わかってる!わかってるよ・・」

「でも・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっふっふ

 

私の迫真の演技はどうだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりこんな事やめよう」

 

「何を今更」

 

「小豆ちゃんも正しい判断出来なくなってきてるよ、早くやめさせようよ」

 

「ふんっ、そんなこと知らないね。第一、「決戦」自体は上手くいってるじゃないか」

 

「あ・・・」

 

「そうだろう?私達は「決戦」を上手く成功させる為にこうやって話し合ってるんじゃないか」

 

「うん・・・」

 

「あんたは甘過ぎるんだ」

 

「とろける小粒納豆みたいに!?」

 

「どんだけ混ぜたんだよ」

 

「突っ込むとこソコなの?」

 

「私はチ○○ついてないよ」

 

「・・・・」

 

「どうした?」

 

「そろそろお兄ちゃんのほう行ってみるかな」

 

「小豆ちゃんを見捨てるの?」

 

「それ私の台詞だよ」

 

「まぁそうだな。私も行くよ」

 

「そうだよ、私達は二人で一人なんだから」

 

「良い台詞取りやがって」

 

「ふふっ、じゃあ早くいきましょ?」

 

「あいよ」

 

 

 

 

 

 

「いつも通り・・・大丈夫だよね?」

 

「大丈夫だ」

 

「行くよ・・・・」

 

「・・・・」

 

 

 

「そにっくぶれいん・ろーれらい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体の先端、手足から泡となって周囲に溶け込んでいく。次第に元から身体が無かったかの様に跡形もなく感覚すら奪われていくのだ。

 

遥か天井の水面までゆらゆらと泡が登っている。

 

この瞬間だけは慣れることが出来ない。

 

死ぬ、とは違うんだと思う。

 

自分の存在が無くなっていく感覚。

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 

これで元に戻れなくなったらどうしよう。

 

曖昧な記憶。様々な体験。数々の思い出。

 

そして未来の自分。

 

全てが消えて行って、無くなってしまうのではないか。走馬灯のように、とはこういう事を言うんだよね、と毎回考える。

 

二人で一人。とても心強い。

 

一人は0.5。二人で1となる。

 

弱く脆い関係でもある。

 

君とまた話せる事ができるなら。私はこう言うだろう。

 

また逢えたね、私達は二人で一人だよ

 

って

 

そしたら君は嬉しそうに、当たり前だろと言う

 

その言葉が私を安心させるんだ

 

はぁ

 

そろそろ消えきっちゃうね

 

出来ることなら

 

こんなのはもう終わりにしたいや

 

「そうだな」

 

あれ、き・えてたの?

 

「こえにで・たぞ」

 

あらら、はず・しい

 

「うっか・もい・とこだ」

 

そ・か・

 

「そ・だ」

 

ま・・・う・

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

冗談だと思っていた。最初からこんな思いをするなんて分かっていたなら絶対にやらなかった。

 

「やります、私が適任ですよ!」

 

あの日の馬鹿な私。今回でこれに「さようなら」したい。毎回同じ事を思いながら4回目の「B-dive」に身を投じた。

 

再構成が成功することを信じて。

 

 

 

 

 

 

 

..................................

 

 

 

 

 

 

 

突然目の奥に激痛が走り、思わす声が出そうになる。眼球がライターで炙られて流れ落ちるのとどっちが痛いだろう、それくらい痛い。

 

不意にお兄ちゃんと目が合う。

 

お兄ちゃんの綺麗な黒目がその輪郭から少しづつ「青色」に変わった。

 

透き通る様で深い「青」。まるで海底を覗いているような感覚に陥り、吸い込まれそう。とも思えた。

 

気付いた時にはお兄ちゃんの目は元の黒目に戻っていた。私の目の痛みもすっかり消えている。

 

なんだったんだろう。一瞬の出来事だったからよくわからない。

 

でも

 

初めてじゃない気がしないでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

身体が軽くなった気がする

 

 

 

気のせいかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

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