その天使はハッピーエンドしか認めない   作:苦闘点

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 私は皆さんの感想と評価とここすきをモチベにしています。特にここすきや感想は皆さんの嗜好が分かるのでとても助かっております。ジャンジャンください。


ジェイソンさんは決して偉くなんてない

 

 

 本日未明、ブラックマーケットの闇銀行に衝撃走る。

 

 頑強なセキュリティを誇るそこで、いきなり全階の明かりが消えた。

 

 

「な、何だ!?」

 

「停電か? おい、早くサブ電源を……グッ!?」

 

「グアッ!」

 

「な、何が起こって……うああ!」

 

 

 サブ電源が復旧するとそこには、謎の覆面を被った六人の姿があった!

 

 

「全員、その場に伏せなさい! 持っている武器は捨てて!」

 

「従わないと痛い目を見ることになりますよ〜?」

 

「あ、あはは……皆さん怪我するといけないので、大人しく従ってくださいね……」

 

「き、緊急事態発生! 緊急……グハッ!?」

 

 

 指示に従わず、どこかに連絡しようとしたロボット行員を俺は銃床で沈めた。

 

 

「伏せろと言ったろう! ファウスト様の手を煩わせるな!」

 

「ちょっ!?」

 

「そうだよ〜。それに警備システムに繋がる電源も落としちゃったからね〜」

 

「ほらそこ! 伏せてってば! 早くしないと、うちのリーダーがキレるわよ!」

 

「そうだぞ! うちのリーダーのファウスト様が! 」

 

 

 そのファウスト様こと何谷ヒフミは、「私がリーダーですか!?」とアワアワとしている。

 

 すまん、ヒフミ。俺は立場上あんまり目立てんのだ。後始末はちゃんとやってやるから、安心してファウスト様を遂行してくれ。

 

 俺は学ランを脱いで13と書かれたたい焼きの袋を被っている。ヒフミは5。見方によっては俺が大将みたいになるので、一応予防はしとこう。

 

 

「ちなみに俺は一番下っ端のジェイソンさんだから。ファウスト様の一番弟子ってだけの下っ端だから」

 

「言ったもの勝ちじゃないですかこんなの!」

 

「そうですよ〜。私たちは覆面水着団! 私はクリスティーナだお♣️」

 

「言ったもん勝ちにしてもその名前は無いでしょ! 何よ覆面水着団て!」

 

「うちのファウストさんは怖いんだぞー? 早くしないと、皆蜂の巣になっちゃうかもねー」

 

「うぅ……リーダーになっちゃいました……。しかもよりによってティーパーティーの方も一緒に……」

 

「ヒフ……ファウスト様。こういうのはノリが良い方が勝つんだよ。どうにかなっても俺が何とかするから、今は全力で青春を楽しめ」

 

「それはありがたいですが、絶対にこれは青春じゃありません!!」

 

 

 青春だよ、多分。遠足的なアレよ、多分。

 

 俺たちが他の行員と客を大人しくさせている間に、犬耳の子、砂狼シロコが行員を脅してバッグの中にサイン入りの書類を入れさせている。なんか現金も一緒に入ってる気がするけど。

 

 あのシロコって子。大人しいと思ったけど中々アグレッシブな子だった。何故銀行強盗の完璧なプランを携帯してるんだろう。普通にビビった。

 というかアビドス組自体、銀行強盗に特に反対意見が無かったので一般的な範疇は超えてるな。

 

 あと……

 

 

(なんかさっきから妙にキラキラした目を向けてくる子がいるんだけど……角的にゲヘナの子か? こういうのに憧れる時期?)

 

 

 俺の斜め後方でこちらに熱い視線を向けている、朱色髪のコートを来た女の子。

 朱色髪、コート、スナイパーライフル……どっかで聞いた組み合わせだな。どこだっけ。

 

 

「シロ……ブルー先輩! 例のブツは手に入った?」

 

「あ、うん。確保した」

 

「それじゃあ逃げるよ〜。全員撤収〜!」

 

「アディオ〜ス♤」

 

「怪我人はいなさそうですね……で、ではさよなら!」

 

「ファウスト様の慈悲に感謝するんだな!」

 

「いつまで言ってるんですか!」

 

 

 フハハ、ドタバタに紛れてヒフミも言うようになったじゃないか。

 何やら後ろで道路を封鎖だの、マーケットガードに連絡だの言ってるので、まだ一息つくには早いな。帰るまでが遠足ってな。

 

 

「ん、お待たせ、先生」

 

「"お疲れ様。怪我は無い?"」

 

「皆さん大人しくしてくれたので大丈夫ですよ〜」

 

「話してるヒマないわよ! 早く逃げないと!」

 

「先生は俺に捕まっとけ。今から全力逃走するから」

 

「"分かったよ。皆には無線で指揮するから"」

 

「おっけ〜。さぁさ、行くよファウストさん!」

 

「もうこうなったら最後までお供します!」

 

『その意気です! 現在道路が封鎖され始めています。皆さん、十分に警戒さてください!』

 

 

 そして、俺を除いた五人は安全な場所まで走っていった。俺は先生を守りながら全員のサポートって感じだ。

 全員が行ったのを確認し、俺は先生を背に担いだ。

 

 

「かっる!? アンタ普段何食べてんだよ!?」

 

「"え? 普通にカロリーバーとか、ゼリー飲料とか……"」

 

「もっと健康的な食事をしなさい!」

 

「"ルカはお母さんみたいだねぇ。とりあえず、皆を追おうか"」

 

「りょ、了解。……ちなみに体重は?」

 

「"この前測ったら50ちょっとだったかな"」

 

「もっと食え!!」

 

 

 ガリガリ過ぎるこの大人。俺より身長高いクセに、俺より20キロ近く軽いじゃねえか。

 全部合わせれば穿撃針六本より軽いとか……ちょっと不安になる。強く掴みすぎたら折れそう。

 

 

「ったく……あと、舌噛むなよ」

 

「"ん? 分かったよ"」

 

 

 俺は右袖から穿撃針とワイヤーを出し、またいつものように立体移動する。こうすれば皆の姿を俯瞰できるし、先生の指揮もしやすいだろう。

 

 

「"おー! スゴいね。こういう使い方も出来るんだ"」

 

「あんまりはしゃいでると舌噛むぞ。にしても、案外子どもみたいなとこあるんだな」

 

「"私はいつまでも少年の心を忘れてないよ。……向こうに大きいのが見えるね"」

 

 

 先生の向いてる方に目を凝らすと、確かに見えた。白とオレンジのゴリアテが。

 流石巨大闇銀行。あんなものまで用意してきたか。

 

 

「"ルカ、お願いできる?"」

 

「アンタも人遣いが荒い、ねっ!」

 

 

 俺は直ぐに空中でライフルを引き抜き、()()()()()()()()()()()撃った。

 轟音と赤いオーラを纏った弾丸はライフル本来の射程を超え、ゴリアテの装甲を一撃で破壊、直後本体も爆発四散した。

 

 

『わー! 何か爆発しましたー!』

 

「よし、壊した。戦車の装甲よりは柔いな。皆、このまま真っ直ぐ突っ走れば検問も突破だ。頑張れー」

 

『うひゃ〜、黒ひげ危機一髪みたいに吹き飛んでったよ』

 

『月に何回か来てくれる只の常連さんだと思ってたんだけど……』

 

『ん、金庫でも壊せそう』

 

『凄い威力ですね〜』

 

 

 シロコからの評価は喜んでいいのか分からない。あとアヤネちゃんは無言で引かないでほしい。

 

 

 その後、俺たちは先生の指揮もあり無事にブラックマーケットからの追っ手を撒くことが出来た。

 

 その際、誤ってバッグに詰め込まれた現金の処遇や、何故か追ってきていた朱色髪の子に絡まれたりした。

 

 やっぱりだったが、あの子が便利屋だったそうだ。あの子がねぇ。只の良い子に見えたけど。ゲヘナよりかトリニティにいそうな感じがした。

 あとちゃんと俺は覆面水着団の一員になってるらしい。死なば諸共ってか。

 ホシノも「普段はスク水が正装」とか余計なこと言って……。便利屋の子目ぇ剥いてたぞ。「貴方も!?」って目で見てきたぞ。

 

 

「それじゃあこの辺で。アディオス〜♣️」

 

「行こう! 夕日に向かって!」

 

「夕日まだですけど……」

 

「か、カッコイイ……!」

 

「君ホントに指名手配されてんの?」

 

 

 俺たちはその子を背に向け、夕日でもなく普通にその場を去った。

 

 

 

 

‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎

 

 

 

 

 ブラックマーケットを去った後、俺は成り行きでアビドスの校舎まで来てしまっていた。

 本当はヒフミに説教して連れ戻すだけのはずだったんだが、大事に首を突っ込んでしまったものだ。

 

 

「あー、悪いが書類の確認は俺抜きでやってくれ。流石に俺が見るのはマズイだろ?」

 

「ここまで来たら一蓮托生な気もしますけどね〜」

 

「立場を持つとそうも言ってられないんだよ」

 

 

 銀行強盗には加担したと言っても、覆面を脱いだ俺はもうティーパーティーの人間だ。他校の借金事情を盗み見るのは気が引ける。

 ヒフミはそういう立場が無いので、書類の確認には参加してた。お前も本来なら駄目なんだけどな。

 

 一通り確認し終わると、セリカが書類を机に叩きつけて憤っていた。

 

 俺の思っていた通り、アビドスが返済した利息は闇銀行に流れ、その一部が彼女達を襲撃していたヘルメット団に『任務補助金』として渡っていた。

 つまり、彼女たちは知らず知らずのうちに自らの首を締めていたということになる。この場合、締めさせられていたと言った方が正しいか。

 

 それに『任務』ということは、ヘルメット団は誰かに依頼されてアビドスを襲っていたということ。その依頼主は十中八九カイザーだろう。

 カイザーはアビドスに高額利子を叩きつけて金を毟り取る事が目的じゃない……何なら破産させる事が目的か?

 

 

(……何にせよ、コレ俺が聞いていい内容じゃ無かったな……)

 

 

 アビドスを中心とする問題は、色々根が深そうだ。

 

 

 

 

「皆さん、今日は色々ありがとうございました」

 

「俺からもありがとな。うちの後輩を不良から助けてくれて」

 

「こちらこそ、お二人を変な事に巻き込んでしまって、申し訳ありません」

 

「あ、あはは……」

 

 

 俺とヒフミは校門の前でアビドス組の見送りを受けていた。銀行強盗なんてした手前、アヤネの謝罪にヒフミは遠慮がちに笑うしかないようだな。

 

 そこで、眠そうな顔をしたホシノが一歩俺の前に出てきた。

 

 

「最後に聞きたいんだけどさー。ルカ君は何で私たちに協力してくれたの? 君にメリットとか一つも無いでしょ? そっちからすれば零細もいいとこな学校を助けたりなんかしてもさ」

 

「それは私も思った。銀行強盗にもノリノリだったし」

 

 

 まあ、当然の疑問だな。他校の生徒会の一人が、損得勘定無しにただ善意だけで協力してくれるとか、絶対何か裏があると考える方が自然だ。タダより怖いものは無いって言うしな。

 

 

「まず最初に言っとくと、打算とか恩を売るとかそういう考えが無かったわけじゃない。この場合はアビドスに対してじゃなくて、主に先生にだな」

 

 

 あとはカイザーが個人的に嫌いとか、闇取引を見過ごせない正義感とか、理由は様々だが……

 

 

「でも一番は……せっかくの学園生活が嫌な大人にすり潰されるなんて、そんなのハッピーエンドじゃないだろ?」

 

 

 結局のところ、コレに尽きる。

 借金返済に明け暮れている時点でどうかとも思うが、アビドスの生徒達は皆で協力してそれを行っている。返済出来るかは別として、それもそれで彼女たちの物語だ。

 だが、それが完全な徒労ならば話は別だ。それはただ、彼女たちの物語がカイザーという大人に消費されるだけ。

 

 そんなものは、断じてハッピーエンドではない。

 

 

「ま、俺のポリシーみたいなものだよ。誓って嘘は言ってない」

 

「……うーん、そんなクサイ台詞言われたら、信じるしかないね〜」

 

「クサイとか言うなよ。普段から言ってる俺がイタい奴みたいになるじゃんか」

 

「いつも言ってるんだ、そういうこと……」

 

「アハハ……確かに、ルカ様はよくこういう事仰りますよね」

 

 

 アビドス組も先生も、苦笑しながらも納得してくれたようだ。

 

 

「今回の件、一応持ち帰ってティーパーティーでも議題にしとく。けど、あんまり期待はしないでくれよ? 今までアビドスの事情を知ってて放置してたんだからな」

 

「ええっ!? ルカ様、アビドスの現況を知ってたんですか!?」

 

「ヒフミちゃんは純粋だね〜。でも、世の中は素直なだけじゃ回らないからさ」

 

「そういうことだ。情だけじゃ政治は出来ないってな」

 

 

 口惜しいが、政治とはそういうものだ。レッドウィンターやゲヘナのように、ある意味自由な校風ならまだ望みがあったのかもしれないが、トリニティは特に政治のドロドロした面が色濃い。

 変な政治をすれば批判は出るし、援助金だって何処から来てるんだって話だ。他校との関係は、ゲヘナに限らず難しいものだ。

 

 

「それに、うちからの援助を申し出ても、言っちゃ悪いがアビドスからは何も返せない。さっきの俺がそうだが、『タダより怖いものは無い』んだよ。俺の代は良くても、これからの代がアビドスに何をするか分からないから、軽い感じで手を出せないんだ」

 

「そ、そうなんですか……政治って難しいですね……」

 

「まあおじさんは、そういう話しづらいことを自分から言っちゃうルカ君はそこそこ信用してるけどね〜。よく政治に向いてないって言われない?」

 

「言われないな。俺がアビドスを援助したいって気持ちは本当だし、可能ならトリニティからの援助だって通すぞ。こっちは今ちょっとゴタゴタしてるから、その後になるがな」

 

「……うーん、そうなったら、内容次第かな〜」

 

「ちょっとホシノ先輩! そこは二つ返事でOKしなさいよ!」

 

 

 小鳥遊ホシノ……昔見た報告書とは大分違う印象だったけど、外部の者をとことん信用してないあたり、内面まではそんなに変わっていないのかもな。

 今だって、口では俺のことを『そこそこ信用してる』と言ってたが、全然そんな風には見えなかったな。まだまだ疑ってる人の目だ。

 

 いきなり会った他校の生徒会長を信用しろって方が無理あるけどな。逆に信用しきってるっぽい他の子達は、まだまだこういう場には慣れていないな。

 

 

「後輩ちゃん達は、おじさん達を見習いたまえっとことだな」

 

「うへ〜、そうだね〜。年の功なら、おじさん達は若人には負けないぞ〜」

 

「一つや二つしか変わらないじゃないの!」

 

「ホシノ先輩達をおじさん呼ばわりしたら、先生はどうなっちゃうんでしょうねー」

 

「"二人とも、あと10年経っても同じ事が言えるか楽しみだね"」

 

 

 せ、先生? なんか目怖くない? 気のせい?

 

 

「と、とにかく、俺たちはこれでな。トリニティに来ることがあったら歓迎するよ」

 

「はい、今日はありがとうございました」

 

「ん、また一緒に銀行強盗しよう」

 

「もうしませんよっ!」

 

「次もよろしくお願いしますね、ファウストさん☆」

 

「よっ、覆面水着団のリーダー!」

 

「闇銀行ならジェイソンさんも着いてくるから、その時は是非誘ってくれ。一番下っ端だからな」

 

「あなた、本当にトリニティの生徒会なのよね?」

 

「ルカ様もう私の事どうこう言えないですよ!?」

 

 

 ファウストさんが何やら言ってるが、ジェイソンさんがノリノリだから仕方ないじゃないか。案外銀行強盗って楽しいもんだったし、ファウストさんもそれなりに楽しんでたろ。

 

 にしても、今日は長い一日だったな。

 事件には巻き込まれた(というか巻き起こした)けど、おかげで収穫は色々あったから儲けものだな。

 

 俺たちは今度こそアビドスを去ろうと背を向けようとした。

 そこで、先生から俺に声がかけられた。

 

 

「"あ、ルカ。この後時間あるかな?"」

 

「ん? あぁ、大丈夫だが」

 

「"ヒフミには悪いけど……ルカと二人で話してみたくてさ。いいかな?"」

 

「……それは、願ってもないお誘いだな」

 

 

 俺の一日は、まだまだ長くなりそうだ。

 

 






 一つ、彼は結構なゲヘナ脳である。話し合いから始めはするが、話すより殴った方が速いと思っているし、取り敢えず殴り倒してから話し合う事もある。

 一つ、先生の食生活は終わっている。大体ホビーに金を使ってるせい。ミネと会えば0秒で殴り倒され救護するされし、セリナと会えばハイライトの無い瞳で迫られる。

 一つ、彼は近接戦闘が得意ではあるが、遠距離射撃も可能である。距離1キロくらいなら大体当たる。ただ目が疲れるのであまりやりたくはない。

 一つ、彼は『神秘』についてはよく分かっていない。ただ感覚では解っている為、銃弾に込める事も身体強化に使う事も、何となくで出来ている。

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