タイトルは決まっていません   作:naow

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作品説明の通りです。


タイトルは決まっていません

 魔獣が跋扈する森林を抜抜け、そこに広がるのは荒野。

 植物の姿は極端に少なく、名も知れぬ雑草が小さく、僅かに点在するのみ。

 

 目指す先には、魔族を統べる王の居城が遠く小さく、黒い影となって屹立している。

 本来はあの城を守る兵力も、大部分が別の戦地に集結している。

 いま、あれを守るのは最低限の兵力、その筈だ。

 

 魔王討伐、そこに送り込まれた冒険者の群れ、そのひとつ。

 

 国王の呼び掛けに応じ、ある者は名誉を求め、ある者は報酬だけを目当てに、或いは己の武を磨くため、様々な理由で戦場に放り込まれた、通称「勇者予備群」

 

 国を救えば勇者として称えられるのだからと雑に付けられた、彼らを一纏めに括った通称である。

 予備隊とは言うものの、それはあくまで勇者になるための予備の群れという意味であって、決して遊ばされている訳ではない。

 むしろその目的から、魔王軍との最前線や、或いはそれを超えた先、魔王城直接攻撃を仕掛ける、或いは暗殺の為に潜り込むなど、事更に危険な任務を買って出ているのだ。

 

 一番手柄はもちろん魔王の討伐だが、それを支えるのもまた功績である。

 

 魔王軍のいち部隊との交戦を終え、死体も見えない所まで移動して一息ついた彼らもまた、そんな予備隊の一員であった。

 

 彼らは王国軍と魔王軍のぶつかり合いの隙を突いて魔王城に強襲を掛けようとしたのだが、その目論見は甘かったのだと彼ら自身が痛感していた。

 最低限の守りしか残していないと聞いていた筈なのだが、それは厚かった。

 

 連戦に次ぐ連戦。

 名だたる将は居なかったが、相手の士気は高かった。

 蹴散らすばかりで済めば良かったが、場合に依っては目眩ましを利用して身を潜め、混戦を避けて身を潜める事も度々あった。

 

 達成すれば勇者の称号が得られる、そんな浮ついた気持ちはすでに誰にもない。

 強敵との死闘を幾つも超えて此処まで辿り着いたものの、それだけで仲間は全員疲弊している。

 回復のためのアイテムも残り僅か。

 

 リーダー格の戦士カイルは、迷っていた。

 

 これ以上進むのは厳しい。

 

 だが撤退しようにも、転移の魔道具はこれまでの戦闘で、未使用のまま破損してしまった。

 そうであれば、転身して来た路を戻るしか無いのだが、それをするのも難しい。

 

 こうなれば、役立たずを切り捨てて……囮にするしか無いか。

 

 このままでは、全員が生きて帰ることは不可能。

 逃げるための切り札はもう一つ有るのだが、それを使用するには条件がある。

 その条件を満たす為には、パーティメンバーを除名……追放しなければならない。

 

 だが、今切り出した所で、仲間の誰も納得はしないだろう。

 その気持はカイルにも理解出来る。

 だから、彼自身も悩むのだ。

 

 どうしたものか。

 

「フッハハッ。こんなところで辛気臭い顔を並べて、勇者を目指す者達が何をしているのだ?」

 

 疲弊し、悩むカイルの脳だが、突然響いた声に対する反応は早かった。

 気配を感じる前に、声が聞こえた。

 

 慌てて立ち上がり、反射的に剣を抜き放つが、疲労した身体(からだ)()()が放つ圧力に負けて後退りしそうになる。

 これまでに、強敵には出会った。

 何とか勝利し、或いは退けることで此処まで進んできたが、今目の前に居るのはそれらとは比較にならない、そう理解した。

 

 それは、話に聞く魔将のどれかか、或いは。

 

「人間が小賢しい策を弄して我が居城に迫っているとは聞いていたが、それももうお前たちが最後だ。どれもが私が出向くまでも無かったのだが……お前たちはどうかな?」

 

 身体(からだ)が震える。

 今、眼の前の女の姿をした圧力の塊は、我が居城、と言った。

 

 ちらりと視線を横に素早く走らせれば、仲間達も戦闘態勢に入っている。

 入っては居るが……誰もが、顔色を失くしている。

 

 荷物持ちのヘンリーも、剣を構えている。

 アレを相手にしては後方も安全な場所も無い、そう感じたのだろう。

 

 良い判断だ、カイルは場面を忘れ、小さく笑う。

 戦士として一端になりたいと押しかけてきた少年が、この場面で戦士の顔をしている。

 

 実力はもちろん足りていないが、この存在の前ではカイル自身も実力不足だ。

 ヘンリーもそんな事は百も承知で、その上で逃げる事ではなく、最後まで共に在ることを選んだのだろう。

 

 ――生意気なツラで、格好付けやがって。

 

 小さな勇気に背中を押され、カイルは視線を女……魔王と合わせる。

 覚悟は決まった。

 

「オイ荷物持ち! 生意気に前に出てんじゃねえ!」

 

 そうとなれば、急がなければならない。

 安全に逃げる為に。

「役にも立たねえクセに、でしゃばりやがって! ヘンリー、テメェはクビだ!」

 

 突然の宣言に、当のヘンリーはおろか、他の仲間たちも驚いて顔を向ける。

 奇妙な状況に、魔王もまた、何やら考え込むような表情で事の成り行きを見守る構えのようだ。

 

 カイルは不遜な表情を心掛けながら、そんな魔王から目を離しはしない。

 心変わりをされたり、何よりもカイルの思惑に気付かれては意味がないからだ。

 

「ヘンリー、お前をパーティから除外する!」

 

 勇者候補の、魔王に挑む一団には、とある成約の魔法が課せられていた。

 パーティから除外された者は、即座に王都へと、強制的に帰還させられる。

 力無いもの、或いは瀕死の重傷を負ったものを、戦線から離脱させるために。

 

「えっ!? ちょっと待って! 僕はまだ、一緒に……!」

 

 反論、と言うよりも、懇願するように手を伸ばす荷物持ちの少年は、全てを言い終わる前にカイルによってパーティ登録を解除され、そして光とともに消え去る。

 回復士も、魔導師も、武闘家も、なにか言いたげでは有ったが、それぞれが言葉を飲み込んだ。

 カイルの思惑を汲み取ったのだ。

 

 ヘンリーは、とても良く働いた。

 掛け替えのない仲間だと、全員が胸を張って言える。

 

 だからこそ、今、逃さなければ。

 誰も、今この場で、彼を護る余力は無いのだ。

 

「……リィナ! お前もだ! ダグザも、ケーラもな! お前ら全員、まとめてクビだァ!」

 

 だが、カイルの続けて放つ言葉に、全員が目を見開く。

 

「馬鹿な! 正気か貴様!」

 魔導士のケーラが、いつもの冷静さを忘れて声を上げる。

「俺達全員を!? そんな事したら……!」

 武闘家のダグザが、眼の前の敵を忘れてカイルを見る。

「何を考えているんです!?」

 自分を包み込むように現れた光の粒子に、回復士のリィナが戸惑う。

 

 離脱の光に包まれているということは、パーティから除外されたということ。

 その事を理解して、3人は改めてカイルに手を伸ばすが、届かない。

 

 それは、既に発動してしまったのだ。

 

「へッ! 役立たず共は、とっとと帰って鍛え直すんだな! 魔王を倒して勇者になるのは、俺だけで充分なんだよ!」

 

 そんな仲間に向けて中指を立てて見せ、顔を歪めてせせら笑う。

 

 仲間の追放などは、嫌われ者のすることだ。

 だからせいぜい嫌われてやろう。

 

「馬鹿が! 考え直せ……!」

 

 ケーラの叫びが、そして仲間たちの姿が、光に呑まれて消える。

 残るのは戦士と、魔王のみ。

 

「……貴様、私に単身で勝てるつもりか?」

 

 事の成り行きを見守っていた魔王に、しかし戦士(カイル)は、その傷ついた身体を押して、憎々しげな笑みを貼り付けたまま答える。

 

「勝てるワケねえだろうが! だけどな、人間をナメるんじゃねえぞ魔王!」

 

 彼は死を覚悟していた。

 全員で逃げようとした所で、素直に逃して貰える訳もない。

 

 ならば。

 

 魔導士(ケーラ)は魔法の探求を続け、今や人間では最強の魔法の使い手と言っても過言ではない。

 彼女なら、さらなる深淵を追い求め、力を手にするだろう。

 

 武闘家(ダグザ)は、戦士である彼に匹敵する戦闘能力を持っているし、彼よりも冷静だ。

 彼よりも良く仲間を纏め、必ず全員で強くなって此処に帰ってくるだろう。

 

 回復士(リィナ)は、仲間を思いすぎる。

 此処に残れば自分を守って死ぬだろうが、この先の戦いにこそ、彼女の力は必要だ。

 

 戦士見習い(ヘンリー)はその境遇に文句を言うこともなく、時には後衛職を護る盾として、時にはアイテムを駆使して仲間たちを良く支えた。

 根性も有るし、彼なら良い戦士になれるだろう。

 

 皆が、優秀だ。

 

 だから、ただリーダーと言うだけでふんぞり返っている自分こそが、切り捨てられるべきなのだ。

 

「人間は……あいつらは、強くなって必ず此処に戻る! せいぜい怯えて暮らすんだな!」

 

 疲弊した身体は、それでも尚、力強く彼の意思と剣を支えた。

 空元気と偉そうな態度だけで、よくもまあこんな所まで来れたものだ。

 カイルは自嘲する。

 

「ふむ。なるほど、侮ることは出来ん、と言うことだな……。ならば戦士よ、その覚悟を見せよ」

 

 こうして、仲間を追い出した戦士がひとり、魔王との最後の戦いに挑むのだった。

 

 

 

 王城は、混乱の最中にあった。

 魔王を倒す切り札として送り出した一団のうち、4名が強制帰還を果たし、その傷ついた身のままで王に直訴に訪れたのだ。

 

 勇者予備群を確実に魔王に当たらせるため、王国は兵を挙げ、魔王軍とぶつかっている最中。

 

 そんな中、あるパーティのうち4人が帰ってきたとなれば、何事かと言うことになる。

 事情を訊きたい者と急いで戦場に戻りたい者、双方の思惑が一致した結果、一行は王の前へと出ることが叶ったのだ。

 

「……では、戦士カイルは。疲弊し傷ついたお前たちを逃がすために、一人で残ったと言うのだな?」

 

 王の言葉は、深い溜息に埋もれる。

 脳裏に浮かぶのは、無礼で生意気な戦士の面影。

 勇者予備群の中でも特に目立つ訳でも無かったのだが、その不遜な態度の中、その眼差しが印象に残っていた。

 

 真っ直ぐな想いを、不遜さで隠したような戦士。

 

「……はい。彼は……恐らく死ぬつもりで……」

 

 魔導師が言葉を詰まらせ、うつむく。

 そんな姿を見て、王は戦士の英断を褒めるべきか、独断を咎めるべきか悩む。

 

 仲間を護るための行動としては正面から褒めたい、だが、軍事的に見れば、王国軍はほぼ全力で魔王軍に対している真っ只中である。

 

 彼らの回復を待ち、そして再び彼らが魔王の城に近づける隙が今更見いだせるか、甚だ疑問なのだ。

 

「王様! でっ、伝令です!」

 

 悩む王の耳に、謁見の間の入口で叫ぶ兵の声が届く。

 

「貴様! 無礼であろう! 弁えよ!」

 

 王の傍らで、近衛兵長が声を荒げる。

 それを手で制すと、王は改めて顔を向けた。

 

「良い。急ぎの報なのだろう。述べよ」

 

 王の言葉に、伝令を携えた兵は謁見の間へと立ち入りを許され、進み出て跪く。

 

「前線より伝令です。魔王軍が引きました。魔王の命令で、全軍が撤退を開始したと」

「なんと!?」

 

 俄には信じられない言葉に、さしもの王も耳を疑う。

 

「勇敢なる戦士の生命(いのち)に免じて、此度は兵を引くと」

 

 魔王と相対し、仲間を全て逃した戦士の存在。

 とある戦士の命懸けの戦いに感銘を受けて、魔王が兵を引いたという報。

 

「畜生……あの馬鹿が……! 英雄になっても、死んじまったら意味が無いだろうが……!」

 

 武闘家が、王の前に頭を垂れながらも、殺しきれなかった感情が言葉になって迸る。

 この場の誰も、その無礼を咎める事は無かった。

 誰もが、理解したのだ。

 

 戦士が、王国の危機を救ったのだ、と。

 

「冒険者達と、前線の兵からの報。無関係とは言えますまい。彼らは、やり遂げたのです。束の間の平和とは言え」

 

 感極まり涙を浮かべる兵をちらりと見て、そして戦士の仲間たちの慟哭を目にして、王の傍らで、宰相が呟く。

 王は天を仰ぐように顔を上げ、目を閉じて祈りを捧げる。

 

 人間と魔族との戦いの歴史に訪れた、それは最初の、そして重要な始まりだった。

 

 

 

 

 

 というような話を読みたいです。

 でも、僕にはこの続きは書けないです。

 この先は、束の間の平和の間になんとかいう王国が兵力を蓄え、戦士の仲間たちは鍛え上げて魔王へのリベンジを目指すのでしょうか。

 

 或いは、実は戦士は魔王に気に入られて生き延び、魔王軍で何やら面白おかしい騒動でも巻き起こすのでしょうか。

 

 どっちにしても僕にはハードルが高いです。

 誰か書いてくれないかなあ……もう、似たような話は何処かにあるのかなあ……。




誰も書きたがらないかなあ。
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