その天使はハッピーエンドしか認めない   作:苦闘点

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 先生の性別は決めました。悔いはありません。


熾宮ルカは先生を見極めたい

 

 

 この学園都市キヴォトスに、『先生』というものは存在しない。どの学園においてもBDによる自主学習が基本形態であり、学園にいる大人も強いて言えば清掃員くらいのものだ。

 学園の運営も生徒が主体となって行い、学園生活に大人が直接関わることは殆ど無かった。

 

 

 そういった理由から無意識のうちに排他的になっていたのか、ハスミから『先生』という大人がキヴォトスの『外』から来たと聞いた時は多少戸惑った。

 学園の『先生』……てことは必然的に、俺たち生徒と関わる立場になる大人ということだ。そんな存在は今までいなかったので、すぐに理解出来なかったというのもある。

 

 

 しかし一先ずはその戸惑いは置いておき、ハスミの話を聞いた。

 

 聞けば先生はある部活の顧問として着任予定だったそうだ。

 その部活の名は、連邦捜査部『シャーレ』。連邦生徒会長が失踪前に設立だけしておいた部活。

 『部』と付いているがそれは一種の超法規的機関であり、部活という枠組みは越えている。

 そこはキヴォトスに在る全ての生徒を制限なく加入させることが可能であり、各学園自治区で制限なく戦闘を行う事すら出来ると言う。

 

 そこまで聞き、俺はすぐさまその『先生』に対する評価を改めた。

 シャーレが単なる部活ではないように、『先生』も俺が思っていたような只の先生では無かったようだ。

 

 要するにだ。理論上の話をすれば、先生はキヴォトスに存在する学園の生徒を際限なくシャーレに入部させて独自の戦力にする事がであり、何の勧告も宣言も無しに何処でも戦闘を仕掛ける事が出来る、と。

 ゲヘナとトリニティに留まらないETOのようなものだ。しかも全権が先生にある。

 

 なんて恐ろしい物を置き土産にしてくれたんだ連邦生徒会長。その先生一人で、キヴォトスの勢力図がひっくり返りかねないぞ。

 

 

 そう考えた段階で、俺は直ぐにサンクトゥムタワーにダッシュした。必ず、その正体不明の『先生』を見極めねばならぬと決意した。

 連邦生徒会長の後釜に相応しい……というか、その会長を上回る絶大な権力が見知らぬ大人一人の手に渡ったのだ。俺が抱いた警戒は、初対面の時の俺に対するサオリくらいには大きかった。

 

 ここからサンクトゥムタワーまで……本気ダッシュで30分で行けるか行けないかってところか。ミカとナギサに黙って不良討伐の為に外に出といて良かった。

 

 

「で!? 今移動中ってのは結局どういう訳だ!?」

 

『待ってください、今走ってますか? まさかこっちに来てませんよね?』

 

「…………今はそんな事どうでもよくて!」

 

『は、はぁ。実はそのシャーレの部室の地下にサンクトゥムタワーの制御権を握る何かがあるそうなのですが、そこが矯正局から脱走した生徒達か暴動を起こしていて……』

 

「待って? 矯正局から脱走?」

 

 

 俺は急ブレーキをかけて1回立ち止まった。

 あれ、矯正局から脱走って……なんかさっき聞いたな。スマホを取り出すと変わらずクロノススクールが出してるニュースに、D.U.外郭地区で暴動が起きてるとあがっている。

 

 

「……ハスミ。一応聞くけど、その暴動って外郭地区で起こってる?」

 

『はい。その鎮圧に向かっているところです』

 

 

 そういうことかぁぁああ……。

 合点がいった。恐らくサンクトゥムタワーからシャーレの部室に行こうって時に、その前で暴動か起きてることを知った。それでその場にいたハスミスズミ、その他学園の生徒を先生の護衛にしようってことか。連邦生徒会、余裕無さすぎだろ。

 

 ただ心配なのは、先生がキヴォトスの『外』から来たことだ。それは先生が俺たちのような頑丈さは無く、銃弾一発で死に至る肉体だということだ。

 そんな脆弱ボディの先生をここ(キヴォトス)の生徒の暴動の中に放り込んでみろ。ザキ*1唱えるより早く死ぬぞ。

 ハスミとスズミがいればマシではあるが、ニュースを見た感じ不良の数がかなり多い。守りながら戦う制限付きでは少し心許ない。

 

 

「分かった。俺も今行くから、ちゃんと先生守れよ! スズミにも言っといてくれ!」

 

『はぁ!? 待ってください、今からですか!?』

 

「ここから現場なら……20分で行く!」

 

『いえ来ないでください! トップがそう気軽に顔を出すものではないと、ナギサさんにも言われてるでしょう!』

 

「世界の危機ですぅ! 立場なんてゴミ箱に捨てるべきだと思いまぁす!」

 

 

 そこから約20分、携帯の向こうで怒り続けてるハスミをいなしながら俺はシャーレの部室近くまで走り抜けた。途中からビル群になってきたので、穿撃針を使って屋上伝いに飛び移っている。

 

 

「よし、もうすぐ着くぞ。多分ここら辺で合ってるだろ」

 

『はぁ!? もう着く!? 何でそうフットワークが軽いのですか貴方は!』

 

「マラソン得意なのは知ってるだろ? それじゃ切るぞ。もうすぐ会えるだろうからな」

 

『じゃあ切るって……! まだ話は……!』

 

 

 後のことが怖いけど、緊急事態ってことでどうか許して欲しい。最悪土下座も視野に入れるべきか。

 

 そうして俺がビルから大通りの上空へと跳ぶと、目下に多数の生徒と数台の戦車が見えた。

 

 

「ここだな。……っ!? マジか!」

 

 

 戦車の砲身の向く方に、5人の人影が見えた。黒い巨大な羽が見えたので、あれがハスミ達で間違いない。

 そしてその戦車は、今にもその大筒から砲撃を行おうとしていた。

 

 俺は空中で姿勢を変え、真下のその戦車目掛けて穿撃針を投擲した。

 

 

「─── 穿て」

 

 

 砲身に直撃したそれは爆発し、戦車の砲撃は防がれた。

 俺は沈黙を確認しホッと息をつき、ハスミ達の前にゆっくり着地した。

 

 

「あっっっぶなぁ。ダッシュで来て正解だったな……」

 

 

 ハスミ、スズミ以外の3人をしっかりと見てみた。

 一人はゲヘナの子だ。風紀委員会の腕章をしてるし。デカイ救急バッグも持ってるから、この前ヒナが言ってた救急医学部から転部した子かな。

 もう一人は胸に付けた学生証からしてミレニアムの子だ。となるとセミナーか。良かった。これで生徒会で来てる奴が俺だけじゃなくなった。

 

 

 ……そして最後の一人。5人の中で唯一、ヘイローを持たない大人。

 

 

「……で? あなたが先生で合ってるか?」

 

「腐ってもうちのトップなのですからもっとシャンとしてください」

 

「ごめんて、そんなに怒らなくてもいいだろハスミ」

 

 

 確実にキレてるハスミを宥め、俺はもう一度その大人を見た。

 正直、ヘイローを持たない事以外は俺たち生徒と大きな違いは見られない。犬でもないし猫でもないしロボットでもない。生徒と同じような姿だ。

 全体的に色素の薄い灰色髪を後ろに束ねた先生は童顔で、それこそ本当に生徒と言っても差し支えない。

 

 

 ……そして何より、何より驚いた点だが……。

 先生は男だった。

 男だった。大事なことだ。髪は長いけど喉仏はあるし間違いない。

 

 この世に生を受け17年、右を見ても左を見ても女子しかおらず、数少ない男性の知り合いも行きつけの喫茶店のマスターやラーメン屋の大将で全員動物。

 別にそれが嫌だったという事はない。男子生徒がいないのは遥か昔に諦めたことだし、同性の大人の知り合いは大体優しいし……。

 ……ただ、自分と同じような外見の人(?)を見たことが無かったので……なんか不思議な感慨深さが出てきた。そっか、キヴォトスの外にも目を向ければいるんだ。

 

 

「……何を感動したように天を仰いでいるのですか」

 

「あ、悪い。ちょっと仲間意識が芽生えたっていうか……」

 

「"えっと……君がスズミの言ってた先輩かな?"」

 

「ん? あぁ、そ…グッ!?」

 

 

 普通に返事しようとしたら、ハスミに首根っこを掴まれた。

 

 

「な、何だよハスミ」

 

「(トリニティの、代表であることを、お忘れ、なきよう)」

 

「(い、いや。もう遅いだろ。お前だって先生の前で俺と電話してたんだろ? ここは素で応じるのが誠意だって)」

 

「(お忘れ、なきよう)」

 

「……わかったって」

 

 

 一周回ったニッコリ笑顔の圧でそう言われ、俺は従う他無くなった。もうこれ以上口答えするのは俺の身が危険だ。

 俺は先生に向き直り、1度咳払いしてから帰ります改めて先生に挨拶した。

 

 

「ゴホン……えぇ、はじめまして、先生。私はトリニティ総合学園の熾宮ルカと申します。以後、お見知り置きを」

 

「"……丁寧なのはありがたいけど、無理はしなくていいよ?"」

 

「……無理なんてしてませんよ?」

 

「"さっきのハスミとの話も聞こえてたしさ"」

 

「だってさぁ! ハスミさぁん! 聞こえてたってぇ!」

 

「無理に取り繕う必要は無いでしょう。セミナーのユウカさんなんて、最初っからあんなですから」

 

「あんなって何よあんなって!」

 

「そういうところでは?」

 

 

 俺はナギサトレースモードを即座にやめた。

 その間に風紀委員会の子はセミナーの子を刺していた。言い返していたけど、確かにそういうとこだな。スズミの冷静なツッコミの通りだ。

 

 

「"アハハ。何はともあれ、よろしくね、ルカ。私は先生だよ。さっきは助けてくれてありがとね"」

 

「礼はいいよ。そのために来たんだからな」

 

「"いや〜、危うく着任0日目で死ぬところだったよ。キヴォトスはヤンチャな子が多いね"」

 

「笑い事じゃないし、ヤンチャで済ませていいものでもないんですよ先生……!」

 

 

 この人、危機管理能力大丈夫か? 自分が銃弾一発でGAME OVERなベリーハードモードなこと分かってないのか?

 

 あとこんな談笑してしまって忘れていたが、ここは戦場だった。

 俺は腰の銃から薬莢を一つ取り出し、斜め後方に親指で弾いた。

 そのタイミングで、先生に向かっていた弾丸と火花を散って衝突した。

 

 

「!?」

 

「……流石です。ルカ先輩」

 

「アイスブレイクもここまでだな。まずはあのヤンチャ不良達を倒さないと」

 

「"みたいだね。ここからは私が指揮を取るよ"」

 

「先生が?」

 

 

 戦術指揮を先生がするのか。先生の仕事ってそういうのだったっけ。

 まあいいか。見極める意味でも、ここは先生の指揮に従ってみよう。

 

 

 先生は1番後方に、風紀委員会のチナツはサポート。ハスミは後衛。スズミは中衛。俺とセミナーのユウカは前衛という配置になった。

 

 

「"行くよ、みんな"」

 

『はい!』

 

 

 

 

‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎

 

 

 

 

 ……結果を言おう。圧勝だった。

 こちらに被弾は殆ど無く、道中にいた不良は瞬く間に制圧された。

 

 

「……なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします」

 

「やっぱり、そうよね?」

 

 

 スズミとユウカはそう言っていたが、俺にはそんな生易しいものには思えなかった。

 

 先生は今日キヴォトスに着任したと言っていた。その状態で学校もバラバラな生徒を完璧に束ね、且つ各生徒の得意分野や特殊武器さえ完璧に扱ってみせた。

 ここまで来るヘリで生徒の情報を見たにしてもおかしい。何故1度しか見てない俺の穿撃針さえ作戦に組み込める。

 普段正実の現場指揮をしているハスミさえ、圧倒的に凌駕する指揮能力だ。

 

 更に、1番戦況が見えづらい最後方にいるにも関わらず、戦場を上空から俯瞰したかのような状況把握能力。実際に戦場にいる俺たちでさえ分からない死角からの攻撃を言い当てた時は、流石に肝が冷えた。

 これを何のデバイスも使わず素で行ってるのだから、戦慄と言う他無いだろう。

 

 

(一番警戒すべきはシャーレの権限だと思ってたが……先生本人も化け物だな。連邦生徒会長の直接指名は伊達じゃないか)

 

「よし、シャーレの部室は目前よ!」

 

「"この先に騒ぎを起こした生徒……ワカモ、だっけ?"」

 

『はい。百鬼夜行連合学院を停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です』

 

 

 考え事を一旦中止し、無線に繋がった連邦生徒会の七神リンの報告を聞く。

 狐坂ワカモ……シズコちゃんに話だけ聞いた事があるな。似たような暴動、煽動を起こしまくって特殊部隊に逮捕されたヤベー奴だっけか。

 

 情報整理しているうちに、最後の不良団体が見えてきた。

 

 

「"! ルカ、上!"」

 

「!? くっ!」

 

 

 歩道橋の上から飛来した赤と黒の攻撃を、俺はライフルを横に構えて防御した。

 俺の眼前には銃の先端に取り付けられた小刀が鈍く光っている。お相手は殺意満々だ。

 

 その狐面を付けた少女……狐坂ワカモは面の奥で笑っていた。

 

 

「よお、はじめまして。狐坂ワカモだな? いきなり大将がお出ましか」

 

「えぇ。木っ端では手に余ると思いまして。どうか私を失望させないでくださいまし♡」

 

「そりゃ光栄なこと、でっ!」

 

 

 俺は銃剣を弾き、ライフルを一発。それは横跳びで避けられたので、穿撃針を二つ着地点に置き迎撃する。爆煙から跳び出たワカモは無傷なので、すんでの所で回避したか。

 この攻防の感じ、単純な攻撃力はツルギ以下ハスミ以上。身軽さや計算高さは最高レベルだな。

 

 

「先生。ワカモは俺が抑える。その間に4人で他の不良を倒して部室の奪還を進めてくれ」

 

「"ルカは一人で大丈夫?"」

 

「大丈夫だ。俺、これで結構強いからさ」

 

 

 先生との通信を終え、俺は目の前にあった遮蔽物をワイヤーで絡めてワカモに投げつけた。

 

 

「あら。室内飼いされたトリニティにしては、随分お行儀の悪いこと。鳥かごの中はさぞ退屈だったでしょうね」

 

「躾がなってない趣味:散歩の野鳥なんでね。そういうお前こそ檻の中はつまらなかったろ、野良狐」

 

「ウフフフ……確かにつまらない事この上無かったですが、今は存外楽しめていますよ?」

 

 

 舌戦をしながらも銃を撃つ手は止めない。

 投げられたスモークグレネードにより視界を封じられるが、片手の穿撃針を振り回して無理やり煙を掻き消す。

 死角からの刺突は脇を開けて回避。そのまま銃身を腕で挟んでワカモの体ごとぶん回す。

 

 1度離れたワカモは空気を変え、高速の六連射を行った。

 

 

「そこでお亡くなりになりなさい!」

 

 

 物騒な文言と共に放たれたそれを、穿撃針で絡めた廃車で全て遮りワカモに投げつけた。

 流石のワカモも怯んだようで、その隙に距離を一気に詰めてゼロ距離で弾丸をぶち込んだ。

 

 

「くっ……! 品の無いこと……」

 

「言ったろ。俺は躾がなってないって」

 

「そのようですね。……ここいらが潮時ですか。しっかり楽しめましたよ。お次があれば、その時は……ウフフ♡」

 

「あっ、おい待て! ……狐は逃げ足も速いな」

 

 

 そう言ってワカモは煙幕を張り、どこかに消えていった。

 気配の消し方が上手い。元より正面戦闘ではなくゲリラ戦タイプか。道理で戦いづらいわけだ。

 

 ワカモの事は一旦置いておき、任せていた先生の方に行った。

 

 

「"ルカ。怪我はない?"」

 

「あぁ、無問題(モーマンタイ)だ。悪いがワカモは逃げた。それで、こっちの状況は?」

 

「"入口までは辿り着いたんだけど、その前に巡航戦車がいてね"」

 

「どれどれ……うわ。あれクルセイダー1型じゃんか。うちの制式戦車と同じ型だ。パクったんじゃないだろうな……」

 

 

 現在巡航戦車相手に、電磁シールドを展開したユウカが粘ってる。表情から察するに相当危なそうだ。

 

 

「"どっかのPMCから買い入れたものだろうって、ユウカが。だから壊しても問題ないよ"」

 

「リョーカイ。戦車相手なら、俺の得意分野だ」

 

「"だね。よし、ユウカ。もう少しだけ頑張って。スズミは私の合図で閃光弾を投擲。ハスミはルカの攻撃に合わせて砲身に狙撃。頼んだよ"」

 

「もう結構限界なんですがァ!?」

 

「分かりました。ユウカさん、もう少しです」

 

「ルカさん、中の不良を誤って殺さないよう注意してくださいね」

 

 

 今日やけに辛辣だなハスミ。俺が悪いのは分かってるんだけどさ。

 

 ユウカが粘ってくれてる間に巡航戦車に走り、穿撃針の間合いまで近づいた。

 

 

「"スズミ、今!"」

 

「閃光弾、投擲!」

 

「いけ、ハスミ!」

 

「逃がしません」

 

 

 スズミの閃光弾により戦車の狙いが狂い、ハスミの狙撃で砲身が打ち上げられた。

 俺はそこを目掛け穿撃針を投げつける。中の不良はなるべく傷つかないように……

 

 

「穿てっ!」

 

 

 戦車の装甲を穿ち抜いた。

 

 戦車の中から気絶した不良が出てきたのを確認し、俺は先生に振り向いた。

 

 

「これで全員鎮圧完了。シャーレの部室、奪還成功だ」

 

「"うん。お疲れ様、みんな"」

 

 

 先生から労いの声をかけられ、俺たちはやっと一息ついた。

 その後、先生はサンクトゥムタワーの制御権を戻すためにシャーレオフィスビルの地下へと歩いていった。

 

 

「お疲れ様です、ルカ先輩」

 

「おう、スズミもおつかれ。ナイス閃光弾」

 

「ありがとうございます。先輩の爆撃も、相変わらずお見事でした」

 

 

 戦闘後で落ち着いたのもありスズミと話していると、ユウカとチナツがこちらに来た。

 

 

「あの指向性爆弾……もしかして、貴方何度かミレニアムに来てる?」

 

「ああ。そっちのエンジニア部にはお世話になってるよ。同時に迷惑も被ってるよ」

 

「爆破跡に見覚えがあると思ったらそういう……いい? お願いだから、その武器をうちの学園の室内で使わないで!

修繕費の計算をするのは私なんだから!」

 

「悪いけどそれは整備の時に暴発させてるオタクの頭の良い馬鹿共の仕業だ」

 

「アイツらは本当にもう!」

 

 

「ヒナ委員長から話は聞いています。話に違わぬ、委員長に迫る戦闘でした」

 

「ありがとな。チナツもサポートサンキュッ。助かったよ」

 

「これも仕事ですから。……ですが、どういたしまして」

 

 

 どちらも初対面だったが、ユウカは思わず肩ポンしたくらい苦労人。チナツは本当にゲヘナか疑いたくなるくらい常識人だった。

 

 そこで話していると、ふと俺の肩が後ろからガっと掴まれた。

 

 

「このままなあなあになるとでも?」

 

「思ってない思ってない。どこにも逃げないから肩離して? めり込んでるから」

 

 

 さぁてこのブチギレハスミをどう切り抜けようかな〜と考えていると、先にハスミが大きくため息をつき、他の生徒に聞こえないように小声で言った。

 

 

「ハァ〜……貴方の意図は多少は分かっています。先生についてでしょう? どうでした?」

 

「流石うちの正実の副委員長。分かってる〜。……今の所様子見、だな」

 

 

 この一連の戦闘でずっと先生を見ていたが、少しもおかしな挙動は無かった。徹頭徹尾、最速での制圧を目標に動いていた。

 恐らく、すぐさまシャーレの権限を悪様に使うような大人ではないと判断した。

 

 しかし同時に、敵に回った時の厄介さは桁違いだ。先生の指揮下での戦闘能力の向上は図抜けている。俺個人としては、間違っても敵に回したくない相手になった。

 

 先生と会う機会はそう無いだろうが……本質が分かるまでは安易に信用すべきではないな。

 

 

「俺は今から戻ってナギサ達に伝えてくる。ハスミは先生に今後の対応を……」

 

 

「失礼致しましたー!!」

 

 

 俺とハスミの間を、赤と黒っぽい何かが爆速で通り過ぎていった。

 

 

「……何ですか、アレは」

 

「……野生の狐じゃないかな」

 

 

 帰ろうと思ってたけど、中で何があったか気になるのでもう少し残ることにした。

 

 

*1
キヴォトスでリリースされたゲーム『ドラゴンテスト』で登場する即死呪文。一定確率で相手は死ぬ。





 
 一つ、先生は連邦生徒会支給の服を着ている。便利屋先生と格好は大体同じ。眼鏡は掛けていないし垂れ目でもない。

 一つ、先生の髪と目の色は暗い灰色。後ろで一つに束ねており、長さは肩甲骨に届くくらい。

 一つ、先生の年齢は27。身長は175cm。立派なアラサーだが顔面的に十分高校生で通る。何なら女顔なので女子高生でもワンチャン通る。

 一つ、この先生はあらゆる『先生』の可能性の一人。ゲームの先生でも、便利屋の先生でも、ゲーム開発部の先生でも、アニメの先生でも、もちろん貴方でもない。

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