前世の記憶の記憶を取り戻したあの日からあっという間に7年の月日が流れた。俺は原作同様さくら第一小学校に通っており、クラスは5年2組だ。
まぁ今は夏休み中だから学校には行ってないけどな。
そして昨日、俺は友達のクマとカンチから夏休みの昆虫採集をしにおおもり山に行かないかと誘われた。俺はすぐにその誘いに乗った。
夏休み、昆虫採集、おおもり山。この三つのキーワードを聞けば今日が何の日か一目瞭然だ。
そう、妖怪執事のウィスパーと出会う日。つまり原作開始だ!
前世の記憶を取り戻してから早7年…いよいよ妖怪ウォッチを手に入れて妖怪マスターへの第一歩を踏み出せるのか。くぅ~!待ちきれないぜ!
「ぐへ、ぐへへへ…」
「ケータ、なにニヤニヤしてるの?」
「あっ、何でもない!」
いけないいけない。つい嬉しさが顔に出ていたようだ。昼飯を食べ終えた俺はおおもり山に向かう準備をして家を出ようとする。
「母さん、虫取りに行ってくるね」
「あ、ちょっと待って!」
そう言って母さんが渡してきたのは100円玉だ。
「母さん。これって?」
「今日は暑いでしょ?喉が乾いた時はそれでジュースを買うと良いわ」
「ありがとう。行ってきます!」
そう言って俺は家を出ていった。
っていうかこの100円玉ってもしかして妖怪ガシャに使う奴じゃね?だとしたらこれでジュースは買えないな。ごめん母さん…
「おーい!ケータ~!」
おおもり山にある大階段の前に辿り着いた。そこには既に自転車をそばに置くクマとカンチの姿があった。
「あれ?二人とも自転車買ったのか?」
「ああ!この前父ちゃんに買ってもらったんだ!」
「僕は海外にいるパパの友達から譲ってもらったんだ」
確かにカンチの自転車ってどこか高級感があるように見える。かと言ってカンチはスネ夫みたいに嫌な自慢はしてこないから良いんだよな~。
「ケータは自転車なくてもいいのか?」
「俺は当分良いかな。確かに移動は楽になりそうだけど歩いていくのも好きだしさ」
「…ケータって結構大人びたこと言うよね」
「だな…」
そりゃ精神年齢はもうアラサーのおっさんだしな。
「それよりお前ら、今日は何しに来たかわかってるか?」
「当然だろ?」
「うん!今日は…」
「「「虫取り王決定戦!!」」」
俺達は同時にそう口にする。う~ん、この男子小学生のノリ、懐かしいな~。
小学生の頃はゲームの妖怪ウォッチで遊びまくってたっけ…
「いいか?一番大きくてレアな虫を捕まえた奴の勝ちだからな!」
「ああ」
「オッケー!」
クマから虫取り王決定戦のルールを聞いた俺とカンチはそれに対し返事をする。
「それじゃあ虫取り王決定戦、スタート!!」
クマの合図で俺達はそれぞれ虫取りへと向かっていった。
クマとカンチには悪いけど、虫取りの前に行くべき所に行くとしよう。もちろん妖怪ガシャがある大きな御神木だ。
あ、立ち入り禁止の看板がある。知った事か!
俺は看板を無視して森の奥へと進んでいった。
しばらく歩いていると妖怪ガシャが置かれている御神木まで辿り着いた。
「うわ~…やっぱ本物はデッカイな~…!」
『いーれろいれ「よし、ガシャに100円入れよ」…え?』
なんか声が聞こえた気がするが俺はすぐガシャに100円玉を入れた。
ガシャを回すと中から石で出来たカプセルが出てきた。この中にあいつが…!
「お、思ったより硬い…ぐぐぐ…うわっ!」
カプセルを開けると中から眩い光が飛び出してくる。光が収まるとそこにいたのは白くてホニョホニョした紫唇のあいつだった。
「ワタクシは妖怪執事のウィスパー!封印を解いてくれたお礼に、あなたの執事になりましょう!うぃす!」
そう、妖怪ウォッチに欠かせない妖怪執事のウィスパーだ。
ついに…ついに本物の妖怪と出会えたんだ!
「あの~…ワタクシを見て驚かないんですか?」
「驚いてる!驚いてるって!」
「驚いてるというか興奮してるように見えるのですが…」
「アハハ…それより、君が俺の羊になってくれるんだろ?」
「そうですメェ~…ってちょい待ちぃーーー!!羊ではなく執事です!し・つ・じ!」
「ノリ良いな。よし採用!」
「いやどういう基準で採用してるんでうぃすかあーた!」
マジでノリが良いなこいつ。媒体によって無能だったり有能だったりするウィスパーだけど、こいつがどのタイプのウィスパーだろうと仲良く出来そうだ。
「それにしても、あなた随分変わっていますね~。大抵の人は妖怪を見て驚くか逃げるというのに…」
「だって全然怖くねぇし。君とは仲良く出来ると思うんだよな」
「なるほどなるほど…妖怪を見ても物怖じしないその度胸…あなたはこれを渡すに相応しいお方でうぃす!」
そう言ってウィスパーはある物を俺に渡してくる。
これだ…これを待ってたんだ!
「その時計は妖怪ウォッチ。人間と妖怪を繋ぐコミュニケーションツールです。妖怪ウォッチを使えば目には見えない妖怪達を見る事が出来るのです!」
「わぁ~…!」
このフォルム…この重厚感…前世で遊んでいた玩具とは違う。本物の妖怪ウォッチ!
「そういえば、あなたのお名前を聞いていませんでしたね」
「俺はケータ。天野ケータだ」
「ではケータ君!さっそくその妖怪ウォッチを使ってこの森にいる妖怪達を見つけ出しましょう!」
「あ、ちょっと待ってくれない?今人間の友達と虫取りの大会やってんだ」
「なるほどそうでしたか…どうすれば優勝出来るのですか?」
「大きくてレアな虫を捕まえれば優勝出来るんだ」
「大きくてレアな虫ですか…それでしたらワタクシにお任せあれ!」
そう言ってウィスパーは手招きを始める。待てよ?これって確か…
「大きくてレアな虫よ~!おいでなさ~い!」
ウィスパーがそう言うといたるところから大きくてレアな虫がやってきて俺を埋め尽くしてしまう。
思い出した。これってアニメ第一話でレアな虫が欲しいケータ君にやった奴だ!ってか苦しい…!
「お、おいウィスパー…こいつら追っ払って…苦しい…!」
「あらすみません。虫達よ~!遠くへお行きなさ~い!」
ウィスパーは尻からオナラを出して虫達を追っ払った。それより臭っ!?
「ウィスパー…もっと他に方法なかったのか?」
「も、申し訳ございまうぃす…」
あれから虫取り王決定戦はクマの優勝で幕を閉じた。だが俺にはその余韻に浸る余裕はなかった。
俺とウィスパーがやってきたのは魚屋の近くにある交差点だ。
「ケータ君。ここはいったい?」
「ウィスパー。ここの交差点、最近寸止め事故が多いんだ」
「寸止め事故ですか?」
「ああ。この交差点では人にぶつかりそうになった車がギリギリで止まるんだ。だから寸止め事故」
「そういう事ですか…これは間違いなく、妖怪の仕業でうぃす!」
ウィスパーはこの寸止め事故を妖怪の仕業と断定したようだ。
「妖怪は人間にあらゆる影響をもたらします。そう、この世で起こる不可解な出来事は全て妖怪の仕業なのです!」
この妖怪ウォッチの世界は大抵の事は妖怪のせいに出来る。っていうか実際そうなんだよな。
「さぁケータ君!今こそ妖怪ウォッチを使って寸止め事故の原因となっている妖怪を見つけ出すのです!右のボタンを押してください!」
「右のボタンね」
俺が妖怪ウォッチのボタンを押すとレンズが開いて光が出てくる。
ホントは知ってるけど先にやっちゃうとウィスパーに不審がられるかもしれないし。
「その光を当てれば妖怪を見つける事が出来ます」
俺は信号の近くに光を当てる。すると妖怪が姿を現した。
その妖怪は赤い色をしたネコ妖怪だった。
その妖怪は妖怪ウォッチの顔であるマスコット、ジバニャンだ。
いや~、実物は可愛いな~。
「あの妖怪は…妖怪赤猫野郎じゃなくて…妖怪腹巻ニャンコでもなく…ありました!あれは妖怪ジバニャン!地縛霊のネコ妖怪でジバニャンです!」
ウィスパーはタブレット端末でジバニャンの事を調べていた。やっぱこっちのウィスパーもカンニングするんだな…まぁ大目に見てやるか。
「ニャ~…ニャッ!」
あっ、ジバニャンが通行人のオッサンに乗り移った。それを見たウィスパーも「なんと!憑依しました!」と驚いていた。
ジバニャンに憑依されたオッサンは赤信号の横断歩道をフラフラ歩いていく。大型トラックが見えてきたタイミングでオッサンからジバニャンが出てきた。これはもしや…!
「喰らえ車め~!ひゃくれつ肉球!!」
おーっ!あれが本家本元のひゃくれつ肉球!
「バゴニャーーッ!!」
あっ、吹っ飛ばされた…
「バッキャロー!死にてぇのか!?」
「い、いや!足が勝手に…」
ちなみにオッサンは無事だった。
「どうやら今のが寸止め事故の真相のようですね」
「ニャアーーーッ!!」
あっ、地面に落っこちてめり込んじゃった。助けてやるか。
「おーい。大丈夫か?」
「ニャ、ニャンとか…」
ジバニャンは俺の顔を見て固まっていた。しばらくすると表情を変え始めた。
「ニャニャッ!オレっちが見えるニャン!?」
「ああ。この時計のおかげでな」
俺は左腕につけてる妖怪ウォッチをジバニャンに見せる。
「あ、あんた!エミちゃんを知らんかニャン!…いやダメニャン!今は我慢だニャン!」
「…あのさ、力になれないかもしれないけど、良かったら話を聞かせてくれないか?」
ジバニャンの過去は既に知ってるけど、俺はジバニャン本人から話を聞いてみる事にした。
転生ケータ君は多少オタク気質なのでもしかしたらイナホと気が合うかも?