最近寸止め事故が多発している交差点にてその原因となっているジバニャンから話を聞く俺氏。
ざっくり説明するとジバニャンが普通の猫だった頃、彼にはエミちゃんという飼い主がいたそうだ。そんなある日、ジバニャンは車に轢かれてそのまま死んでしまった。そんなジバニャンを見たエミちゃんは彼の亡骸に向かってこう言った。
『車に轢かれたくらいで死んじゃうなんて…ダサッ』
「ひ、酷いでうぃす~!」
「そんな事ないニャン!エミちゃんは優しい子だニャン!きっと訳があるに違いないニャン!そもそもオレっちが車なんかに轢かれなければエミちゃんはあんな事言わなかったニャン!だからオレっち、車に勝てるようになる為に日々特訓してるんだニャン!ウォォーーッ!」
そう言ってジバニャンは車道へ飛び出していった。
「あっ、おい!」
「ひゃくれつにk…バゴニャーーッ!!僕はちにましぇぇーん!!」
危ないって言おうとする前にジバニャンはトラックに吹っ飛ばされてしまった。しかもアニメでよく聞いたあのセリフを叫んで。
「『僕はちにましぇぇーん』ってなんでうぃす?」
「寸止め事故業界で有名な言葉ニャン…」
あっ、戻ってきた。結構飛ばされてた筈なのに早いな。ってか何だ?寸止め事故業界って?
「あのさ。何でジバニャンは人に取り憑いて車と戦ってるんだ?」
「…オレっち、寂しいんだニャン」
「えっ?」
「オレっち、今までここで沢山の妖怪と会ってきたニャン。そいつらはみんなオレっちの事を馬鹿にしてたニャン…だからオレっち、ここでずっと一人ぼっちなんだニャン…だから人間に取り憑いて車と戦ってたニャン!そうすれば力が出てくる気がするんだニャン!」
「そういう事だったんですね…」
「…あのさジバニャン、そのせいで沢山の人が轢かれそうになってるんだぞ。このままじゃ誰かが車に轢かれて、最悪死ぬかもしれないよ?」
「…わかってたニャン、オレっちがしてる事が迷惑な事なんだって…」
「そっか…よかったら、俺が手伝ってあげよっか?なんなら取り憑いても良いしさ」
「ニャ、ニャン!?」
「ちょ、ケータ君!正気ですか!?」
「ああ。マジで正気だ」
「ど、どうしてニャン!?」
「ジバニャンの力になりたいって思ったからかな。車と戦うのだって車に勝てるくらい強くなって、飼い主のエミちゃんに会う為なんだろ?会いたいって思うくらいエミちゃんの事が大好きなんだな」
俺はしゃがんでジバニャンの頭を撫でる。
「今まで一人でよく頑張ったな。お前はもう一人じゃない。俺と友達になろうぜ」
「ニャ…ニャーーン!!」
ジバニャンは俺の胸に飛び乗って号泣する。よっぽど寂しかったんだな…
「落ち着いた?」
「ニャン…お前、何て名前ニャン?」
「天野ケータ。ケータって呼んでくれ!」
「ケータ!オレっち達、今日から友達ニャン!」
そう言ってジバニャンは一枚のメダルを渡してきた。
「それは妖怪メダル!妖怪と友達契約をした証です!」
「おぉ~…!」
これが本物の妖怪メダル…スゲー!感動だ!
「ケータ。なんでニヤニヤしてるニャン?」
「きっとあなたと友達になれて嬉しいんですよ~!」
おっと、また顔に嬉しさが出ていたようだ。
「もう日が暮れてきたな…そんじゃジバニャン。俺達もう家に帰るから、特訓に付き合ってほしい時は呼んでくれ」
「わかったニャン!ケータも困ったらオレっちを呼ぶニャン!」
「オッケー!行こっかウィスパー」
「はい!」
俺はジバニャンに別れを告げてウィスパーと一緒に家へ帰った。
「あなたっていっつもそう!」
「だったら僕も言わせてもらうけどな!」
「ボボジョワーン」
…帰ったら父さんと母さんが喧嘩していて、二人のそばにはベ○ベ○ンのような妖怪がいた。
「あの妖怪はドンヨリーヌ!その場の空気を悪くする妖怪です!ご両親が喧嘩しているのはドンヨリーヌが取り憑いているからです!」
そうだった。ウィスパーと出会って妖怪ウォッチを貰った日にこんなイベントもあったんだった。
妖怪達と出会える嬉しさのあまりすっかり忘れちまってた…
「もう知らない!」
「こっちこそ!」
そう言って父さんと母さんは互いに距離を取ってしまった。
とにかく今はドンヨリーヌを何とかしないとな…
「…ウィスパー。俺がドンヨリーヌと話してくる」
「気をつけてくださいケータ君!」
俺はドンヨリーヌのそばにやってくる。
「あのさ、ちょっといいかな?」
「あら?アタクシが見えるのジョバーン?」
「ああ。この時計の力でね」
「そうなの。それよりまさか…出ていけなんて酷い事言わないわよねジョワーン?」
「悪いけど、あんたの力のせいで父さんと母さんが喧嘩して困ってるんだ。だから出ていってくれないか?」
「そう…でもごめんなさいジョワーン。アタクシここが気に入ってるジョバーン。だから出ていく気なんてないジョワーン」
くっ!交渉決裂か…だったら!
「ケータ君!今こそウォッチに妖怪メダルをセットしてジバニャンを呼び出すのです!」
「オーケー!」
俺はジバニャンの妖怪メダルをポッケから取り出す。
「俺の友達、出てこいジバニャン!妖怪メダルセットオン!」
く~!一度やってみたかったんだよな~!
『プリチー召喚!プリチー!オレっちトモダチ!福は内~!』
「ジバニャン!…バゴニャッ!?」
ジバニャンは呼び出された途端天井に頭をぶつけてしまった。痛そ~…
「も、もっと広い所で呼び出すニャン…」
「ゴ、ゴメン…ゴホン!ジバニャン!ドンヨリーヌを追い返してくれ!」
「えぇ~…ダルイんですけど…」
「頑張ってくれたらお菓子やるぞ」
「ニャン!?チョコボーはあるニャン!?」
「ああ。棚の中にたくさんあるぞ」
「オレっちに任せるニャン!」
「お菓子で引き受けちゃうんですか!?しかも猫なのにチョコ!?」
それは思った。猫にとってチョコって毒の筈なのに…まぁ妖怪だから大丈夫なんだろうな。
「喰らえー!ひゃくれつ肉球!!」
「ボボボジョバババッ!?」
なんかトラックと戦ってた時より強くなってる気がする…チョコボーパワー恐るべしだな。
「ボボジョバ~ン…」
ドンヨリーヌは目を回して倒れてしまった。
ちょっとやり過ぎちゃったかな…
「なぁドンヨリーヌ。どうして父さんと母さんに取り憑いてたんだ?」
「…実はアタクシ。旦那と喧嘩しちゃったのジョバーン…」
「旦那さんと?」
「そうジョワーン…それで仲の良いこの夫婦を見ていたら悔しくなって…」
「それでケータ君のご両親に取り憑いていたんですね…」
「…ドンヨリーヌは旦那さんと仲直りしたいのか?」
「…出来る事ならしたいジョワーン」
「だったら旦那さんと話してみなよ。きっと旦那さんも悪いと思ってるって」
「そうジョバーン?」
「ああ。俺の父さんと母さん、メッチャ仲が良いんだぜ。時々喧嘩する事もあるけど、それでも最後には仲直りして元通り。旦那さんを信じてみなって」
「でも、あの人が今どこにいるかわからないジョバーン…」
「じゃあ俺達が一緒に探してやる」
「な、なんでジョバーン?アタクシはあなたに迷惑を…」
「そんな事は関係ない。困ってる人は助ける事にしてるんだ。それが妖怪でもな」
「あ、ありがとうジョバーン…」
「それじゃあさっそく…」
「お待たせニャン!」
さっそくドンヨリーヌの旦那さんを探しに行こうとしたらいつの間にかどこかに行っていたジバニャンが戻ってきた。
「おや?あなたどこに行ってたんですか?」
「ドンヨリーヌの旦那さんを連れてきたニャン!」
えっ?いつの間に!?
「こんなところにいたボーノ?私が言い過ぎたホノボーノ!」
部屋に入ってきたのはドンヨリーヌの旦那さん、ホノボーノだった。
ホノボーノが部屋に入ってくると場の雰囲気が良くなった気がするな。
「あの妖怪はホノボーノ!辺りをほのぼのとさせる妖怪です」
「なんか雰囲気が良くなった気がするニャン!」
「空気をどんよりさせるドンヨリーヌとほのぼのさせるホノボーノ。二人が一緒にいる事で中和されて普通の空気になるようですね」
ウィスパーが二人の事を妖怪パッドを見ながら解説していると父さんと母さんが互いに向かい合っていた。
「あなた、ごめんなさい…」
「いや、僕の方こそごめん…」
これで一件落着だな。
「ご迷惑をかけたお詫びにこれをあげるジョバーン」
「私の分もどうぞボーノ」
おっ、妖怪メダルだ!今日だけで3人の妖怪と友達になっちゃったな。
俺達はチョコボーを大量に持ったジバニャン、ドンヨリーヌ、ホノボーノを見送った後自室に戻っていった。
「ここがケータ君のお部屋ですか~!本がたくさんありますね~!」
「ほとんど漫画だけどな。読んでみる?」
「ではお言葉に甘えて」
ウィスパーは本棚から一冊漫画を取り出した。
「なんと!主人公が妖怪の力で女の子になったでうぃす!」
「あ~、それ取ったんだ…」
ウィスパーが読んでいたのはちょっとエッチな妖怪漫画だった。妖怪退治を生業にしている一族の少年がひょんな事から妖怪の術で女の子なるっていう内容だ。
他にも伝説の宝を目指して航海する海賊の漫画や恋愛頭脳戦を繰り広げる二人の男女の漫画が本棚にある。
それはさておき、ようやく妖怪ウォッチを手に入れたんだ!明日から沢山の妖怪と友達になってやる!目指せ妖怪マスター!
「ケータ君、なんで手を上に上げてるんでうぃす?」