前世モーレツ系だった僕は今世でも懲りずに爆走する   作:メダカにジャム

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閑話の類なのに何故か筆が乗ってしまった……。
・株式会社:会社はあっても、必要があれば貴族という大資本家が丸ごと買ってしまうような世界で、所有と経営の分離は王国ではまだ実用化されていないと考えられるので採用した独自設定。リカルドが法務閥に働きかけて既存の規則を整理する形で立法させた法律。これがないと御前会議が爆発する。


レシピの真実

 王立学園入試の合格者が発表された日から数日後の放課後。フェイルーン・フォン・ドラグーンは王都のドラグーン侯爵邸に帰っていた。当初の予定では、週末までは貴族寮で過ごして新たな学友と親交を深めつつ、特に上位クラスで入学を果たした人材の印象を、祖母であるメリア・ドラグーン侯爵へと報告し、今後の方針をすり合わせる予定だった。だが、メリアより今晩時間が空いたので、予定を早めて近しい者たちで夕食を共にしようと伝言が入った。 王立学園入試が終わり、春の社交シーズンも最盛期のこの時期に、侯爵である祖母が急に時間が空く、などという事がない事は明らかだ。 当然、すぐにでもフェイに確認すべき用件ができたため、無理に予定を調整したとみて間違いないだろう。 そしてその用件とは、言うまでもなく。

 

「やぁフェイや、よく来たね。Aクラスでの合格おめでとう。流石は十二歳にして名門ドラグーン家のフォンを私から引き継いだだけの事はあるねぇ。私も鼻が高いよ」

 

 家令の真っ青な顔がメリアの笑顔の仮面の下が噴火寸前であることを見抜いていた。他のダイニングテーブルにつく、ドラグーン地方に仕える幹部達も似たような顔つきながらフェイルーンの合格に祝辞を述べる。フェイはニコニコ笑いながらメリアが促したダイニングテーブルの自分の前の席をスルーして当主が座るべき所謂お誕生日席に座った。学園内での政治力を強化することを目的に、当主の位はフェイに譲られているとはいえ、王の承認によって世襲される侯爵位は未だメリアが保持しており、ドラグーン地方を実質的に掌握しているのは、ドラグーン地方を数十年牛耳る『女帝』、メリア・ドラグーンである。 そのメリアを下座に置いたとあれば、余計な軋轢が生じないとも限らない。 が、フェイはそれを毅然と無視してのけた。

 

「ほう?」

「悪いね、お祖母様。席の空きが無いんだ」

 

 そう言って指を鳴らすと、音もなく一人の小柄な少年が入ってきて、一礼し、メリアがフェイに勧めた席に代わりに座る。

 

「どうも、フェイ殿からのお土産のおまけでございます」

 

 ギロリとメリアが家令を見やる。家令は完全に真っ青で知らないと首を横に振る。

 

「ぷっ、彼の名乗った通りだから責任はお土産を持ち込んだ僕のものさ」

「……随分と驚かせてくれるじゃないか、フェイ」

「また随分とご機嫌斜めだねえ」

「ふん!当たり前じゃろう。国中が行方を見守っておる王立学園入試で、全く無名でありながらとんでもない新星が2つもドラグーン地方の同じ片田舎から現れた。片や実技試験トップ評価を獲得するばかりか、あの王国騎士団第三軍団軍団長、『一瀉千里』デュー・オーヴェルを模擬戦とはいえ撃破し、その後もうちのパーリ・アベニールを一蹴、ザイツィンガーの小僧と引き分けて、更には学力不正判定──しかも四科目不正判定を覆して、Aクラス合格を果たした。もう片方も王国騎士団団員の試験官、騎士団きっての剣の名手を相手に剣を切断しての実技試験推定2位を取り、挙げ句の果てには王国騎士団仮団員最年少記録を更新しながらも本人は何故か官吏コース。あやつらは誰じゃ、ドラグーンの隠し玉の情報が欲しいと迫られて、私がここ数日でどれだけの恥を搔いたか……。お前、事前に摑んでいたらしいね……。その二人の事を。なぜ私に報告がなかったのか説明してもらおうかい、そこのおまけがフェイの荷物に化けてまで来た理由も含めて」

 

 水を飲み一旦クールダウンするメリア、しかしながらその目は爛々と輝いていた。

 

「多分お祖母様は前提となるこの情報を持っていないと思うから、まずはそこから埋めようか。リカルド・キサラギの本業はあのローゼリア・ロヴェーヌの相棒、魔道具工房RickyRoseの副所長で、魔道具士としては同じ人に師事した僕の弟弟子にあたるよ。僕が開発した魔道具の試作品のパーツの2割は彼がバイトしているジャンク屋で彼にオーダーメイドしてもらったものさ」

 

 その言葉にメリアは唸らされる。これがリカルドの入学からもう少し日にちが経っていたら、フェイが何も言わなくても拾えていた情報だろう。だが、現時点では王都で拾い切れる情報ではない。彼女の従者のセイレーンが両者の紐付けを出来ていないのだから。

 

「あんたにそう言う友人がいたのは知っていたよ。……それが王立学園で何の前触れもなく再会したってのかい?」

「一応官吏コースの実技試験で見かけたからね。思わず人違いかと思って慎重に対応せざるを得なかったよ。だってリカルドは王立学園の受験資格を持っていなかった筈なんだから。あの言葉、嘘じゃないよね」

 

 その言葉に一同へ激震が奔る。王立学園はその門戸を広く国民に開いている。が、当然ながら将来の王国幹部を目当てに開いているそこに賊を入れるわけには行かない以上、成績さえ良ければ誰でもという訳には行かない。受験資格の時点で弾かれるとはつまり、彼の出自が余程悪いということだ。

 

「ええ、相違ありません。三親等以内の重犯罪者等の存在に引っ掛かっていました。ちょっと副業をやっている間にどうにかなりましたので試しに受けてみたら通ったというご理解で結構です」

「副業、ねえ?騎士団仮団員最年少記録のタネはそれかい。で、何なんだい、そのタネは」

「申し訳ありませんが、高々一侯爵風情にこのタイミングで話せる事ではありませんので」

 

 確かに重犯罪者等の存在による受験資格喪失に対して、例外的に免罪される方法は存在する。しかしながら、それは埃を被った抜け道であり、三親等以内の者による王国への著しい貢献が要求される。間違っても普通ならば平民に稼げる功績の質量ではない。普通に副業とやらが一番怪しいのだが、それを断る文句に高々一侯爵風情と目の前で言い切るのは傲岸不遜にも程があるとばかりにドラグーンに仕える幹部達が爆発する。

 

「貴様、御館様の前で平民の分際で一侯爵風情とは何様だ!?」

「フェイ様を騙す山師め、成敗してくれる!」

「御館様、直ぐにご指示を!」

「お黙り」

 

 爆発はメリア自らが一喝して鎮火した。リカルドは顔色一つ変えずに出された茶を飲みただずむ。

 

「このタイミングでは、ねえ?そのタイミングとやらは何時だって言うんだい?」

「もうじきに、社交シーズンが終わるまでにはと申し上げましょう。家令の方は心配なさらずとも、そのタイミングのために閣下の予定を新しく調整する必要はありませんよ」

「ほほう?」

 

 春の社交シーズンで分単位の予定が刻まれている侯爵を相手に、新しく予定を調整する必要が無いと言う。その時点で何があるのかはある程度絞り込むことが出来てしまう。

 

「僕もこんな異常な存在を領民として普通に受け容れてくれた大恩がロヴェーヌ家にありますからね。奥様は初産で乳の出が悪かった母の代わりに捨てるほど余るからと僕の乳母になってくれたぐらいですし。そこに迷惑をかけない為にも、閣下が寝て待っていられる様に手を回すぐらいのことはやりますよ」

「へー、アレンと乳兄弟ってのは初耳だなあ。普通逆だけど、ある意味らしいと言うべきなのかな?」

「私が寝て待つにはちょいと情報が足りないねえ」

「若様のことですか?」

「当たり前だよ、あやつを覚醒させたという謎の家庭教師ゾルド・バインフォース、あやつの異常な戦闘能力の秘密、何も知りませんじゃ流石に寄親の仕事も出来ないからね」

 

 目の前の小僧がロヴェーヌ側の交渉役を請け負う形で出て来たのだとメリアは悟る。一蹴して当主本人を引っ張り出させるのも手だが、それよりは小僧から情報を引き出した方が良いか。面白い収穫もあるやも知れぬ。そう判断した彼女だった。フェイはその魂胆を見抜いた上で静観する事に決める。

 

「まず、そもそもとして若様の気骨そのものは窮地に極めて強いです。ただあの時までは王立学園に筆記足切り食らう危機を危機として認識していなかった。それを危機として、超えるべき難敵として若様に認めさせたのはゾルド師の金星でしょう。恐らくゾルド師ご本人はご自分がされたことの価値にもピンとこないのではと。生徒に何処までも寄り添う在り方、生徒と共に走る泥臭さ。ゾルド師の教師としての全盛期は今ではないかというのが個人的な見解ですが、老いた身にそんな成長などなく自分は今も二流止まりがいい所だと認識されているかと」

「……成る程、それじゃあスカウトにも」

「靡かないでしょうね。ロヴェーヌ家の家訓は謙虚、堅実。己が分を越えて得てしまえばその瞬間は良くてもそれを維持できないから寧ろ逆効果なので弁えろという教えです。ゾルド師も御館様の代から家庭教師をしていらっしゃいますので、似たような動きをされるかと」

 

 リカルドのこの言葉にリカルド本人は全然謙虚でも堅実でも無いだろうと内心総ツッコミを入れたい家臣一同であったが、主人の貴重な情報収集の邪魔など出来ない。フェイは苦笑しながらもお茶を飲む。

 

「そして、異常な戦闘能力の正体ですがロヴェーヌ家にて武術指南役を頂いております父方の祖母、ツバキ・キサラギはベアレンツ群島国サツマ地方のキサラギ本家の末裔です。そしてキサラギに伝わる奥義は奥様、お嬢様、若様とも相性が良かったのです」

「あの首刈り傭兵集団かい。最近はとんと噂を聞かないが……奴か」

「ええ、奴です」

 

 そして、明かされるリカルドのベアレンツ群島国における往年の武門の名門の末裔の血筋。それを名を聞かぬほど衰退させた元凶に察しがついたメリアは苦虫を噛み潰すどころか頬張らされたような顔で王国史上最悪の仇敵を示し、リカルドは肯定する。

 

「……成る程。ところでフェイ、これだけならば今此処に彼を連れてくる必要は無いと考えるけど、そうしたからには何か理由があるんじゃないかい?」

 

 取るべき情報は取った。メリアはこれ以上の追及を一旦切り上げることにした。実際問題、アレンとリカルドの内実について、ドラグーンと認識合わせをしておくぐらいならば、フェイルーンが自分で聞き出してそれをこの場に持ち帰れば済む話だった。それを此処に招いた真意もそろそろ問うべきだと判断した。

 

「そうだね。お祖母様は僕がローゼリア・ロヴェーヌから合格祝いと称してお菓子を貰ったことはもう知っているよね?」

「そうさね、半年前の残り物だとも聞いているが……」

「そしてもう一つ。僕は彼らの魔道具工房RickyRoseから、工房への出資を10%、株式方式で割り当てる契約をリカルドと結んで、既にその予約代として五万リアルを払っている事も把握しているかな?」

「……ほう?出資ではなく、その予約に、かい?」

「その予約権を此処で行使して出資するよ。これにより、僕は工房の所有権の一割を持つことになる。儲けの分け前も一割貰えるし、工房の経営に関しても口出し位は出来るようになる。無論、リスクは承知済みさ。このスキームを考えたリカルド本人からも、十本に一本当たりを引いてお釣りが出れば良しと思えと言われているからね。けれども、魔道具士としての力でドラグーンを盛り立てていこうと思っている僕にとって、自分より優秀な所のある魔道具士に投資しない理由がない。話を戻そうか」

 

 いよいよ、話の本題に入ろう。そう決意して語るフェイルーンは全身で情熱を燃え上がらせていた。

 

「あのやり取りの真実は、リカルドによる、あの場にいた王立学園一年Aクラス全員を利用しての全方位への足止めさ。リカルドはほぼ全く嘘は吐いていなかっただろうね。でも、僕も含めてこの話を最初に見聞きした者全員に真相から遠ざかる印象を植え付けた。その時のリカルドは敢えて謎の騎士団仮団員にしてロヴェーヌ家の従者としての在り方を前面に出していた。リカルドが技術者であったことを知っていた筈の僕ですら、あの場では裏を勘繰りつつも肝心のレシピのおまけを渡されるまでほぼ騙されていたぐらいだ。技術者としてのリカルドを知らない王立学園生が初見で見たら騙されるよ」

 

 そして、明かされたのはリカルドの狂気の詐術であった。初対面の王立学園生に強烈な印象を植え付けておいて、誰もがその一挙手一投足に注目している瞬間に、本命とは異なる解の入り口に引っ掛ける。その情報を王立学園生から得るそれぞれの勢力の者も、まさか超人的天才の代名詞たるあの王立学園Aクラス生が揃いも揃って騙されたなんて思いもしない。

 

「お菓子のレシピの全文を言うよ?好きな果物を切って、魔道具に入れてツマミを良い感じに調整してスイッチを入れる。……これに魔道具のみ注釈で別添資料参照とメモが書いてあるだけで、この話の本当の姿はリカルドが僕にこの別添資料を売りつける商談なんだよ」

 

 レシピとは名ばかりのふざけたメモに呆れて声も出なかった一同であるが、本命が別添資料で記された魔道具と聞いてその思考が止まる。

 

「……解せないね、お前さん達はアイデアで勝負する零細の魔道具工房なんだろう?態々フェイにこんな大々的に余所の初動を潰すなんて一発芸を使い潰してアイデアを売る意味が分からないねえ?」

「簡単な事ですよ、閣下。そのアイデアへ正しく投資する実力が我々に無かったのです」

「半年前の残り物のお菓子の正体は新しい保存手法で乾物にされた豆のスープなんだ。勿論、そのまま囓ってもお菓子と呼べなくはないけれども。お湯とスープ皿を持ってきて」

 

 そして、フェイが携帯固形食料に似たブロックをスープ皿に置いてお湯をかけると、乾物が瞬く間に水分を吸って解け、スープが出来上がる。その光景に全員が仰天した。スープを乾物にする?乾物がこんなお湯を注ぐだけですぐに戻る?こんな保存食は見たことがない。

 

「この保存食作製手法を我々はフリーズドライと呼んでおります。簡単に申し上げれば食品中の水分を凍らせた後、氷を溶かすことなく蒸気に直接変えて乾燥させる技術です。水気をある程度以上含むものであれば何であっても凍結乾燥後、常温で密封するだけで保存可能です。そして、フリーズドライ処理を行うための魔道具には、王国の学会における既存物理学では説明不可能な我々の独自理論仮説に基づく最新技術が詰め込まれていますし、その理論を用いれば最初の工程である食品の冷凍に対し、氷属性の魔石を省くことができます」

「そう、そこがまずびっくりだよ。氷属性の魔石を使わないで済むからランニングコストが思い切り下がりそうなんだ。それこそ、魔道列車に付加価値の高い生鮮食品を載せて王都に運び込むなんてビジネスが成立しそうなほどに」

 

 しかも、その原理が学会では未発表の新理論?氷属性の魔石を使わない冷却技術?間違ってもレシピの別添資料に突っ込むものではない。各所の反応はどうしようもなく遅れることが見て取れる。こうして持ち込まれてしまえば、後は実用化すればドラグーンの総取りだ。

 

「しかしながら、我々の手ではこれらの技術を一つの産業として育て上げる事はほぼ不可能だと判断しました。魔餅病に悩まされ、食糧自給率が低いことが悩みのタネとなるドラグーンが低コストの食糧保存技術を手にしたら、面白いとは思いませんか?そもそも魔餅病に関してもうちの御館様が耐性を付けた上で収率が三割ほど上がった新品種の試作に成功し、現在既存品種にやや劣る風味を改善すべく奮闘中ですし。盤面をひっくり返して一転攻勢に出るとしたら今なのではと愚考します」

 

 こんな新産業一つ産み出す大発明があの謎の贈り物というより喧嘩の押し売りに近く見える代物の正体だなんて分かるわけがない。そしてしれっとドラグーンの食料自給の仇敵であった魔餅病に耐性がある優れた小麦がロヴェーヌで生まれようとしていることが明かされて、正に盤面がひっくり返る事態にメリアすら圧倒されていた。

 

「まったく、君等への投資案件で僕に百万リアルは吐かせられるなんて控え目な物言いだよね。そうは思わないかな、お祖母様?」

「……何が望みだい。こんなもの、特級魔道具研究学院に持ち込めば、あのサイモン・ユグリア殿が動かないわけがない。私らより余程高く値を付けられるだろうに」

「サイモン閣下は動けませんよ」

 

 リカルドは王国の工房長が動けないとハッキリ断言した。そう言い切る姿にメリアは沈黙する。その心中には一抹の恐怖すらあった。

 

「我々にとってこの技術は早く陳腐化して当たり前になって欲しい代物。使用者側として恩恵を享受したい代物なのです。サイモン閣下が動けないことが確定している以上、魔道具の事が分かる上で食糧流通にも通じることの出来る高位貴族に売り飛ばす話になり、寄親がちょうどそうだと分かれば商談の相手に選ぶ理由としては不足でしょうか?まして頼るべきがこれからも色々とお世話になるだろうフェイ殿となれば、身贔屓がてらフェイ殿が開発に先んじて確実に成功するように、他の皆様の足をちょっと引き留めてみせるのも、一発芸の見せ甲斐があるというものです」

「同時にこれは僕がドラグーンの魔道具産業を率いてリカルドの取引相手として何処まで頼りにできるかのリカルドからの試験でもある訳だね」

「僕は魔道具士としての姉弟子殿しかロクに知りませんので」

 

 フェイルーンはリカルドの真意に納得した。此処でフェイルーンに求められている実力とは、彼女が侯爵家当主の座を勝ち取った時の純粋な魔道具士としてのそれ、リカルドやローザのような単純な開発力ではない。実例を挙げるならば、王国の工房長、サイモン・ユグリアという魔道具の量産・産業化の名人としてのそれだ。リカルドがフェイルーンに求めるのは作った後のことまで考えて一気通貫で魔道具、そして生産システムを組み上げる事だ。端的に言えば、それはメリア・ドラグーンですら、当初は魔道具士の夫と二人三脚になって取り組まなければ成し遂げられなかった壁であり、これが出来たということは、フェイルーンがメリアを越えていく足がかりになる。

 

「かっかっか、確かにフェイはまだその手の能力がある事をちゃんと証明したとは言えないからね。良いだろう、フェイ、あんたがやれる所までやってみな。私もきっちり見定めてやるよ」

 

 メリアは笑ってフェイへの試練を許諾した。寄子の領地出身の平民の傲岸不遜?馬鹿馬鹿しい。王国騎士団仮団員最年少記録更新、三親等以内の重犯罪者等の存在を帳消しにできるほどのナニカ。そんな怪物が態々挨拶と称してドラグーンに莫大な利益を齎す種を売ってくれるのだ。視線で家臣達の横槍など絶対に入らないように牽制しつつ、メリアはリカルドとフェイの交渉を見守るのであった。

 

「それでは、契約締結と言うことで。宜しく頼みますよ、我らが大株主、フェイルーン様」

「うん、宜しくね」

 

 そして、家臣の一人が再び荷物に扮したリカルドを王都の夜闇にこっそりと還した裏で、フェイルーンは改めて各種資料を読み解いた結果を家臣も人払いした上でメリアに語っていた。

 

「結論から言えばこの取引、金銭だけなら激安価格だね。投げ売りだと思って貰って構わないよ。僕がある程度以上手こずる事を前提にその他色々割引して値付けしてもらっている。少なくとも、この件がある限り、僕達はロヴェーヌに対して強く出ることは出来ないね。そして、リカルド本人が言う通り、表面的にはまだ微妙な関係を演出した方が良さそうだ」

「あの小僧が隠している事の中身については?」

「王国の工房長が動けないと断言した理由、王立学園受験資格の奪還、王国騎士団仮団員最年少記録更新、そして、新株予約権を買っていた僕に言い放った、ローゼリア・ロヴェーヌが特級魔道具研究学院で落ち零れていると言うデマを自らばら撒く不可解な行為。もっと言えば、そもそも新株予約権自体、調べてみればまるで最近施行された株式会社法に誂えたかのように適合するスキームなんだ。全部水面下で繋がっていると仮定すれば、辻褄が合う。第一騎士団仮団員なんて多分通行証兼仮面だ。王国中が引っくり返る嵐の前触れにしか僕には思えない」

「真相は王宮で分かるって事かね。それが正しければなんとも楽しみになってくるじゃないか、御前会議が」




・氷属性魔石:原作描写を見る限り、王都にアイスクリーム屋はあっても、魚介類のコールドチェーンは王都まで伸びていない。ランニングコスト等で難があると思われる。
・ガス冷媒式冷却システム:圧力による融点、沸点のコントロールは原作ではアレンの風魔法としてしか存在していないが、この辺の技術は汎用性が高いのでリカルドが強引にこの世界に持ち込んで、ローザがぱっぱとヒートポンプを作り上げてしまった。
・魔道具工房RickyRoseの株式10%:一千万リアル。後に話を聞いた皆からバカ安いと文句を言われた。
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