評価もつけてくれた! やったー!
何番煎じか分からないのに読んで頂いてありがとうございます。これからも私の書きたいように書いていきます。
高評価をつけてくださった、
☆10:単純思考さん
☆9:依宵さん
ありがとうございます!
俺はお茶が好きだ。
種類は問わない。紅茶でも緑茶でも烏龍茶でもなんでも来いだ。どれが嫌いとかない。全部好きだ。
トリニティにいる以上、常飲しているのは紅茶であるが1番好きなのは緑茶である。特に煎茶。百夜堂に行きたくなってきた。今週末にでも行こうかな。
とにかく、俺はお茶が好きなんだ。紅茶しか嗜まないトリニティの友達に紅茶以外のお茶も布教してきた。
その最たる例が、今ティーパーティー用のテラス席で一緒に茶をしばいている桐藤ナギサである。
「ズズ……うん、やっぱり百鬼夜行の方が美味いな」
「そうですか? 十分美味しいと思いますが」
「少し苦味が強い。百鬼夜行のはもっと茶葉特有の甘みを引き出せている。まだまだだな」
やはり煎茶は百夜堂のものに限るのか……? いやでも頑張っても月2回しか行けないのはそろそろ限界なんだ。体が煎茶を求めてるんだ。
こうなったら自給自足しかないと思い至り、百鬼夜行から仕入れていた茶葉で煎れてみたわけだ。
俺以外にも試験体がいた方がいいと思い、何度か百鬼夜行に連れて行ったことのあるナギサを選んだのだ。
結果は見ての通り、まだまだ修行不足だ。今度シズコちゃんに教わろうかな。
うんうん唸っていると、ふとナギサがこちらをジトッと見ていることに気付いた。
「どうした? 不味かったのか?」
「美味しいと言ったでしょう。……ただ、私が紅茶の淹れ方を教えた時と少し反応が違うのではないでしょうか」
「あ〜、それは……上達速度の差と言いますか……」
どうやら、俺が紅茶の淹れ方を習ってた時よりもやる気がありげなのが気に入らないようだ。
あの時はすんなり覚えられたからなぁ。単純に煎茶と紅茶じゃ入れ方が全然違って、俺に煎茶を煎れる才能が無かっただけだろうが……。
「紅茶はナギサが淹れ方を教えてくれただろ? 教え方が良かったんだよ。だから早く出来るようになったの」
「……そうですか。フフ、そういうことなら仕方ありませんね」
俺がそう言うと、ナギサは打って変わって上機嫌になった。なら良かったのだが、さっきは何がそんなに気に食わなかったのだろうか。
気にはなるが、微笑みながら湯呑でお茶を啜るナギサは幸せそうなので良しとしよう。
「そういえば、先日ミカさんと
「あ、あぁ。お願いする」
『2人で』の部分をやけに強調した気がするけど、気のせいだろう。
「それにしても、ルカさんの食べ合わせは相変わらず不思議ですね。普通マカロンと緑茶を同時に口に入れませんよ」
「意外と合うよ。好みは分かれるかもだけど」
「お作法的にはNGもNGですけどね。見る人によっては、どちらの文化に対する侮辱とも取れますよ?」
「失礼な。どちらにも敬意を持って食べてるよ」
今、テーブルには俺が持ってきた緑茶と和菓子類。ナギサが持ってきた紅茶と洋菓子類がまばらに置かれている。そして俺は近くにあったマカロンを緑茶で流し込んでいた。紅茶過激派のトリニティ生が見たら機関銃を持って突撃してきそうな絵面である。
百鬼夜行の生徒? あの子達は結構寛容だから大丈夫。過激になるのはお祭りくらいだ。
「俺が勝手にやってるだけだよ。だから大目に見てくれ」
「……ハァ、貴方は変わりませんね。昔から」
「そういうナギサは変わったな」
「え? 私がですか?」
「昔はこういうの、いつも怒ってたろ? いつの間にか無くなったよな」
「あぁ、そういう事ですか。……私も成長したということです。一々目くじらを立てては疲れてしまいますから」
半ば諦めたように言うナギサ。何やかんや言いつつも許すあたり、やはりミカの幼馴染だ。俺たちは2人ともあのお姫様志望に振り回される側なので、波長が合うのだろうな。この異文化交流お茶会も居心地がいいし。
「でもお煎餅と紅茶は流石に無いと思います」
「あれは俺も失敗したと思ったよ」
味覚も近い。一回この異文化食べ合わせやってみてほしいな。案外ハマるかもよ? 煎餅と紅茶以外で。
私が初等部の1年生になった時、それまで仲良くしていたミカさんとクラスが離れてしまった。
放課前に会えないのは少し寂しくはあったけれど、ミカさんは相も変わらず天真爛漫だったから、放課後に会えればその寂しさも自然と消えた。
ある時から、ミカさんが一人の男の子のことを話すようになった。
熾宮ルカ。話はお父様から聞いていた。キヴォトスでも前例を見ない男子生徒。そして絶対的中立を誇示する熾宮家の子息。ミカさんは名前を出してはいなかったけど、男の子という情報さえあれば直ぐに見当がついた。
その時は、単純に珍しいと思った。ミカさんはあまり人の話をしないから、同年代の子について私に話を振るのは初めてだったかもしれない。
話を聞けば、どうやらその人は何を言っても無表情で素っ気ない様子らしい。だから何とか笑わせるか何かしらの反応を引き出すために頑張ってるのだとか。
逆効果じゃないかとも思ったが、ミカさんが張り切っていたので見守ることにした。
……それから数週間後、
『あ、ナギちゃん! この子、前話してたルカ君! ルカ君、この子はナギちゃん! 可愛いでしょ?』
『ナギちゃん……ナギって名前なのか?』
『ミカさん……』
呼び出されたかと思ったら、唐突に彼を紹介された。しかも私をいつものアダ名で呼んだから、彼が勘違いしてしまっていた。思わず頭を抱えてしまったが仕方ないと思う。
『……桐藤ナギサです。ナギという名前ではありませんよ』
『ミカ、アダ名で紹介しても分からないぞ』
『ごめんごめん、うっかりしてたよ☆』
『まったく……あ、俺は熾宮ルカだ。よろしく』
『えぇ、よろしくお願いします』
彼の第一印象は、「人好きのしそうな人」だと思った。
笑顔は柔らかくて、声音は落ち着いている。ミカさんから聞いた話とは大違いだった。
ミカさんと違い、どちらかと言うと私と同じ、振り回される側と言いましょうか……何となく、自分と似たようなものも感じた。
それから、私たち3人はよく放課後に一緒にいるようになった。大体はミカさんが先行して、私たちが後を追う感じだったのだが。
楽しくはあったし、ミカさんの抑え役が増えてよかったとも思った。
……だが少し。ほんの少しだけ、当時の私は彼に仄暗い感情を抱えていた。
ミカさんの隣にいるのは自分だと思っていた。彼女を支えられるのは、自分しかいないと思っていた。
有り体に言えば、友達を取られた気がした事への嫉妬心だ。今思えば微笑ましくも、少し恥ずかしい記憶だ。
そんな理由から、私はルカさんとの距離を測りかねていた。努めて不自然にならないようにしていたと思うが、多分彼は私が彼を苦手にしている事には気付いていたのであろう。
だからきっと、あの時彼はあんな事を言ったのだ。
『ナギサってさ、紅茶淹れるの上手?』
『はい? まぁ、それなりに習ってはいますが』
『ちょっと教えて欲しい』
初等部2年生になった頃、彼は突然そう申し出てきた。ここで断るのも気が引けるので、休日に2人で会って教えることになった。
私も淹れ方を教わってはいるものの、人に教えられるほど上手いかと聞かれたら首を捻る程度なので、少し不安があった。
実際に教えることになった日、不得手で拙い私の説明をルカさんはとても真面目に聞いてくれた。
元々手先が器用なのか、教えた事は直ぐに出来るようになったし、作法に関しても特に言うことはなかった。
私は、そこでも黒い感情が胸の内に顔を出すのを抑えられなかった。このまま私の居場所が奪われてしまうような気がした。
そんな私の胸中を知ってか知らずか、彼は一通り淹れ方を教え終わった時、私にこう言った。
『ありがとな、ナギサ。おかげで上手に出来るようになった』
『……私から教えられることは、あまりありませんでしたけどね。……そういえば、どうして急に紅茶の淹れ方を?』
屈託のない笑顔に罪悪感を感じながらも、私は気になっていた事を聞いた。
それに彼は、「え゛っ」と表情を固めた後、しどろもどろになりながら何か言いあぐねている様子だった。
だが、直ぐに観念したように口を尖らせて話した。
『……いや、さ。何となく、ナギサが俺を避けてるような気がしたから……何か仲良くなる手はないかって、ミカと考えて……』
『み、ミカさんとですか?』
『ちょっとナギサの様子が変って言われてさ。それでこういう事を……あ、紅茶の淹れ方教わりたかったのはホントだぞ!』
予想外の事実に、言葉が出なかった。
勝手に避けて勝手に苦手にしてた人が、私の事を慮って休日を返上までしてくれたのか。
それじゃ、勝手にルカさんに嫉妬していた私が、まるで馬鹿みたいじゃないか。
『それと、ミカに言われたのもあるけど、俺自身ナギサとは仲良くなりたかったからさ。少しは距離縮まるかなって』
……いや、実際馬鹿だった。彼は、私よりもよほどできた人間だ。
彼は優しい人だ。こんな私の為にも動いてくれる。
もう嫉妬心は無い。私はルカさんには敵わない。
けれども、こんな私でも、彼が望むと言うのなら。
『……ルカさん、良ければなのですが。……また空いてる日に、2人でお茶会をしませんか? 私も、その、ルカさんと仲良くなりたいので』
『! あぁ! もちろん!』
パァっと顔を明るくしたルカさんに、もう1人の幼馴染の顔が重なった。
なんだ。自分と似てなんかいないじゃないか。
ルカさんはミカさんと同じ、私の大好きな太陽のような人だった。
それからたまに、2人でお茶会をするようになった。ルカさんは紅茶に限らず色んなお茶が好きだそうで、お茶会ごとに色んなお茶を持ってきた。
『ルカさん、これは?』
『百鬼夜行産の煎茶だ。紅茶とはまた違った良さがある。現地のはもっと美味しいぞ。あ、今度ミカも連れて一緒に行かないか?』
『3人では流石に危険ですよ。でもいつか行ってみたいですね』
『これは……紅茶ではありませんね。色は少し似てますが』
『烏龍茶だな、山海経産の。少しクセはあるけど美味いぞ』
『センブリ茶? 聞いた事がありませんね』
『飲めば分かる』
最後に関してはロールケーキの刑に処しました。
ともあれ、お茶以外にも奇抜な物を持ってきてくれる彼とのお茶会は、とても楽しいものだった。最初は紅茶と和菓子を一緒に食べることに苦言を呈したりしたが、何度目かでもう諦めた。
何より、ルカさんと話すのが楽しみで仕方ない自分がいた。
彼と話す中で、一つ気付いたことがある。
ルカさんは、「ハッピーエンド」という言葉をよく使う。口癖とまではいかないが、普通の人より口にすることが多い。
それについて、一度聞いたことがある。すると、彼は少し照れ臭そうに話してくれた。
『あー、この世界を物語としたらさ。俺はその主人公はそこに生きる人皆だと思ってるんだ。皆それぞれ自分の物語の主人公で、それらが束ねられてこの世界を形作ってるって思ってるんだ』
人生観の話だろうか。面白い例えだと思う。ルカさん自身は、『俺も、とある奴に言われてこう思うようになったんだけどな』と苦笑気味に零していたが。
『それでさ、俺はその物語をハッピーエンドにしたいんだ。全員じゃなくても、せめて俺の大切な人の物語は、幸せなものにしたい。ミカや、もちろんナギサもな』
そう言う彼の笑顔は、とても眩しかった。
彼は限られた人の幸せを願っている。それはきっと素晴らしいことだ。全てを救えなくても、大切な人は幸せにしたいと思うその心は、とても美しいと思った。
そして、その彼の「大切な人」の中に自分がいることが、堪らなく嬉しかった。
だから、せめてものお返しとして受け取って欲しい。
『……そうですか。でしたら、私もその助けとなるよう、貴方を支えます。物語は、必ずしも主人公だけが描くものではありませんから』
貴方が望むハッピーエンドが無事に迎えられるよう、私が支えよう。貴方が苦しくなった時、後ろで支えてあげよう。
安心して、貴方の思うハッピーエンドを目指して欲しい。
それが、私に出来る精一杯だから。
「ミカさん! 貴女ルカさんに何飲ませたんですか!?」
「え!? ルカ君の部屋にあった、ほとんど未開封の茶葉だけど!?」
「どのくらいの濃さですか!?」
「 たくさんあったから、眠気覚ましにって結構濃いめに煎れた!」
「ふむ、センブリ茶か。ルカ、君のことは忘れないよ。安らかに眠るといい」
「勝手に死なせないでくださいセイアさん! ルカさん目を覚ましてください! あぁもう徹夜続きだからって一気飲みなんてするから!」
「脳がふるえるぶぶぶぶぶ」
震えるルカさんの背を受け止めながら、私は心の中で絶叫した。
支えるというのはこういう意味ではありません!!!
一つ、彼のヘイローは6つの翼が連なって円を成したもの。色は中心が白で周りが赤のグラデーション。回転はしない。
一つ、彼はお菓子も作れる。主に和菓子。セイアからの受けが特に良い。
一つ、彼は百夜堂の常連であるため、看板娘には顔を覚えられている。勿論看板娘の素の顔も知っている。
一つ、彼は全ての主人公のハッピーエンドを目指している訳ではない。見える限り、手の届く限りの大切な人のハッピーエンドを目指している。