その天使はハッピーエンドしか認めない   作:苦闘点

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 生まれて初めてファンアートを頂きました。モチベの極になりましたが、ストーリーを練ってて投稿遅れました、御免。


Vol.0.5 アビドス対策委員会編
熾宮ルカは闇取引を見逃さない


 

 

 先生就任の日のその後を話そう。

 

 あの後、無事にサンクトゥムタワーの制御権は再び確保され、キヴォトスの行政システムは復活した。

 その後シャーレオフィスから出てきた先生に一言挨拶してから、俺たちはその場を後にした。

 

 あとワカモだが……どうやら百鬼夜行自治区の方に逃げたらしく、今は行方を掴めていない。俺は百鬼夜行にはよく行くし、次遭遇したら本気で捕まえようか。

 

 

 んで、トリニティに帰った俺を待っていたのは……

 

 

「おかえりなさい、ルカさん」

 

「大活躍だったそうだね、ルカ君☆」

 

 

 満面の般若の笑みを浮かべたミカとナギサでした。

 

 俺はダッシュで逃走を試みたが、ハスミの連絡を受け先回りしていたツルギに張り倒され、簀巻きにされてティーパーティーの円卓に転がされた。

 それから皆のストレス発散とばかりにロールケーキを詰め込まれた。マジでロールケーキにされた。

 

 ツルギとハスミは不良の残党狩りに出かけ、円卓には俺たち3人だけが残された。

 

 

「ふぅ……ミカさん、お茶いりますか?」

 

「あ、貰うね。ありがとナギちゃん!」

 

「はい、どうぞ」

 

「これで日常に戻ったな。俺が簀巻きにされてることを除けば」

 

「セイアちゃんもいれば完璧だったね〜。早く戻ってくるといいんだけど」

 

「そうですね。今は、私たちに出来ることをしましょう」

 

「その出来ること、今目の前にあると思わないか? ねえ」

 

 

 俺は二人に問いかけてみるが、ロールケーキ状態が解かれる気配はない。そろそろ上のお口からロールケーキマトリョーシカしそうなんだけど。

 

 

「……ルカさん、我々が何故こうも怒っているか、分かりますか?」

 

「…………お二人に何も言わず出て行った事です」

 

「ルカ君の場合、分かっててやってるからタチ悪いよね〜。もうちょっと考えて動きなよ」

 

「「ミカ(さん)には言われたくない(です)」」

 

「私に飛び火した!?」

 

 

 お前の場合考え無しに動いた挙句、問題の一つや二つ引っ提げて帰ってくるでしょうが。成果を持ち帰った俺のが幾分マシだと思う。

 

 

「それで? その『先生』という方はどうでしたか? もうSNSでは話題になっているようですが」

 

「もうか。早いな」

 

「ルカ君の姿もバッチリ映ってるね。この……灰色の人?

先生って 人」

 

「そ。見た目は俺たちとそうは変わらないけど、力は弱いし銃弾一発で致命傷になり得る。フィジカルに限って言えばクソザコだな」

 

「成程。……では、フィジカル以外では?」

 

 

 ナギサが目を光らせて俺に問いかける。

 どうやら、俺の言葉選びとシャーレ奪還の報を見て、それだけじゃないことを直ぐに見抜いたらしい。

 

 

「端的に言うと……『異次元の指揮者』。これに尽きる」

 

「指揮者? 戦いでってこと?」

 

「そうだ。俺も実際に先生の指揮を受けて肌で分かった。アレは普通の人間が出来るものじゃない。戦術指揮が得意なので言うと……ハスミとかイチカとかか。あの二人とは比にならないレベルだ」

 

「そこまでですか。そこに、シャーレの権限で無制限に入部した生徒が戦力として加わると。……これはルカさんが焦るのも分かりますね」

 

「だろ? だから早くこのロールケーキ状態を解いて欲しいな」

 

「私は指揮とかよく分かんないけど、無制限に入部ってのがヤバいよね。そんなのキヴォトス版ETOじゃんね」

 

「少し意味合いは違いますが、潜在的脅威であることに変わりはありませんね」

 

 

 はい、俺の嘆願はまだ聞き入れられませんでした。もしかして今日ずっとこのまま? そろそろ鬱血してきそう。

 

 

「脅威とは言うが、先生自体はただのお人好しの善人に見えた。あくまで俺の主観ではな」

 

「……それは、逆に怖いですね」

 

「もーナギちゃん。トリニティのヤな部分沢山見てるからって、疑り深くなってない? ルカ君て、割と人を見る目あるでしょ?」

 

「そう言ってくれるのはありがたいよ。……ひとまず俺としては、こちらからは特に動かず様子見という事にしたい。下手に動いて、先生と敵対したくないしな」

 

 

 そう。一番避けなくてはならないのは、先生との敵対。連邦生徒会長の代人という圧倒的な権力を敵に回さないようにすること。

 あの先生の感じを見るに、強制的に生徒をシャーレに入部させるとは考えにくい。だから爆発的な戦力の増加などは考えなくていいが、それでも着実にシャーレに部員は増えていくだろう。既にあの場にいた俺を除く四人は入部しているしな。

 

 俺たちティーパーティーの目標は、目下『エデン条約の締結』。連邦生徒会長がいなくなったことにより後押しは無くなったが、必ず締結させる。空中分解はさせてなるものか。

 

 それに加え、セイア襲撃の犯人を探すこと。

 恐らく、エデン条約に関する思惑があったのではないかと、俺たちは考えた。エデン条約が締結されないことにより誰が得をするのか……考えても浮かんではこなかったが。

 

 先生がどういう存在か目を光らせておく事に変わりはないが、俺たちがすべき事もまた変わりは無い。

 

 

「私もそれで異存ありません」

 

「私も特になーし!」

 

「ありがとう、二人とも。…………それじゃ、そろそろ本当にこれを解いてくれない?」

 

 

 ……俺がロールケーキから解放されたのは、2時間に及ぶお説教の後だった。

 そんな怒ってたの? 二人とも。

 

 

 

 

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 先生の赴任から1週間ほど経った。

 それから特に大きな動きはない。エデン条約に関しても、先生に関しても。

 

 先生については本当に何も無い。せいぜい噂が広がっているという事くらいだ。

 一度シャーレに当番として行ったらしいハスミやスズミに話を聞いても、変な話は聞かなかった。普通に先生の仕事を手伝っただけらしい。

 

 エデン条約はナギサが主導で頑張ってくれている。ゲヘナ側のやる気、というか向こうの万魔殿(生徒会)のやる気が皆無な為、こちらが色々面倒事をしなくてはならない。俺も出来る限り手伝っているし、ミカも精一杯やってくれている。

 

 今は労いの意味も込めて、久しぶりにナギサとお茶会をしている。ミカは仕事が溜まってるので欠席だ。モモトークから嘆きの通知がきている。

 

 

「どうしましたか?」

 

「あぁ、ミカから。流石に可哀想だったかな……。今からでも呼ぶか」

 

「そうですね。もう溜まっていた3日分の書類も半分は片付いているでしょうから」

 

 

 ミカに甘いことはお互い分かりきってるので、今更何も言うまい。

 

 お、この紅茶かりん糖と合うな。

 

 

「ミカさんの分の紅茶を用意しておきましょうか。それにしても、この紅茶は美味しいですね。ルカさんが持ってきたものですよね」

 

「そうそう。この前ヒフミと一緒に買い物した時の「初耳ですよ詳しくお願いします」……本当にお前、ヒフミのこと好きだよな」

 

 

 今日一の食いつきを見せたナギサに苦笑いする。

 結構頻繁にナギサはヒフミの話題を出すが、たまに妹分とかそういうの超えてるんじゃないかった思うことがある。この前はガチの目をしてペロロについて聞いてきた事もあったし。

 

 

「やっほー! 来たよー!」

 

「はっや。一直線に来たのか?」

 

「ミカさん、今いいところなのです。ルカさんとヒフミさんが一緒にお出かけを……」

 

「詳しく聞こっか☆」

 

「ミカってヒフミに会った事あったっけ?」

 

「ないよ? それより私はルカ君が女の子とデートした事の方が気になるんだけど」

 

 

 デートというか……この前ヒフミを背負ってブラックマーケットで鬼ごっこした後の話だしな。湯呑みで買収された後にちゃんと合法な店でだ。

 

 

「オフの日にたまたま会ったから、流れでなったんだよ。約束してたわけじゃないし、偶然だし、デートじゃないし」

 

「なーんでそんな必死になってんのかなー?」

 

「正直デートかどうかはどうでも良くてですね……その、写真とかありません?」

 

「ナギちゃんは一回落ち着こっか?」

 

 

 その後、二人にヒフミとの話を根掘り葉掘りきかれたが、何とかブラックマーケット類の話を避けるのに苦労した。買収されてる手前、バレるわけにはいかないからな。

 

 ただ、ちょっと厳しい。導入の部分が丸々嘘だから、どうやっても不自然になる。それも権謀渦巻くトリニティで派閥首長やってる二人に対してだ。多分何かしら隠してるのはバレてる。

 

 

(今度ヒフミに会ったら、もう絶対ブラックマーケットに行かないよう言っとかないとな……。ミカには一つ、ナギサにはもう二つ隠し事してるし、これ以上はボロが出る)

 

 

 そう心のメモ帳に留めておいた次の日、ブラックマーケット行くことになるのだが……。

 

 まさかタイムリーにそのメモ帳が無駄になるとは、この時の俺は知る由もなかった。

 

 

 

 

‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎

 

 

 

 

「ど〜こに行ったァ? あのペロキチィ……」

 

 

 俺は道端に座りながら、珍しくガラ悪くそう吐いた。

 

 まだ放課後では無いにも関わらず、俺はブラックマーケットに来ている。

 今日窓の外からヒフミが人目を気にしたように歩いているのを見かけ、昨日のことがあって気になって後をつけていたのだ。

 

 そしたらビンゴ。一直線にブラックマーケットに行きやがったよアイツ。マジで何回も行きやがってんのかアイツ。ペロロ好きも程々にしろよアイツ。

 

 

「どうせまたペロロの限定グッズとかだろ。一ミリも反省してないだろ。……それにしても、ブラックマーケットに入った途端見失うとはな。ちょうど人が多い区画だったか」

 

 

 もう何時間か探し回ってるが、歩けど歩けどヒフミは見つからない。おかげでもう昏倒させた不良でサッカーの試合が出来そうだ。

 

 そこでふと、糖分が欲しくなって近くにあったたい焼きの屋台へと俺は足を運んだ。

 

 

「まいどー!」

 

「ありがとうございまーす☆」

 

「……凄い量だな」

 

「え? フフ、おにーさん、流石に一人では食べませんよ。一緒に来ている人達に買うんですよ☆」

 

「あぁ、そういう事か。すまないな、不躾に」

 

「いえいえ! それにしても、男子生徒なんて初めて見ましたよ! トリニティ、ですか?」

 

「あぁ。そういう君は……アビドスか」

 

 

 そういえば、ちょうどここら辺の区画はアビドス自治区とトリニティ自治区の間だったか。つっても、どっちの自治区も広大だから、間って表現は合ってるか疑問だが。

 

 にしても、このガドリング砲を背負ったベージュのロングヘアの子はアビドスの生徒か。珍しいこともあるもんだな。

 

 

「じゃあ、一緒に来てるってのもアビドスの…………」

 

「? どうしましたか?」

 

 

「"─── あ、ルカ。久しぶりだね"」

 

 

 ガドリングの子の後ろには、四人の生徒と一人の大人がいた。

 大人は言わずもがな先生。生徒は、銀髪犬耳、黒髪猫耳、ピンクのロングヘアのアビドスの生徒。

 

 そしてもう一人は…………

 

 

「あわ、あわわ、あわわわわわ……」

 

 

 慌てふためいて目を泳がせている、ペロロのリュックを背負ったトリニティの生徒だった。

 

 俺はひとまずたい焼きを二つ買った。幸いどちらも出来たてだった。

 そして先生の後ろに隠れたペロキチの方へと、笑顔を浮かべて近づいた。

 

 

 

「さあヒフミ。俺は今からこのアツアツのたい焼きをお前の口にぶち込むがいいよな? 答えは聞いてない」

 

「た、たたた助けてください先生ー!!」

 

「"これは……どっちに味方した方がいいのかな?"」

 

「言っとくが正義はこちらにあるぞ。大人しくロールケーキの刑ならぬたい焼きの刑を食らっとけ」

 

「地味にキツそうな刑だねぇ」

 

「ん、口の中火傷する」

 

『いや、どういう状況ですかコレ……』

 

「とりあえずたい焼き食べましょうか☆」

 

「まず状況の整理から始めたいんだけど!」

 

 

 その後、俺は先生の説得もあってなんとかたい焼きを握る手を納めた。代わりにデコピンにしておいた。

 そして先生たちが何故ブラックマーケットに来ているのか、何故ヒフミと一緒にいるのかも合わせて聞いておいた。

 

 

「うぅ、おデコがヒリヒリします……」

 

「すごい音してましたね!」

 

「ん、銃声かと思った」

 

 

「……ヘルメット団に便利屋ねぇ。アビドスも難儀な奴らに目をつけられたが、先生もまた難儀な子達に目を掛けたな」

 

「"先生だからね。困ってる生徒がいたら、手を差し伸べるのは当然だよ"」

 

「……ホント、素で言ってるのか分からないな」

 

「"嘘偽りない本心だよ。あ、このたい焼き美味しい"」

 

 

 アビドスから支援要請を受けていたという先生は、たい焼きを食べながら事も無げにそう言う。

 

 俺もアビドスの現状は断片的にしか知らないが……多額の借金を抱え、生徒数も5人しかおらず、連日ヘルメット団に校舎を襲われる学校を、よく真正面から正攻法で助けようと思ったものだ。

 

 

「で、ヘルメット団の武器がブラックマーケットから流れてるのを掴んだからやって来たと。その案内役でヒフミを選んだわけだな。大体把握した」

 

「"あんまり驚かないんだね。もしかしてアビドスについて前から知ってた?"」

 

「一応うちの生徒会なんでな。各校の事情には目を通してるんだよ」

 

「……へー。てことはキミ、あのティーパーティーなんだ。そんな凄い人が一人の生徒の為だけにこんな場所に来たの?」

 

 

 怪訝そうに尋ねてきたのは、さっきまで眠そうにしていたピンク髪の子。

 この生徒は知っている。ヒナからも聞いてるし、俺も独自に情報を見ていた。

 

 アビドスの副生徒会長、小鳥遊ホシノ。

 

 

「俺はちょっと特殊な立場でね。ある程度自由に動けるんだよ」

 

「そうなんだぁ。おじさんてっきり、ヒフミちゃんもキミの回し者なんじゃないかって思ってたよー」

 

「ないない。ヒフミに腹芸とか出来っ子ない。隠し事とか下手そうだもん」

 

「その通りですけど、そこまでキッパリ言われるとなんかムカッとします!」

 

「とにかく、俺は何も企んでないから、そんなに警戒しなくていいぞ」

 

 

 俺個人として、武力的に潜在的脅威としている数少ない人物、それが小鳥遊ホシノだ。

 過去に残っている僅かな戦闘データしか知らないが、十分脅威と見ていい。今も気だるげな目の奥で、サオリ以上の警戒心を渦巻かせている。

 

 ただ、俺の言葉で一旦はそれを納めた。

 

 

「助かるよ。それに、俺はアビドスが結構好きだからさ。行きつけのラーメン屋もあるし、復興はそれなりに応援してるよ」

 

「そうよ! 貴方、たまに柴関に来てる人よね!」

 

「お、やっぱり君、柴関のバイトちゃんか。近々行くから、大将によろしく言っといてな」

 

「"ルカは色んなとこに行くんだ。あそこのラーメン美味しいよね"」

 

「散歩と旅行が趣味なんだよ。アビドスに行くのは柴関以外で無いけどな。で、流入してた武器について何か成果はあったのか?」

 

「そうです、それがおかしいんですよルカ様!」

 

 

 俺が先生たちに聞くと、返答したのはヒフミだった。

 

 

「もう数時間は調査してるのですが、探してる戦車の情報が何も出てこないんですよ」

 

「何も、か。確かにそれは変だな」

 

「そんなに異常な事なの? 犯罪の記録なんだから、当たり前じゃない?」

 

「いや、ブラックマーケットじゃ、言ってしまえば犯罪は公的なものだ。企業の方も開き直ってるから、わざわざ隠す必要なんてない」

 

「そうです。例えばあそこの銀行。ブラックマーケットでも有名な闇銀行です」

 

 

 そう言ってヒフミが指差したのは、商店群の中でも一際大きいビル。

 あそこはキヴォトスの犯罪により得られた盗品の15%が流れていると言われる場所だ。黒も黒、白いとこなんて一切無い真っ黒闇銀行だ。

 

 

「ああいう場所で取引された金が、また武器や犯罪資金に変わって新たな犯罪に使われる……最っ低な悪循環だな。潰れりゃいいのに」

 

「じゃあ潰せばいいじゃない! 連邦生徒会は何やってんのよ!」

 

「まぁ、理由は色々あるけどな。ブラックマーケットは最悪の治外法権だ。それに連邦生徒会だって一枚岩じゃないしな」

 

「……それもそうだねぇ。ま、なんか色んな事情があるんでしょ」

 

「そういうこと。……っ! 隠れろ!」

 

『武装した集団が接近中です! 身を隠してください!』

 

 

 俺とオペレーターの子の言葉で、全員身を伏せる。

 視線の先では、多数のオートマタ兵が一台のトラックを護送していた。

 

 

「あ、あれは、マーケットガードです!」

 

「ブラックマーケットでも最高位の治安機関じゃないか。何でこんなとこに?」

 

 

 護送されたトラックはそのまま闇銀行へと入っていった。そのトラックから降りてきたロボットの銀行員は、アタッシュケースを闇銀行の行員に渡し、中へ入っていってしまった。

 

 

「また闇取引かよ。今度は何処から持ってきた金だ?」

 

「あの人って、確か……」

 

「アイツ、毎月うちに来て利息を受け取ってる銀行員じゃない!」

 

「お、ホントだねぇ」

 

「え、ええっ!?」

 

「アヤネ、あのトラックの照合、できる?」

 

『はい、出来ました! 確かに車もカイザーローンのものです!』

 

 

 カイザーローン……あのカイザー系列の金融か。

 段々、話が見えてきたな。

 

 

「一ついいか? アビドスはカイザーローンから借金してるのか?」

 

「借金について言ったっけ? ……直接借りたのは私たちじゃないけど、まぁそんなところだね〜」

 

「過去の遺産ってわけね。しかし、よりによってカイザーか……」

 

「"ルカ、カイザーについて何か知ってる?"」

 

 

 先生の問に応え、俺は皆にカイザーについてのあれこれを話した。

 

 カイザーローンは、カイザーコーポレーションが運営する高利金融業者。そこ自体は表立って悪事はしていないが、黒に近いグレーな事は沢山仕出かしているらしい。

 カイザーグループ自体、うちじゃ店舗の種類を限って経営を許可している。カイザーローンは勿論お断りしているがな。

 

 

「トリニティではあまり見ませんが、そういう事だったんですね」

 

「俺も個人的にカイザーは好かないんだよなぁ。数回会談したことあるけど、アイツらいつも足元見てくるんだよ。蹴り上げてやろうかと思ったわ」

 

「それは今度お願いするとして……アヤネちゃん、さっきの現金輸送の走行ルートって分かる?」

 

『少々お待ちください……駄目です。全てのデータをオフラインで管理しているようで、全然ヒットしません』

 

 

 だろうな。そんなところでボロを出す闇銀行じゃないだろう。

 

 俺の考えでは、恐らくアビドスが借金返済の利息の為に渡した金が、こうやってカイザーローンから闇銀行に流れていたのだろう。というかそうとしか考えられない。

 ……しかも、その金でヘルメット団に武器が渡っていたと考えるなら、彼女達の頑張りは一体何だったのだろうか。

 

 アビドスの面々もそれに気づき、険しい顔になっている。

 

 

「ヒフミ、カイザーローンと闇銀行の取引の証拠、どうやったら掴めると思う?」

 

「え!? えーっと……あ! さっきサインしてた集金確認の書類! アレを奪ってしまえば……」

 

「うん、相変わらずの非凡な考え。流石ヒフミだ」

 

「全然嬉しくありません!」

 

「聞いてたな、先生」

 

「"うん。でも、どうやって銀行の中に?"」

 

 

 そう。もう書類も行員も銀行の中。そこはブラックマーケットにおいて最強のセキュリティが張り巡らされており、さらにはマーケットガードも大量にいる。

 

 

「正面突破は無理そうですしね……。他に輸送車の集金ルートを確認する方法は……」

 

「いや、それ以外無いだろうよ」

 

「え?」

 

「うん、話が早くて助かる」

 

 

 俺の言葉に、犬耳の子が同調する。

 ヒフミは何を言ってるか分からないようだが、アビドス組は何をするのか分かったようだ。バイトちゃんは「マジでアレやるの!?」と驚いている。

 先生はニコニコとこちらを見守っている。どういう感情だソレ。

 

 俺はたい焼きの袋を広げ、犬耳の子は鞄からガサゴソと何かを探す。

 

 

「残された方法は、たった一つ」

 

「一番手っ取り早くて、一番確実な方法だ」

 

 

 そして、たい焼きの袋を被った俺と、何故か青い覆面を被った犬耳っ子は、同時に言い放った。

 

 

 

「ん、「銀行を襲う」」

 

 






 一つ、彼はまだシャーレに所属していない。が、入ってみるのも悪くないと思ってる。他ティーパーティーが許可してくれるかは分からない。

 一つ、彼はブラックマーケットに入ることは滅多にない。内部事情に詳しいのはティーパーティーとして問題児(約一名)の為に色々調べたから。

 一つ、彼はカイザーが割とマジで嫌い。自分たち子どもを食い物にしようとしてる感じが反吐が出るほど嫌い。正直トリニティから出ていってほしい。

 一つ、彼はアビドスの事情については大体把握している。柴関ラーメンが大好きなので是非頑張ってほしい、数十万円くらいなら毎月寄付で贈れる。
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