その天使はハッピーエンドしか認めない   作:苦闘点

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 書けたので投下。

 そろそろ日常回抜けようかなって思ってますが、まだまだ続く可能性もあります。行き当たりばったりです。お付き合いください。

 本日は二本立てです。


熾宮ルカは後輩たちと仲良くしたい

 

 

 『阿慈谷ヒフミに法なんて無い』

 

 

 俺は趣味が複数ある。

 

 一つはお茶コレクション。キヴォトス中にある様々なお茶を蒐集している。俺の自室はお茶専門店かってくらいの茶葉が置いてある。執務室にもカフェイン量重視のお茶が並べている。もう大体集めきってしまったのが最近の悩みだ。

 

 二つ目は散歩。6時間以上寝れた日の朝は必ず学園内を歩き周るし、何も予定が無い休日は宛もなくブラブラする事が常だ。

 この広いトリニティ自治区内でも、行ったことの無い場所の方が少ない。それでもこの前ミカと行ったカフェのような場所もあるので、飽きることの無いこの趣味は今後も続けていくつもりだ。

 

 三つ目は散歩と似たり寄ったりだが、他学園自治区への旅行である。主なのは百鬼夜行、山海経、ミレニアム。偶にゲヘナ、レッドウィンター。ラーメンを食べにアビドス、という感じだ。ただティーパーティーの俺が軽々しく他校に出向くのは外交問題になりかねないので、全てお忍びである。バレてるとこにはバレてるけど。

 

 

 そして四つ目、これは他3つと比べてマイナーと言うか何と言うか……。

 

 ……『モモフレンズ』というものを知ってるだろうか。キヴォトスに存在するファンシーキャラクターブランドなのだが、最近になって人気が出始めている。まだまだ知らない人も多いが、刺さる人にはとことん刺さるキャラが多い。

 俺もその『刺さる人』の一人であり、そのキャラの一つである『ウェーブキャット』を気に入ってグッズも程々に集めている。まだまだライトなファンだ。

 

 ……俺はファンとして同志には理解があるし、そいつが()()()事案をモモフレンズの為に起こしても、寛大な心で見逃す所存だ。

 

 

「…………な、なるほど。でしたら! 私の事も見逃してくださるのですね!」

 

「残念だったな! お前はもう『多少』のラインの遥か向こう側だ! 何なら法のラインもギリ跳び越えてるわ!!」

 

「ブラックマーケットに法なんて存在しませんよ!」

 

「そういう事じゃねえ!!」

 

「そっち行ったぞ! 追えぇ!」

 

 

 ─── 現在、俺は右手に女子生徒を抱えてブラックマーケットを飛び回っている。私服で。俺の後ろには銃を構えた大量の不良共が血走った目で追ってきている。

 

 俺は今日、休日にブラックマーケット近くの喫茶店に来ていた。治安という概念すら無い場所の近くにある事もあり、逞しい店主が営んでいる隠れ家的な所だ。

 そこのミルクティーを嗜んでいると、窓から見知った顔がブラックマーケットの方に歩いて行くのが見えた為、後を追った。

 

 そしてあれやこれやがあり、今に至る。

 いや何でだ。

 

 

「ペロロのグッズが欲しいのは分かるがなぁ! 何で闇オークションなんかに出る! そして何で競り勝っちゃう!?」

 

「す、すみません! でもこのペロロ様はスゴイですよ! 転売というのは許せませんが、2ヶ月分のお小遣いを使った甲斐がある価値ですよルカ様!」

 

「もっと計画的に使いなさい!」

 

 

 『ペロロ』はモモフレンズの中でもマニア人気が高く、最も熱狂的なファン(狂人)が多い。舌とヨダレが垂れた焦点の合ってない目が特徴的なキャラだから、そりゃそうだと思う。俺もキモイと思ってる。

 そのファン(狂人)たちが集う場所がブラックマーケットで開かれたのだ。グッズを勝ち取った者の漁夫の利を狙おうとするリテラシーの無い奴が大量に湧いてくるのは、想像に難くない。

 

 俺は左手から穿撃針とワイヤーを出し、街の建物にある信号や出っ張りに引っ掛けて擬似蜘蛛男みたいな真似をしている。ツルギが薦めてくれた映画を見といて良かった。

 

 

「ちっ! あの武器、まさか『破壊の六翼』か!? 何でこんな場所に来てるんだ!」

 

「えっ!? ルカ様、ブラックマーケットによく来るのですか!? あ、そこ右です!」

 

「こっちのセリフだ自称平凡女子高生! 平凡な子はブラックマーケットの地理を把握してたりなんかしません!」

 

 

 抱えている生徒は、トリニティ2年生阿慈谷ヒフミ。甘栗色のツインテールをした、ペロロのリュックを持ってる以外は普通の女の子だ。

 しかし普通なのは見た目だけだ。やってる事は普通とはかけ離れている。今の状況を見れば一目瞭然だ。

 

 またヒフミは、何故かナギサにひどく気に入られている。普通にしてれば天真爛漫な女の子だからな、ナギサが気に入りそうな人種だ。

 まあ蓋を開ければ、厄介事を起こしやすく巻き込まれやすいペロロ狂なんだがな。ナギサが知ったら泡を吹きそうだ。

 

 その後俺たちは無事にブラックマーケットを抜け、トリニティに帰ってくることができた。

 

 

「ふぅ……ありがとうございます、ルカ様。おかげでこのペロロ様を守ることができました!」

 

「まず自分の身を案じてくれ。後生だから」

 

「ア、アハハ……」

 

 

 何でこの子こんな平然としてんのかな? さっきまでブラックマーケットにいたよな君。やっぱり自称平凡じゃねえか。あと誤魔化すんじゃない。

 そこで俺は、まじまじと自分を見ているヒフミに気付いた。

 

 

「どうした? そんな見て。さっきのワイヤーの事か?」

 

「い、いえ、そうではなくて……ルカ様の私服姿が珍しくて……も、申し訳ございません!」

 

「あぁいやいや、別にいいよ。私服はそりゃ、休みだしな。逆に何でヒフミは制服着てるんだ?」

 

「校則では『他自治区に行く際は制服を着用する事』とあったので……」

 

「律儀だねぇ、そんなの無視していいのに」

 

「か、仮にも生徒会のお方が……」

 

 

 他自治区にあのティーパーティー用の白学ラン着てったら、最悪政治問題になる。今着てる白パーカーくらいが丁度いいんだ。

 お前生徒会じゃないのかって? 校則の大局を見失ってないのだよ俺は。

 

 それは置いといてだ。

 

 

「今日のこと、流石に学校に報告しない訳にはいかないんだよな……」

 

「……やむを得ませんね」

 

 

 そう言ってリュックの中をガサゴソと探るヒフミ。

 何だ? もしかしてワイロか?

 全く……俺は今私服だけどティーパーティー、しかも監査だぞ? そんな物受け取るわけが……

 

 

「百鬼夜行限定版・ウェーブキャットさんの二重螺旋湯呑みです」

 

 

 俺は買収された。

 

 

 

 

‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎ ‪✝︎

 

 

 

 

 『浦和ハナコに体裁なんて無い』

 

 

 俺は学園で唯一の男ということもあり、言動にはかなり注意を払っている。具体的にはセクハラ発言に細心の注意を払っている。

 やってしまったら終わりなんてもんじゃない。社会的死だ。この世の全てが敵にまわると言ってもいい。

 

 この私見を話したところ、ミカからは「考え過ぎじゃんね」と言われ、ナギサからは「その程度でルカさんの信用は落ちませんよ」と言われ、セイアからは「君の為人(ひととなり)を知ってる者なら何の問題も無いさ」と言ってくれた。

 

 そう言ってくれたのは大変嬉しかったが、同時により気をつけねばならないと思った。

 彼女たちからの信頼を裏切るようなマネは出来ない。より一層誠実な言動を心がけねばならない……!

 

 そう、何があろうと俺の口から猥語を飛び出させる訳にはいかないのだ……!

 

 

 

「ふと気になったのですが、ルカさんは体育の時は何処で着替えているのでしょうか。男子更衣室などありませんし、普通の生徒は教室で着替えますよね。もしかしてクラスメイトと同じ場所でその逞しいモノを誇らしげに見せているのでは……」

 

「普通に男子トイレだよ、あと『モノ』じゃなくて体って言え」

 

「体……ま、まさか全r「オーケー、それ以上言うな?」

 

 

 

 けど話振られるのは違うじゃんね!!

 

 俺の口からピンクい言葉を出させようとしてくるこのピンク髪の女の子は、浦和ハナコ。トリニティ2年生の俺の後輩である。今おちょくられてるのは俺の方だがな。

 

 彼女は会う度俺にこういう話をしてくる。毎回俺の口から下ネタを発させようとしてくる。下手に語彙力と会話力が高いので、回避するのに無駄に疲れる。

 ……何で後輩から下ネタを言わせられないようにする為に疲れなきゃならんのだ。

 

 

「ウフフ……♡ しかし、男子トイレですか。存在したのですね」

 

「入学する時に作ってもらったんだよ。無いと不便なんてもんじゃないからな」

 

「作って……幼気な女子高生に自分のトイレを作らせるとは、ルカさんは中々上級者ですねぇ……」

 

「業者のロボットの人だよ! 生徒に作らせるわけないだろ!」

 

 

 コイツ、会話の内容から下の話に持ってくのが早過ぎるだろ。頭の回転速度おかしいんじゃないか。

 

 ハナコは俺に下ネタを言わせるのが目的というよりは、俺を揶揄う方が主な目的な気がする。我ながらいい反応を返してくれちゃってるのを面白がってるんだろうな。先輩の威厳はどこに行った。

 

 

「ハァ〜、お前、何処でその知識量身に付けてるの? 俺でさえ最近エロ本の存在を知ったんだけど」

 

「待ってくださいどういう事ですか!? ルカさんもとうとう自分の欲望に正直になったのですか!?」

 

「ただの事故だよ興奮するな!」

 

 

 エロ本という言葉に興奮したハナコを何とかして落ち着かせる。……興奮ってそういう事じゃないからな。「ハナコが興奮してる」と言うとソッチの意味に聞こえてしまうの、一種の呪いだろ。

 

 あと別にエロ本の存在を知ったからといって、過剰に興味を持ってなどいない。この前ブラックマーケットに行った時ちょっと目で探しはしたが、その程度だ。誓ってそれ以上の興味なんて抱いていない。

 

 

「フフ、それはそうと何処で知識を付けているのか、でしたか。……ルカさんは『カーマスートラ』という本を知っていますか?」

 

「大体分かったから詳しくはいいや」

 

「もう、いけずですね」

 

 

 なに最古に近い性愛論書を性の教科書にしてんだ。古代語読めんならもっと有効的に使え。

 

 

「ウフフ、やはりルカさんとお話するのは楽しいですね。あ、でも最近はマリーさんとも話したんですよ。あの子も可愛い反応をしてくれました」

 

「マリーを汚すんじゃないよ!」

 

「あら、でもお友達にはなれましたよ? ……正直少し心が痛みました」

 

「……後ろ暗いもの持ってる奴ほど、マリーのあの笑顔はクリーンヒットするよな」

 

 

 ハナコにダメージを与えるとは、マリーの光属性が強過ぎる。

 にしても、ハナコに友達か。

 

 

「……ま、良かったじゃないか。友達ができて」

 

「……フフ、親のような事を言うのですね」

 

「だとしたら手のかかる子供過ぎるな」

 

 

 ハナコは普段はこんな感じだが、その実とても高い潜在能力を持っている。

 1年生の時点で3年生のテストを全科目満点回答、シスターフッドからスカウトされ、ティーパーティー次期候補と目されていた。

 しかし、それ故に彼女はトリニティの『影の部分』にこれ以上なく晒された。

 

 ……俺が唯一思っている、トリニティの嫌っている点だ。

 

 

「私が子供でしたら、もっと好きに使っていいのですよ? 放って遊ばせておくのは惜しいでしょう」

 

「否定はしないよ、ハナコにそういう価値を感じてるのは確かだ」

 

 

 ハナコは派閥に属しておらず、かつ能力の高い子だ。

 俺がティーパーティーの監査になった時、真っ先に俺の補佐の候補となった。

 派閥に属するのが嫌なのだとしても、それなら大丈夫だろうと。

 

 けどその案は、俺が自分で蹴った。

 

 

「子供は親の道具じゃないからな。お前が好きなようにするのが1番なんだよ。俺のとこにいちゃ、守れはするけど害が離れる事にはならない」

 

「……やっぱり、親のようですね。ちょっとイラッとします」

 

「嫌だったか?」

 

「……ウフフ、いいえ」

 

 

 ハナコの笑顔は、ティーパーティーのような場所には相応しくない。

 ハナコのハッピーエンドは、俺がいる場所ではなし得ない。

 だからこうやって話してやって、いつかハナコがハッピーエンドを見つけられる居場所を見つける助けとなってほしい。

 本当に親みたいな事を思ってるな。

 

 

「はいはい、この話終わりな。親とかガラじゃない」

 

「そうですか? ルカさんは良いお父さんになると思いますよ。もちろん、夜の方でも……♡」

 

「平常運転に戻ったようで安心だよ。…………ところでさ、ずっと触れてなかったんだけど……」

 

 

 今更であるが、現場状況を整理しておく。

 ここはトリニティ中央図書館の一角。人はあまり寄り付かないので、声を出しても問題ない。

 

 で、俺はハナコとずっと角のところで話している。

 

 ……ハナコの顔だけが本棚の影から出てる状態で。

 

 

 

「何でお前ずっと体だけ隠してるんだ?」

 

「………………ウフフ♡ ルカさんもお好きですね♡」

 

 

 

 コイツはホントにさぁ!!!






 一つ、彼は実はウェーブキャットの抱き枕を持っている。けど使ったら戻れなくなりそうなので、置物になっている。

 一つ、彼の私服は大体ティーパーティーの他3人が選んでる。皆まともな物を選んでくれるが軒並み高い。このパーカーも実は結構な値段がする。

 一つ、彼の性知識は大体がインターネット由来。ちゃんとそういう欲はあるし悶々とする事もあるが、全て理性で押し潰している。

 一つ、彼はハナコの露出癖をまだ知らない。言動だけで留めてると思っている。しかし知る日はそう遠くないかもしれない。
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